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紙の本
永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)
著者 堀川惠子 (著)
【いける本大賞(第4回)】日本社会を震撼させた連続射殺事件の犯人、永山則夫。生前、彼がすべてを語り尽くした100時間を超える録音テープから、これまで「貧困が生み出した悲劇...
永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)
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商品説明
【いける本大賞(第4回)】日本社会を震撼させた連続射殺事件の犯人、永山則夫。生前、彼がすべてを語り尽くした100時間を超える録音テープから、これまで「貧困が生み出した悲劇」といわれてきた事件の、隠された真実に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
連続射殺犯・永山則夫。犯行の原因は貧困とされてきたが、精神鑑定を担当した医師から100時間を超す肉声テープを託された著者は、これに真っ向から挑む。そこには、父の放蕩、母の育児放棄、兄からの虐待といった家族の荒涼とした風景が録音されていた。少年の心の闇を解き明かす、衝撃のノンフィクション。【商品解説】
著者紹介
堀川惠子
- 略歴
- 1969年広島県生まれ。ジャーナリスト。『チンチン電車と女学生』(小笠原信之氏と共著)を皮切りに、ノンフィクション作品を次々と発表。『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』で第32回講談社ノンフィクション賞、『裁かれた命―死刑囚から届いた手紙』で第10回新潮ドキュメント賞、本書『永山則夫―封印された鑑定記録』(以上、講談社文庫)で第4回いける本大賞、『教誨師』(講談社)で第1回城山三郎賞、『原爆供養塔―忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)で第47回大宅壮一ノンフィクション賞と第15回早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。
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紙の本
永山則夫の親族
2018/10/08 23:41
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にしかわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
永山則夫の家族について、記載がある。
父は、博打に依存し仕事も手につかなくなり、借金を重ね出奔。岐阜県で野垂れ死した。
母は、両親と共に樺太に渡り、漁師の父親は海難事故で死去し、母親は蟹缶詰工場で働きやがて再婚したために義父からの虐待を受けるようになり、義父と実母に樺太に置き去りにされふた冬を過ごし、保護され板柳町にいた実母の元に連れて来られたという。
これだけ読んだだけでも暗澹たる気持ちになる。
しかし、永山則夫の兄弟らは成績が優秀であり、それなりに高い意識を持ち、進学や就職をしていた。
判決では、この兄弟姉妹の成長過程を引き合いに出し、永山則夫は死刑に戻る。
本書では、この兄弟姉妹の成人後の様子にも触れていた。
長姉は、精神疾患。長兄は高校生の時に同級生に産ませた娘を自分では育てず永山の母親に押し付けて、卒業後他所で就職。宇都宮市で詐欺罪で逮捕されて以来消息不明。三兄は会社を辞めて独立したが消息不明。三姉は離婚後子供を夫の元に置いて消息不明。妹は産んだ娘を児童養護施設に預け消息不明。長兄が高校生の時にできた娘(姪)も消息不明。
永山則夫は、長姉が精神疾患にかかり離れ離れにならなかったら、人生は違っていただろうと思う。長姉が死去するまで東京拘置所の弟宛に送った手紙には心を打った。
永山則夫の祖母から始まった育児放棄は、永山の母親を経て永山の兄弟姉妹にも発現している。永山則夫の甥や姪らもまたそんな連鎖を引き継いでいるのだろうか。
また、行方不明になったまま死んだ父親のように兄弟姉妹も似たような状態になっている。
永山則夫の親族は、この不幸の連鎖を断ち切れられているのだろうか。永山則夫のような兇悪な犯罪を犯していなければよいがと思った。
紙の本
永山則夫を殺人に走らせたものは何か
2018/05/01 18:13
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
死刑制度廃止されるべきだろう。
それがこの間、堀川氏の永山則夫裁判の記録を著わした著述を読んでの私の結論であった。前著「死刑の基準」は検察・裁判官・永山の妻ら親族・若干の被害者遺族の視点から永山裁判の全容を著わしたものだ。しかし、前著では「なぜ4人連続射殺したのか」納得の得られる答えがわからなかった。本書はそのアンサーである。
一審で死刑判決を受け、弁護団は永山の精神鑑定を再度、依頼する。通常の精神鑑定であれば数日で済まされるものだそうだが、二度目の精神鑑定を依頼した石川義博医師は278日間、100時間をかけて、永山の出生から事件に至るまでの軌跡・心のありようを永山に語らせる。母に捨てられる経験を持ち、母の愛情を知らずに、兄弟からも虐待を受け・無視され続けてきた永山の生育歴が永山から語られる。生まれてから、ずっと続く精神的緊張感、生活に窮してホームレス状態で肉体労働をしていた永山の肉体的疲労感は、事件当時、精神に異常をきたしていたと、石川氏の鑑定結果に描かれている。事件を起こした当時は19歳を過ぎていたが、石川氏は永山の精神年齢は18歳に達していないというものだった。
この鑑定の記録、永山の生い立ちは凄惨を極める。著者の努力によって発見された鑑定時の録音が起こされる。本書を読み進め、永山が事件を起こしたいきさつに納得が得られるものだ。現在では認知されたPTSDが疑われる。またネグレクトしていた母の生い立ちも追いかけられる。母も永山同様親からネグレクトされた子どもだった衝撃。虐待の連鎖。これも今では世間的に常識となっているが、この当時はまだ、日本では普通に知られていないことだっただろう。
石川鑑定によって、二審では無期懲役の完結に減刑されるが、最高裁で逆転し、死刑が執行された。石川鑑定は最高裁で取り上げられた形跡はなかった。
鑑定の中で、永山は自分に向き合うことによって、永山自身が癒やされていく。そのことが石川氏の撮影した永山の写真に現れている。永山は自分を「精神病」と診断した石川鑑定を否定したが、著者によって、永山が鑑定書を死刑執行まで大切に保管していたことが、石川氏に伝えられる。
いま、少年犯罪でも死刑判決が下されるようになった。
まだ精神的に成熟していないものが犯す犯行への刑罰、矯正の余地がある被告の死刑執行の有り様を問うものとなっている。
人が人を殺すことが国家によって行われることの是非を考えるべきではないか。
国連からは、日本の死刑制度の廃止の勧告を受けている。
アムネスティーインターナショナルの統計によると、死刑廃止もしくは執行を停止した国は141カ国に上っているという(2017年4月現在)。