紙の本
文も写真もカバーの質感も◎でした
2019/06/24 00:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
47都道府県の発酵食品のルーツをたどる旅行記。飲み屋で会ったお兄さんが楽しそうに教えてくれるようなフランクな文体で、発酵食品の味と土着文化を解説してて楽しく読めた。
この手の本って地味なデザインの新書だったりすることが多いんだけど、d-departmentさんから発行してるからなのかカラー写真が豊富で、カバー写真のかんずりの仕込み風景とか異文化感があって目を惹かれる。あとは何と言ってもカバー紙の細かな凸凹した質感が発酵で生まれたガス感を演出してて良い。
紙の本
おいしそう
2019/09/02 08:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の発酵食品について、わかりやすい紹介されていて、楽しく読めました。写真もきれいなので、よりおいしそうです。
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「発酵デザイナー」小倉ヒラクが47都道府県を訪れ、各地で独自に発展した発酵食品を紹介する紀行文。独特の語り口で綴られる発酵への愛情には圧倒される。筆者はアートディレクターを務める傍ら発酵菌に魅了されて「発酵」をテーマに取材と発信を続けて注目を集めている。自分自身がアートディレクターからクラフトビールに魅せられてブルワーへと転身したのでどこか親しみを感じる。発酵という人類の偉大な発明と、それを継承していくことの意義を本書は生き生きと描いている。
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紀行文だから,私の本棚の分類としてはエッセイに含めたけれども,あるテーマをもった紀行文なので,社会学の論文とも言える。がしかし,文章表現はとてもなじみやすく,一気に読んでしまった。
日本の発酵文化って,本当にいろいろあるんだなと思う。紹介されている一つ一つが興味深い。発酵食品そのものにも興味はあるが,それと関わっている人や町にも興味が出てくる。そして,いつか実際に町に行って食べてみようかなと思ってしまう。
ただ二つ,残念な部分がある。
ひとつは,目次にはある「小見出し」が本文にはないこと。本文の何カ所かに「※」はあるのだが,いつのまにか,次の話に進んでいる。あとで見返すときにちょっと不便だよ。もうひとつは,編集の関係だろうけれども,カラー写真が数カ所にまとめて収められているのだが,その写真の説明が巻末にしかないので,どれがどれなのかわかりにくい(ただし,大体分かることは分かる)。表紙の写真は,新潟の「かんずり」の雪さらし作業のようすだ。「かんずり」は大好き!
もしかしたら,編集者は,私が欠点として挙げた2点とも,分かっていてやっていることなのかもしれない。本書には「発酵をめぐる旅には,その道中も大切だ…」みたいな話も出てくるので,「ここからは,この話ね」って段落を切ることは敢えてしなかったのでは…ってね。
巻末には,いろんな会社のCMが入っていた。著者がデザインしたポスナーなのだろうな。
本書のことは,武田鉄矢のラヂオ番組「三枚下ろし」で知った。いい出会いをありがとう。
一カ所だけ引用を。
いかに文化を未来に受け継いでいくのか。ここには大事なヒントがある。伝統の本質を「様式」だと捉えると文化は変動の時代を生き抜くことはできない。「様式」ではなく「発想」、スタイルではなくコンセプトこそが文化の核なのだ。
魚がとれない。畑をやる人がいない。水が変わった、土が変わった。時代が変わり、人が変わった…。この「無い」状態を「有るようにする」意志こそが生きたデザインの源泉だ。文化は「危機によって消える」のではく「危機だから生き延びる」もののはずだ。(本書,p.206)
私の本棚にも紹介してある「地元学」の一例がここにもあるというわけだ。「あるもの探しをしていこう」。
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発酵デザイナーの著者が日本全国の何だこれは?の発酵食品を紹介する。
例えば北前船の航路だった尾道の造酢や、東航路の灘の酒造など発酵は歴史に紐づいている。
かつて貯蔵技術のなかった時代には、塩漬けや燻製などの貯蔵の方法としての発酵があった。
その土地独自の発酵が文化を醸成していた。
ファーストフードにあふれる現代でも、日本全国に土着の発酵食品が存在する。
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前著に続き発酵に関する深い本.面白かった!
本編最後に挙げている,日本における発酵文化の多様性や独自性をもたらす要因の考察が面白い.
