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商品説明
【高校生直木賞(第5回)】別れた愛人の左腕と暮らす。運命の相手の身体には、自分にだけ見える花が咲く。獣になった女は、愛する者を頭から食らう…。繊細に紡がれる7編の短編集。『別冊文藝春秋』掲載に書き下ろしを加え単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
くちなし | 5−28 | |
---|---|---|
花虫 | 29−59 | |
愛のスカート | 61−93 |
著者紹介
彩瀬 まる
- 略歴
- 〈彩瀬まる〉1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR−18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「桜の下で待っている」「骨を彩る」など。
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紙の本
幻想的な短編集。祝・直木賞候補作入り。
2018/11/10 23:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても好きな作家さんです。
すべて傑作とはいきませんが、この人の独特のセンスには
いつも心を掴まれてしまいますね。順調に新作が出ています。
この作品でついに直木賞候補となり評価が一段階
上がったのではと思います。嬉しかったですね。
選評によると東野圭吾さんが推したぐらいで、あとの方の評判は
いまいちでした。審査員によっては100年前のシュールレアリスム
みたいだなど、総じて幻想部分の評価が低いです。
評価すると書いてあった短篇は「薄布」「茄子とゴーヤ」の
二本であり、幻想要素のない作品です。
確かに分かりやすくこじれていて心のひだが見え隠れします。
しかし私は、幻想部分に著者の本質が現れているのでは
ないかと思うのです。
異世界のものを組み込もうという意識には見えないのです。
私たちの世界と向こうの世界との境界を、綱渡りしながら
表現しようとしたら、いつの間にか幻想が紛れ込んできた、
そんな感じなのです。
とても分かりやすい超現実なので、著者の感覚では
比喩表現のうちの一つぐらいに思っているのではないでしょうか。
それくらいすっと入ってくるんですね。
幻想表現に目を奪われると直木賞選評のようになってしまいます。
そんな理屈っぽい作品じゃあないですって。
直木賞向きじゃあないのでしょうね。
物語の底流から深層心理をほのかに揺さぶってくる作風ですので、
芥川賞向きの作家さんだとは思います。
文学賞などどうでもいいという人もいますが、
作品は広く読まれてなんぼです。そもそも読まれなければ、
次の作品が出てこなくなりますし。
だからといってベストセラー的なあおりのきつい作品は求めて
いないのですが、そのさじ加減が読書の醍醐味とでも言いましょうか。
全部で七編の短篇集です。表紙の絵の作品を紹介します。
運命の花が描かれています。
運命の人に出会った時に自分だけに見える花。
何かの波長が共鳴して体のどこかから咲くのです。
アトリエに入ったときから私は不思議な甘い香りに気づいていました。
チョコレートみたいな存在感のある香りではなく、
首の向きを変えるだけでも途切れてしまうかすかな香り。
そのくせ一度気づいてしまえば、
蜘蛛の糸のようにからみついて離れないもの。
二十人ほどが囲む中心に肩の広いやせ型の男性がいました。
私は木炭紙をイーゼルにセットし男を描き続けます。
香りは強くなっていきます。
男のくるぶしに奇妙なものを見つけました。
涼しげな黄緑色をした細長くきらめく物体。小指ほどの大きさです。
少しずつ先端からほどけ、外側が反り返ると内部から
エメラルドグリーンの薄片の重なりがこぼれます。
運命の花が咲いたのです。
やっと会えたと男に腕をつかまれました。
男の目にも私の体に咲く花が見えていたのです。
ところが運命の花の仕組みをつきつめてしまう事件が起こるのです。
そんなことをしたばかりに、心と体がほどけてしまうのです。
私たちの体とは仕組みが違うのですが、でも考えようによっては
同じかもしれません。目に見えないだけであって。
読んでいて、幻想的な表現に何かが呼び覚まされる感覚があるから、
そんな風に感じました。著者にはきっと原風景が見えているのでしょう。
おそらく著者は計算して書いていません。
人物や心の動きを考えていき、表現してみたら超現実的な描写に
なってしまっただけでしょう。心ほどあやふやなものはありませんしね。
世界の境界のはざまを感じつつ、心の変化を運命の花になぞらえて
描いた作品です。しゅっと心を撫でていきました。
紙の本
くちなし
2018/08/03 17:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あだじぇっと - この投稿者のレビュー一覧を見る
だいぶ前に session22 で取り上げていた作品。
不倫相手との別れ際に、彼の腕をもらう女。
自分にしか見えない花を咲かせる運命の相手。
片思いのデザイナーの変人男を、支える女。
好きな相手を食べてしまう変化する生き物たち。
難民の子をおもちゃにする夫人。
不倫相手と夫との事故死から立ち直りつつある未亡人。
自分のもつ遺伝子に忠実に、社会のために役割を果たそうとする女 ......
どれも孤独で、でもその寂しさと共生する強さを持つ女たち。 その地味で目立たない深い愛にはぐっとくる。
くるけど ......こんなのわからない男がほとんどだよな
もうわからない連中は絶滅すればいいのにと思ったりもして(笑)
綾瀬まる、読んでる人を見つけたら、唇の端でニンマリしてしまいそう。