紙の本
乳幼児の育児は大変なんですね。
2019/06/01 17:47
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
乳幼児の育児をしている母親が追い詰められていく心理状態が詳しく描写されていて、そういう方と接するときの参考になりました。裁判員に選任される過程が一部省略されていて、作者がわざとそうしたのかそうでないのかわかりませんが、「実際はそうじゃないよ」と突っ込みながら読みました。それに、たぶん本書の主人公なら、育児を理由に裁判員にならなくても済んだと思うけど、それを言ってしまってはストーリーが成り立ちませんものね。
紙の本
被害妄想…?
2019/04/12 22:36
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投稿者:骨なしチキン - この投稿者のレビュー一覧を見る
とある一児の母が、裁判員の補欠に選ばれたお話です。魔の二歳児である娘の描写は、あるあるで共感できます。そして、その時の母の対応もあるあるで共感できます。しかし、主人公である母は被害妄想が強すぎるのでは。夫に何も言えない、オドオドしている等々。そして自分を被告人に重ねてしまい、更に精神的余裕が無くなってしまいます。美味しいものを食べて、まずは落ち着こうよと声をかけたくなります。
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ごく普通の主婦里沙子が、生後8ヶ月の我が子を殺してしまった主婦、水穂の刑事裁判の裁判員になった話。
3才になる娘を抱え、実の両親とは折り合いが悪く
夫の両親の住む浦和へ毎日子どもを預け遠回りして裁判所まで通い
これまで、まったく縁のなかった裁判に関わっていくことで
自分が娘を出産し育てるにあたって、母乳でなければいけない。という凶悪観念にかられた日々を思い出し、
泣き止まない赤ん坊との日々を思い出し、
保健師や友人、公園で出会う母親たちからの言葉で傷つき
夫や姑からの心無い言葉でも傷ついてきたことに蓋をしてきたことを急激に昨日のことのように思い出していく。
しだいに、被告人の水穂と自分が重なりあって
公判を重ねていくと同時に、自分がやってきたことと
水穂がやってきたことの境目が分からなくなっていく。
あまりにも身近に起きた、見知らぬ女性の事件。
それだけでも疲れるのに、娘の文香のダダのこね方は
ハンパなく里沙子を痛めつける。
あまりにも、その駄々こねの描写がリアルすぎて恐いくらい。
ビールを飲まないと眠れなくなる里沙子に
アルコール依存症だと決めつける夫。
裁判員になるなんて、キャパオーバーな事なんだから
断れと言う夫。
ダダをこねる娘に、ちょっとしたしつけのつもりを
虐待と勘違いされ、自分は本当に虐待をしているのか
ずっと虐待をしてきたと思われているんじゃないかと
疑心暗鬼になっていく里沙子。
もう、これは心の葛藤で
公判が続くあいだじゅう、証人が変わるたびに
里沙子は、深く深く考えすぎてしまい
読むのがめんどくさくなってくるんだけど
この里沙子は、いったい最後にはどうなるんだろう?
水穂は、どうなるんだろう?という思いが強すぎて
一気に読む進む。
考えることも大事だけど
ま、いっか。と思うことも大事。
でも、ちゃんとその時にしっかり考えて答えを導き出さないと、とんでもない誤解や思い込みをしたまま人生を過ごしてしまうと言われたようで
最後まで読んで良かった。と思った。
角田光代さんの長編小説は、これだから好きだ。
日常が、恐怖になってしまうスリリング。
裁判員って、まだまだ身近じゃないし。
体験した人の話も聞くこともない。
こんなふうに小説になって初めて今回、裁判員の大変さも知った。
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角田さんは本当に心理描写が上手だな…
黒とも白とも言えない、人間のぐるぐるもやもやした部分をそのまま描き出してくれる。
全ては思い込みかもしれない、被害妄想かもしれない。でも他人の本当のことなんて誰にもわからない。自分のことすら満足に分かっていないのに。
本筋ではないけれど、以下の描写がいちばんグッときた。そう、そうなの。よく言語化してくださいました…という気持ち。
p136
会って愛を語り見つめ合うより、手をつなぐこともなく食事をされるほうが重大なことに思えた。恋愛はいつか終わるだろうけれど、そうでなければかつての恋人同士はいったいいつ、連絡を取ることをやめるのか。
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里沙子はどこにでもいるであろう主婦であり、水穂も一つのボタンの掛け違いがあっただけで変わらない存在だったかもしれない。
被告人である水穂に自分をダブらせる里沙子の心理描写に、読んでいて息苦しくなる思いがした。
無意識であるが故の毒母の影響力に恐怖する。
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再読。
同じような立場の女性が起こした幼児殺害事件の補充裁判員に選ばれた里沙子。
裁判で事件の全容が明かされていくにつれ、自分と被告を重ね合わせていく描写に苦しくなりました。
