紙の本
よくわかりました
2020/04/19 09:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランプ大統領が行ったパリ協定離脱は本人はもちろん支援者の意向を汲んだもののようだが、その背景にあるアメリカ社会について詳しく知ることができた。
科学技術の最先端国であるアメリカ国民の多くが科学、進化論を信用しないか、懐疑的であることは興味深い。また、先進国でありながら宗教色が強い国民性にも驚く。日本のように宗教色が弱く、形だけの信仰者が多い国とは異なる風景だ。断片的には知っていたが現地をルポした本書の説明に納得した。
代表的エリートである科学者たちは政府支出の研究資金をこれまでは自由に使えていたのだが、トランプ大統領の出現で政府が財布のひもを締め始めたことで慌てているらしい。反エリート主義も国民の間に浸透しており、これも反科学に繋がっているという。科学者は一般国民、特に宗教心の厚い人々からの信頼がなくなっているのではないか。それぞれに事情があるようだが、国民グループの間に起こった科学による分断現象が表れている。分断の原因は科学のみにあるようにも思えないが、重要な視点ではある。
紙の本
米国のバックボーンが分かる
2019/07/18 11:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サッサン - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ合衆国は科学と宗教に支えられているとは認識していたが、本書は特にその非科学性と宗教性に焦点を当てて合衆国の背景を解いている。著者は私見と感情をできる限り抑えて、客観的にまた具体的にアメリカの非科学性と宗教性を解説するので、内容は説得力ありです。通読するだけで、トランプ現象など何ら不思議でないと思えてくるのが恐ろしい。次期大統領選で、トランプが再選されるかどうかは、有権者の理性と宗教性を測る物差しになると同時に、アメリカと否が応でもその影響を受けざるを得ない世界の未来を占う水晶玉!になるように思える。一読の価値はあった。
紙の本
科学が苦手とは
2022/01/21 15:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間も社会もここまで進歩した今、人間は科学が苦手ってどういうこと?と思いつつ、読み始めた。
まえがきにこうあった。
「人は自分で思っているほど理性的に物事を考えているわけではない」と。
つまり、頭では科学的に考えているつもりでも、人間が何かを判断するときに、実際には感情や政治的信念などが優先されているというのだ。
その具体例が、さまざまな具体例とともに紹介されていて、説得力がある。
「人は自分の見たくないものは見ないし、自分に都合良くデータを解釈することもある」という。
アメリカでは神による創造論を信じ、進化論を信じていない人がそれなりにいるとか、地球温暖化問題を陰謀論にすり替える人がいるというのは聞いたことがあったが、
そうした人たちも、単に知識が不足から、そうなるわけではないのだ。
そこをうまく伝えるためには、論理、信頼、共感が必要というのは確かなのだろう。そこがなかなか難しいのだろうけど。
勉強になる一冊だった。
紙の本
二極化の報告
2019/07/18 11:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:猫丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
科学や事実を軽視するトランプの振る舞いに異を唱えるのは「リベラル、高学歴、民主党支持者」だ。要は「いけ好かないヤツら」とまとめられてしまう。「共和党支持、信仰に厚い」そして意外にも「アメリカ的独立自尊精神に富む」という属性の人々から見れば、トランプは既成科学帝国からフリーな価値観を持つヒーローである。アメリカではこうした国民の二極化が進行中。科学的知識の普及、ファクトの追及といった運動も活発化しているが、はたして実を結ぶだろうか? このあたりの問題意識をもった理系記者が、在米中の取材をもとに書き上げたルポ。
投稿元:
レビューを見る
事実を訴え続ければ、分かり合える。
そんな考えは甘いのかもしれない、と思わされました。
アメリカでは今でも進化論や地球温暖化を信じていない人がいるという入り口から、人々が反化学の思考に至るプロセスを、現地の人の取材を交えて解説した一冊です。
