電子書籍
とんでもないところに着地するようなスリル満点の面白さ
2019/10/04 01:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この人の作品は予想できない不思議な展開をすることが多いので、え?え?え?と疑問に思っているうちにとんでもないところに着地するようなスリル満点の面白さがあります。
この『監禁面接』にしても、失業4年のさえない元人事畑の管理職のおじさん、アラン・デランブル(57)が生活費のためにバイトでつないでいるというフランスでは珍しくない、どこでもいそうな人の苦悩を描いていると思いきや、ある日突然「あなたの経験が必要とされている」と夢のようなことを言われ、求人の職務も自分の経験に見合う人事副部長であるため、ついに運が向いてきたかと舞い上がるのもつかの間、最終試験では、ほかの管理職の選抜のためにテロ集団の襲撃を装って候補者を監禁してストレス耐性を評価するというので、アランはやる気満々であるのに対して妻ニコルはそんな異様な面接を管理職に課すような会社とは関わり合いにならないほうがいいと考え、夫婦の間に亀裂が生じます。アランは最初ニコルに内緒で準備を進め、多額の借金までしますが、いずれニコルにばれてかなりまずい関係になります。それまでが第一部「そのまえ」。
第2部「そのとき」は人質拘束のオーガナイザーを委託された元傭兵のダヴィド・フォンタナの視点で語られますが、実際にその面接にアランが準備万端で臨むのかと思えばそうはならず、アランが実弾の入った銃で関係者全員を監禁するという暴挙に出ます。なぜ?なんのために???と疑問符を引きずったまま、アランの視点で語られる第3部「そのあと」に突入し、その意外な理由が徐々に明らかとなります。そして、そのためにアランは命を狙われることになります。この章でアランが絶望の末にやけを起こした高齢失業者ではなく、プライドが高いばかりでなく実はかなり狡猾な人物であることが浮き彫りになります。
アランは社会悪のような権力を持つ敵との勝負には勝っても、持っていた幸福は失ってしまう「気の毒な人」。自業自得の部分が大きいので同情はしきれないのですが、終局に向かうまでのサスペンスの描写は素晴らしいです。
紙の本
明らかに物騒な表紙&装丁だが、残酷描写は今回ほぼなし。
2019/05/26 04:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人事畑一筋で歩いてきたアランは、リストラで職を失い、また同じような仕事に就けると再就職活動を頑張ってきたが、それももう4年目で、57歳になってしまった。早朝の製品梱包のバイトなどをいくつか掛け持ちし、必要なお金を稼いでいる状態。が、そんなある日、アランに一流企業の人事副部長職の応募のチャンスが! 何かの間違いだと感じつつも一時の筆記試験を受けたら、通ってしまった! これでやっとまともな仕事ができるのではと夢見るアランだったが、提示された最終選考は予想もしない恐ろしいものだった・・・という話。
<ノンストップ再就職サスペンス!>とあるのですが・・・このコピー、合っているような合っていないような。
確かにアランはかつて働いていたような状態に戻りたい、という強い一念で<常識外の最終試験>に取り組むのだけれど・・・その取り組み方が尋常ではないというか、明らかに常軌を逸している。
第一部“そのまえ”はアランの一人称であるというのに、彼の苦境や苦悩がしっかり描かれているというのに、どうも彼に寄り添えない。勿論、感情移入できないから面白くないということではなくて、アランのこのキャラは作者の計算なのではないか、とつい勘ぐってみたりして。
第二部“そのとき”はページ数も少なく、また語り手も違う人になるのでアランのヤバい感じがより浮き立ち。
第三部の“そのあと”で再びアランの語りに戻るわけですが、その流れで彼が相当壊れてきているのにあまりそれが目立たない効果になっており・・・どのようなとんでもない展開になろうがあっさり受け入れられる準備が整っておりましたよ。
それなのに、描かれているテーマは意外と道徳的で、求めるものが違う男と女の悲劇・自分が価値を重く置くものを家族全員が同じように思うはずと思い込む悲しさとむなしさがより響く。
「働く」とはいったい何だろうか、ということを改めて考えさせられる感じというか・・・アランは57歳だからもう変えられなかったのかな。
