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商品説明
ドゥルーズ+ガタリの著作「アンチ・オイディプス」を読み解くための連続講義を書籍化。「欲望機械」「分裂分析」「器官なき身体」などの用語を丁寧に説明し、きわめて創造的な思想とそのカオスな文脈を解きほぐす。【「TRC MARC」の商品解説】
ポストモダンの原基を攻略する
68年、著者二人の出会いが、革命の書を生んだ。この複雑な網の目のような“危険な思考”は、しかし、あまりにも、わかりにくい。
「欲望機械」、「分裂分析」、「器官なき身体」など、正体不明な用語を丁寧に説明。きわめて創造的な思想とそのカオスな文脈をきっちり解きほぐす。知に衝撃を与えた、“わけのわからない”テクストを、現代思想の第一人者が、わかりやすく完全読解。
「この講義では、フランスの現代思想・文学事情に通じていない読者には、……かなりの辛抱強さを必要とする、読みの実践を試みた。最後までついてきてもらっても、「分かったぞ!」 という爽快感は得られないかもしれないが、現代思想の複雑な思考の網目を辿っていく糸口を得て頂ければ、幸いである。」 本書[はじめに]より【商品解説】
著者紹介
仲正 昌樹
- 略歴
- 〈仲正昌樹〉1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。金沢大学法学類教授。著書に「思想家ドラッカーを読む」など。
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最高のガイドを片手に登頂後に見えた景色は…
2022/02/25 12:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あごおやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
仲正昌樹先生による、思想哲学の難書を紐解く講義を活字化した「入門講義」シリーズ。これまで「現代ドイツ思想」(アドルノ/ホルクハイマー)「人間の条件」「革命について」(ハンナ・アーレント)「日本の思想」(丸山眞男)、「戦後思想」(丸山眞男、吉本隆明)などを読んできましたが、今回は比べものにならないくらい、しんどかった! 毎回、仲正先生による解説本がなければ、原典の理解などできないとは思っていたのですが、「アンチ・オイディプス」については、本書がなければ早々に敵前逃亡していたこと間違いないです。
本書の「はじめに」において、「フランスの現代思想・文学事情に通じていない読者には、…かなりの辛抱強さを必要とする」とありますが、そもそも「アンチ・オイディプス」はフロイト=ラカンによる「無意識の“論理”の探究」の解体を意図しているため、フロイト=ラカンに関する知識がなければならないのは当然としても、文中には見たことも聞いたこともないような小説や映画が突然引用されます。本書の助けがなければ、こういったエピソードがそもそも何のために挿入されているのかさえ理解できるとは思えません。「アンチ・オイディプス」においては、固定観念的な主体性に変わるものとしての「欲望機械」という、何にでもなるけど何物でもないような不規則な運動が中心に据えられているのですが、「アンチ・オイディプス」という書物自体が、ニーチェ、フーコー、デリダ、レヴィ=ストロースやカフカなどの様々な思想を引用し貪欲に呑み込む、まるでブラックホールのような作品ですし、「器官なき身体」「接続/連接/離接的総合」「独身機械」「登記する社会体」など、意味不明の用語が次から次へと出てきます。第3回講義の質疑応答の際に、聴講者の方が「あまりにもジャルゴンが駆使されすぎている」旨の指摘をしていますが、まったく同感です。その問いに対する仲正先生の答えは、「手垢にまみれた一般用語を用いることが、新しい思考の提示を阻害することになる」という意味ではないかと理解しましたが、たしかに、ハイデガーも「存在と時間」で「現存在」などといった新たな造語を用いていますし、既存の思想体系の解体には、新しい道具が必要だということなのでしょうか。だとしたら、私のような者は早々に単独登頂をあきらめざるを得ません。
しかし、入門講義シリーズを毎回拝読して思うのですが、仲正先生の博覧強記はもはや言うまでもなく、このような難解な書物を取り上げた講義に実際に参加され、的確な質問を行う参加者(そして、その質問にさらっと答える仲正先生)の皆さんには驚かされます。本書のように活字化されたものを読み解くだけで毎回四苦八苦している私には、ライブで耳から聴いても頭に入りそうにありません。仲正先生は「はじめに」の末尾で「最後までついてきてもらっても『分かったぞ!』という爽快感は得られないかもしれない」と述べていますが、本書をガイドに「アンチ・オイディプス」の上下巻を読破するのに8か月(!)もかかった私は、このことを痛感しています。
それでもあえて言えば、あらゆる基礎付け主義的な考え方を脱臼させようとする現代思想のカオスでありながらクリエイティブな側面や、脇の甘さを決して認めない緊張感が垣間見られました。それはもはや、「批判的精神」などという行儀のよい言葉に収まらない、何かに取り憑かれたようなダイナミズムだと感じました。