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投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
太陽のない暮らしがあるという事は、知識として知っていたが、自分が体験した事がないので、全く分からなかった。暗い中で探検する事の難しさが十分に伝わってきました。
紙の本
日本が誇る冒険者
2018/04/11 16:08
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投稿者:ジル - この投稿者のレビュー一覧を見る
植村直己が亡くなった際の新聞の評伝では「虚構に挑んだ」という形容詞が付されていたと記憶しているが、30年後の冒険家である角幡唯介にどんな形容詞が適当なのだろうか?
「空白の五マイル」、「アグルーカの行方」以降の著作は少々停滞感があったが、本書は「虚構」である今回の冒険の内容を読者に、確かな筆力の向上により、実感できる。中盤以降はイッキに読み進められ読後の爽快感も格別。
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角幡さんは若い頃にチベットのツアンポー峡谷のだれも足を踏み入れていない峡谷を探検し、九死に一生を得て帰還した。その後も雪男の足跡を追ったりしたが、40を前にして挑戦したのは、太陽の出ない土地を探索するというものだった。最初はカナダのケンブリッジベイでそれを試みたが、それは意外に短いものだった。そこでかれが試みたのはそのさらに北のグリーンランドでの探索であった。しかも、いっしょに行くのは犬一匹。角幡さんはGPSを使わず天測儀にのみ頼ろうとしたが、それも初期の嵐で吹き飛ばされてしまう。残るは、磁石と星で位置を確かめるだけ。角幡さんは今回の探検をいきなり始めたのではなく、それまでに数度明るい時期に足を運び、麝香牛や兎を捕らえてその肉をデボと呼ばれる場所に貯蔵しておいた。ところが、それも北極熊に襲われ食われてしまう。そうした絶望的な環境の中で、かれは麝香牛や兎が生息しているらしき地帯を探して、内陸深く入っていく。結果的に牛や兎の群れに出会うことはできなかったが、それはかれにとって、極夜を深く体験することになった。太陽が出ないとどうするか。月が出ているうちは多少の光もあるようだが、それも新月になると真っ暗になる。その中でかれは太陽のない世界とはいかなるものかをひしひしと感じるのである。しかも、予想ははずれるばかり。帰りは楽々と帰れると予想したのに、行き以上の吹雪に見舞われ、食料もつきかける。そんなとき、犬はかれの糞便さえ食べた。さらに食料がつきかけると、かれは、苦楽をともにした犬さえも食べようと考えるのである。最後にかれは文明の利器である電話を使い、知り合いの日本人に天気予報を聞いて予測を立てる。しかし、これさえ外れて絶望的になることも数度だった。そんな絶望的なかれに、ついに太陽が顔を出すのである。それは旅行を初めて78日目のことだった。本書は最初と最後に、かれの妻の出産が出てくる。太陽のない世界から太陽の世界へという動きはまるで出産を追体験しているかのようであった。角幡さんの文章は迫力に満ちている。喜び、驚き、絶望のとてつもない擬音語。状況に立ち向かう心の秒刻みの動きなどなどが実に臨場感豊かに描かれている。本書は探検文学の傑作ではないか。
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内容紹介
ノンフィクション界のトップランナーによる最高傑作が誕生!
探検家にとっていまや、世界中どこを探しても”未知の空間“を見つけることは難しい。大学時代から、様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜――「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。 シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。本番の「極夜の探検」をするには周到な準備が必要だった。それに3年を費やした。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。そしていよいよ迎えた本番。2016年~2017年の冬。ひたすら暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。 読む者も暗闇世界に引き込まれ、太陽を渇望するような不思議な体験ができるのは、ノンフィクション界のトップランナーである筆者だからこそのなせる業である。
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臨場感溢れる描写で一気に読了。
文面の熱量がすごい。
文明のシステムの考察から下世話な妄想まで同じ熱量で書かれてるのに圧倒される。
疲れる本だ。
あまりにも面白いので、妻に
あふっ。
のページを写メして送ったら、
1冊ちゃんと読ませろ、と要求されました。
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極夜を進み、極夜からの太陽を見ることを目的とした冒険の記録。
探検家の著書を読んだのが初めてなのだけど、こんなに運がないものなのか、というくらいに、ハズレを引いて、そして油断したら必ず不運にあたってる(著者の文章が上手いのもあるんだろうけど)。
太陽が出てきたところよりも、やはり極夜やブリザードを進むところにドキドキした。
「これまで判断のよりどころとしていた自分の身体感覚をおぼつかないものと認めて(省略)ただただ北極星=ポラリス神が正しいと示す方角だけを信じて、ある意味、盲信し、帰依し、ポラリス神の教えにすがって進むしかないのだ。」
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海象(せいうち) カヤックでクジラ狩りをしている漁師がうみに引きずり込まれる
探検前に72kを80kgにして脂肪を蓄えた
「俺はお前をパートナーにする。だがいざというときはお前を食う」 犬
人間社会のあらゆるシステムのなかで最も脱するのば難しいものは、じつは太陽でもGPSでもなく家族だということを私は今度の旅で嫌というほど痛感した
