紙の本
面白かった
2018/09/18 09:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時中の警察の状況については、興味が前からあり、その意味で本書は私の知的好奇心を少しは満たせてくれた。矢張り特高警察という機関は相当酷いことをしていたんだと認識をした。
この小説は、その特高警察の刑事であるアイヌの血を引く八尋を通して、国家や民族の本質に迫る作品であった。
また、原子爆弾の製造を巡ってその開発費を横領しようとする軍人もいてこの作品でも書かれていたが、挙国一致とはいいつつも日本は一枚岩ではなかったことがよく分かった。それをミステリーに仕立てているのもいいアイディアと思った。
あらゆる意味で面白く読めた作品。
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昭和20年、終戦間際の北海道・室蘭。陸軍の軍事機密をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は、先輩刑事とともに捜査に加わる
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時期は戦争中(昭和20年)敗戦の雰囲気が漂っている日本。
舞台は北海道。主人公はアイヌとの間の子。戦争に後ろ向きなことをする人達などを取り締まる特高警察。
朝鮮人などが働く所へ潜入捜査をし、成果を得るも、潜入した先の上司2人が殺され、容疑は主人公に向けられ……。
みんな、自分のためにやっていると思いきや、全部人の為にやっていた?というのがテーマなのかなぁと思いました。(特に戦時中の話なので、お国の為という言葉が多かったです)
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本の装丁と重量にたがわない
ハードな読み応え
終戦までにどのような収束を終えるのかという
時間軸のタイムリミットがあるので
緊迫感がいい意味でずっと漂っている
戦争が終わったところで
人々の闘い、苦しみ、恨みは終わらないが
一縷の望みは垣間見えた。
民族なんて
民族衣装のようなもので
時々に合わせているもので
着せられたり、縛られたりしては
いけないというのは
禿同
スルク=能代が引き継いだというのも驚いたし
悪を倒す(ウラン爆弾を使って敗戦濃厚な日本の気づいてない奴らに気づかせる 画策をしている事務二課に天誅を下したい スルク 緋紗子)為に悪を用いて倒してはいけないと
日崎が止めるところは彼の成長が見えた
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社会派ミステリーを得意とする作者の今作は終戦間近の北海道が舞台。
主人公の日崎は北海道警で特高として勤務していたが、ある日、殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。明らかな冤罪だったが、その裏には敗戦濃厚な日本で最後まで抗おうとした国の策略と、「お国のため」と玉砕した兵士の日本への疑惑の念など、いろいろな思いが交錯し、大きな陰謀が動き出していた…
他の作品でも書いた気がするが、終戦後73年経ち、昭和天皇も亡くなり、平成が終わりを告げるせいか、最近は戦争責任に触れる作品が多くなって来た気がする。
今作でも、戦争を続けた日本に対する批判的な表現が登場する。完全なフィクションではあるが、ガダルタカル島で必死に生き延びるようとする兵士たちの様子などは、読んでいて心が痛くなり、これまで読んできた作者の作品とは、全然違う読後感。
戦時中を扱い、そして、北海道と言う土地柄なので、当時あった人種問題なども取り込まれており、いろいろ考えさせられた一冊。
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よく描かれてはいるが、ストーリー展開そのものがそもそも面白くない。本筋とは離れた枝葉の描写にページを割きすぎ。三影の人物造形がクソすぎて不愉快極まりない。刑務所は隙だらけで、軍事機密は漏れすぎ。軍関係者のセキュリティ意識皆無。登場する女性陣に魅力がない。
「凍てつく太陽」というタイトルも正直ピンとこない。
総じて、いろいろと無理くりにひねりすぎなんじゃないのかな?葉真中さんには、もっとシンプルなクライムノベルがよく似合うと思いました。
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前半部は憲兵や特高のいやらしいえげつなさで鬱々としながら読んでいたが,後半になって特に脱獄あたりからテンポよく物語りが進み俄然面白くなってきた.アイヌや朝鮮人の問題も含めて考えさされれる場面も多く,ただのエンタメだけではない内容のどっしり詰まった物語だった.
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終戦間近,部隊は北海道.特高の八尋刑事は不逞分子の摘発や脱獄犯の逮捕を行なっていたが,拷問王の異名を持つ同じ特高の御影刑事に嵌められて殺人犯として投獄される.網走刑務所を朝鮮人の仲間とともに脱獄し北海道で開発された最終兵器カンナカムイを巡り奔走する.中だるみがなく面白い.
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終戦間近の北海道を舞台にしたミステリ。時代背景と特高警察をテーマにした作品ということがあって、やや硬くてとっつきにくいような先入観を持っていましたが。……いやいや、すんごく面白い! 密室トリックあり、脱獄トリックありではらはらどきどきが止まりません。連続殺人を巡る謎にもわくわくさせられたし。テーマは重いしシリアスなものだけれど、作品としてはこれぞエンターテインメント!
