紙の本
織田作之助賞を受賞!女性たちが何に苦しみ、闘い、どう生き抜いてきたか。全ての人に出会ってほしい一冊。
2019/12/10 11:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
仕事、結婚、子ども……女性がそのすべてを求めることが困難な時代に生きた三人の女性の半生。昭和から平成、そして未来につながっていく、今読むべき小説。昭和の東京。自立を目指し働く女性、家庭を守る女性。自分が選んだ道にいながら葛藤し続ける彼女たち。さらに時代の変遷と、老い。抗えない流れに虚しさを感じながら読んだ。どの道を選んだとしても信念のある生き方は素敵。昭和の時代もよくわかる素晴らしい作品。等身大の女性の生活感覚や人生感覚が、身につまされるほどよく書けている。現代史の視点がプラスされ、窪さんが新しいステージに立ったと感じた。『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社文庫)を読んでくださった方も、よかったら読んでみてください。三人の女の人生がぎゅっと詰まった本です。
電子書籍
昭和の話だが
2021/06/08 16:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんだか、古い時代のこととは思えません。この三人の女性の葛藤は、現代の女性に、より顕著に存在するのではないでしょうか……。ということは……、あまり、日本の女性の地位は、向上していない、ことの表れ、かもしれないですね……。
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「平凡パンチ」創刊の時代に出会った大橋歩、三宅菊子。この2人に、当時編集部で働いていた庶務の女性を加えた3人がその後どんな人生を歩んだのかを描く大河小説。もちろんモデル小説なのですべて仮名だし、庶務の女性はたぶん小説的な創造。
とにかく面白くて、夜中寝る前に読み始めたら一気に朝まで読んでしまった。時代の熱さやうねりが感じられる一作。
中には、かつてディレクター時代に仕事を御一緒させていただいた伝説的名スタイリスト原由美子さんをモデルにした女性も登場する。
平凡パンチで三島由紀夫や野坂昭如が学生運動を見に行きルポを書くという実際のエピソードも取り込んでいる。
もともと好きな作家だったが、一段レベルが上がった感じ。
テレビドラマには格好の素材だ。
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窪さんの本気を見た気がした。凄かった。まず宇野亜喜良さんのイラストの装丁。早川朔の絵はこんな感じだったのかしらと連想する。
昭和から平成を生きた3人の女たちの、男・仕事・結婚・子どもをめぐる様々な事情。力作すぎて、熱くて、とくに早川朔となる前の妙子がイラストレーターとして勝ち取った瞬間や、堕ちていく様、登紀子の17歳年上の旦那に捨てないでとプライドも捨て放つ様、キャリアを望むことを早々と諦め順風満帆な専業主婦を選んだ鈴子、そしてその孫娘の平成時代の奈帆。
最初から最後までずっと熱いものが押し寄せてくる感じ、目眩がするほど。みんないなくなっていく中で残せるものがあるってそれはすごく幸福なことだなって思った。
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昭和~平成を生きた女性の生きづらさ、力強さ。男性の目線から読むと、身につまされるものがある。
三人の女性が絡み合う、という話を予想していたが、
複雑な生い立ちを持つイラストレーター、
親のスネをかじって、親の背中を追って自立するライター、
いわゆる平凡な人生を、自ら進んで選択した主婦、
という、ある一時に出版社で人生が交差した3人の生き様がそれぞれに描かれ、
それぞれの選択と葛藤が提示される。
「幸せってなんだろう、生きるってなんだろう」という、
答えのない問いを考えさせられる。
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2019/04/05M予約
今の時代と比べて、良かったところも悪かったところもある。
鬱になり、会社休職してる孫娘がおばあちゃんに叫ぶことばが痛々しく響く。
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昭和の時代を生きた3人の女性の物語。
女性の人生にとって、大切な3つのものとは?を投げかける。
戦後の出版社で出会った出版会社社員の鈴子、フリーライターの登紀子、イラストレーターの妙子。
当時の平凡な女性として生きる鈴子、お嬢様として生まれ、男性社会の中で女性の地位を築いていく登紀子、生まれてすぐ母親に捨てられ、田舎で他人に育てられた妙子。
生まれも育ちもバラバラな3人が新汐出版と言う会社で出会い、全共闘のテロの現場を生で見たことが3人の人生を変える。
妙子が亡くなり、その葬式の場で鈴子と登紀子が再会したところから物語が始まる。
鈴子の孫が登紀子の話を聞くという態で描かれているので、説明的な文章が多く、ページ数以上に内容が濃い印象。
昭和と言う変動の時代の中で懸命に生きた3人の女性。
どんなに時代を切り開いても、人生の終焉は悲しく、きれいごとだけで終わらないのが、この作者さんらしいなぁ、と思える。