前回も思いましたが、初めの子の時に、神経質な子育てをしていた自分を思い出し、気持ちわかるなという事もありました。
幼児が思い通りにならないのは当たり前なのに、母親になったばかりで周りも気になり、悩むという事は多かれ少なかれ子を持つ母にはあるのではないでしょうか。
最後の展開は考えさせられるもの。
里沙子のその後が気になります。
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重ねられていく穏やかで温かい言葉と、
そこに反する重ねられていく冷たい無意識の攻撃性のある言葉の連続。
家族という閉鎖的な空間の中で、
血の繋がりの無い他人だった夫婦と
密接に繋がる母子がいるとそれは歪になることの方が当たり前なのかもしれない。
家族愛という絶対的な免罪符の中で、
意識的に、無意識に、相手を攻撃することがある。
家族だからと言って甘えるだけでは相手を押しつぶすし、自分自身も壊れることになる。
だけどそれが「普通」で「当たり前」だと洗脳するように思うことが幸せなのかもしれない。
いつ自分がどの立場になるかわからない狂気と恐怖を感じた。
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子育て中の主婦である里沙子が、子どもを殺した主婦の裁判員に選任される。裁判を通じて、里沙子は被告人と自分を重ねるようになり、夫や子どもとの関係を見つめ直す話。
私自身も裁判員経験があるが、一番感じたのは、被告人と自分は全然変わらないということ。ニュースだと、被告人はどこか異常であるかにように報道されることもあるが、実際は育った環境や周りの人間関係でちょっとした不幸があり、そこからボタンの掛け違いが生じただけなんだと感じた。なので、里沙子の被告人と自分を重ねる心情は理解できるし、似たような境遇なら尚更だろうと思った。一方、自分と重ねすぎることで、裁判や評議中に自分の世界に浸って参加できていないシーンが多く、ちょっと極端だとも感じた。
裁判員が被告人の証言の妥当性などを議論しても、それは彼らの主観に基づくものでしかなく、被告人の価値観や犯罪時の心理状態の本当のところはわからない。だからこそ、多様な価値観を持つ複数の裁判員が、自分の考えをぶつけることに意味があるし、そうして結論付けられた量刑は正解かはわからないが、一般的にある程度納得感のあるものに近づくのだと思う。その意味で、里沙子は最後に自分の考えを評議で述べることができてよかったと思う。
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8ヶ月の娘をお風呂に沈めて殺してしまった母親と、その裁判に裁判員として参加した2歳の娘を持つ母親が、被告に自分を重ねながら裁判や自分の結婚生活について回想したりする話。
とにかく結婚生活の嫌なところをこれでもかと詳しく描写していて、かなり嫌な気分になること請け合い。自分はイチ父親の立場で読んでも結構キツかったけど、母親の立場で読んだら相当キツそう。
ドラマ化された話が新聞に載ってたので読みはじめたものの、まあ、あんまりオススメはしない。
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子供を浴槽で殺した事件の補充裁判員となった主婦 里沙子は、裁判で証言に触れるうち、被告に自らの境遇を重ねていく。
感情移入100%と謳ってあったが、子供を育てたことのある母親なら、誰しも一度は思い悩んだことがあるのではないかと思う出来事に触れている。
育児書通りになどまるでいかない育児。
泣き止まない子供。
泣きやませないと夫に叱られるのではという恐怖。
痛いほど共感できる部分もあったが、なにぶん物語が冗長に感じた。
最後の方では大分食傷ぎみになり、すでに満腹になっていた。
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息苦しい。。エッセイの角田光代とは大違い笑。
乳児殺人事件の補欠裁判員に選ばれたのを機に、自身の子育ての辛さと重ねて行く。被告と自分の境目がだんだんなくなっていく。
少し思ったのだけど、被告と裁判員が同じような境遇の場合(この場合は子育てに悩む主婦)、量刑に影響してしまわないのか。裁判員のメンタルも心配。
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私も主人公の女性と同年代、同じ年頃の子供を持つ親です。
母親ならば、主人公や瑞穂の気持ちが共感できるまではいかなくても、自分が乳児と過ごした時期に心の中を通り過ぎた経験のある人がほとんどなのではないでしょうか。
それは自分でも認めたくない感情であるし、それを外に出すことが許されない雰囲気のなか子育てをしている人もいると思います。
通り過ぎてくれたから、今自分は家族と笑いあえているだけで、その感情が留まってしまっていたらと思うと恐ろしいです。
その恐ろしい感情は、真正面から乳幼児と日々を過ごしていれば誰でも留まってしまう可能性があるほど「普通」で「暴力的」だと私は思います。
子供はとっても可愛いですが、同時にどんなに理不尽な思いをしても大切に育てることから抗えないこわさもあります。
