紙の本
肌になじんだようでいて、でもやっぱり不確か
2019/05/01 19:35
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙なつくりの家の一室に住むようになった「わたし」。
そこには奇妙な家族がいて、フツーっぽい「わたし」が少しずつからんでいく。
いや、なじんでいくというべきか。
読んでるうちに、何が奇妙で何が普通か混沌としてくる。
だいたい、題名の「パノララ」ってなんだ?
パノラマとちがうのか?
その謎は解けたような解けないような。
登場人物達になじんで物語の世界に浸った頃、急展開があって、でも生活は日常に戻ったのかもしれない。
もどってないのかもしれない。
そんなふうに、肌になじんだようでいて、でもやっぱり不確かなのが、日常なのかもしれない。
600ページ近くある長篇を読み終えて、そう思った。
紙の本
読書紀行
2018/04/30 00:59
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
柴崎友香の本でいちばんのボリューム。
柴崎さんの物語は“移動”が多いのだけれど、
この本は読書自体がどこか移動のよう。
山道をいく路線バスのように、
きっと明るい場所に向かっているのだけれど、
まわりは木しか見えなくて、ちょっと不安になる。
たまに隙間から見える景色がすごくきれいで、
「絶対終着駅に行こう」とおもう。
継ぎ接ぎの家に住む継ぎ接ぎの家族のもとに、
傍目には“普通”の家族の娘がふらりと混ざりこむ。
それぞれがそれぞれの秘密をかかえていて、
べつにあざやかに解決されるわけではないのだけれど、
お互いにそれを知って、
理解するわけではないけれど共有してくれている環境が、
今日の次に来る、明日を生きられる確信になるのかな、とおもう。
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普通より少し波乱に満ちた人生と、それぞれに少し不思議な能力をもつ三兄弟の家に間借りすることになった主人公。主人公もまた複雑な過去を持ち、他人との距離感をつかめずにいる。一番共感したのはその主人公の、優しさや冷静さや諦めを含みながら周りを観察するその視点。自分やまわりを客観的に見つめながらも、思う通りの行動はできないということはよくあるものだ。。
最後、主人公が、ぎこちなさを伴いながらもちゃんと自分のしたいことを言葉にできたのは貴重な瞬間だった。それと、主人公はその優しさ、繊細さゆえに間借りしている家族たちの信頼を少しずつ得ているようにも見えたので、それもまた希望にうつった。
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「ループする時間を描くことによって、ループしない人生のかけがえのなさに光をあてる。どんなに昨日と同じ日常でしかないと思っても、やっぱり特別な今日なんだ。」
という感想を持ちたかったのだけど、ループするのが特別な日になっていて、そう簡単に予定調和な感想は持たせてもらえない。
タイトルのパノラマ撮影は読後にニヤリとしてしまうウマさがある。レンズの歪みと、異なる時間を一枚の写真に閉じ込めることによって生じる歪み、その時空の歪みと整理のつかない気持ちの歪みがうまくシンクロした物語になっている。
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2018028
友人の家にある小屋に住むことになった女性の田中さん。同居する家族の将春さん、妻で女優のみすずさん、そして、父親が異なる3人の子供達。
家族でいることは、どんなに時間が経っても、どんなに嫌っていても、決して変わらない事実。言いたいことは言わないと、いくら家族でも伝わらない。家族でいることは、簡単なようでいて難しいと思う。当たり前のことを毎日の様に繰り返すことは決して簡単じゃない。それでも帰れる場所があるって、それが本当の家族ではなくても、素敵なことだと思う。。
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著者の作品は、いかにも芥川賞狙いの100からせいぜい200枚強程度の中編が多かった。
また、たぶん作品の性質上中編が合っている。
その著者にしては、結構な長編。(連載雑誌を購入していたが、その段階では追いかけられなかった。)
ひょっとすると2014年に芥川賞を取ったからこそ、力を抜いて長編に取り組めたのかもしれない。
え!? 柴崎友香がループ系を!? え、しかも家族を!?
