紙の本
寛容と自制
2019/05/06 10:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主主義の雄、アメリカにおけるトランプ大統領誕生は民主主義の自壊の始まりだ。アメリカは憲法があるから民主主義が守られてきた、ということではなく、2大政党間に寛容と自制心があったからこそ民主主義の崩壊を防いできたという。これまでにも崩壊の危機は幾度もあったのだが、両党間、両党政治家達の寛容と自制心で克服してきた歴史がある。しかし、トランプ大統領の出現はこのガードレールがなくなってしまったことを意味するという。
トランプ大統領誕生は一夜にして起こったわけではなく、民主主義を殺すそれまでの流れがあったわけで、これが加速した結果である。アメリカ建国以来、アメリカの民主主義制度、大統領制について丹念に分析されているので理解がしやすく、納得させられる。
池上彰氏が解説を行い、日本について触れている。安倍1強体制の下で国会の討論が機能しなくなり、行政は忖度が横行、政党間同士罵り合う現状を憂いている。同感。
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トランプ氏について
2020/07/31 21:53
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投稿者:ごり - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主主義の強固な国、その代表格アメリカがトランブ大統領の出現により、アメリカ民主主義崩壊の危機が叫ばれている。
これまでも各国で民主主義崩壊の危機はあった。そのたびに、崩壊を防ぐべくポリシーを捨て様々な行動を採る各政党や議会制度の機能的役割などでその難を逃れてきたのだった。
これまでのアメリカでは考えられないような想定外の大統領選出、民意を反映した選出により民意を抑圧するような状況になってきている。
他山の石として日本のそれを考えてみよう。
紙の本
「柔らかいガードレール」と「門番」
2020/01/06 20:55
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とてもおもしろく読みました。
世界の歴史や様々な国の例をあげながら、いかにして民主主義が危機に陥るのか、きちんと論説した一冊です。
アメリカにおけるトランプの大統領就任を見ても、あらためて民主主義というシステムの危うさを感じます。確かに、ヒットラーも「民主的な」手続きを経て独裁者となった。必ずしも民主主義がファシズムの防波堤とはならない証左です。考えてみると、恐ろしい。
冒頭にはジャーナリスト池上彰氏による序文あり。
一読をオススメします。
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リベラルの苦悩
2019/12/09 12:33
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:someone - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主党を支持するリベラル勢力の苦悩が見える一冊。
筆者はハーバード大学で政治学を研究してきた学者であり,本書に
おいては民主主義の危機が暴力によってもたらされるだけではなく,
選挙を通した合法的なプロセスを経ながら崩されていくこともしば
しばあるということを,ドイツ・イタリア・中南米諸国を事例に紹
介する。
ただ,本書においては反トランプという政治的な姿勢が前面に出過
ぎており,ペロン(アルゼンチン)・フジモリ(ペルー)・チャベ
ス(ベネズエラ)といった民主的選挙により選出されながら独裁化
した指導者に共通してみられる特徴が,そのままトランプにも当て
はまるという「分析」については,結論ありきのものではないかと
の疑念を拭えない。
また,個人的に特に違和感を覚えたのは「共和党は予備選挙で勝利
したトランプを,大統領候補に指名しないという選択を,指導部が
主導して行うべきであった」という主張である。
共和党という限られた集団内とはいえ,示された民意を党の指導部
が拒絶することに正当性はあるのか?
筆者は政党を「民主主義の門番」と位置づけているが,民意と異な
る決定をする門番(≒党指導部)をいったい誰が監視するのか?
選挙結果の否定は政党や選挙といったシステム自体への失望を招き,
長期的には更に深く民主主義を傷つけるだけではないのか?