帯で「最新作」と謳っておりますが、実際は『その女アレックス』の前に書かれたもの・・・ピエール・ルメートルの長編3作目。
なるほど、こういうのを書いていたのなら、のちに『天国でまた会おう』を書いたのも納得。
紙の本
なんだ、これ
2018/10/15 21:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:幻のカズー - この投稿者のレビュー一覧を見る
57歳の失業者が会社員(バイトではなくパートでもなく)になりたくて孤軍奮闘 笑する話・・・だけど。設定がおかしい。主人公の、後でどうにかなる、という考えもおかしい。就職決まっていないのに、決まったつもりで大暴走、特にお金関係。
アレックスで衝撃を受けたけど、アレックスの前に書いていたと知ってがっかり。
新作だと思って買ってしまいましたとさ…悲
紙の本
監禁面接
2018/10/03 17:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
その女アレックスを読んでいたので、似たような感じの作品かなと思っていましたが、また一味違って、よかったです。
投稿元:
レビューを見る
すごい。出だしから引き込まれ、中盤からは先が知りたくて止まらなくなった。人物像がありありと浮かんでくる描写はさすが。ヒントは書いてあるのに、何がおこなわれていたのか気づかせない展開。なすがままに楽しめました。
投稿元:
レビューを見る
【『その女アレックス』著者、驚愕と奇想の一気読みサスペンス!】たどりついた大手企業の最終試験は何と「重役会議の襲撃」!? 失職して四年、最後のチャンスに懸けるアランは必勝の策を練るが…。
投稿元:
レビューを見る
ルメートルを信じて読み進めたが、途中で主人公が嫌いすぎて読むのやめようかと思った。最後の最後は悪役がどちらかわからない。だれを応援する気持ちで読めばいいのかわからなくなってくる。だいたいは困って窮地に追い込まれた主人公に思い入れして、「どうにかうまくいかないか」と思うが、「こいつ困ればいいのに」と思ってしまう。しかし、そのオチでいくとスッキリもせず、どう思えばいいのかわからずモヤモヤ。失業に伴う追い込まれた気持ちやズルイ儲け方をしている大企業をやっつけたい気持ちもわかるが、いろんな人を傷つけて終わるこの物語は、読まなければ良かったと思ってしまう、それが狙いならその通りの読後感です。
投稿元:
レビューを見る
面白かった。3部構成で語り手が交代することで、視点が変わり秘密も隠される。ハッピーエンドではないが、主人公はある意味幸せそうでもある。ニコルが座標軸と言いながら、アランとって他者は利用できるかどうかだけだったのではないか。シャルルが哀れだった。
ドルフマンが割とか簡単に諦めたことと、フォンタナの最後の作戦が杜撰なことが気になった。
投稿元:
レビューを見る
ノンシリーズ長編。原題は『黒い管理職』。面接の中身がバカミスでどうなることかと危惧したが、そこはさすがのルメートル、特異な設定を踏み台にしてとことん“らしさ”を発揮する。
襲撃事件を真ん中において、「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部でストーリーを構成し、その切り替えごとに局面を変化させ、中盤で転調したあとは一気にゲーム性が高まっていく。
人生のどんづまりに直面する主人公が一発逆転の大勝負をかけるのだが、この主人公をはじめとして、それぞれのキャラが個性的。でもってそのほとんどが普通じゃない。徐々にのっぴきならない状況になるストーリーと合わせて、共感できないキャラをどう咀嚼するかが評価の分かれどころになりそう。
運命の残酷という背景はそのままに、今回は残忍な殺人が登場しない代わりに、社会的犠牲者の目線から、そのブラックな世界観をやや暴走気味に描いている。ルメートル流のクレイジーな風刺画とで言うのかな。やや物足りないけど、これはこれで面白い。
次作はノンシリーズのノワールだとか。キングが賛辞を贈っているのにはビックリだわ。
投稿元:
レビューを見る
就職最終試験はある会社の会議を襲撃せよ、というもの。そのまえ、そのとき、そのあと。という三部構成で襲撃に至るまでの第一部がいい。失業者の社会への不満やこれからの不安や焦り。我を失っていく主人公のアラン。家族を守る、これまでの生活を守るためのはずがどんどん道をそれていく。アランには共感できないけれど、アランの一挙手一投足からは目が離せない面白さ。襲撃とその後も色んな展開があって楽しめる。他の作品群とはまた違ったルメートルを感じられる。
