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商品説明
30歳の日々、ローマでひとり呼びかけつづけた「あなた」への魂のことば−。没後20年にして新たに発見された詩を収録。巻頭口絵に手書き原稿を掲載する。池澤夏樹による解説付き。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
須賀敦子
- 略歴
- 〈須賀敦子〉1929〜98年。兵庫県生まれ。慶應義塾大学で文学博士号取得。多くの日本文学をイタリア語に訳して紹介する。「ミラノ霧の風景」で講談社エッセイ賞、女流文学賞を受賞。
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紙の本
その人は詩人の心を持って生きていた
2018/05/01 15:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
その人の肩書を見ると、文筆家、翻訳家、イタリア文学研究者と多岐に活躍していたことがわかる。
その人、今年没後20年を迎えた須賀敦子さんは、1991年に『ミラノ霧の風景』で講談社エッセイ賞や女流文学賞を受賞しているから文筆家であることは確かだし、多くの翻訳書も出版しているから翻訳家といっても間違いない。その翻訳の根本にはイタリア語が堪能であったことや大学で学生たちに教鞭をとっていたことがある程の研究者であったのも事実だ。
そんな須賀さんに、これ以上何ほどの肩書が必要であろうか。
没後20年に際して見つかった須賀の30歳の時に書き溜めたと思われる詩篇の数々。
この本に収められた詩は1959年1月から12月に書かれたもので、巻末の池澤夏樹氏の解説によればこの年、須賀さんは「だいたいローマで勉強と友人たちとの行き来に明け暮れ」、「満ち足りた喜びの多い日々だったろうと想像される」とある。
しかし、ここに収められた詩から感じるのは「満ち足りた喜び」ではない。
むしろ、深い哀しみを包含したような、神への敬虔な祈りのようなものだ。
この本の巻頭には、須賀さんの手によるそれらの詩のいくつかが図版として掲載されているが、その筆の運びの柔らかなことか。
これは一読者の想像ではあるが、ローマという異国にあって、須賀さんは確かな土を踏んでいたのではなく、なんとも心細い思いもまたあったのではないだろうか。
いずれにしても、こうして須賀さんの肩書に「詩人」とつけられることにもなるのだろうが、もともと須賀さんは詩人の心を持ったひとであったと、誰もが感じていることでもある。