投稿元:
レビューを見る
たいへんなものを見つけてしまった…!
ジーヴス以来のユーモア小説
光文社古典新訳の「いま、息をしている言葉で、もういちど古典を」の巻末に心打たれた。
投稿元:
レビューを見る
最近、本筋から脱線していくバラエティーが好きです。さんまのお笑い向上委員会のゲストほったらかしのやり取り。ロンドンハーツや水曜日のダウンタウンで、企画の目的と違うところで話やロケのVTRが面白くなっていく様子。相席食堂の下手なロケ映像と千鳥のツッコミ……。台本の無い感じがいいのかなあ。
転じてこの『ボートの三人男 もちろん犬も』も、本筋よりも「ぼく」こと語り手の思考の脱線が面白い。ボートでの旅の旅情なんてほとんど印象に残らないし、そもそも脱線がなければページ数半分くらいで収まったのでは? とまで思うほど。
なので、話が進まないとイライラする人もいるかもしれないし、綺麗な結末や物語の妙を期待した人は、裏切られるかもしれません。でも、自分はこの脱線に加え、三人男がほぼほぼ揉めている様子に、何度もニヤリとしてしまいました。
書き出しからクスリとさせられるとともに、少し共感できます。薬の広告を見ているとあらゆる症状が、自分に当てはまっていると感じてしまうぼく。そこからぼくは図書館で病気をのことを調べたことを回想します。
チフス、マラリア、コレラ、ジフテリア、といったあらゆる病気にかかっていることに気づくぼく。ちなみにかかってないと確信できたのは「女中ひざ」だけだそう。そして慌てて医者に行き、処方箋の紙をもらい薬剤師の元へ向かうのですが……
そんなぼくと二人の友人は気分がすぐれず、精神的にまいっているよう。そこで三人は『僕らに必要なのは休養だよ』となり、犬のモンモランシーを加え、ボートでテムズ川を遡上する旅に出ることになるのですが……
荷造りでは歯ブラシを入れたかどうかで大騒ぎになり、一度詰めた荷物をすべてひっくり返し、歯ブラシを探し(ぼく曰く、歯ブラシはいつも最後まで見つからないそう)天気は晴れてほしいときは雨が降り、雨が降ると思いきや晴れる、とぐちをこぼし、
足を踏んだ、ボートの操縦の負担の配分がおかしい、目覚めが悪い、シャツを落とした、白鳥に襲われたと三人はしょっちゅう揉めに揉め、旅の様子はこうしたもめ事とハプニング、愚痴の中に埋没していきます。
そして先に書いたようにぼくの思考もテムズ河以上に流れに流れる。そのたびに様々なエピソードが語られるのですが、その力の抜け具合とユーモア加減もまたいい。ちゃんと歌詞を覚えていないのに、歌おうとして周りを困らせる男、分からないのに、分かったふりをして失敗した話、管理人も出てこれない迷路、一方でもう一匹の道連れ、モンモランシーは猫やケトルとケンカをして……
探しているものに限って見つからないだとか、周りの迷惑も考えずしゃしゃり出る人だとか、どこか共感できるポイントも多いのもいいのですが、とにかくぼくの語り口が好きでした。あくまで至極真面目にこうした物事や、トラブルを描いていて、その真面目な口調と語られることの対比がとぼけていて、それが可笑しさを演出します。
そして三人と一匹のキャラも良かったなあ。まさに往年のコント番組を見ているような、ドタバタともめ事の数々に何度も笑ってしまいました。
壮��なドラマやドキュメンタリーというわけでなく、別に絶対に見ないといけないわけでもないけど、でも見逃すとなんだか損した気分になる、で、見たら見たでやっぱり面白い。そんな気楽なバラエティー番組のような作品でした。図書館で借りた作品でしたが、これはいずれ買うかも。
投稿元:
レビューを見る
個人の好みの問題、というのは大前提ですが、こういう話、こういう語り口にイギリスを感じられて楽しかった。
こういう、いわゆる益体も無い話、大好きです。
3人の男が船でうらうら旅しながら、あることないことダラダラ喋る。
皮肉めいた口調で歴史のちょこっとした小話もある。
感心したのは、登場するお店、パブやホテルが今なお営業しているところが多いこと。
注釈、解説、あとがき、どれもすごく楽しめた。
毎晩寝る前に、一章ずつダラダラ読んで、私も一緒にたゆとう旅気分を楽しめた。
こんな本に出会えて嬉しい。
図書館で借りたけど、読み終わる前に自分用に買ってしまった。
ドイルと同時代人で、切り裂きジャック当時の雑誌関係者。すごいなあ。
有名な丸谷訳も読んでみたいと思った。
光文社古典新訳、久々に読んだけど、とてもいいシリーズだなと思った。
これを読んでいる最中に、JJ休刊の知らせを聞いたのがなんとも。。。