この辺りの主張には「大衆は時に正しい判断ができないので,導か
なければいけない」という,知的エリートの傲岸さが垣間見える。
リベラル勢力の退潮はこうしたところに一因があるのではないか。
本書の結論は,民主主義は成文化された憲法や法律に依るものでは
なく,「相互的寛容」と「組織的自制心」という精神にこそ根ざす
という極めて穏当なものである。
それだけに,反トランプという一点において寛容さと自制心をかな
ぐり捨てたトーンが非常に気になった。
トランプに投票した人々を「独裁者の卵を支持する衆愚」(流石に
こういった表現はしていないが)と切り捨ててしまっても,何も解
決しないのだ。
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今、みんなが優しくない。
意見の異なる相手を敵とみなして、相手を叩きのめそうとする。
その背景には、そうしなければ自分のいる場所や、自分自身がないがしろにされる、失われる、そういう気持ちがあるのではないか。
アメリカで民主主義が衰え始めているというのは、
トランプさんが大統領になってからをみている人には、
感覚的に「そうだよね」と同意が得られることだと思う。
しかし本当のところ、アメリカの民主主義の衰退は、
トランプさんが大統領になるかなり前から始まっていた。
そしてそのことの起こりは、
時を経るにしたがってさまざまな人種から支持を集めるようになった民主党に対して、
相変わらず白人キリスト教徒からの支持が中心となっている共産党が危機を覚えたからだという。
彼らが感じている危機には二種類あって、
一つはその勢いが加速して民主党の支持者がどんどん増えると、単純に共産党の支持者が減って票が集められなくなるというもの。
そしてもう一つは、白人キリスト教徒こそがアメリカ人と考えている人たちにしてみれば、アメリカが失われるということだ。
よくテレビのニュースで、「アメリカを取り戻せ」みたいにシュプレヒコールしてるのみていて、不思議に思っていた。
私にとってアメリカは、色んな人種の人たちがいて、貧富の差はあれど、みんなが自由に生きれる国だと思っていたからだ。
実際、ニューヨークをブロードウェイ沿いにずっと歩いて行くと、色んな人に出会って、生活水準もさまざま。
でもみんな誇りを持っていそうに見えた。
でも、アメリカ人の中にはそういう感覚じゃない人もいるのだ。
人種という考え方がとても根強いのだ。
本書を読むと、差別という考えはもう当てはまらないように思った。
自分たちの立場、安全を守ってくれる(と思っている)人種。
なまじ、白人の人は以前は他の人種の人たちよりもデフォルトで優遇されていた時代があったものだからなおたちが悪い。
トランプさんなんてまさにその時代を知っている人だし。
そんなわけで、アメリカの民主主義衰退の背景には、未だ解決されない人種問題が身を潜めている。
それが引き起こす「自分たちを守りたい」と思う気持ちが、相手を叩きのめそうとする行動に変わってしまっているのだ。
本書で繰り返し提言される柔らかいガードレールを揺るがしているのはそんな人の中の気持ちだと思う。
これを読むと、大声で脅迫している政治家たちが、ブルブル震えてキャンキャン吠えている子犬に見えてくる。決して侮れない子犬だけど、ちょっとかわいそう。
日本も、日本の民主主義は何なのかちゃんと考えないといけない。
今の日本は緩やかな独裁と言っても良いのではないかと思えてきた。
ずーっと、自民党の独裁。
国民も特にいいと思ってるわけじゃないけど、誰もイヤだと言わないから続いてる。
日本の野党の人たちは、打倒安倍って言うけど、そこに自分たちのアイデンティティを求めないでほしい。
日本という国を良くする���治家でありたい、という気概をもっと持って欲しい。
その気概があって、きちんと勉強しているなら、対立することを目的にしてはもっと悪くなるだけだということが分かるはずだ。
前に進まなくてはいけない、そこで叩き合ってる暇はない。
アメリカの民主主義が衰退しているのは、ある意味必然だった。
まだ解決していなかった、人種の垣根をどうしていくかということが残っていたからだ。
だから、ここを乗り越えてもっと強い民主主義を作るチャンスでもある、めっちゃ難しいと思うけど。
日本にはきっとまた違う問題がある、日本は日本でオリジナルの課題に自分たちで臨まなければいけない。
それが何かはまだわたしには分からないけど、
でもそれはみんなでやることなんだ。
誰かがやってくれることではない。
政治の場で見えていることは、世の中の縮図でしかないんだ。
下らないな、ダサいなって国や政治のことを思う時、
それは私たちがそうだってことなんだ。
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本来、民主的な制度のうちには「独裁者」が生まれるのを防ぐためのしくみが備わっているはずだ。ところが独裁者は巧妙にその「たが」を外していく。それをサッカーにたとえている部分(p105)が秀逸だ。
審判を抱き込む
公務員や非党派の当局者をこっそり解雇し、支持者と入れ替える
裁判所を支配する
メディアの買収
対戦相手を欠場させる
対立している相手を操作、逮捕、投獄、訴訟
実業家を標的にする
文化人を抑圧する
ルールを変える
選挙区の変更
投票の制限
「危機」を訴えてこれらを正当化する
