黄砂の越境マネジメント 黄土・植林・援助を問いなおす （阪大リーブル）

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以下引用

専門的な分野の制度を高めるために、視野を絞り込み、方法論を絞り込むのは、科学的手法としては不可避である。しかし、その結果、そのフレームをすぐ外側にある事象に目を向けることが少なくなり、あたかも見えないことであるかのように、無視したり、無関心になったりといったことが起こる

特定の学問分野に身を置き、そこに忠実であろうとすればするほど、視野が狭められ、見えるはずのものが見えなくなる。

狭義の合理的行動や、利己的判断によりより大きな環境破壊に導く狂気は、まさに枠組みの外への無関心、状況からのフィードバックの欠如によりもたらされている。

【地球にやさしい】【エコ】をうたうものが、実はより大きな破壊性をもっていることはしばしばで、字面におどらされ、表見上のうたい文句を鵜呑みにしないためのリテラシーが、これほど必要とされている時代はない

環境問題について語る時、それが真に問題の解決につながっているか、他の深刻な問題を引き起こしていないか、名目上の目的とは裏腹にまったく違う利益追求になっていないか、一部の人にとって都合がよく、、、、、など適切に判断するには、幅広い知識、判断力が求められる。しかしその知識は、必ずしも専門知ではなく、往々にして、ないがしろにされがちな直感であったりする。

専門家、科学者は、フレームの中における再現可能性により科学的だと認定されているものではなるが、フレームが機能することにより、既存の知的枠組みの制約を受け、柔軟性を欠いている場合が多い。

試行錯誤を経て行われた対応に関しては、いきあたりばったりで計画性がないといった評価を与えられがちだが、逆に適切なフィードバックが反映され、フレームがその都度更新されている側面もあり、形式的整合性や、計画通りの達成がなされている場合には落とし穴が潜んでいる

大規模な農地の創出といった試みは、『荒涼たる大地』を緑に変えるという崇高なミッションとは裏腹に、実は多くの－の効果をもっている
→【素手のふるまい】の【わからなさ】ではないが、おそらく本来の生成や創発というのは、『言葉にならない』ところを動力にしているところにしか成立しないんじゃないかな。

悪化する環境問題に、何らかの改善策を施し、自らの意識を満足させることができ、さらに砂漠というロマンを掻き立てられる場所に赴いて、緑の大地に変えることは、人類への多大な貢献であると確信できる壮大な夢、のように感じられる

大義名分、正義が語られれば語られるほど、一方的な押し付けの危険性が高まる。

思い込みは、対処をつぶさに観察する目を奪い、善意という名の破壊的活動へと人々を誘導する

日本人向けの植林は、あたかも釣り堀とでもいえそう。つまり植林をしたいという日本人に、あらかじめ植林地を用意し、植林の準備も万端に整えて、夏のレジャーとしてやってきた人に、植林体験をさせる。

植林をしたという、満足感を得ることを自己目的化した、レジャーのような植林

目的達成という硬直化した目標に向かって��々が従うという図式となり、本来自由意志で動くはずのNPOが目的硬直型の組織となる

どんな困難があってもあきらめないという頑強な意思により支えられていたため、どんなに現場の自然や地域社会が植林に対して不適応や抵抗を示しても、そこから意味を学ぶというフィードバックが働かず、あくまでも理想の緑の大地を実現すべく、一切の困難を省みないという硬直化したシステムとなっていた。

緑色帝国主義。緑化という崇高なミッションを実現すべく、人の庭先んで、他の土地で培った知識や技術を押し付け、自分たちの行為が、地域の人や地球環境に福音をもたらしていると解釈する

互酬関係と市場関係は、共同体の内部と外部を分かつものではなく、関係の濃淡に応じて、つまり私とあなた、といった二者関係の上に、濃淡をもって展開され、それらが巧みに使い分けられている

強固な互酬関係に支えられた貨幣的交換といったものが普遍的にみられる

西欧や日本などの集団型社会においては、金銭を介する『市場経済』と互酬性を基礎とする贈与経済を二分して考える認識モデルが暗黙に共有されているが、中国やイスラム世界などにみられるネットワーク型互酬社会においては、金銭を媒介にするかどうかは重要な区分とはならず、友人関係の中に、金銭が入り込み、市場関係の中に個人的互酬関係が入り込む。そして金銭による交換関係と、金銭によらない互酬関係が、相互に矛盾することなく、人びとの関係の網の目のなあｋで共存する。それは共同体ではなく、個別の人間関係によって担保されている。その信頼はうわさにより作られる。

朱の活動は、一見、明示的に理解するのは困難であった。構造化、目的化、規範化を常に脱構築し、人々とのコミュニケーションを通して、常に動きの中に自らを投じようとする

★人々の自由な解釈や、そこからさらに展開される開かれた語りにのみメッセージを託し、指令、命令、強制といった線形的で目的達成型の語りには決して近づこうとしなかった

何も語らず、それをつくり、そこに集まる人々が新たな語りを展開する。

語りと行動を分けることをせず、常に行動と語りを一致させようとする。これがコミュニケーションで重要だった。異なる他者へのメッセージを発することにで、その
相互作用が新たな行為を生み出す。そこには予見による押し付けも、他者を従わせるメッセージもな。ただ自らが行為を紡ぎだし、それに引き寄せられた人が、コミュニケーションを発生させ、次なる行為を生み出す連鎖のなかに語りが埋め込まれている

朱の行動が一見分かりにくく、動的なプロセスとしてしか理解しえなかった

そこから抽出できるのは、構造そのものではなく、構造化のダイナミクスであり、動的なモデル。

この地域を記述しようとしても、固定化した記述をしようとした瞬間に、何らかのストーリーの捏造が発生する。動きのダイナミズムとして捉えるべき社会を、文章にして表現しようとした瞬間に、別のものに。朱の活動も同じ。

動くこうぞうそのものを文章化するというオープンテキスト。語りと動きを切り分けず、語りそのものが動きの上に乗るという意図

動きのなかでプロセスそのものを記述する

生命論的記述。生命が繰り広げる複雑な因果のループを、いかに生きたまま記述するか。動的で可変的なパラダイムを導入し、その因果の連鎖を記述する

非線形的なダイナミクスを線形に落とし込むのは、さまざまな歪みと捏造を生み出し、観察者の対象への視点の固定化をもたらす。対象が非平衡な動的ダイナミクスに置かれている場合、線形モデルでは語れない。

イスラムや中国といったネットワーク社会では、二者関係のつながりを重視、互酬関係の網の目という思考はむしろ一般的で、それゆえに個人のつながりを重んじる。そのネットワークが、仕事につながる

★★地域社会を記述するには、ある時点で止まった像を描き出すのではなく、時間の変化に伴って動く軌跡を記述する以外に、その動きを捉える方法はない。それは必然てきに物語の記述として描かれることとなる。
→これだなぁという気がする。まとまったものではなく、生成力それ自体として提示して、そこに相互交流が発生するような、そういう記述がしたい