紙の本
謎は残る
2023/11/10 10:58
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまたま定められた保留地に石油が埋蔵されていて、そこに暮らすネイティブ・アメリカンのオセージ族は石油資源の恩恵を受けた。
20世紀はじめ、次々と起こるオセージ族の不審死の裏には何が潜むのか。オセージ族の利権を奪おうとする白人、現代的な捜査組織を作り上げようとするJ・エドガー・フーヴァー、テキサス・レンジャー出身(叩き上げ)のホワイト捜査官が絡む。
豊かな暮らしを得て、白人と暮らすようになっても、命の不安に脅かされ、真相を解明しようとしても阻まれ続けたオセージ族の苦悶の声が聞こえる。
電子書籍
すごいノンフィクション!
2023/11/02 13:30
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投稿者:かえる - この投稿者のレビュー一覧を見る
取材量が圧倒的で、こんなの何年かけてやったの?という驚き……作者を尊敬せざるを得ません
紙の本
ノンフィクションながらミステリ小説のよう
2021/03/29 20:35
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投稿者:じゃび - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化すると聞いて読んでみました。人種差別に石油の利権が絡むとわかった時点でこれは地獄絵図になると覚悟しながら読み進めたけれど、実際に起きたことは想像を遥かに上回り、ぞっとする。レイシズムとは個人の感情にとどまらず社会制度に組み込まれていくもので、だから恐ろしいのだと改めて思わされた。
そしてマーティン・スコセッシがこの三部構成をどう映画化するのかとても気になる。特に第三部。あと、当初レオナルド・ディカプリオが捜査官ホワイト役と言われていたので読みながら「それじゃあオセージ族の映画じゃなくてディカプリオの映画になっちゃうじゃん…」と不安に思っていたけれど、その後自ら役を返上、ヘイルの甥の方を演じることになったと聞き少しほっとした。その方がいいと思う。ホワイト役はジェシー・プレモンスだそうです。
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小説であるかノンフィクションであるかという以前に、圧倒的な史実の重さに打ちのめされる。合衆国の黒歴史。
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衝撃的の一言。
この本が書かれたこともだが、この本に書かれたことが本当にあったとは。
西部開拓時代の白人たちの優越感や差別意識が高いことは容易に想像できるが、原住民(いわゆるインディアン)に対する迫害の酷さは言語に絶する。
正に米国(の白人社会)の欺瞞を象徴する黒歴史だし、これは克服する・しないの次元を越えている。
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豊富な原油を埋蔵する土地に居住するオセージ族は、油田を開発する権利を石油会社に売り巨万の富を抱え、全米でも屈指の富裕層となる。その利権を狙う白人たちの手により、オセージ族の人々が次々と殺されるのだが、犯人はつかまらない。当時は、科学捜査が確立しておらず警察制度も未整備のまま。被害者遺族たちは自費で私立探偵を雇うが、探偵そのものが不正を働くたちの悪い連中でもあり真相は解明されない。連続殺人が全米でも注目を集め始めたとき、FBIは若き捜査官を現地に送り込む。
ここまでがクロニクル1。三部構成になっており、クロニクル2(捜査局が掴んだ手掛かりと裁判)、クロニクル3(筆者独自の調査)と展開していく。まさに「事実は小説よりも奇なり」なストーリーで、読むほどにどんどん引き込まれていった。インディアンたちの人権をいかに無視して領土を拡大したか、またオセージ族から石油の利権を奪い取るために白人たちが手を下した残忍な犯罪の数々といったアメリカ建国の暗黒部分がこってり描かれる。
FBIは一連の殺人事件で計24人が命を落としたとして、事件の捜査を終わらせた。ところが、本書はさらに追及を続ける。そこで明らかになる葬られた犯罪と、現在でも心に傷を抱えた人々がいることへのやるせなさの対比が、読後のインパクトを後押しする。「おれのものはおれのもの。先住民のものは白人のもの」─ジャイアンの名言を合言葉に、インディアン・ビジネスに群がる強欲な白人の卑劣さおぞましさ。映画化によってひとりでも多くの人にこの事実を知ってほしい。それにしてもアメリカって暗黒史の宝庫よね。
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1920年代に起こった連続殺人事件を扱ったノンフィクション。
1920年代というと大正時代、関東大震災の頃。
本物の探偵が登場する2部目から俄然面白くなる。
こういう本を読むとトランプのような人物が出てくることに納得してしまう。
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読後、世の中知らない事ばかりと己の無知に途方にくれる。
物語のような大げさな展開はないが著者の緻密な調査、根気強い取材がリアルで文章が刺さる。
特に最終章…衝撃。
当時の白人の中には油田と同じようにインディアンも採掘すりゃいいぐらいに考えていたのだろうか?