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50年前に出会った3人の女性。イラストレーター、編集者、出版社勤務から専業主婦へ。それぞれの道のなかで時代と男社会と闘い続けた日々。女性というだけで下に見られ、男というだけで上に立つ理不尽さ。それを変えようと生きた人たち。ここに登場する女性たちは強い。強くならざるを得なかった。毎日を闘い命懸けで過ごし手に入れた自分の場所、立場。そういうものが今の時代に繋がっている。昭和から平成のなかで変化し受け継がれてきたもの。それが1人の女性の心の再生に繋がっていくという展開もすごくよかった。
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自分が手に入れたい! と思ったら全部手にしてみたいもんだ。ま、それができれば苦労しないのだろうけど。
これを手に入れるために、これを諦めようと思っちゃうもんな。いやいや、もっと欲を出してもいいのかもしれない。
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女性の生き方、仕事を続けること、夫婦の関係、子育てについて、時代が変わっても悩みは尽きることがない。どうするのが正解なのか、間違いなのか、それも答えがない。
本に携わる仕事をしてきたので、すっと引き込まれて一気に読了。それぞれの年代で感じるものが違う作品だと思う。
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60年代、斬新な男性雑誌の創刊とそれに関わった三人の女性たち。表紙のイラストを描く早川朔、ライターの登紀子、雑務の鈴子。それぞれのそのときの人生とその後の人生を描く。
これは面白かった。フィクションとしているけれど、「平凡パンチ」と「anan」のことを連想する。表紙のイラストを描いてたのは大橋歩。書かれていることのうちどれだけが事実でどれだけがフィクションだかはさっぱり分からない。
そういうことは置いておいて、イラストを描くということの大変さや、雑誌というものが作った時代など読みどころたくさん。
メインテーマの一つは、女性の生き方なのだろう。仕事をとるのか結婚をとるのかという古くからある二項対立。出産、家事、金を稼ぐこと。女性が生きるということをこれでもかと描いた、ドキュメント風小説だった。
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東京オリンピックが開催された1964年、出版社で出合った三人の女性のそれぞれの50年間を、激動の時代を背景に描いた長編。
田舎の貧乏暮らしから這い上がり売れっ子となったイラストレーター、恵まれた家庭で奔放に育ち女性雑誌の先駆者となったフリー編集ライター、寿退社の夢を叶え専業主婦となった元事務員。女性の社会進出が始まったばかりの60年代から始まり、バブル期を経て、現代に至るまでの人生は三者三様だ。とは言え、メインは仕事を続ける二人で、専業主婦は孫とともに狂言回し的な存在となっている。
作品の根底には常に女性であることの制約、生きにくさがある。男、仕事、結婚、子どものうち、3つを選ぶとしたらどれを取るか。すべて欲しいけれど、女性であるがゆえに何かを犠牲にしなければならず、選択を迫られる三人には厳しい現実が待ち受けている。感情の爆発する新宿のデモのシーンは圧巻で、胸が熱くなった。
そして何よりも、実在するモデルの存在が大きい。大橋歩、三宅菊子、清水達夫とマガジンハウス、anan。世代こそ異なるけれど、同じ業界にいた私にとって最盛期のマガジンハウスは憧れの会社だった。個人的な懐かしさと、フリーライターの経験もある作者ならではの素材への熱い思いも伝わってきて、思った以上に印象に残る一冊となった。
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二つの東京オリンピックに挟まれた時代,働く女性たちは変わったか?就職がうまくいかずブラック企業に勤めて引きこもりになってしまった奈帆が,心配する祖母と一緒に祖母の古い友人の葬式に行ったことで動き出す.祖母鈴子と有名なイラストレイター早川朔こと妙子,そしてエッセイスト登紀子.登紀子の語る自分と妙子の人生に熱く戦った真のウーマンリブの真髄と寂しさを見た.そして鈴子の人生もまた確かにもう一つの戦いであったのだ.(大橋歩さんの絵が使えないなら)宇野亜喜良の絵はまたイメージにぴったりで素晴らしい.
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親子3代
鈴子・登紀子・妙子
鈴子・奈帆・登紀子
いろんな3が出てくる。
結局、夫より社会的的地位があり経済力もある女性は幸せになれないのか。
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私よりもひと昔前の女性達の話でしたが、私の時代でもまだまだ男性優位だった。女性の大学進学率は低く、女性が四年制に行ったら就職口が無い時代だったね。
しかし時代背景は懐かしく、平凡パンチも見たし「アンノン族」の特集で萩・津和野等に群がる女性目当てに旅もした。
そんな時代にバリバリ仕事をしている女性達がいるなんて事を考えてもいなかった。
バリバリ仕事をしていた女性が寂しい晩年を迎え、平凡な人生を歩んだ女性が穏やかな生活をしている事に、少し考えさせられた。