水無月の墓 （集英社文庫）

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小池真理子のホラー好きなのね。本作は今までのゾクゾクした神経を逆撫でされるような恐怖というよりは、輪郭のはっきりしないぼんやりとした、ファンタジーに近い話が多かった気がする。

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内容紹介
お風呂場から隣室で椅子に座っている女性の足が見えた遠い昔の記憶。その女の人は誰だったんだろう──。此の世に残した甘美な想いが恐怖に変わる幻想怪奇小説集

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　現実と死後の世界が入り乱れる、幻想的なホラー短編集。全8遍収録。

「足」
「ぼんやり」
「神かくし」
「夜顔」
「流山寺」
「深雪」
「私の居る場所」
「水無月の墓」

　全ての物語に共通していたのは、生と死の境目が曖昧な世界観と、生気に欠けた主人公たち。どこかぼんやりした彼らは、生と死の境目を、ふとした瞬間、いとも簡単に跨いでしまう。跨いだあとも気付かないままでいる人も。だから、わたしたち読者は、読んでいる間中ずっと、この人は生きているのか？死んでいるのか？と自問し続けることになる。
　想像の範囲内に収まったもの(「ぼんやり」「深雪」)や、何度か読み返しても「？？」なもの(「足」「私の居る場所」)もあったけれど、いま個人的に小池真理子さんにハマっている節があるのと、ホラー小説に慣れていないのとで、ちょっとハラハラしながら楽しく読めた。
　「夜顔」「水無月の墓」が特にお気に入り。切ない。
　「流山寺」は途中まですごく印象に残っているけれど、ラストが思い出せない。どうなったんだっけ・・・

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生きているということと生身の体でなくなってしまったこと、この世とそうではない部分との境目、どちらもきっと普通にその辺りに転がっている。そんな気がしてくる。死んだと自覚していなかったらなおのこと、死者が成仏できないほど残されたものが心を残してしまったら更に。この本は「怪談」「夜は満ちる」とともに文芸怪談文庫三部作だそうだが、しっかり怖いのに怪談という言葉より幻想怪奇譚という方がよく似合う気がする。文章の端々から匂い立つ冷気がたまらない。題名で誘われた表題作をはじめ、どれもが秀逸で一つ読むごとにため息が出た。

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神かくし：狐神社を回り続ける行方不明者達が増えていくのが不気味/流山寺：買ったばかりのマンションに帰ってくる死んだ夫の話/深雪：別荘地管理人のアルバイト/水無月の墓：18年前事故死した男の助手からかかってきた電話。どの作品も怖くて切ない話。

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3冊連続刊行されたアンソロジー最終作は才気みなぎる90年代の作品集。3冊一気に読みました。全て一貫した切ない味わいがあったけど、本作はその味わいと技巧とのバランスがよく、入門編には最適かと思いました。異界の描写も多く、四半世紀前でこの視点というのはさすが先駆者。『夜顔』『神隠し』『流山寺』『水無月の墓』などが印象に残った。唯一の正調な怪談『深雪』が逆に異彩を放つ。

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冒頭から、その世界になんとなく引き込まれて、不思議にリアルに触覚的で、通勤中に読んでいると、なんか本を閉じたこの世界が、ちょっといままでとは変化しているような気さえしました。