大草原のローラも複雑な闇がある。
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フィクションとして読んだら「入念に恐ろしい状況を作り込んであるけど、流石にここまではないわ〜まぁフィクションだからな」と思いそうな、実におぞましいノンフィクション。
時系列仕立ての構成に引き込まれつつ、膨大な数の裏付け資料によって度々我に返り、冷や汗をかいた。
(多少のネタバレ)
欲に眩まず良心と勇気を持って事件解決や阻止に尽力しようとした人々が、いとも簡単に消されていく絶望感がすごい。
これが今のアメリカでは堂々と出版でき、広く読まれる状況なのが少し救いだと感じる。
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ノンフィクションなので、もちろん実際にあったことなんだけど、とても本当とは思えないほど酷い事件だと思う。
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ものすごく時間がかかりましたが読み切りました。
オセージ族を始めとする亡くなった膨大な方々の冥福をお祈りします。そしてトム・ホワイトさんに賛辞を。
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1920年代のオクラホマ。オセージ族は、石油を算出する土地のリース権やロイヤリティで、全米屈指の裕福な部族だった。そんな下での「連続」殺人事件。人種的な偏見に基づく後見人制度。それを利用し、財産をねらう白人たち。周囲に人々は皆「共犯者」。恐ろしいことだ。
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ちょうど一年ほど前にコルソン・ホワイトヘッドの『地下鉄道』を読んだ。南北戦争より30年前に逃亡する黒人奴隷たちの物語だ。
人間が人間に対してどうしたらあのように残虐になれるのかと慄然したものだが、本作は『地下鉄道』よりさらに100年も後の話である。それなのに、本質的なところがなんら変化していないことがわかる。
アメリカで現実に起きた、ジェノサイドの記録と言ってよかろう。本書はれっきとしたノンフィクションなのだから。
1920年代、自分たちの土地を追われ政府にあてがわれた土地から石油が出たことから、突如として大金持ちになったインディアンのオーセージ族(とはいえ、彼らに資産の管理能力はないと見なされ、白人の後見人をつけることが義務付けられる)。彼らがひとり、またひとりと不可解な死を遂げ、事件解明に着手しようとする人や証言をしようとする人たちも次々に命を落としていく。
FBIを立ち上げたばかりのフーヴァーがどんな手を使ってでもこの事件を解明すると宣言。幾度も迷宮入りかと思われながらも、ひとつひとつ小さな亀裂を丹念に叩いて証拠を拾い出していく捜査官たちの執念と誠実さが心を打つ。フーヴァーではなく、彼らの存在が、この作品に描かれるほとんど唯一の「良心」である。
黒幕を探り当てるまでの推理、逮捕までの攻防、裁判がどう動くか(もしもインディアン殺人なんて動物虐待とどう違うのか、と思う人間が裁判員だったら…)、はらはらどきどき、それこそ本の帯に推薦を書いているジョン・グリシャムばりの展開である。
この事件と裁判から100年近くが経って当事者たちはすべて世を去った後、作者の回想となるエピローグ的な章がまたすごい。裁判も終わってからの後日談かと読み進むうちに、はっと伸びる背筋は、そのうち凍るだろう。
『地下鉄道』を読みながらも感じたことだが、米国という国では人びと(欧州系白人)がこうして財を成したのかと改めて思う。アメリカ・ファーストと豪語するあの男やそのとりまきたちの心情は、当時となんら変わらないのだ。
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力作だね。丁寧な取材・検証とその量からすればもっと詳細に書くこともできたろうにと思うが読むには妥当なページ数かもしれない。アメリカだけではなかろうが、こうした理不尽な歴史を考えると、正義、「自由と民主主義」は誰のためのものなのかと疑問に思えてくる。
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書架にあると、つい目を留めてしまう、美しくミステリアスなタイトル。
前のめりでイッキ読みしてしまった。(それでも二日かかった)
オセージ族のお金に群がる白人たちが、含みをもって口にする「インディアン・ビジネス」という言葉。あまりに端的にすべてを表していて、怖すぎる。
そうか、彼らにとってはビジネスみたいなもんなんだ、と妙に腑に落ちてしまった。だから、次々に行われる殺人も、畑の刈り入れみたいな感覚?
