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紙の本
幕末的思考
著者 野口 良平 (著)
吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」の射程、私情こそ公的なものの源泉であると見た福沢諭吉…。幕末的思考の系譜を、吉田松陰、坂本龍馬、福沢諭吉、夏目漱石らに辿り、その画期性を...
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商品説明
吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」の射程、私情こそ公的なものの源泉であると見た福沢諭吉…。幕末的思考の系譜を、吉田松陰、坂本龍馬、福沢諭吉、夏目漱石らに辿り、その画期性を歴史の行間にあぶりだした精神史的試論。【「TRC MARC」の商品解説】
幕末から明治への列島の歩みは、暗から明への昇華ではない。それは、列強による開国への圧力を前に、尊皇攘夷から尊皇開国への転向とその隠蔽、新政府の正統性の急造を伴いながら、慌しい近代国家建設を余儀なくされる過程であった。しかしそこでは、植民地化への危機感と理不尽への抵抗を糧に、普遍的価値のうえに新社会を構想する思考が、徒手空拳で模索されてもいた。中国や西欧からの輸入ではない、この国に地生えの思考が育まれる契機は、しかし、生みの親でもある対外的「危機感」に圧迫され、皇国主義イデオロギーの席巻という試練のなかで影を潜めていった。帰結の一つは、現在も続く第二極の不在である。
本書は、「明治維新」という事後的な枠を通しては見えてこないその思考――幕末的思考――の系譜を、吉田松陰、中岡慎太郎、坂本龍馬、福沢諭吉、中江兆民、北村透谷、夏目漱石、朝河貫一、中里介山らに辿り、その画期性を歴史の行間にあぶりだした精神史的試論である。松陰の「やむにやまれぬ大和魂」の射程、中岡と坂本の連携を支えた地べたの普遍感覚、私情こそ公的なものの源泉であると見た福沢や、後発近代社会こそが民権論を実践できるという兆民の価値転倒の試み、『こゝろ』で「先生」の殉死に託した漱石の抵抗、介山『大菩薩峠』が描く明治がこない世界――。
彼らの未成の思考を紡ぎ直すこと。その今日的意味の切実さを、幕末の人びとの経験は我々に教えている。【商品解説】
幕末から明治への転換は暗から明への昇華ではなく、列強の圧力を前に、転向、隠蔽、捏造を伴う手法によって慌しく近代国家を建設することを余儀なくされる過程だった。それは「力は正義なり」とは別の論理で新しい社会を構想するという、抵抗の思考と批評感覚が挫折していく歴史でもある。吉田松陰、中岡慎太郎、坂本龍馬、福沢諭吉、中江兆民、北村透谷、夏目漱石、朝河貫一、中里介山らにそうした幕末的思考の系譜を見、今再び迎えつつある転換期にもたらすその意味を問う、精神史的試論。【本の内容】
目次
- はじめに
- 第一部 外圧
- 第一章 背景史――最初のミッシングリンク [アヘン戦争/黒船来航と佐久間象山/渡辺崋山と高野長英]
- 第二章 状況を担う人 [吉田松陰/二つの問答/統整的理念と構成的理念]
- 第三章 変成する世界像 [攘夷の再定義(横井小楠)/開国の再定義(遣米使節)/攘夷決行]
- 第四章 変革の主人公とは誰か [「内在」と「関係」の往還/坂本龍馬と中岡慎太郎/草莽の丸テーブル]
- 第五章 残された亀裂 [転向とその証言者たち/神戸事件・堺事件/相楽総三と赤報隊/小栗忠順と近藤勇]
- 第二部 内戦
著者紹介
野口 良平
- 略歴
- 〈野口良平〉1967年生まれ。立命館大学大学院文学研究科博士課程修了。京都造形芸術大学非常勤講師。「「大菩薩峠」の世界像」で橋本峰雄賞受賞。
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