主人公の日崎が好感の持てるキャラだというのは当然にせよ。拷問王・三影も嫌な奴ではあるのだけれどキャラとしては魅力的です。特高警察というと本当に怖くて悪役そのもの、というイメージでしたが。彼らにも彼らなりの正義や護るものがあったのかなあ、という気にさせられました。
機密である「カンナカムイ」を巡る陰謀には背筋が寒くなる思いでした。本当に、こんな戦争は二度と繰り返してはいけませんね。そして当然ながら日本は負けたわけですが。そこで終わったわけではなく、そこから始まったのだというように考えることもできるかな。読後感は清々しい印象でした。
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戦時中の北海道を舞台に「国家とは人種とは」という大きいテーマの物語だが、様々なトラブルが起こり、北海道トラブル詰め合わせ的なごちゃつきを物語に感じた。
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昭和20年、終戦間際の北海道・室蘭。陸軍の軍事機密をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は、先輩刑事とともに捜査に加わるが…。
2019年日本推理作家協会賞作。終戦間際の混乱期の室蘭を舞台に、大日本帝国とアイヌや朝鮮民族、軍と特高の対立などを絡めた力作。終盤の意外な展開には驚いたけれど、どこかに矛盾はないかと読み返す体力はなかった。それだけこの作品が惹きつける力は並ではなかったということ。
(A)
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北海道、網走刑務所、アイヌ。時代はちがうけど、なんかゴールデンカムイが浮かんだわ。
アイヌ人や朝鮮人についていろいろ考えさせられた。
黒幕がちょっとしょぼかったよね('_')
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この作家さんの作品は「ロストケア」「絶叫」と読んで、かなりの衝撃を受けたのだが、本作品もそれを相当上回る
表現出来ない感情の連続!面白い。
たぶん自分が普段はあまり手にすることのないテーマや時代ということもあろうか。
もしこれが現実にあったとしたなら、と想像するとぶるぶる震えがきそうな内容である。
毎日眠気と戦いながらも気になって気になって、就寝前に少しずつ読んでいたので、夢に出てきそうな感じだった。
国家、民族、戦争、否が応でも考える機会となった。
まさかのいくつかのどんでん返しの後は、救いのある明るさの見える結末で満足だったと思う。
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誰のために戦いの?何のために戦うの? - 葉真中顕「凍てつく太陽」 ★★★★☆
社会派ミステリーの名手ですが、本作はミステリー感は弱めです。読み物としては戦時中の大河な小説で抜群に面白いです。
「戦争はおろかなものだ。」使い古された言い方だとこうなる。
戦場にいる人だけではなく、関係者やその家族、さらには一般市民にまで全員に負担が生じるのだ。そしてそれを肯定するような言葉はある種の洗脳みたいなもので、人々の精神を蝕んでいく。そこに幸福はない。
学校の授業で、近代日本の戦争に関してはあまり扱われないので、ある意味勉強になった。
アイヌとは何なのか?朝鮮の人々の日本人化、警察の働き、市民の生活などなど。知らないことだらけで新鮮だった。
ダイバーシティといった新しい言葉だけ進めるのではなく、歴史認識から来る、アイヌや朝鮮の関係について、潜在意識から教育していくことで真の多様性が生まれるのではないだろうか。
古い漢字にはフリガナをふってほしかったです。・玉蜀黍・・・トウモロコシ
・鐵鋼・・・・てっこう
#引用
・「農耕民の言う豊かさというのは、単なる富の蓄積に過ぎない。しかしそれは本当に、人を幸福にするのか。保存可能な穀物を育てることで、農耕民は富を蓄積することができるようになった。それが結果として持つ者と持たざる者を分けることとなる。支配階級が誕生し、人々は平等ではなくなる。また、蓄積した富は奪うこともできる。自分と他人、敵と味方を分けるまやかしが生まれる。国家、宗教、民族だ。これらを獲得した人間は当然の帰結として争うようになる。戦争こそが、農耕民の最大の発明だ。」
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北海道の室蘭市の大東亜鐵鋼の飯場で脱走事件があり、その捜査で人夫として潜り込んだ特高刑事の日崎八尋.昭和19年当時、朝鮮半島から多くに人が連れてこられ、厳しい労働を強いられていた.飯場で仲が良くなったヨンチュン(永春)から情報を得て、脱走方法を見出した八尋は、ヨンチュンを誘って脱走を試み、まんまとヨンチュンを逮捕する.特高の三影から、アイヌの血を引いている八尋は酷い目に合うが、飯場の金田が殺害された事件で、八尋は嵌められて犯人とされ、網走刑務所に送られる.そこでヨンチュンに会う.彼らの酷い策略だが、最終的に脱走する.八尋の父は畔木利一を弟子としてアイヌの中で鳥兜の毒の研究をしていた.東堂中将らは大東亜鐵鋼でウラン爆弾の開発を進めているが、研究資金を密かにため込んでいる.彼らの仲間が次々と殺害され、話は展開する.戦前の特高が跳梁跋扈する雰囲気をうまく描写しており、利一や能代、御子柴ら個性的な人物が出てきて楽しめた.