夜の夢見の川 １２の奇妙な物語 （創元推理文庫）

投稿元：

レビューを見る

＜奇妙な味＞をテーマにしたアンソロジー第二弾。
しょっぱなの「麻酔」からかなり厭なスタート。丁度これを読んだ後歯医者の定期検診が入っていたので恐ろしかった。「怒りの歩道ー悪夢」が短いけど一番好き。星新一のショートショートでありそうな。「イズリントンの犬」カタコトで喋る犬のサンディが可愛い。ビスケト、プリーズ。
どれも奇妙で厭～～な後味が残りました。満足です。

投稿元：

レビューを見る

この奇想シリーズ？二作目だけどセレクトがやっぱり好きだなー。表題作が一番インパクトあった。前作よりも陰鬱な印象の作品が多かったかも。

投稿元：

レビューを見る

「麻酔」がテンポよく落としてくれて、快調に始まる。
「バラと手袋」はちょっとブラッドベリのような。
「お待ち」はシャーリイ・ジャクスンのような風味。
「心臓」も「アケロンの大騒動」も◎、曖昧さが肝？のようなエイクマン。
後半にいくほど、奇妙さよりも怖さが増大していくような。

投稿元：

レビューを見る

冒頭から文章がスッと入ってきて馴染む感じ。
いわゆる「奇妙な味」に属する英米の短中編集だが、
予想外にモヤモヤせずストンと胸に落ちる話が多かった。
以下、特に印象的な作品について。

■ファウラー「麻酔」
　初っ端から悶絶するほど面白かった！
　痛いところを治してくれる頼りになる人であるにもかかわらず、
　何となく誰もが嫌だ、怖いと思っている歯医者さん。
　その恐怖をグロテスクに戯画化した一編。

■リード「お待ち」
　高校卒業記念に車で旅に出た娘と母は
　アクシデントに見舞われ、
　ある田舎町に逗留を余儀なくされたが……。
　閉鎖的なコミュニティの狂った風習に巻き込まれる恐怖。
　旅人が父と息子、または母と息子だったら、
　こんな展開にはならなかったに違いないし、父と娘なら、
　父は殺人を犯してでも娘を守ったろうと想像する。
　支配的な母と従順な娘だからこその悲劇とも言える。

■アイゼンシュタイン「終わりの始まり」
　誤りようのない自己の記憶と周囲の認識の食い違い――という、
　個人的に最も怖いタイプの話で、
　動揺した語り手がどこに着地するのかドキドキしながら読み進めた。

■スタージョン「心臓」
　愛する人との幸せな暮らしの障害になるものを憎み、
　呪った結果、訪れた悲劇。

■ワグナー「夜の夢見の川」
　護送車が事故で転落、
　辛くも脱出に成功した女囚は対岸へ泳ぎ、
　身ぐるみ剥がされたヒッチハイカーを装って、
　ある屋敷に助けを求めたが……。
　架空の戯曲を軸にしたエロティックなホラー。
　ラヴクラフト好きには堪らない筋立て。

投稿元：

レビューを見る

・中村融編「１２の奇妙な物語　夜の夢見の川」(創元推理文庫)を、 どんな「奇妙な物語」なのだらうと思ひながら読み始めた。その３作目、キット・リード「お待ち」を読みながらかういふのが「奇妙な物語」であるのかと思つた。これを読みながら私は安部公房の戯曲「友達」（短篇「闖入者」）を思ひ出してゐたのである。この作品、ある男の部屋にある一家が訪れるといふ物語である。その家族は男の部屋で実に自然にふるまふ。自分達の部屋であることを全く疑はない。男に実に親切である。気をつかつてもくれる。だからといつて男はその家族を認めるわけではない。むしろ違和感が強くなつていき……この物語は最初のブルースに歌はれてゐる如く、現代人の孤独や疎外感がテーマになつてゐる。それに対して「お待ち」はどうなのだらう。たぶん違ふ。しかし物語は、いはばその家族の中に母娘が紛れ込んだところから始まるから、「友達」と逆の設定であるやうに思はれる。ただ、一人ではなく母娘、家族ではなく町の住民いふ点が決定的に違ふ。しかも、母親はその住民に違和感を感じなくなつていくのである。この町に紛れ込み、動けなくなつた母娘を住民達は丁重にもてなす。母は体調不良、医者にかかりたい。しかし医者はゐない。どうするか。住民に尋ねるのである。似た経験を持つた住民がその経験を伝へてくれる。そしてそれを試みる。治れば良し、治らねば尋ねることを続ける。母親は治らない。何人もの住民が親切に教へてくれるが治らない。娘は母を医者に連れて行きたい。早くこの町を出たい。しかし、医者はゐないし、車はなくなつてしまつた。出る、逃げることもできない。結局、娘は標題の「お待ち」を受け入れる。つまりは出るのをあきらめたのである。男も家族から逃げたかつた。家族はそれを認めず、男を檻に 閉じ込めた。この２つの物語、実によく似てゐるではないか。親切な人々の中に入り込んだ主人公の陥つた状況、これは所謂不条理であらう。わけも分からぬうちに奇妙に世界が歪んでいく。そこから逃れようともがく。しかし、最後に主人公はそれに負けるのである。
・これが「奇妙な」のかと思ふ。巻頭のタイトル下にかうある、「SFにもミステリーにも分類不可能で、かつ異様な読後感を特徴とする小説を、江戸川乱歩は 〈奇妙な味〉と称した。」（１頁）更に、編者は「『解釈はいくつも成り立ち、真相は藪の中』といったタイプの作品を多めに収録した。」（「編者あとがき」 ３７７頁）といふ。腑に落ちぬ物語といふのであらう。「友達」は腑に落ちさうだが、「お待ち」はどうであらう。この中に入りさうな気がする。男が檻に入れられるのは物語の流れから分かるし、最後も分かる気がする。「お待ち」は何か唐突な心変はりのやうに思へる。男とは違ふ。だから、やはりこれは「奇妙な物語」なのであらう。不条理なやうで不条理ではなく、ブラック・ユーモアのやうでブラック・ユーモアではない……こんなことを考へさせるのだから、これを選んだ編者は正解だつた。次のフィリス・アイゼンシュタイン「終わりの始まり」も不条理の世界ではないか。死んだ母から電話がかかつてくる。驚いて夫や兄に 尋ねるが、母が生きてゐることを疑はない。そこでし���たなしに母の招きに応じる。主人公だけが仲間外れなのである。合はせるしかない。さうして翌日に尋ね ると……不条理世界であると同時にやはり「奇妙な物語」世界である。さうか、これがこのアンソロジーなのかと思つたら違ふ。かういふのはあまりない。「奇 妙」ではあつても怪奇か幻想に近い物語が多い。それはそれでおもしろい。読後、また「奇妙」ねと思ふのみ。如何。