自分の本棚にあった、偕成社のミニ本「簡素に生きることば」を同時期に読んだら、ボートの3人男からの引用があってビックリ。
ポエティックでステキな一文だったけど、これがドタバタギャグ小説から来ていることを知ってしまった私は…。
投稿元:
レビューを見る
くだらなくて滑稽で面白い。
3人の男と犬がテムズ河をボートで上るだけなのに、あっちこっちで何かしらひっくり返して罵り合いばたばたばた。
説教じみた教訓なんかは全く無いが、どの階級の人もこぞって読んだそう。
古典って何でもありだな、って思うし、ユーモアは時代を超えるな、とも思う。
投稿元:
レビューを見る
ヴィクトリア朝後期のユーモア小説。
「働き過ぎだ! 休むぞ!!」と
旅支度を始めた三人の男、
語り手「僕」ことJ、悪友のジョージとハリス。
彼らは着替えや食糧など、山のような荷物を準備し、
犬のモンモランシーを加えて
列車でキングストンに降り立ち、
ボートに乗ってテムズ河を遡上。
優雅に様々な追想に耽るものの、
つい、オールを握っていることを忘れたり、
操船ミスを起こしたりと、ドタバタの連続。
第12章(p.227)ベッドからはみ出した悪友の脚を
タオル掛けに利用する条で
A.A.ミルン『くまのプーさん』~
「プーあなにつまる」(1926年)において、
兎の穴にお腹が閊えたプーの脚(in 穴の中)が
タオル掛けにされてしまうエピソードを連想したが、
『ボートの三人男』の方が
先行する作品(1889年)なので、
これは英国定番のギャグなのか、と(笑)。
作者が憧れ、目標ともしたらしい
「ちょっとイケてるお兄さんたち」の
大真面目な悪ふざけ、といったところか。
ただ、せっかく個性的な犬を登場させたのだから、
もっと暴れさせてもよかったのでは? と思った。
投稿元:
レビューを見る
イギリス、テムズ河をボートで渡る3人と犬の旅。そんなことができるのかと思いつつ、読む。ボートから眺める情景びは情緒があるが、エピソードはかなりの誇張表現です。最初はそのユーモアを楽しめたが、イギリスの歴史に絡むエピソードは知識がなくて理解し難い部分が多く後半はやや退屈に。印象に残ったのは第三章のポジヤー伯父さんによる、絵を壁にかけるエピソードですね。周りに迷惑をかけまくっているのに本人は自分が正しいと信じきっている自己中さ。あとは11章のジョージによる早起きエピソードかな。
ボート旅行については、ユーモア小説故に3人は喧嘩ばかりの印象です。
投稿元:
レビューを見る
2018年5月18日図書館から借り出し。この新訳が出たことを知る中で、原文がKindle無料でDLできたので、就眠儀式としてスマホで読み始めていたところに手許に届いた。まだ最初の2~3章を読んだだけだけど、日本語訳は微妙…
随分昔に丸谷才一訳で初めて読んだときのニヤニヤ感が最初から出てこないのは、なまじ原文を読んでいるからかも、と思いつつも、それにしてもどうにも日本語の調子が揃っていないし、リズム感もよろしくないなぁ。
結局、第8章を過ぎたあたりで放棄。翻訳技術の向上が、うまく反映されていないのが残念。原文に忠実なのはいいが、英文和訳調が抜けておらず、英単語の日本語選択もしっくりしない。
投稿元:
レビューを見る
好きな光文社古典新訳文庫のコーナーでふと目に止まり、英国ユーモア小説として有名らしいが、なんの予備知識もなく読んだ。
中年男子三名と犬一匹がボートでテムズ川をキングストンからオックスフォードまで上って、パングボーンまで下って、最後は汽車で帰ってくるドタバタ劇。
主人公Jの伯父さんが居間に絵を掛けた時の大騒ぎとか、釣り人の釣果インフレの法則(なかでも、“正直”なひとが25%増しに止める自分ルールをどんどん修正していく場面)とか、いちいちおもしろい。
景色、服装、食べ物はだいぶ日本とは違うけど、笑いのツボは結構世界共通のようで、気楽に楽しめる良書だと思う。
投稿元:
レビューを見る
ジョージ、ハリス、犬のモンモランシー(かわいい名前だけどアグレッシブ)、そして語り手Jがボートに乗ってテムズ河を2週間旅する話。
すっごいおもしろかった。なんでボートの旅をすることになったか、からして笑える。出てくるエピソード一つひとつが笑える。特に好きなのはポジャー伯父さんの話とハリスのコミックソング、ハリスの迷路、Jのお嬢さん2人とのボート遊びのエピソード。ああおかしい。ハリスはいいキャラしてる。
こういういい本は終わっちゃうと悲しくなる。また後で再読決定。
投稿元:
レビューを見る
古典をいまさら読んでみようシリーズ。あと、題名をオマージュした小説「犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」を読んでみたいなと思ってやったら先に本家を読もうと思ったのもある。