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〈かつて民主主義は革命やクーデターによって死んだ。しかし、現代の民主主義の死は選挙から始まる〉――アメリカの事例を中心に、民主的に選ばれた代表が「独裁者」になっていく道筋を提示している。
本来、民主的な制度のうちには「独裁者」が生まれるのを防ぐためのしくみが備わっているはずだ。ところが独裁者は巧妙にその「たが」を外していく。それをサッカーにたとえている部分(p105)が秀逸だ。
●審判を抱き込む
公務員や非党派の当局者をこっそり解雇し、支持者と入れ替える
裁判所を支配する
メディアの買収
●対戦相手を欠場させる
対立している相手を捜査、逮捕、投獄、訴訟
実業家を標的にする
文化人を抑圧する
●ルールを変える
選挙区の変更
投票の制限
●「危機」を訴えてこれらを正当化する
こうして並べてみると、安倍晋三がやっていることと驚くほど一致している。
また、本書が「民主主義のガードレール」と呼んでいる2つの規範、「相互的寛容」と「特権の乱用を避けること」についても、「執拗な民主党政権批判」「臨時国会開催の義務を履行しない」「恣意的な解散権の行使」など、ぴたりと当てはまる。
本書の定義によれば、日本ではすでに民主主義は半ば死んでいて、安部独裁が完成間近であるということになる。暗澹とした気持ちになる。
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2017年のトランプ大統領の登場で、民主主義の危機を感じた著者らの思いが込められた本だが、フランコ、ヒトラー、ムッソリーニの時代から、マルコス、カストロ、ピノチェトを経て、プーチン、チャベス、エルドアンまでの事例から、正統な選挙で選ばれた人が、次第に変貌していく過程を精密に検証している.アメリカ合衆国では憲法だけでなく、相互的寛容と自制心の二つの規範が長く踏襲されてきたことで、民主主義が守られてきたと総括しているが、トランプがそれを無視する行動を批判している.日本を振り返ると、大丈夫かなと感じることが多くなっている.
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アメリカを含め、世界各国の民主政治や民主化、そして独裁化の多様な経験を事例として多く引用し、民主主義の持続に必要とされる要素について理論を組み立てている。
制度的側面のみでは民主主義を保つことには十分ではなく、政治に参加するひとびと、政党、組織の間での不文律が大きな役割を果たしていることを論じる。相互的寛容と組織的自制心と概念化されているこれらの暗黙のルールが民主主義を支えるガードレールとして機能すると説明する。
二極化や政党の過激化とは、これらの不文律が四方八方で破られることで問題化し、主流派にも浸透し常態的になることでますます悪化する。
特定の人種や宗教、グループに対して排他的にならず、多様な人々を受け入れる基盤を作ることが、どの政党にも求められる。
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鈴木 幸一(インターネットイニシアティブ会長CEO)の2018年の3冊。
「規範」と「自制」を捨てたトランプが大統領となった米国で、民主主義が崩壊する危機を分析している。
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民主主義を守っているのは憲法や法律よりもむしろ本書でやわらかいガードレールと呼ばれる規範や慣習であり、独裁者はまずそこを攻撃する、という指摘は説得的。
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トランプ政権のことが書かれているのに、まるで日本のことが書かれているようだった。こんな時代になるとは思ってなかった。
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民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道。スティーブン・レビツキー先生とダニエル・ジブラット先生の著書。世界中で民主主義が崩壊に向かっている。大衆迎合主義者や極端な過激派勢力が権力を手中にすると、合法的な独裁化で民主主義が危機にさらされる。アメリカのトランプ大統領のようなタイプの政治家が世界中で生まれている事実。民主主義を守って、独裁政治を防ぐには、きちんと選挙に行くこと。
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自制と寛容の規範は”柔らかいガードレール”として機能していた。
独裁主義的な自制を欠いた行動(①民主主義的ルールを拒否、②政治的な対立相手の正当性を否定する、③暴力を許容・促進する、④対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする)に政党や支持者が迎合することで、相互寛容が破られ民主主義が破綻していく。
ヘンリー・フォードやチャールズ・リンドバーグが民主主義の安全装置(門番)により排除されていたとは驚きだった。
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今、民主主義は危機的状況にある。トランプ政権がようやく倒れたのは良かったが、世界的に見ればまだまだ油断はできない。
選挙は民主主義を護れるのか、日本は民主主義を護れているのか。一人ひとりが考えなくてはならないと思う。