紙の本
長いこと弁護士生活を送って来た著者ならではの深みのある作品。
2018/09/28 08:40
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
長いこと弁護士生活を送って来た著者ならではの深みのある作品。推理小説というより、罪と罰、裁く者と裁かれる者との関係、罪に対する決着方法として別の方法は無かったのかと考えさせられる深みを持った作品に仕上がっている。中盤までの展開は何となく芥川龍之介『藪の中』を想起させる不分明さであるが、本作品では終盤の約100ページで謎解き(種明かし?)をすることで推理小説の面白味を付加している。その綿密に計算された構成にも注目。ちょっと気になる作家となりました。
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敗者の告白
2022/08/06 13:49
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
妻が被害者で夫が加害者、と思いきや、妻の手記と息子のメールにより、それが逆になる。「死人に口なし」というが、妻と夫、どちらに有利なのか。
「Xの独白」にあるように、犯人の冷徹で完璧な思考は、人間味を感じず、精密機械のようだった。最後の最後に人間らしさを感じたが、皆不幸になるばかりだった。
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一方的すぎ
2017/12/24 10:26
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投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
別荘で起こった主婦と男児のベランダからの墜落事故
主婦が死ぬ前に残した手紙から夫が逮捕されて・・・
このタイプの小説の面白さは、犯人と被害者の双方の証言者から思わぬ実態が暴かれて、どちらが悪だったのかわからなくなるってところだと思うんだが
この話は一方的過ぎて、逆に途中で全貌が透けて見えてしまう、惜しい!
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出版社のツイートで紹介されていて、面白そうだったので購入。読み出して最初こそ、愚行録か?(以前に読んでいたので)と一瞬思ったが。
読み進めていくにつれて当事者含む色々な人間の証言が出てくるのだが最初は、この旦那が怪しいだろ!って思ってたら、何か雲行き怪しくなってきていや、嫁が怪しいだろ!って思わなくもなくなってきて、そのうちまた、この子供が!とか、隣の住人夫婦も怪しいだろ!って出てくる人間全員が疑わしくなって、天秤みたいに左右に感情が揺さぶられた。
元弁護士の作者が書いた作品だけに物語もものすごくリアリティがあるし、真相は本当に綿密に綿密すぎるほど手の込んだもので。嫁と息子を殺しておきながら、本当は自分の友人への復讐で、しかも、自分には非がないように正当防衛に見せかけてー。確かに友人と不倫してその子供を産む嫁にももちろん、非はある(そのあとの、不倫の繰り返しも)それでも、この旦那の心理も異常だし復讐劇も異常。異常なまでの心理状態。
ここで終われば普通のリーガルミステリーなんだけど、この本が秀逸なのは、その被告人(旦那)の弁護士として立ち振る舞った睦木 怜なる人物が、自分の見解として"Xにまつわるひとつの推論"を展開しているところ。睦木弁護士は、色々な人間の証言を聞いていく内に真実が分かったんだろう。でも、睦木弁護士はあくまでも被告人を弁護する立場。本文にもあるように、"被告人の弁解が本当である可能性が少しでもあるのなら、それを裁判の場で主張し、無罪判決を得るべく努めるのが弁護人の責務なのです。"と。
この本を読んで、人を裁くこと、証言の信ぴょう性の度合い、裁判官、検察、弁護士それぞれの立場、色々な角度から見ればみるほど、裁判の難しさが浮き出て仕方ない。
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タイトルも秀逸だし内容も悪くないしラストのちょっと暗い気持ちが後引くような終わり方もいいと思う。
けどどうもハマれなかったというか、まわりくどくて読むのが少し疲れた。
衝撃の事実のはずなのに「ふーん、そうなんだー。」としか思えず。
いまいち盛り上がりに欠けた。
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始めて読む作家さん。元、弁護士だったのだそうだ。
こういう形式の本を初めて読んだ。
手記、インタビューに対する供述、メール、書簡。
一方からの意見を集中的に読む形になるので、一項目読むたびに全体像の捉え方が偏る。表紙の絵が天秤なのだが、本当にそんな感じ。これは面白い書き方だと思った。
ただ、冒頭に事件が起き、犯人と動機を探っていく形で途中で飽きてしまった。Xの告白にも共感でず。セレブとエリートの話だったからかな?
