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投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末に生きた人々の短編集です。幕末という特別な時代に、こんな生き方があったのだなあと思いながら楽しく読みました。新撰組の話は、信じられないようなことばかりですが、なんとなく引きつけられます。
紙の本
いのちをかけた男がいて、いのちを願う女がいる
2018/10/26 07:34
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに使われている「火影(ほかげ)」とは、「ともし火に照らされて映し出された姿や影」ということらしい。
『漂砂のうたう』で第144回直木賞を受賞した木内昇(女性作家で、昇はのぼりと読む)さんのこの短編集は雑誌「小説すばる」に不定期に掲載された6つの短編を収録している。
初の「紅蘭」が2009年の掲載で最後の「光華」が2017年の掲載だから、作者の木内さんにこのような「火影」に揺れる人たちの有様をまとめる意図が最初からあったかどうかわからないが、こうしてまとまると、まさに「火影」という言葉が当てはまる作品集になったといえる。
攘夷派にしろ佐幕派にしろ誰も彼もが熱くたぎっていた幕末の京都を駆け抜けた6組の男女。
例えば、新選組の沖田総司と労咳を病んだ老女布来。あるいは、長州藩の若者吉田稔麿と料亭のてい。
さらには坂本龍馬の生き様に嫉妬する岡本健三郎と亀田屋の娘タカ、また「人斬り半次郎」と怖れられた中村半次郎と煙管店の娘おさと、といったように、志士たちが火であるならば、それに寄り添うように女たちはひっそりとそこにいる。
特に最後に収められた「光華」は中村半次郎の純な恋心を描いて秀逸だ。
半次郎が想いを寄せる煙管屋の娘おさと。おさともまた半次郎に恋心を寄せ、おさとの父親は娘の気持ちを察して半次郎に嫁にもらって欲しいと願う。
自分の気持ちをわかりながらも倒幕という大きな歴史の流れに生きようと決心した半次郎はすげない態度でおさとに別れをつげる。おさともまたつらい仕打ちを忍んで受けとめる。
この短編だけでも(もちろん全編がいいだろうが)ドラマ化してもらいたいくらいだ。
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幕末の京都が舞台の、珠玉の短編集。
それぞれ、人物像がしっかり描かれているので、幕末を肌で感じることができるような、さすがのクオリティです。
個人的には、沖田総司メインの「吞龍」がすきでした。
(新選組好きなので、かなり贔屓が入っています・・笑。他の隊士達の、こういった話も読みたいな・・。)
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短編集二話を読んで
1,600円(税別)の
元を十分取ったと思える
満足感を得ました。
星の評価で初編☆5つ
2話で10ということは
全六編で星30。
☆5つ満点評価では埒があかぬので
銀河系5つ♪
やはり木内昇さんは
稀代の現代作家さんだ
この方の新作を待ちわびことの
できる同時代に生きることを
幸いと存じております。
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随分と時間をかけてしまいました。
幕末の志士と女性たちの恋物語。
ですが、まったく色恋が関わらない沖田総司と女郎上がりの老女の話に胸を打たれました。
好きだ、大事と言いながら、戦に走っていく男達。知っていて、わかったいて、そんな男を見送る女。私ならどちらになるのだろうと、しばし、そんな気持ちになる切ない物語ばかりでしたね。
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木内さんの幕末ものはやっぱりいい。
『新選組 幕末の青楓』『新選組裏表録 地虫鳴く』に次ぐ幕末もの3冊目は新選組のみならず、幕末の京を駆け抜けた男達と、その男達と想いを交わした女達による短編集。
女が絡むと男も人間味が増して一層魅力的に映る。
梁川星厳、吉田稔麿、沖田総司、高杉晋作、岡本健三郎、坂本龍馬、中村半次郎。
世の中が大きく変わろうとした時代、男達は己の信念を疑わず、側にいる女達もまた信じた男達を時に厳しく時に優しく包み込む。
特に『薄ら陽(吉田捻麿)』『呑龍(沖田総司)』『光華(中村半次郎)』が印象に残った。
決して歴史の表舞台には出てこないけれど、影に隠れてひっそりと、でも生き生きと咲く花達はみな惚れ惚れする位に素敵。
切なくてやりきれなくて何度も涙した。
木内さんの幕末ものをまた読みたい。
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短編集6編
幕末の激動の時代を駆け抜けられなかった男と関わる女.情や想いが交わり輝く.高杉晋作と遊女を描いた「春疾風」が良かった.