1. 自然環境の不安定さ,厳しさ
2. 麹菌など,微生物環境
3. 仏教による肉食の禁止
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日本酒,醤油・味噌,藍染(藍染は発酵を利用した染技術なんだそう)などが経済を動かしていた歴史に思いを巡らせたり
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消えていく文化を儚み憂いて終わりではないところ.
継いでいく人たちと繋がり,文化を再発見し,未来への道を描く試み.
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日本の食文化って豊かだなあと思いました。伝統的な製法を守る事も大切だけれど、そこからアップデートしていく事も大切な事だと改めて思います。著者の思考がミクロからマクロへ移り変わる描写がとても好きです。
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うーん,内容は面白いんだけど,ブログ風の文章をどうしても受け付けることができない.
日本に本当に様々な発酵食品が存在して,地方色がゆたかであることが紹介されていて,今度から出張の度に目を光らせて発酵食品を探そうと思うんだけど,惜しいなあ.....
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たいへんお酒の飲みたくなる本。個人的には海産物由来の肴の各章がたまらん。この人は「発酵文化人類学」の時、多分もっとずっと以前から、同じことだけを言い続けているのだろうな。
多様性、ローカリティの象徴としての発酵食こそが、規格化/画一化/工業化によって物質的には満たされた現代の食卓(=生きること)のなかで、失われた土地や先祖の生きた歴史/ルーツを感じさせる依り代となって、やがて僕たちの生きる希望になる、ということ。
単に舌の感応刺激として美味しい、不味いではなくて、その食文化がどのような背景、生活の要求から生まれたかを考えて知って食べる。そうやって土地の記憶とつながることで、人間らしさが生まれるような感じがする。
燃料補給のような食事|石田徹也
http://www.joukoku-ji.jp/pic/ivent/e_20140101_640.jpg
現代社会を生きる人々がどこかで感じている「誰もが社会の歯車であり、いつでも交換可能である」という価値観に、ささやかに抵抗するための「発酵」というキーワード。にわかにブームになっているが、それもまたビザールな味覚、珍味として側面だけもてはやされている感じもある。
「食べることは学ぶこと。つくることは思い出すことだ」
まったくそのとおり。まずは頭を使って、手を動かそう。
-----(以下、引用)-----
「「いかに死なずに生き延びるか」が至上命題とされた時代が終わり、成熟した日本に生きる僕たちの次の命題は、「いかに希望を持って生きられるか」になるのだろう。自分の暮らす土地が、自分を育んだ文化が未来も存続する。自分の存在が肯定されるための、自分という個のローカリティを担保するための希望。この国の、なるべく多くの土地でこの希望が感じられるようにする。そのときに、土地の記憶を宿し、風土を体現する発酵文化はローカリティの拠り所、希望の拠り所となるはずだ。みんなで食卓を囲みながら、何百年ものあいだ醸された歴史を食べて血肉にする。記憶を伝達するのは言葉だけではない。食べることは学ぶこと。つくることは思い出すことだ。
テクノロジーの光が世界中を照らし、豊かな世界を映し出した。僕ももちろんその恩恵を受けて育ってきた。けれどその光の届かない暗がりのなかにまた違うかたちの豊かさがある。その豊かさは土地の数だけ、幸せを願う人の数だけ無限にある。
暮らしの中の暗さに目を凝らそう。そこには命をつないできた、忘れられた存在の、忘れられた小さな声、小さな光が瞬いている。耳を傾けて、思い出そう。まだまだ過去とのつながりは断ち切れていない。過去とつながっているということは、未来への道があるということだ。危機の種類が変われば、希望もまた変わる。
これは日本の人々がどのように生きてきたかの歴史。そしてこの国で僕たちがどのように生きるかの未来。記憶の方舟であり、未来へ進むための船だ。
漕ぎ出せ、星の瞬きが消える前に」
小倉ヒラク著(2019), 「日本発酵紀行」(D&DEPARTMENT PROJECT ), P207-208
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日本発酵紀行
2022年9月13日読了
日本各地のディープな発酵を探す旅ログ。
作り手へのインタビューはもちろん、土地ごとの歴史や地理を紐解きながら、「なぜそこに発酵食品・特産品が根付いたのか」説明してくれる。
