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商品説明
憲法訴訟をテーマにした概説書。権力を統制し、権利保護を実現するには緻密な手続論が不可欠との考えから、憲法訴訟論の体系化をめざし、膨大な判例と学説を検討。訴訟技術上の諸問題を解明する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高橋和之
- 略歴
- 〈高橋和之〉東京大学法学部卒業。同大学名誉教授。著書に「現代憲法理論の源流」「国民内閣制の理念と運用」など。
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紙の本
法科大学院ゆえに誕生した憲法訴訟論
2017/08/08 20:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戸松秀典『憲法訴訟』有斐閣の独壇場であった憲法訴訟の分野で、高橋教授の集大成ともいえる本書が登場したことで、今後はこの本が参照されることになるであろう。高橋先生の司法権理解には独特のものがあり、その点を考慮に入れて読まなければならないが、訴訟の中で憲法が問題になる場面、問題になった後の処理について詳細に分析。判例のとる違憲審査基準についての分析が秀逸。
紙の本
「憲法訴訟」論の二つの体系書(その2)
2017/12/27 14:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
戸松秀典「憲法訴訟」(以下「戸松」)に続けて、高橋和之「体系憲法訴訟」(以下「高橋」)を読んだ。二人の共通の師である芦部信喜氏は、結局体系的な憲法訴訟論を著すことはなかた。実は1970年代後半岩波書店から当時の法律学各分野の最新動向をまとめる全集企画があり、そこには芦部氏の憲法訴訟論も含まれていた。奥平康弘氏の「知る権利」など数冊出版されたようだが、結局憲法訴訟論は出版されず仕舞い。そうこうしているうちに、企画そのものがなくなってしまったのである。当時は現在と違って違憲判決の数が少なく、体系的に日本の憲法訴訟論を著すには時期尚早と執筆が遅れてしまい、結局企画がなくなったのだろうか。今回芦部門下の二人が体系的な憲法訴訟論を著したのだが、このような事情を考えると、芦部氏の志を受け継いだもの、と言えるだろう。
戸松は、「筋のわるい憲法訴訟」とか、憲法訴訟提起にあたって考慮すべき外的要因の検討といった憲法訴訟ハゥ・ツー的な記述もあって、理論書にしては意外な記述と思わせるようなところもあったが、高橋はまさに「理論書」である。「体系」とあるので、一応憲法訴訟の入り口から終結までの全プロセスを網羅的に扱っているが、はしがきにあるように、「憲法訴訟をめぐって生起する重要な論点や判断手法の類型化と相互の差異・関係を可能な限り精密に定義」したことから、長年研究を積み重ねてきた特定のテーマでは、深い掘り下げがあり、全体を通して読み応えのある「憲法訴訟論文集」の趣である。
例えば、「司法権」の概念からして、深い洞察の後が見られる力作。「基本権を確保するための基本権」(芦部)である「裁判を受ける権利」(憲法32条)と関連づけ、違憲審査権が憲法で明記されている日本国憲法の意味を考えながら「司法権」の概念を論ずるもの。これまでの「法律上の争訟」の解釈をベースにした理解ではなく、最高法規の憲法の解釈という視点からの斬新な分析であった。これによって憲法訴訟の間口を広げていこうという意図であり、氏によれば訴訟要件もこの「司法権」概念に抵触しないかどうか、「厳格な審査」の対象になるのである。
この分析からして歯ごたえがあるのだが、続く各所で扱われる憲法判例の評釈も読みごたえがある。憲法判例の読み方とはこういうものか、と深い洞察を感じさせる内容で、憲法判例評釈集として扱ってもおかしくない内容。同じく最高裁判決の読み方として、「徴して明らか」判決で引用される最高裁判例についても、丹念に関連性や引用の妥当性をチェックする姿勢も参考になる。
氏がこだわりを見せる「司法権」概念に関連した裁判例が最近あった(名古屋高裁平成29年9月14日)。地方議会議員への厳重注意処分を公表した議長の名誉棄損行為に対する損害賠償請求が司法審査の対象となるとしたもの。これまでの「部分社会」論では、地方議会が自主的・自立的に決定したことを争うのは「法律上の争訟」ではない、と一蹴されそうだが、この裁判では議員の思想信条の自由、移動の自由に対する重大な権利侵害があり、一般市民法秩序と直接関係があるとして司法審査の対象としたもの。この考えは、氏の唱える「司法権」概念により権利救済の間口を広げるものと同じもの。最高裁に上告された場合どのような判断が示されるか?