紙の本
社会保障のことがわかりやすくよく整理されている。
2017/09/24 10:18
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投稿者:ワインアドバイザー - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会保障について、包括的かつ適切にわかりやすく書かれた良書である。著者は厚労省の元役人であるが、日本の国の在り方や今後の日本の進むべき方向性と社会保障は密接な関係があることをわかりやすく示しており、とても興味深く読めた。
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投稿者:KKキング - この投稿者のレビュー一覧を見る
給与所得者は社会保険料を毎月天引きされているにも関わらず、日本人はなぜか社会保障への興味も理解もない。タイトルとおり、「教養」としてそれくらいは知っておきたい。
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総論中心で読みやすい。社会保障の問題を考えるきっかけになった。
・近代化によって、農民は農村から都市の工場へと移動させられた。社会保障は近代化によって失われた社会=コミュニティーの相互扶助の機能を国家が代替・補完するもの
・社会保障は自立を支えることが目的なので、自分で支える自助が大前提で、これに加えて病気などでリスクを防御しきれなかった時に互いに支え合う共助から成る。自助と共助でカバーできない困窮などを公助によって補完する。自助のない共助はない、というのが基本的な考え方。
・社会保障給付は120兆円でGDPの22.8%。財源は6割が保険料、3割が公費、1割が保険料を原資とした積立資産の運用
・日本の社会保障の制度はよくできている。これは始めた時期(1950年)がよかった。皆貧しい時期だった。所得格差が開くと、みんなが同じ保険制度に入って、同じ保険料を払って、同じ給付を受けるということは無理。中国などは今となって所得の格差に応じた別々の制度しか作れないだろう。社会が既に分裂してしまっているので社会保障に関しては中国はアメリカのような道を進むことになるだろう。
・年金の役割の一つに高齢者の過剰貯蓄を減らすということがある。日本の高齢者は過剰貯蓄の傾向はあるが、年金がなくなればもっと過剰に貯蓄し、消費はますます減るだろう。しかし、諸外国では六〇台で貯蓄のピークが来るのに対し、日本はその後も貯蓄が増え続け、六〇台よりも七〇台の貯蓄が多い。これはやはり社会保障制度に対する安心感がないのだろう。
・日本でも1948年に財産課税が行われた。10万円以上(現在の価値で5000万以上)の財産を保有する個人に課せられ、最高税率は90%(資産1500万超)。
天皇家がトップの納税で37億4000万円だった。
・社会保険の役割は雇用という観点からも重要で、リーマンショック時にはアメリカで1000万の雇用が失われたが医療、教育分野の雇用が増えた。日本でも2002年を基準にすると医療福祉の雇用は50%以上増えており、10年で238万人の雇用を創出している。
・年金の給付は年間56.7兆円になり、これが消費につながっていることも重要。地方では県民所得の多くを占めており、東京、愛知以外の45都道府県では県民所得の一割以上が年金給付。鳥取と島根では17%にも達する。
・高所得の高齢者に保険料を負担させたり、年金受給を待ってもらうことは低所得の高齢者への支援を若者世代に頼るのではなく、高齢者内での再分配でカバーするということで、こういう考え方をもっと社会保障の中に取り込むべき
・年金と医療・介護の決定的な違いは、後者の方が高齢化の影響を受けるということ。六五歳が七五歳になっても年金の額は変わらないが、医療・介護費用は増えるため、高齢者の中での高齢化が進むと給付が増える
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厚生省の統計問題がわちゃわちゃ言われている今この時期(2019年頭)に自信を持って言う事は出来ないけれども、官僚としての長い実務経験のある著者が、良質なデータを数多く提示した上で、日本の社会保障の現状についてイデオロギーを交えずに歴史背景や他国との比較の上で冷静に分析している。
「教養としての」という名のついた本には表面的な話を並べ立てるだけで、学びが少ない本も少なくないが、本書は本当の意味で「教養としての社会保障」と言い得る良著である。
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【ミクロとマクロ】
福祉の現場にいてミクロの視点で社会保障の物足りなさを感じている。だからこそこの本でマクロの視点を知ることが有意義だった。
寿命延伸
医療の進化
労働力不足
少子化
人口減少
「安心して子供が産めない」社会であるがというが「計画的でない子供」が問題になっている気がする。家計が苦しく両親が働くことによる子供に対する愛着不足。貧困による教育格差。非行化。引きこもり…などなど。
制度の整備が必要なのは大前提。
加えて「共助」など心の整備?が必要。
「自分さえ良ければ」という考えが社会保障制度の最大の敵ではないだろうか。
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骨太でありながら初心者でも読みやすく、
著者の方の優しさが伝わってくるとても良い本でした。
「「ポジティブウェルフェア」という言葉があります。社会保障を負担からだけ見るのではなく、消費や雇用、産業振興など、経済との好循環、相互依存関係をよく考えてより積極的な観点から社会保障の姿を考えよう、保護と依存ではなく、社会への参加を保障する、つまりは自立を支援するという視点で社会保障を組み立て直そう、ということです」
とてもこの一言では片付けられませんが、
社会保障を「負担」ではなく「攻めの要」と捉えること。
なんとなくこうシフトしたらいいなと思っていることが
実態を持って語られており、
未来の日本への過剰な不安に怯えるのではなく
何をすべきかということを教えてくれています。
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元 省の官僚である著者が書いた本で、社会保障の全体像を掴むには非常にわかりやすいものだった。
多くの人は自分と関わりのあるミクロの社会保障だけをみて喜んだり文句を言ったりするが、マクロ的にとらえることで本当に日本にとってどうすることが良いのか見えてくる。