投稿元：

レビューを見る

短編集。アンソロジー。
ホラーっぽい、奇妙な作品たち。
12作あって、面白くないと感じた作品は一つもなかったのは素晴らしい。
スタージョン「心臓」、チェスタトン「怒りの歩道ー悪夢」の2作が、短くても刺激的で好み。

投稿元：

レビューを見る

「奇妙な味」がテーマの短編集．1編目の歯医者の話「麻酔」で悶絶．編者によるあとがきに「読者のみなさまにおかれては，大いにモヤモヤしていただきたい」とあるが，確かにモヤモヤする．しかし12篇に共通点はなく，どれも違ったモヤモヤである．

投稿元：

レビューを見る

「街角の書店」に続く＜奇妙な味＞の第2弾。やった！
読了後のモヤモヤ感がマシマシでした。
「麻酔」…読み終えて後悔しました。だって今日歯医者だし「終わりの始まり」…普通にええ話や
「アケロンの大騒動」…絵面が全てコミカルでカッコいい！コミカライズ希望
「イズリントンの犬」…犬派にはおススメできない。
ざっとこんな感じ。
前作に続き表紙は丹地陽子さんの素敵なイラストです。これは表題作「夜の夢見の川」のカミラさんかな。

投稿元：

レビューを見る

『街角の書店』に続くオリジナルアンソロジー。
スタージョンやチェスタトンといった大御所の作品も収録されているが、この手のアンソロジーで面白いのは、現在は埋もれた作家の短編が読めること。本書収録作の中では冒頭の『麻酔』が一番好きだ。

投稿元：

レビューを見る

＜奇妙な味＞と呼ばれる不可思議な小説たち。
これはかの江戸川乱歩の造語だそうだ。
このなんとも言えぬ読後感のある１２の小説。
ホラー、ミステリー、SF......。
その隙間を縫うようにある小説。
あなたのお好みの味は、どれ？

『麻酔』
歯医者での話だ。
とにかくぞっとする。
昔は歯医者が嫌いだった。
あの音と言ったら！
そのせいで乳歯がぐらついてなかなか取れないのに行きたがらず、結果として歯列がよくない。
その反省から子供には定期的に歯医者に行かせているというのに！
ああ、この話のせいで私自身は、また行きたくなくなってきた！
ぼんやりとしたその時から、覚醒していくに従って、見えてくる光景。
ああ、ああ、ああ！

『夜の夢見の川』
その女は護送車に乗っていた。
しかし彼女の乗った車は事故に遭った。
女は、牢獄になど戻るものかと逃げた。
逃げて、逃げて、その先。
ヴィクトリア朝様式の館。
これは夢なのか、幻なのか。
過去か、現在か、物語か、現実か。
絡め取られていく主人公と読者。
屋敷の中に、物語の中に、引き摺り込まれた先には、真実という名の「藪の中」があった。

投稿元：

レビューを見る

1作目の『麻酔』のインパクトが強すぎて
2、３作目の記憶があまりありません。
この歯医者は怖すぎる！！！

解説にもあるとおりベイリーの『イズリントンの犬』は
題材がサキの『トバモリー』と同じであるものの
書く人によってこんなに違うものになるのかという
印象でした。

個人的にはアンソロジー1冊目の『街角の書店』のほうが
好みの作品が多かったです。

投稿元：

レビューを見る

前回のアンソロジー『街角の書店』よりもホラー色が強い。
冒頭の「麻酔」が痛くて痛くて読むのがとても辛かった。
一番好きなのは「お待ち」。田舎怖いとかじゃなくて母がしんどい系のホラーだと思う。