投稿元:
レビューを見る
原題は「黒い管理職」という肝心の中身をバラしかねない題だ。邦題の方は、まさにピエール・ルメートルといったタイトル。しかし、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの持つ嗜虐趣味と謎解きの妙味はない。仕事にあぶれた中年男が持てる力を振り絞って、地位と金を手にしようと必死にあがく姿をサスペンスフルに描いたクライム・ストーリーである。
五十七歳のアランは目下失業四年目。僅かな金のために働く仕事先で、足蹴にされたことに腹を立て、上司に頭突きを食らわせる。それで失職し、訴訟を起こされる。二進も三進もいかなくなったアランのところに、応募していた大手の人材コンサルタント会社から書類審査に通ったという手紙が来る。キツネにつままれたような気持ちで筆記試験を受けると、これも合格。面接試験を受けることに。ところが、最終的に四人にしぼられた候補者の中から一人を選ぶ試験というのが問題だった。
そのコンサルタント会社では、ある大企業の大規模な人員整理を担当する人材を探していた。最終的に絞った五人の候補者の中から一人を選ばなければならない。大規模な人員整理となれば反対運動がおこるのは目に見えており、それに動じることなく冷静に判断を下せる者を見極めるには通常の試験では難しい。コンサルタント会社の考えたのはとんでもない方法だった。
試験と称して候補者を一室に集め、そこをゲリラに急襲させる、というものだ。もちろん犯人グループは偽物で、武器その他も実弾は入っていない。しかし、事実を聞かされていない候補者たちはパニックに陥るに決まっている。そういう場面でも冷静に判断を下せる人材は誰か、を見極める試験官を別室に潜むアランたちにやれというわけだ。候補者たちに候補者を選ばせるという一石二鳥の名案だった。事件が起きるまでは。
小説はアランの視点で面接までの経過を記す「そのまえ」。「人質拘束ロールプレイング」のオーガナイザー、ダヴィッド・フォンタナの視点で事件の経緯を記す「そのとき」。そして、またアランの視点で事件のその後の出来事を描く「そのあと」の三部で構成されている。これが実にうまくできていて、この小説の鍵を握っている。
アランには美しい妻と二人の娘がいる。姉のマチルドは銀行家と結婚し、妹のリュシーは弁護士だ。幸せを絵に描いたような生活は、アランの失職で一気に瓦解する。妻の働きのせいで、なんとか暮らしてはいけるものの、着古したカーディガン姿の妻を見るたびに、自分の力のなさが思いやられ、アランは娘たちにも引け目を感じている。フランスの話だが、日本に置き換えても何の不都合もない、身につまされる境遇に主人公は置かれている。
ついこの前までは同じ位置にいた者に足蹴にされたら、誰だってプライドが傷つく。ましてや五十代のアランはまわりからおやじ扱いを受ける身だ。ふだんはキレたりしないが、再就職の口が見つからずイライラしていたところでもあり、つい暴力をふるってしまう。最初に暴力に訴えたのは相手だが、その上司は目撃者を買収することで裁判を有利に進めようとする。買収されたのは金に困っていた同僚で、証言を変えるはずもなかった。
アランとしては、コンサルタント会社の面接に合格するしか道はなかった。まずは、その大手企業と匿名の候補者について知ることから始めねばならなかった。探偵会社を雇い、調べさせることはできるが、それには金がいる。娘の夫に借金を申し込むが断られ、娘を説き伏せ、新居のために積み立てた資金を取り崩させて探偵社に払う。もう一つ、人質拘束事件について実際に知っている人に話を聞きたいとネットに投降した。これにも元警察官のカミンスキーから連絡があり、彼の指導で練習を積み準備はできた。
だが、作者はピエール・ルメートルだ。そうやすやすと話は通らない。コンサルタント会社に勤める女からアランに電話がある。会ってみると、面接は見せかけで、採用者はすでに決まっている。アランはただの当て馬だという。この試験のために娘の新居の資金をふいにした。これが駄目なら裁判に勝てる見込みはない。自暴自棄に陥ったアランはカミンスキーから拳銃を手に入れ、試験会場であるコンサルタント会社に出向く。