今の日本の社会保証制度がどういう成り立ちで作られ、どう変化してきたか、また外国との比較をしながら、今後の日本の社会保障制度がどうあるべきか著者の考えが記されていた。
退職にあたり職場の後輩たちに向けて伝えた実態把握能力・コミュニケーション能力・制度改善能力3つの言葉が胸に響きました。
最初の2つは役人でなくてもとても重要なことだと感じた。
人の気持ちに共感しながらも、物事の本質をとらえる力を少しずつ鍛えて生きたい。
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・医療、介護、年金、失業、子育て、公的扶助、社会福祉、公衆衛生、健康増進など生活万般のリスクを補うもの
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国民1人ひとりが、まさに「教養」の1つとして社会保障についてしっかり知識を持つ必要があるなと思いました。
法改正などで話題に上る際、騒ぎ立てるワイドショーなどで表面だけを見聞きして理解したつもり……では、問題の本筋が見えないままです。
多くの方に、お勧めしたい1冊です。
社会保障は、負担や給付として私たちに関わっているわけですが、消費や雇用、産業振興にも影響するという点、改めて気づかされました。
また、国家財政の問題点として、借金を返せないことも大事ですが、それよりも予算が限られるために政策の選択肢が狭められ、必要な施策が打てないという点を指摘されています。なるほど、と思いました。
大変読みやすい構成および文章ですので、多くの方に読んで頂きたいです。
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## 感想
- 普通に知識の勉強としてよかった。歴史を紐解く、というとあれだが、国民皆保険を作るところから現代までの話をざっと眺められた。
- 元、内閣官房内閣審議官の人ということで、どこかに寄った話だと嫌だなと思ったが、思ったよりもニュートラルな立場で書かれていた。最後の方はエモさもあったがご愛嬌(定量や戦略ではなく思いが乗っかる文章で終わる、という程度の意味)
## メモ
- 社会保障が理解されづらいのは
- ①政治・経済・雇用・家族政策・医療・など幅広くまたがるため。
- ②マクロ経済の仕組みを踏まえなければいけないが、ミクロ経済の感覚が混ざるため(往々にしてマクロにとって正はミクロにとって悪≒逆行する)
- 自助を基本とし、共助が補完し、それでもダメなら公助がある。
- 共助は、年金や雇用保険など、防貧の考え方。公助は救貧(救済施策。例えば年金で支払い能力がない人は保険料免除ができたりすることもそれ。)。
- チャレンジができて、失敗しても貧しない仕組み、がセーフティネットがある、と言える状態。
- 日本の社会保障は、終戦時期且つ高度経済成長時代だから成り立ったモデル。
- 号令で民営化したり中央管理的にしたり。
- 人口オーナスの時期、少子高齢化では、立ち行かなくなる。
- 逆に言うと、労働人口を増やすしか無い。
- 女性を増やす、高齢者でも働く、(外国人を受け入れる)、生産性を上げるetc
- 女性雇用ではなく、家族労働戦略(男女でどうやって総量としての雇用を増やすか)の視点で考えるべき。
- 日本の制度は、国民皆保険という奇跡や、医療や介護の手厚さはピカイチ。
- アメリカはいまだに保険に入れない人もいる。
- すぐ救急車呼んじゃうみたいな問題もあるが(やかかりつけ医などがないスウェーデンでは病院が数週間先まで待つとかもザラらしい
- 内部留保(会社が蓄えているお金)が多い
- 高齢者の貯金も多い
- ps.最後に、職場の後輩に引退時に送ったとされる文章が思いの外よかった。初めて社会人=公務員になった諸君へ。実態把握能力・コミュニケーション能力・制度改善能力、が必要だ、という話。
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長年、厚労省の官僚として社会保障政策に関わった著者が、社会保障制度の意義と、これからのあるべき姿について語った一冊。社会保障は医療・介護、子育て、年金、生活保護、公共衛生等、テーマが多岐に渡り、かつGDPの2割を占めるインパクトを持つことから、その全体像を掴むのは容易ではない。それを長年の官僚としての経験から、教科書的な説明を非常に平易にまとめることに成功している。
さて、そうした教科書的な意味合いもさることながら、本書のメインメッセージは、「経済成長と社会保障は相互に関連しており、対立軸で語るのではなく、その両方を満たす政策を考えるべき」というものである。本書を読むまで、経済成長と社会保障の関連性をあまり意識したことがなかったが、セーフティネットとしての社会保障があるが故に、個々人がリスクを取ることができ、結果として経済成長を促進する、という考え方は、もっと多くの人に理解されるべきものであると思う。
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第Ⅰ部の、日本の社会保障の成り立ちの説明が非常にわかりやすい。また、日本の巨額の財政赤字が政策決定の足枷になっているということが理解できた。
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社会保障の理念、社会保障制度と経済成長との関連性の説明がわかりやすい言葉で丁寧に説明されており、とてもわかりやすかった。
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これは良書だ。社会保障の歴史と全体像をわかりやすく鳥瞰するように説明するのみならず、ポジティブな解決策をも提示してくれている。
いたずらに危機感を煽るわけでもなく、冷静に最適解を求めようとする本書のプランには説得力がある。小生は読後に「増税に賛成論者」に転向してしまった。
しかし待てよ、官僚が持続可能性のある社会保障政策の最適解を作成できたとしても、それを政治的に実現できるのだろうか。
少なくとも「規制緩和による成長戦略で利益を得るのは総理のお友だちだけ」の世界では難しい。
ともあれ、本書で一貫して取り上げている社会保障案は現実的かつ説得力もあると思えた。高く評価したい。
2017年7月読了。
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初心者にもわかりやすくまとめられていて勉強になった。
社会保険料は高いと思っていたけど、そうではないな、と感じるようになった。