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会社経営者の妻と8歳の息子が山荘で転落死、容疑者は夫。関係者の手記と告白だけで真実を探る弁護士が辿り着いた衝撃の真相とは。
ちょっとした行為も、薄皮をめくると違う一面が見える。例えば、整理整頓が出来てきれい好きな長所が、見方を変えれば神経質と言われるように。弁護士の推論が真実とは限らないが、後日の事実が結局はそうだと大衆に結論付けさせる。現実の世界でもそんな事件が多く存在しているような気がする。
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読者はそこまで簡単に騙されないと思うし、大逆転ミステリでも何でもないけど(オチ?真犯人?はすぐ分かる)、真の動機→タイトルの収まりの良さが良かった。
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セレブな家族の妻子が別荘のベランダから転落死。事故かと思われたが、転落死前日に妻は知人へ、子は祖母へ宛て、「殺されるかもしれない」という内容のメールを送信していたことがわかる。そのせいで逮捕される夫。
問題の妻子のメールに始まり、関係者1人ずつの供述が1章ずつ並びます。真相は想像の域を出ないから、帯にあるような「仰天」というほどの驚きはありません。夫と妻、どちらの話を信じるにせよ、どちらにも共感は持てず、つくづく嫌な感じ(笑)。下世話といえばそれまでだけど、だからこそ最後まで面白く読めるのでしょう。嫌だなぁ、人間って。(^^;
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派手な妻? 誠実な夫?どちらがより狡猾なのか。
子どものくだりがあんまりだと思う。
さらっと読めました。
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この書き方は好みが分かれそう、私は苦手だった。帯に書かれているほどの衝撃もないし、パンチ力に欠けるかなー。
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山の中の別荘2階のベランダから妻と8歳の息子が転落死する。事件後、妻の手記と息子のメールが発見され、事件は思わぬ展開を見せる。容疑者として逮捕された夫の弁明、夫の友人とその妻、妻と関係のあった男たちの証言だけで構成された変則的な作品。
誰が嘘をついているのか、それぞれの主観のみで語られる供述は、人が変わるごとに180度違った印象を見せ独特の緊張感に包まれる。
怜悧に計算され練られた計画に利用された法律の原則。その原則故に、真犯人を法律で裁けないジレンマ。
弁護士出身の作者がP317~318を書くためだけにこの作品を書いたのでは、と思わせる重い問題提起がなされている。
リーガルミステリーでもあり、本格ミステリーとしても楽しめる作品だが、本格ミステリーとしてはややトリックが粗いし、動機も人として納得しがたいものの、真相がわかった時に初めてタイトルの意味に気づき「お~」となるあたりは秀逸。
ただ、大人の身勝手に振り回され死んでいった息子が、ベランダから転落するその一瞬に何を見、何を思ったかを考えると哀れで、なんともやりきれず、後味はかなり悪い作品。
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話がすべて事件の関係者の語りで進んでいきます。一つ一つが長くて、中盤は少し退屈でした。最後のオチはなるほど、という感じで、ようやく最後にタイトルの意味がわかるというのは良かったです。でも大逆転っていうほどの驚きはなかったかな。とりあえずクズな大人に翻弄された子供達が可哀想すぎる。最後はスッキリ終わるというより、後味悪く終わる系なので好き嫌いが分かれるかもしれません。
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こういうストーリーの展開の仕方は好きだ。
『往復書簡』や『告白』で一世を風靡した湊かなえのそれとよく似ている。
妻と息子が別荘のベランダから転落死し、殺人の容疑をかけられた夫。
夫本人の自己弁護から始まり、妻や息子が死の直前に送ったメール、妻の不倫相手や夫の母親らの告白を通して、事件の真相が明らかになってゆく。
誰が誰に対して殺意を持っていたのか。
紐解いていく過程を楽しめる作品。
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⑩
8人の手記、告白のみで語られる真実の話。
真実なんて本人にしかわからないんだから、他人がとやかく言ってもそれが事実とは限らない、けどそういう証言をちゃんと精査して白黒はっきりさせなきゃいけないから、
裁判ってめっちゃむずいね。
人が人を裁くことなんてできないだろうに、神様でもなければ。
わたしは瑞香の気持ちがよくわかるよ。容赦なく鉄槌を食らわす見た目とは違うパワフルさがすてきだとさえ思った笑
弘樹の手記を見ると、他人をとにかく下に見てるのがわかるの、特に溝口ね。
読んでてイライラしたんだけど、最後まで読むとなんとなく同情しちゃった。敗者の告白っていうタイトルが秀逸。
自分のが見た目も中身も優れているってあるけど、人間的には溝口のが上だし、幸せの尺度って顔やお金じゃないんだな。あと佐木子さんも。
ぶれない幸せこそが大事。
2019.02.09