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探検家、作家の著者が、ある意味著作のネタ作り的な要素も含めつつ、脱システム、人生最大の大仕事を成し遂げるため、80日間グリーンランドの極夜期間を犬と一緒に橇を引いて旅した記録。ほぼ真っ暗で極寒な雪の世界を旅することで、現代社会で暮らしていると知覚しづらい宇宙が見えてくるようです。そのためだけにこんな事をする気はしませんが、生きている実感を得るような冒険には惹かれます。GPSは持たないけど、衛星電話や時計、地図やライトはあるわけだし、準備も万端、ある程度テクノロジーに守られた冒険なわけで、中盤まで大きな波乱もなく、あんまり面白く無いのですが、途中で当てにしていた備蓄食料が悉くシロクマに荒らされているあたりから一体どうなるのかな、と言う読んでいての面白さが出てきます。本書の表紙、最初は真っ黒なだけだと思っていましたが、読み進めるにつれ、極夜の闇に慣れてくると、単なる黒では無いことに気づきます、なんてことはないかな。
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同世代にこんな無謀な冒険する人がいるんだと、勇気をもらえた。最後までハラハラさせられて本当に面白かった。
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一日中太陽が上がってこない極地での冒険。地図にないどこかに到達するのではなく、極夜を社会システム外で体験するという思想的な試み。
おもしろかったなー。追体験の醍醐味、満載でしたね。最初の難所クリアしたので、結構順調じゃん、と思ってたらなんのなんの次から次に自然(天気と生き物)が邪魔する。真っ暗中、一人だったら発狂してまうだろうね。人と居てもストレス満タンで殴り殺すか、殴り殺されるか。そういう意味でも余計なことは言わない犬がベストなパートナーだね。その犬も痩せ衰えていき、自分の命を繋ぎ止めるための肉となりそうなシーンは悲しかったなぁ。でも、それが極地での当たり前なんだろう。外で死なれたら困るからと色々思いを巡らせていたところなど、本当に食べる事を考えたのだろうな。
太陽が登ってきて、そこから最恐のブリザードに見舞われたのは辛かっただろうなー。人間ってすごいよ。
絶対に行きたくはないけど、行った人の話は聞きたい
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「空白の五マイル」や「雪男は向こうからやってきた」なんかを読んだ時にも感じたことだが、凡人である私にとって、著者が随所で掲げる”脱システム”にまつわる理屈や、行動論理、あるいは感情面での動きなども含めてか、ところどころ反発というか、イマイチ共感できずに違和感を覚え、首を捻ったまま流れてしまう箇所があるにはある。
やっていること自体は、ものすごい。
後に「極夜行前」という前日譚も出版されてはいるが、本作中でサラリと書かれている事前の準備からして既に"探検"だし、もちろんこの本番の旅で味わう数々の窮地も恐ろしいことこの上ない。
闇という根源的な恐怖の対象へ挑みかかった結果、被る心身の異常には、なるほどと頷かされるし、頼りにしていたデポが荒らされていることが分かった場面などは、近所の山に日帰りで出掛けた時に手持ちの水の量が減ってくるだけでドキドキする私からすれば、究極の絶望、死刑宣告以外の何物でもない。
経験に裏打ちされた著者の自信には素直に舌を巻く。
とはいっても、いつかこの人、探検中に死んじゃうんじゃないかな…という感覚もまた同時にあるのだが…。
"思いついてしまった以上、それをやらなければいけない"、こんな強迫観念に憑りつかれてしまう探検家・冒険家という生き物にとって、その衝動こそが生、なのだろう…と想像するより他ない。
犬とともに暮らす1人の動物好きとしては、極地における犬とのパートナーシップから受ける感銘も忘れられない。
現地に生まれ育つ者が、生きるために余儀なくされるものとは違い、"探検"という意義を以て敢えて能動的に、語弊があるかもしれないが"道楽"に近いものとしてその環境に飛び込み、結果として巻き込まれる犬の命運には心から同情するし、翻弄されるその在り方に時に泣きそうになる。
「俺はお前をパートナーにする。だがいざというときはお前のことを食う」、ネイティヴが余計な飾りなしに言った言葉ならばもっと素直に胸中に入ってきたのだろうが、前述のような意味合いもあって、ちょっと複雑な思いで受け止めたり。
ところどころ挟み込まれる軽い下ネタのような戯言や、エッセイ然とした軽い描写は、端的にサブい、寒過ぎる。
もちろん著者なりの様々な思いの濾過や他者との議論を経た上で、トータルとしてシリアスな論調の本作にこのような実験的な試みを乗せたのだろうが、結果は明らかな失敗だ、と断定させていただく、残念ながら。
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人間の極限に挑んだ人の話。
冒険家って何者なんだと思っていましたが、
こういう人なのか。
誰に頼まれたわけでもないのに、
何かを求めて危険に飛び込んでいく。
でも、こういう人がいるから、
私たちの世界は広くなっていったのだろう。
ところどころに挟まれる犬の描写が
とてつもなくかわいい・・・
人懐こい大型犬が目に浮かぶ・・・
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冒頭の出産シーンがマジで痛そうなので未読の方は注意されたし
出産シーンは読みたくなかったが作者のテーマ的に入れざるを得なかったことは理解している
苦手な方は冒頭部分だけ飛ばしてもかまわないと思う
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意外なる犬の好物…!
このように遠くへ連れてってくれる本に出会うと読書の楽しさを改めてしみじみ感じられてとてもよいのです。
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世の明けぬ極寒の地を旅するというのはどういうことなんだろうか。
そんなことを思いつつページを開いたら、最初が出産シーンからの始まりに驚いた。
暗闇の中、地形を当てにすることができずに旅をするこわさ、ストックしておいた食料が失われた怖さ、だんだんと正気がすり減っていくこわさ。
本を出しているからには、著者が生還するのは約束されているのだが、犬ぞりの犬がいつ死ぬのか、食料になるのか、ものすごくはらはらした。犬ってすごいな。