この作品はその感情と向かい合うことができます。
(向かい合いたいかどうかは人によると思いますが)
主人公のように、容疑者に自分を重ねて、それでも自分とは違うと信じて違うところを探す。
それを、読んでいる間に何度もやってしまいました。
私が幸いだったのは、子育ての理不尽さを一緒に笑ってくれる友人がいたこと。
それから夫が父親となり、一人で子供と対峙する悩みを小さなことから大きなことまでうまく共有できていることだったと思います。
主人公や容疑者の夫たちが子供の成長のあれこれや、妻が悩んでいたことを「そんなことで騒いで」という気持ちで冷ややかに見ていた描写がありましたが、アレをやられると大げさでなく泣きたくなりますね。
他人事なのかよと。
そういうリアルさもおもしろく、これを男性が読んだらこの部分にどんな感想がでてくるのか、気になります。
読後感が悪いという感想がありましたが、私は周囲からの目線ばかり気にしていた主人公が、ひとりの人として自分の価値観で人生をやっていけるところに立てたような気がして、力強さを感じました。
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読んでいる間、ずっと心の中がざわつくような小説だった。
主人公はじめ、登場人物たちの心の機微が細かく表現されているところは、さすが角田さんという感じ。「これこれ!」という喜びみたいなものもあるけれど、やはり怖い。人の心を知ると言うのは。
主人公は30代の主婦・里沙子。もうすぐ3歳になる娘の子育てをしている彼女は、ある日突然裁判員裁判の補充裁判員に選ばれる。
参加した裁判は、里沙子と同じ主婦が、自分の娘である赤ん坊を風呂に落として殺害した事件だった。
その事件に触れるにつけ、自分の境遇を被告人に重ね合わせるようになり、それがきっかけで里沙子自身の家族との関係が変化していく。
私は子育てを経験してはいないけれど、姪や甥が小さかった頃を見ているので、多少は想像ができる。子を育てるというのは、毎日が闘いだということを。
夫が協力的であったり、容易に頼れる実の両親が近くにいればいいけれど、そうはいかずほとんど1人きりで子育てをしなければならない母親もきっと世の中にはたくさんいる。
主人公の里沙子も、そちら側の母親だ。
夫の陽一郎とは不仲ではないし多少子育てにも参加してくれるものの、里沙子は彼に本音を言うことができない。
実の母親とは没交渉で、夫の両親とは行き来があるものの、子育て観の違いもあるからそうしょっちゅうは会わない。
イヤイヤ期真っ盛りの娘の文香にどうにか向き合って子育てしていた里沙子に、突如として、裁判員裁判の話が舞い込む。
バリバリしていた仕事を辞めて家庭に収まり、母親との折り合いが悪く幼い娘をほとんど1人で育てていた被告人と境遇が重なるものがあった里沙子は、その裁判と被告人にのめり込んでいく。
自分でも予想していなかった出来事がきっかけで、近しい間柄にあった人の心の中が分かってしまうということは実際にもある。
里沙子は裁判がきっかけで、平均的には優しく良い夫だと思っていた陽一郎の本心が(想像ではあるがほぼ近いかたちで)分かってしまい、疑心暗鬼になってゆく。
とあることがきっかけで文香への虐待を疑われた里沙子は、ますます追い詰められる。
ひとつの事件や出来事も、見る人の立場によっては随分変わってしまう。
現役の主婦が引き起こした悲劇は、やはり現役の主婦がいちばん理解出来るだろうし、そこからいちばん遠い境遇の人間がなかなか理解できないというのもまた肯ける。
フラットな目で物事を見るように心がけても、実際それは難しい。
里沙子は被告人を通して、自分自身のことを分かってもらいたいのもしれないということを知ることになる。
単純に、いちばん近しい人に理解してもらえないというのは、とても辛いことだ。
だけど残念ながら、男女間ではとりわけ、そういうことはよくある。
自分が追い詰められたとき、プライドを捨てて誰かに頼ることができるか、考えを切り替えて自分を少しでも解放できるか。
それまでの生き方や性格が、歯車を変えてしまうこともきっとよくある。
哀しく、もどかしく、歯痒く、そして最後に力強さも垣間見えた物語だった。
角田光代さ��の洞察力は、わくわくするけれどやっぱり怖い。
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刑事裁判の補充裁判員になった女性が、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼させた幼児虐待死事件と家族であることの光と闇に迫る心理サスペンス。
徐々に追い詰められていく主人公・里沙子と同様に、読む私たちも息苦しくなる。我が子の成長は同時に親の成長でもある。言動や思考の全てが神に試されるのが育児なのかもしれない。
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1歳児を子育て中。すごく重い内容で、読むのが怖く辛く感じつつも、ページをめくる手が止まらなかった。子育てしてなかったら、そういう人もいるのね、まぁでも私は大丈夫、くらいに思ってたかもしれない。今なら、自分だって紙一重かもしれないと思う。特に何か救いがあるわけではないけど、子育て中の方に男女問わず読んでほしい。