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商品説明
彼ら彼女らの存在がなければ、戦後復興、経済成長はなかった−。昭和30年代〜昭和50年代前半の〈集団就職〉という社会現象の実態を、経験者たちへの聞き書きから明らかにし、働くことの本質を問い直す。【「TRC MARC」の商品解説】
彼ら彼女たちの存在がなければ、戦後復興はなかった――
昭和30年前後から昭和50年代前半にかけて、〈集団就職〉という社会現象が存在した。中学卒の少年少女たちがまさに出征兵士のごとく、東北から関東方面へ、九州・四国・沖縄から京阪神・中京方面へ、企業側の求人に応じて就職していった。彼ら彼女らの存在がなければ戦後復興も経済成長もなかった。本書では、〈集団就職〉の実態を、主に西日本域出身者たちへの聞き書きにより明らかにし、現代史の中で正当に評価しようと試みた。さらに、働くことの本質を集団就職体験者たちの言葉から問い直した力作。【商品解説】
目次
- 序 章 見送る人たち
- 出征兵士を見送る思いだった
- 第1章 京・阪神で働く
- 仕送りすることだけを考えていた
- 第2章 中京で働く
- 強盗に初任給を奪われる/手に職を持った誇り
- 第3章 関東で働く
著者紹介
澤宮 優
- 略歴
- 〈澤宮優〉1964年熊本県生まれ。青山学院大学史学科、早稲田大学日本文学専修卒。ノンフィクション作家。「巨人軍最強の捕手」でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。他の著書に「昭和の仕事」など。
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紙の本
生きるために、働くしか、なかった時代。
2017/07/20 14:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今から半世紀以上も前の日本では、中学卒の労働者は多かった。
高校進学は当然のような風潮は、まだ、それほど年数は経過していない。それこそ、今から70年余前の戦争で荒廃した日本社会では、夜間の中学に通う人すらいた時代だった。何もかも、貧しかった。しかし、たくましく働く人がいた。
本書は中学校を卒業し、工場で働いた人々の記録である。
それも、九州、沖縄地域に特化した集団就職者の聞き取りである。集団就職というと、どうしても東北から東京に働きに出てきた中学卒業者を思い出す。「ああ、上野駅」という流行歌が、一般的な集団就職者のイメージとなり、近年では「夕陽丘の3丁目」シリーズで顕著となった。
しかし、関西、中部を中心に、九州各地からの集団就職者が多いことに、あらためて実態を知る。
現在、「働き方改革」など、都市住民を中心とした労働環境のありかたが問題視される。同時に、農村部を中心にした過疎化の問題、少子高齢社会。
目前の問題を解決するには、かつての歴史をたどることによって解決の道が見えてくる。そういった点からも、問題解決の糸口があるのではと思えてならない。
なぜなら、本書に登場する集団就職者の姿は、日本の高度経済成長の生き証人だからだ。
金銭、物質の充足が達成できた社会は、次に「心」の問題、「精神」という人としての「生き方」に転換する。
さすれば、どのように移行してゆけばよいのか、示唆しているのではないか。
金銭、物質的には恵まれなかったが、充足していた。それに向けて、頑張ったと、それぞれの方が口にする。
今、はたして、充足感をもって働いている人はいるだろうか。
遊びと、労働とが混在した生き方がアジアだが、現代日本は知らず、知らずに先祖がえりをしている。それに逆行するから、無理が生じているのではと、読み進みながら考えることばかりだった。
働くとは何か。生きるとは何か。個人個人が、振り返る時代を迎えた。
本書は、そのひとつの事例として、日本社会に問題を投げかけている。