ＣＧで甦る江戸庶民の暮らし 傘張り職人、唐辛子売りなど職業別・長屋の内部、男女混浴だった「湯屋」まで完全再現！ （サライ・ムック サライの江戸）

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・例へば「粗忽の釘」を思ひ出す。粗忽者の大工の亭主、女房から箒をかける釘を打てと言はれて、まちがへて瓦釘といふ長い釘を打つてしまつた。あら大変と隣に駆け込んで釘のありかを捜すと……何と仏壇の阿弥陀様の頭の上であつた……一体どういふ家なのだと思ふ。今一つ「野ざらし」、夜、隣から声が聞こえる。若い女の声である。問い詰めてみると……といふわけで、ここでも隣の声が聞こえるのはと思ふ。つまり、長屋では隣との関係はどうなつてゐるのだといふ ことである。かういふのを視覚的に見せてくれるのがサライ・ムック「ＣＧで甦る江戸庶民の暮らし」（小学館）である。長屋の様子を私は何となく知つてゐた。狭くて、壁も薄くて、声も筒抜けでといふふうには思つてゐた。しかし、具体的な長屋の様子となると、これがよく分からない。三畳だとか四畳半だとか言はれても、その狭さに、ここで一家族暮らせるのかなどと思つてしまふ。そこで本書を見る。表紙が長屋である。これでもその狭さは分かる。土間は別にしても、家具を置かねばならぬ。本文を見ると、「４畳半の板間に筵を敷き親子４、５人が暮らした」（１６頁）、「火鉢、 屏風、茶箪笥など必要最低限の生活道具しかなかった」（２０頁）、「押し入れがなく布団は枕屏風で隠した」（同前）などとある。歌舞伎の舞台の場合、例へば「らくだ」のあの家はこんな長屋かと思ふ。あのやうな人間の住む場所は裏長屋しかなからう。舞台で四畳半を再現するのは可能であらうが、たぶんそれでは舞台映えしない。そこでリアリズムなりに再構成したのであらう。それでも家具は少ない。まあ、あの程度なのであらうと思ふ。いづれにせよ、本書の絵から、 家の狭さと隣家との壁１枚の生活を知ることができる。そして、家具はあつたらしいが、ごく少なかつたらしいと知れる。もしかすると仏壇のあつた家は少な く、従つて「粗忽の釘」を打つてしまつた男は運が悪かつたのかもしれない。いづれにせよ、長屋、といふより裏長屋には裏長屋なりの生活があつたのである。
・本書は「江戸庶民の暮らし」を描く。従つて、裏長屋の実態を知ることができるだけではない。かの有名な越後屋も出てゐる。「呉服店三井越後屋は現金払い の江戸最大の大店だった！」（３６頁）といふのである。外観と売り場の様子があるが、売り場はいささか狭く切り取りすぎである。広く全体を写せなかつたのかと思ふ。これは浮世絵で代用である。浮世絵だと今一つリアルではない。そこが気になる。本書にはかういふ浮世絵も多い。浮世絵でも分かるけれど、そこは書名に従つてＣＧで描いてほしかつた。ＣＧの絵双紙屋がある。浮世絵も並んでゐる。かういふふうに本を売つてゐたのかと思ふ。私は貸本屋が本を背負ふのは知つてゐる。本屋はどうしたのかと思つてゐた。平積みで売つてゐたのである。現代と似てゐるとも言へる。ならば「味噌蔵」の味噌屋はどのやうに売つたのだと思ふ。あれは普通程度の大きさの商店であらうか。ただし、売るのが味噌である。呉服屋ならば畳に座つて売れる。味噌はどうであらう。「女殺油地獄」の油屋は壺を並べてゐた。下は三和土であらうか。味噌も同じやうに売つてゐたのかどうか。それでも基本は越後屋を小さくしたやうなものであつたか。といふわけ で、これもまた完全ではない。いろいろと出てゐる。しかし、当然漏れもある。それが知りたいものだつたりすると、これはどうしやうもない。棒手振だけでも８０種以上とか。このてのムックではこれを全部載せるのは無理であらう。どうせＣＧでと謳ふのである。かういふものまでＣＧでといふのもまた無理であらうか。しかし、おもしろい書ではある。

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江戸庶民の生活の場をCGで再現。
CG以外にも浮世絵や本の一部、イラスト等多数掲載。オールカラー。
江戸庶民の衣食住、仕事、娯楽、家計簿など、生活を知るのには
詳細で分かり易く、長屋内部や風呂等、見取り図もあり、
CGの細かい描写は眺めているだけで興味深いものになっています。
賃金や物価、棒手振りの一日など、現代と比較出来るのも良いです。
文も平易ながら詳しく、江戸好きには楽しい内容になっています。
ただ、江戸時代のいつ頃を基準としているのかが不明です。
また、一部浮世絵に絵師の名前が無い(作品内にはあるけど)のが、
残念なところです。

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当時描かれた浮世絵や挿絵の解説を交えながら江戸の暮らしを紹介。CGが精巧でミニチュアみたい。江戸時代の生活が想像しやすくて、入門書としてもうってつけ。江戸についてある程度知っている人には、解説が若干物足りないかもしれないが、CGや浮世絵を眺めているだけでも楽しい。

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サライらしさが感じられる本。

江戸庶民の暮らしもさることながら
どの様に　CGで蘇るのかが一番の関心事。

男女混浴だった「湯屋」まで完全再現！
を売り文句にしている。
湯屋に関しては、酸ヶ湯温泉を思い出した。

さらに興味が湧けば、両国にある
東京大江戸博物館に行こう。