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幕末の京を駆け抜けた志士と彼らに関わった女たちの6つの物語。
詩人・梁川星巌×妻・張紅蘭・・・「紅蘭」
長州藩士・吉田稔麿×小川亭の若女将・てい・・・「薄ら陽」
新選組・沖田総司×労咳病みの老女・布来・・・「吞龍」
長州藩士・高杉晋作×祇園の芸子・君尾・・・「春疾風」
土佐藩士・岡本健三郎×亀田屋の娘・タカ・・・「徒花」
薩摩藩士・中村半次郎×村田煙管店の娘・さと・・・「光華」
幕末事情にとんと疎い、というか薩摩、長州、土佐、会津どれが味方でどれが敵?レベルの私がこの作品を選んだのは失敗だったかと、途中何度か挫折仕掛かったけど、最後まで読んでみるものですね~、勢いに乗ってからは、逆に知らないなりに下手な先入観がない分、この作品世界にどっぷり入り込めました。
よくある英雄伝ではなく、女を前に一人の男としての迷い、弱さ、それが故の人間臭さを垣間見れる物語は歴史が苦手な私にも十分楽しめました。
個人的には、沖田総司の「呑龍」と高杉晋作の「春疾風」が良かった(*^^*)。
特に後者に登場する芸子・君尾が男前すぎて惚れる~❤
「よこまち余話」には負けるけど、もっと木内さんの作品を読みたくなるに十分な面白さでした。
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「火影」は、炎の明かり、光そのものを指すこともあるが、このタイトルは、「火の明るさによってできる影」の方の意味だろう。
幕末を理解するのは一筋縄ではいかない。
今に名を残す志士たちや、倒幕運動に関与した雄藩も、主義は二転三転し、割れたり繋がったり。
うまく泳ぎ抜けられたものだけが、明治の世以降の政治の世界に関与できたのだろう。
“燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや”という言葉がある。
力があるのに世に出られない者が不遇をかこつ時に使うらしいが…
ちょっと見、後世に名を残した人たちが大物つまり“鴻鵠”なのかと思ってしまう。
けれど、陰で時代の流れに力を貸した者、または堰き止めようと必死になった者、大きな名の影に忘れられがちなそういう者たちも、心の中には皆、『鴻鵠の志』を持っていたのかもしれない。
それは男であったり、女であったり。
または志を持つ者ただ一人だけを見つめて支えようとした者も、ひっそりと咲いていた花なのだろうと思う。
個人的には、「春疾風」の君尾さんの生き方が一番カッコいいかなと思う。
めったにいない良い女!
『紅蘭(こうらん)』
梁川星巌(やながわ せいがん)の妻にして“高弟”の紅蘭は、安政の大獄の捕縛対象となった夫の急死で、代わりに捕えられる。
『薄ら陽(うすらび)』
池田屋事件前夜の吉田稔麿(よしだ としまろ)は、血気に逸るあまり深く考えもせず行動する同志たちを危ぶむとともに、危うきには決して近寄ろうとはしない桂小五郎の行動にも信用できないものを感じる。
『呑龍(どんりゅう)』
新選組隊士・沖田総司(おきた そうじ)は恐ろしいほどの剣の使い手だが、肺の病で明日をも知れぬ命。
そのせいか、“この先”を考えるとき、それはうつし世ではなかったりする。
『春疾風(はるはやて)』
芸子の君尾(きみお)は、並の女の幸せよりも、男と肩を並べ、時代を語れるほどの人間になりたいと思う。
彼女が憧れてやまなかったのは、高杉晋作だった。
『徒花(あだばな)』
土佐の岡本健三郎(おかもと けんざぶろう)は、坂本龍馬の護衛を命じられる。
土佐藩士が多く訪れる宿の看板娘・タカの心を射止めるが、坂本のスケールの大きさと己を比べては悄然となる。
健三郎が守るべきものとは何だったのか。
『光華(こうか)』
薩摩の中村半次郎(なかむら はんじろう)は貧しい出自だが剣の腕を認められ、島津久光の供で京に上ってからは必死で書物を読んだ。
しかし、西郷・大久保らが彼に政治向きの密談を明かすことはない。
煙管屋の娘・さとは、そんな半次郎の気持も良くわかっていた女だった。
平凡に、煙管屋の旦那に納まる道もあったのだろうが、彼は自分だけの幸せを望むことはなかった。