題名は有名なので聞いたことがあった。一般には「~犬は勘定に入れません」ですが、これは役者さんのこだわりなんだそうな。
で、内容は…う~ん????ブリティッシュジョークを理解すれば、あるいは地理が、歴史がわかれば面白いんだろうか?????どういった部分が評価されての古典として残っているのかちょっとわからなかったです。ノリとしては日本で言ったら井家ひさしみたいな感じ?(私が読んだことあるのがそういうのだっただけかもしれませんが)。
投稿元:
レビューを見る
もちろん楽しいんだけど、最初に丸谷訳を読んだ時の方が笑えた気がする。こちらの方が原文に近いらしいので、もともとこんな感じなのでしょう。「犬は勘定に入れません」が「もちろん犬も」に変わっていることがそれを端的に表している。
投稿元:
レビューを見る
むうむ。自分が今すさんでいるせいか、漂う陽気さ呑気さがどうにもひっかからなかった。三人の男が犬を連れてロンドンからボートに乗りテムズ川を出発する道中記。現在過去に起きたハプニングをさぞ語るべき重要なことと言った具合に説明されるが、面白いのあんただけやろ?という感想。時々出てくる犬エピソードだけは微笑ましい。正直中途半端だと思う。人情をうたうなら、江戸物で日本人の方がうまいし、旅の情景とかはほとんど皆無だし。イギリスの人が読めば知名だけで土地の想像がつくのかもしれない。時々イギリスの独りよがり小説にあたる。
投稿元:
レビューを見る
愛すべき三人と一匹が、オーバーワークの“休養”と称しつつ、手漕ぎボートでテムズ河を上る旅。タフな人たち(&犬)です。道中も回想場面もハプニング満載で飽きることはありませんでしたが、ところどころに薄っすら漂う不穏なあれこれが印象に残って、ビクトリア朝時代の不思議な毒気にあてられました。
投稿元:
レビューを見る
1889年の作品とは思えない読みやすさで(光文社古典新訳文庫の好きなところ)、内容はタイトル通り、三人の男「J」、「ハリス」、「ジョージ」と犬の「モンモランシー」が、ボートに乗ってテムズ河を遡っていくユーモア物で、何か変な書き方だけれど、昔も、こんなベタなユーモア物があったんだなと思いました。でも、面白かった。
まず、ボートで出発する前に色々起こり、なかなか旅が始まらないなと思い、出発したらしたで、過去の思い出話などで、横道に逸れまくる展開も、最初は戸惑いましたが、慣れるとこれはこれで面白い。
また、それとは対照的に、自然や歴史の丁寧過ぎる程の細やかな描写もあり、そこに浪漫や美しさ、寂寥さを感じられたのも特徴的で、テムズ河の自然やその周辺の街や村の歴史が想像出来るようで、当時の感慨に浸れました。
そして驚いたのが、訳者の小山太一さんが、副題をこれまでの「犬は勘定に入れません」から、あえて「もちろん犬も」と変えた事です。
これって凄いですよね。古典と言われると変えていいのか、躊躇いもしそうですけど、私は小山さんの副題、好きです。物語を読むと、モンモランシーも犬ではなく、擬人化して書いている部分もあるし、物語を盛り上げてくれる、立派な仲間だと思いましたので。
それから、小山さんの解説で、「メランコリックで物思いに沈みがちな性格」が、ユーモリストに共通しているというのは、何となく分かる気がしました。元々、明るい人がユーモアを書くよりも、ユーモアのような溌剌とした物語で、心からおもいきり笑って楽しみたいという、切実な思いを抱いている人の方が、求める思いが強い分、よりギャップのある面白い作品が書けるような気がする。
投稿元:
レビューを見る
ピア・サポーターズAさんのおすすめ本です。
「リラックスしたい人に一番おすすめの本は、ジェロームという作者の「ボートの三人男」です。
この本は、誰もが経験したことのあるようなシチュエーションをユーモアを交えて紹介しています。私はこの本を読んでいて、「こんなこと、私にもあったなあ」と思うことが多く、よく笑いました。また、キャラクターはテムズ川を航海しているのですが、ほとんどすべての章で著者はイギリスの都市を描写し、その都市に関する興味深い場所や事実を教えてくれます。これは、イギリスの文化的な豊かさを知る機会を与えてくれると同時に、ジェロームが描写する場所をより深く探検したいという欲求を呼び起こしてくれます。」
最新の所在はOPACを確認してください。
TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00538458