本書を読むと、土地ごとに特色ある発酵が生まれ、その土地で作られ食べられ続けており、一つとして同じものがないと分かる。
土地の気候や特産品、都や海までの距離などの地理的要因、大昔に発酵の文化が伝わった歴史的要因など、さまざまな要素が絡み合って個性あふれる発酵が生まれ、わたしたちの暮らしを支えてくれていたのだ。
本書中に「ないからこそ限られた中で工夫して生み出そうとする」という言葉があった。
自然の脅威や不便さの中にあって、日々の暮らしを楽しもうとする先人たちの姿が思い浮かんだ。
制限のあるなかで生きる人々の強かさの表れ、それが発酵なのかもしれない。
日本に住んでいながらも、まだまだ知らないことだらけ!食べたことないものだらけ!である。
ぜひ本書に出てきた発酵食品を食べてみたい。(特に、秋田・ハタハタのいずし、川崎のくずもちが気になる…)
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最近は健康にいいと、多くの発酵食品が注目されていますが、この本は日本の各地で古来より食べられたり飲まれたりしている発酵食品を訪ねる旅の記録。
味噌、醤油、納豆、漬物(浅漬け除く)、酒あたりが日本食でよく食べられ飲まれる発酵食品というところでしょうか。
でも、同じ味噌でも使う原料が違えば、風土が違えば、全然風味の違うものができる。
工場で大量生産するのではなく、手作業で作られるものは、その地域の人たちが必要とする何かを必ず含んでいる。
冷凍・冷蔵技術がまだなかった頃は、旬の時期に大量に獲れる食材を腐らせて捨てることがないようにと、食材を長持ちさせる技術としての発酵が必要だった。
漬物、なれ寿し、魚醤・塩辛など。
徹底的に無菌にこだわる日本酒醸造と、周囲に普通にある菌を取り込んで濃縮された熟成を目指す醤油づくり。
発行の手法で作られた徳島の藍染。
日常的に発酵食品を口にしている割に、知らないことが多いなあ。
北海道の標津町に伝わる「山漬け」なんて全然知らなかった。
「めふん」(サケの腎臓の塩辛)は知ってたけどね。好きだし。
呼子の「松浦漬け」(鯨の軟骨を酒粕に漬け込んだもの)は食べてみたいなあ。酒粕嫌いだけど。(酒は好きなんじゃが)
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発酵大国日本。
いざ全国の発酵を辿ってみると、その多様性と奥深さに驚かされる。
定量化と合理化が徹頭徹尾進められた現代のプロセスとはある意味対極に位置する発酵という営み。
必要に迫られた中での工夫から生まれた発酵が楽しみを生み出し、コミュニティにまで発展していく様というのは大変に興味深い。
目をつぶることが出来ない問題として、こういった営みの後継者がいないという点があるが
終章で紹介されているような「形式(How)ではなくなんのために(Why)やってるのか」という本質にフォーカスすることで
変容しながらも文化は保たれていくのではないかと感じた。
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発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが日本全国の発酵もの&それに関する人々や生活などを集めた紀行文
本の表紙の写真がとにかくかわいい!
内容も色々な土地を巡って話を聞いて
あまり知られていないような発酵ものもリサーチされています。
なんだけど…
私、ちょっとこの方の文章が苦手だわ~
なんというか…
「これでフィニッシュ!」
「このテクスチャーが…」
「菌がサヴァイブ~」
とか…
読んでたらちょっとこっぱずかしいような
ムズムズするような気恥ずかしさが…
いや、やっていることはすごいんだと思うんだけど…
ちょっとサブかった…。
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発酵デザイナーの小倉ヒラクさんの発酵本2作目。
発酵文化を探索するフィールドワークの様子をそのまま記しており、各地の発酵への興味をそそられる。
文化とはその土地にあるものを使ってより良い生活を営むための人類の叡智の結晶の一つだが、発酵は文化と深い繋がりがある。それをこの本では感じることができる。
特に良かったのは宮城県の「あざら」を記している部分。文化継承の本質は「儀式」ではなく、「発想」であるという部分。
ファッションでもそうだが、一昔前のトレンドを今のテクノロジーと掛け合わせることで、新たな流行が生ずる。
この流れを理解した上で原点回帰している手法(木桶を使った酒造り等)を見ると面白い。
大体、こう言った揺り返しはまた、どこかで逆転するので、我々消費者は飽きずに発酵食品を愉しむことができるのだろうなぁ。