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幕末の動乱に生きた様々な男と女を描いた短編集。木内昇の描く人物は血が通っていて、ただの進行役にならない。さすがです。女性たちはまっすぐで眩しく、志士たちと生死を共にした女性たちに重なりました。表街道とか裏街道というのではなく、真っ当に生きていても、日の当たる道を歩く人と日向には出れない人がいる。岡本健三郎の話は切ない。
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「光芒の人」「笑い三年、泣き八年」「球道恋々」…今まで読んで来て、木内昇の描く人間はいつも時代の流れの波間に見えるか見えないかの泡のような存在ばかりです。だけどその小さな人生に向ける眼差しの優しさにいつも胸苦しくなります。今回は大政奉還150周年のタイミングで、幕末泡沫人生の短編連作です。「紅蓮」の簗川星巌(この人初見ですが)「薄ら陽」の久坂玄瑞、「春疾風」の高杉晋作、「徒花」の坂本龍馬が時代に名を残すヒーローが時代を超えて存在感を焦げ付かせる「火」だとしたら、その影には「火」に翻弄される人生が無数にあるのでありました。簗川紅蓮、吉田稔麿、沖田総司(ちょっと有名すぎるけど…)、君尾、岡本健三郎、中村半次郎(この人も知ってた…)。彼らはただ巻き込まれるだけではなく、自分なりに燃え盛ろうとするのですが、目の前の大きな炎に呑み込まれたり、燃えきれず燻ったり。題名の「火影に咲く」はヒーロー達の大輪の花ではなく、その周りの小さな花々の懸命に咲こうとする姿を意味していると、読後に理解しました。また、小さな炎の周りには、小川亭のてい、お布来さん、亀田屋のタカ、村田煙管店のとさと、恋の炎、誇りの炎を燃やしている女たちの人生も咲きまくっているのでありました。NHK「西郷どん」は大河テレビ小説ですが、この本は大河に流れ込む支流小説なのだと思いました。支流の見つけ方、描き方、木内昇、うまい!
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幕末の有名な志士たちが出てくる話だがさほど派手さはない。日常の話も交えて登場人物の人間味が感じられる短編集だった。そしてよく描かれる事件も視点を変えるとこんな風に見えるんだなと興味深くも読めた。どうしても激動の時代なので大きな事柄が動く話が多い中、幕末を生きる、生きていかなければならない人たちの切なさや虚しさを短い話で見せる作者の上手さが光る作品だと思う。
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わしはせいぜいおなごのひとりに選ばれるだけの器か…京一との噂の町娘を我が物とし有頂天の土佐藩下士岡本健三郎はかつて大うつけと見下していた坂本龍馬の国をも動かす傑物振りを目の当たりにし自己嫌悪に陥る。
そして暗殺現場から間一髪で命拾いをしても「どうせ俺なんか」の想いは募るばかりに不貞腐れる。
咲くも誇れず実も結べぬ徒花の如き男心の懊悩を女流乍らここまで見事に炙り出されるとまるで己の事を言われているようで胸の奥がチクリと痛む。
上質な六つの短編、影に徹し名もなき花をひたむきに描き続けて来た木内さんの文学が今鮮やかな火になる
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流石です。
幕末の京都を舞台にした6つの短編からなる歴史小説ですが主題は人間像。
時代を駆け抜けた男たち、梁川星巌、吉田稔麿、沖田総司、高杉晋作、坂本龍馬、中村半次郎。
彼らの傍らに様々な女性を置き、それによって見事な人物像を描き出しています。
全体にあっさりしてます。ガチガチと書き込まれていません。単純な恋愛ものでは無いですし、時代の切迫感・緊張感も弱いと感じられるかもしれません。
でもそれが狙いなのだと思います。男たちの日常の一場面をサラリとスケッチして見せる。しかしそこから浮かび上がる彼らの姿はとても生き生きと鮮やかなのです。
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幕末時代の短編です。恋愛ものが多いです。
幕末志士は元々好きだし、どの話もほのかに切なくて悲しくて心のすれ違いみたいなのが多くて本当に好きでした。
特に中村半次郎の話が好きだった。やっぱり木内昇先生の書く幕末って大好きだなーー