引用されていた『ジュリアス・シーザー』のセリフがすごく印象的だった。
”そのおぞましい姿を隠せるほど暗い洞窟は、どこにあるというのだ?
探しても無駄だ、陰謀よ。
その姿は微笑みと愛嬌に隠すがいい。”
・・・シェークスピア、すごいな、と思った。
(シェークスピアと言うと、どうしてもジョセフ・ファインズのお色気むんむんな姿を思い浮かべてしまう私・・・肖像画と全然違うのに~!)
しかし、下手するとアメリカ建国時代にまでさかのぼる必要のあるこの事件、著者がじっくりゆっくり丁寧に事実を積み上げて展開してくれたおかげで、容易に理解することができた。この筆力、すごいと思う。それにクールで素敵な文体。(翻訳だけど)
そして、本当に悲しいことだけれど、これは当時の誰にも防ぐことはできなかった事件だなぁ、とも思った。
「金が連中を引き寄せるから、どうすることもできない」というオセージの人の言葉のとおりで。
一番悲しいのは、オセージ族の人たちが本当に欲しかったものは、お金なんかじゃなかったということだ。
土地だって、居留地としてあてがわれたものじゃなくて、彼らがなけなしのお金を出して買ったものだった、というのには驚いてしまった。あまりにも不毛な土地だったから、そこなら白人たちもそっとしておいてくれるだろう、というのがその土地にした理由だったと言う。
確かHistory.comの動画で見たのだけど、居留地に強制移住させられる前に、東部にいたある部族は、きちんと法的手続きを取って、土地をめぐって訴訟を起こしたと言う。そして、最高裁で、勝利と言わないまでも、彼らに有利な形で判決が出たというのに、やっぱり土地は取り上げられてしまった。
この本でも、オセージの人たちはただ手をこまねいて黙っていたばかりではないことが分かる。でも、いつも、すべての手が手詰まりになって終わる。何をしても、どうやっても搾取される。
この本には多くの人物が登場するが、悪人も善人も非常に興味深く描かれていた。どの人物も、実話ならではの陰影に富んでいて、複雑で多面的。
部下から「度を超したバカ正直」と言われたホワイトも素敵な人だったけれど(ある意味で神が遣わした救世主のようだった)、私は特に、謎めいたコムストックという人物に興味をひかれた。ブリティッシュ・ブルドッグって、犬連れてるのかと思ったら、ぴかぴかの、と書いてあったので、銃の方なのね。こういう小道具のお陰で時代の空気、土地の雰囲気がやけにリアルに感じられる。
他にも、時代の変化の荒波にもまれながら、必死で部族���守ろうとする歴代の族長たちの姿には、とても心打たれた。
読んでいると、映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(傑作です!)がやたら思い出されたが、この本はスコセッシが映画化中と言う。
二時間ほどに収めるには、かなり登場人物が絞られることになるんだろうな、と想像する。きっと、より分かりやすく、エンタメとして楽しめて、それでいてモリ―や遺族の悲しみもよりリアルに感じられるものになるんだろう、と楽しみ。