見せかけの「人質拘束ロールプレイング」が途中から本物に変わる。コンサルタント会社の担当者も、オーガナイザーのフォンタナも、事態の急変を予期できなかった。「そのとき」で、事件の実況を受け持つフォンタナは傭兵経験を持つ百戦錬磨のつわものだ。その男の目に映るアランの姿は単に試験のために緊張しているにしては異様だった。その男はアタッシュケースからやおら拳銃を取り出すとその場を仕切りはじめるのだった。
怒りに任せての復讐劇かと思わせておいて、「そのあと」で描かれる事件の顛末がいちばんの読みどころ。まるで映画のような見せ場がいっぱいだ。拘置所内でアランを襲う恐怖。娘リュシーの弁護のもとに行われる裁判劇。本業である自分が一杯食わされたことに腹を立てるフォンタナとアランの手に汗握る駆け引き。息もつかせないカー・チェイス。初めはもったりとしたテンポではじまった話がハイ・スピードで走り出す。
話自体には、それほどの新味はない。ただ、アランを助ける友人その他のキャラが立っていて、くたびれた中年オヤジにしか見えなかったアランも、ひとつ場数を踏むたびに逞しくなり、勘は冴えわたり、巨悪を相手に一歩も退かないところが、だんだん頼もしく目に映るようになってくる。家族を愛する男はこうまで強くなれるものか。結末は万々歳とはいかない。いろいろと無理がたたって、ほろ苦い後味を残す。しかし、一皮むけたアランの明日にはかすかな灯りがほの見えてもいる。
カミーユものとは一味ちがう、ピエール・ルメートルの小説家としての多面的な才能がうかがえる作品である。はじめは、さえない中年男の話かと少々だれ気味に感じられていたものが、ギアが切り変わるたびに加速されるような感じで、一気に加速すると、あとは一気呵成だ。息つく暇もなく読み終えてしまった。
投稿元:
レビューを見る
ピエール・ルメートルの新作です。
表紙裏のあらすじに、残酷描写はないと書いてあったので今回は安心して読めました。
主人公は57歳の失業者のアラン。
物語は「第一部 そのまえ」「第二部 そのとき」「第三部 そのあと」に分かれています。
「そのまえ」は少し退屈でしたが、すべてが「そのとき」「そのあと」への鮮やかな伏線になっていたことが、後でわかります。
「そのとき」の後半から話は急展開し、俄然、面白くなってきます。二転、三転し、ワクワクしながら読みました。
さすが、ルメートルです!
テーマも現代社会らしいものだと思います。
社会的弱者をばかにする、社会的態度は卑劣であると思います。主人公アランの怒りは正当だと思います。
犯罪を犯しても、世に知らしめたくなる気持ちもわかります。
ただ、この話はラストに深い悲しみが、漂っています。
家族の為によかれと思って全部やったことなのに、お金で幸せを買うことはできなかった。
失ったものの方が大きかった。
こんな悲しみもあるのだと、思いました。
『天国でまた会おう』の続編と、ノンシリーズのノワールが近日刊行予定だそうですが、このまま快進撃を続けていってほしいものです。
投稿元:
レビューを見る
リストラ後、再就職先が見つからない50代後半のアラン。ついにはバイト先もクビになってしまう。そんな彼のもとに届いたのは、某大手企業の書類選考に通ったという知らせ。しかも筆記試験・面接に受かれば人事副部長の座が約束されている。期待に胸を膨らませるアランだが、聞かされた面接内容に耳を疑う。「銃を持った武装犯を操り、重役たちを脅せ」というのだ。
前半部分は、考えの浅いアランにイライラするだろう。正しい道を歩むため、手を差し伸べたくなる。もっと冷静になって考えればいいのに、と何度も思うはずだ。
中盤は、アランの行動から目を離せずにドキドキするだろう。
そしてラスト、ハラハラする攻防戦の末、アランは魔法が解けたかのように考えの浅い初老の男性に戻ってしまう。あの切れ者のアランは再就職ハイという魔法にかかっていたのだろうか。
タイトルとあらすじがB級感プンプンでちょっと不安だったが、安定のルメートル節。
投稿元:
レビューを見る
一章のそのまえ、でちょっと手が進まなくなってしまったけれど、そのとき、そのあとはとても楽しかった。すごかったなぁ…
シャルルがとても好き。
主人公の気持ちもなんかわかるなぁ…。色々考えさせられる、余韻のある物語だった。
投稿元:
レビューを見る
もろもろ可哀想な面を差し引いても主人公がクズ過ぎて感情移入を許さない。
『小さな巨人』カミーユがカッコ良すぎて…この作品は個人的にペケ。