という驚きはあらすじを一瞥して感じていたことだ。
村田沙耶香が書き続けてきたような、いわゆる毒親モノを、著者が書くのは初めてではなかろうか。
著者はむしろアーバンな関係性に視野を絞り、興味の対象も視覚情報と活字情報一辺倒だった。
それが毒親やら過干渉やらDVやらネグレクトやら、厭さやら嫌悪感やら気持ち悪さやらライムスター宇多丸の言葉でいう「ヤダみ」やら、まで描いた。
筆者にしては挑戦……、とここまで書きながら、いや無謀な挑戦じゃないな、と思い直した。
だって視点人物は著者ならではの性格(従来の作品で貫かれてきた)から抜け出ていないのだ。
これを逆に考えると、従来の作品の淡白さの理由に、親子関係の歪みをそれなりに求めてもいいのだと、遡及的に言質を得たと、考えてもいいのかもしれない。
つまりデビュー作以来の淡白さを解釈しなおす機会をもらったとも、いえる。
ただし毒親やらDVやらといった安っぽい題材を取り入れつつも、ちゃんと柴崎友香味になっているので、やはり読んでよかったなー、と。
言い換えると、著者の作品群は茫漠さが味だが、この長編では長編ならでは、キャラの味つけや増改築されゆく舞台の面白みや、でぐいぐい引っ張ってくれた。
ところで著者の作品群においては視点人物の異様さが仄見えてくるのが面白いが、
「ふ、ふ、文さんは亀だって、面倒見てるじゃないですかあああっ! おうおああああっーっ!」
という台詞は、異様さが突き破ってきて、思わず笑ってしまったよ。
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新しい町に住むと知らない路地を歩いたり、日常でなかったものが当たり前になっていく。顔見知りもできたりして、自分の人生の一部になっていく。都心の風景は他とは違う速度で変わり続けるから同じではないけれど、そこにいたことで救われたりもする。
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2021.6.11断念
文章に目を引く描写はあれど、この先の展開にあまり興味がわかない。遅々として進まずのんびり読んでいたら、図書館から返却督促が来てしまい、執着もないので途中で断念。
やはり本は惹きつける何かがないと。
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芥川賞作家が描く、未体験パノラマワールド!
友人のイチローに誘われ、奇妙な家にある赤い小屋を間借りすることになったわたし。個性派ぞろいの彼の家族たちと生活していると、「たまに同じ一日が二度繰り返される」とイチローから打ち明けられて……。
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初めて読む作家。
印象としては、西加奈子に似ている。
なんでもない日常が、実はとても大切なんだと思わせてくれる作品。
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ぶっ飛んだ人たちなようで、でもこういう人いるよなとか、こういうところ自分にもあるよなとか思った。日常SF?みたいな柴崎さんのお話すきです!
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「遠慮すんな。ビール好きだろ。そういう顔してる」(44)
現実に違いないのに、少しずつずれて、欠けたり、重なったりしている風景。今この同じ場所で、同じ瞬間に、私と絵波が見ている風景を画像にして並べたら、それぞれ別のところがずれた、違う場所みたいなパノラマになっているだろう。(547)
それが始まりだとは私はまだ知らず、公園は三月で日曜で午後二時だった。(1)
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著者の初期の作品を遡って読もうと選んだ一作品。
今とは作風が違う気もする。
主人公の年齢や作年が若いからだろうか?
何が起こるわけでもない中に、不思議な体験もありそのギャップがいいのかもいれないが、なにか掴みどころの無い中、なにかすっきりせずに読了かな。
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本の題名 パノラマ→パノララ
途中1日が何度も繰り返す日が主人公に続く
繰り返すというのが強調されていた。
繰り返しの中でも、思うことや毎日起こる同じ出来事に対して、主人公の見方は少しずつ変わっていく。
自分の見方によって、見る人の視点によって
世界は少しずつ違っているのかな。
恋人と別れた時に、お互い見ていた世界が違っていたんだなあと思ったことを思いだした。
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主人公が居候?することになった家の家族たちは、皆何かちょっと歪な関係に見えるし、子供たち3人は
・たまに同じ1日がループする
・ちょっとの距離だけワープできる
・電話に出なくても相手が誰かどんな顔をしているかわかる
それぞれ、こんな感じの本当に少しの不思議な力を持っていて
しかもそのことを(家族同士でさえ)誰にも話をしたことがない。
居候先の家族の3人の子供たちは3人とも親が違ったり、主人公の親は過干渉で精神的に病んでる感じだったり、「家族」というものには外からは見えない秘密というか問題がある。
ということが淡々とした感じで書かれている。
このちょっと不思議な雰囲気に妙に惹かれて、
ぐいぐい読む進めてしまったけれど、不思議は不思議のまま何も解決しないまま終わってしまってどうも消化不良だった。
ミステリーが好きなので「不思議」や「謎」があると最後にそれらがスッキリ解決することを期待してしまうのがいけなかったかも。