進化論や地球温暖化を信じない人たちとは、どのような人たちなのか。個人的には常識に疎い、学力の高くない人たちばかりなのではないか、と思っていたのですが、本の中で紹介されている人たちは、決してそういう人ばかりではない。新聞記者だった著者の質問にも丁寧に対応する様子が見られます。
また地球温暖化を否定する人の中で学力が高い人ほど、否定の傾向が強くなるというデータも示されます。
これは学力が高い人ほど、自ら情報を得ようとするのですが、その際自分の思いに近いものを選択する傾向が強くなるため。昨今ではSNSの発達で、自分好みの情報しか入ってこないという傾向はますます強まり、その分自分の中の考えはより強く固定化されていきます。そして自分の信条と異なる情報は頑なに受け入れなくなっていく。
そして現在、自分たちは様々な情報に踊らされています。「新型コロナウイルスはただの風邪と変わらない」「コロナワクチンを打つと、妊娠ができなくなる」
コロナ脅威論と非脅威論、ワクチン派と反ワクチン派、二つの断絶は決して近づくことはない。そうした断絶は化学の分野にとどまらず、歴史認識や政治的信条でも見られます。
この断絶を超えるには、ただ上から事実を訴えるだけでは足りないというのが著者の意見。事実を分かりやすく、誠実に伝えるのは当たり前。相手と同じ視点に立ち、たとえ意見が異なろうとも、相手がなぜ異なる信条を持つに至ったか理解し共感し、その上で事実を粘り強く唱えることが必要だとしています。
今のあらゆる断絶を超えるヒントになる一冊だったと思うのですが、一方で断絶を超えることの難しさを改めて思った一冊でもありました。
投稿元:
レビューを見る
アメリカには反進化論の人が多いとかいうのはよく聞くが、その状況がよくわかる。それよりも「科学知識が増えるほど意見が両極端に分かれる」という調査結果が衝撃的。科学的な考え方をどのように促進したらいいのか考えさせられる。
投稿元:
レビューを見る
科学と、そうでないものの違いは、根拠があるかどうかだと思う。地球は丸い、生物は進化する、地球温暖化はCO2排出のせい、いずれも科学的な根拠がある。もちろん、現段階の科学の言っていることがすべて正しいという保証はない。新しい根拠が現れれば、理論に修正が加わることがあるだろう。その場合にも、根拠に依拠する理論であることは変わりがない。
科学を信用しないということは、根拠に基づく理論を信用しないということで、そういう人は逆にいえば根拠のない説を信じているということだ。そういう人の気持ちがどうも理解できない。
アメリカでは進化論と並んで創造説(神様が世界と生き物を作った説)を学校で教えるところがあるそうだ。キリスト教徒でない生徒にはどうするんだろうと思いつつ、考古学や生物学、地質学との矛盾をどう説明しているのだろう。ちょっと授業を聞いてみたくなった。
アメリカは科学技術の本家本元だと思っていたが、科学を信じようとしない人は想像以上に多いらしい。アメリカの科学技術をドライブしているのはそうではない人たちなのだろうか? 国の中で科学を信用する人としない人が分断されているのだろうか? 政治的信条(リベラル寄りか保守寄りか)で科学の信用度が異なるというのはちょっとびっくりした。
著者は科学ジャーナリストで、科学を啓蒙する立場にある人だが、科学を信用しようとしない人たちに根拠をいかに詳しく説明してもだめだ、ということに気づいたそうだ。しかしほかにどんな方法があるのだろう? 科学を、根拠以外の方法で説明しようとすること自体、科学の方法から外れている気がする。
ワクチン悪玉論にしろ、地球温暖化の懐疑論にしろ、そう思っているひとがいる、というのは理解しているし、それ自体は不自然なことだとは思わない。そういう主張をする人にはそれなりの根拠があるようだし、人は信じたいものしか信じない、というのもまた真理だろうと思うからだ。しかしそういう考え方がメジャーになってくると話が違う。ぼくがトランプが大統領になったことにショックを受けたのは、陰謀論や根拠のあやふやなことを平気で話す反知性的な人物が、アメリカ大統領になっちゃったからだ。おそろしい。
投稿元:
レビューを見る
科学不信がなぜ起きるかという人々の心理(一様に科学不信なわけではなく、政治的立場や信仰など状況はそれぞれ)に迫った一冊です。最後には、科学コミュニケーションの事例(事実を伝えるだけでなく信頼や共感を得ることが大事)なども紹介されていました。
我が身を振り返ると、科学(的知識)との付き合い方について学校とかで学ぶ機会はあまりなかった気はするので、そういう教育機会もあるといいんだろうなと思いました。
投稿元:
レビューを見る
人は科学的に考えることが苦手。
人は学ぶほど愚かになる=自分の主張に一致する知識を吸収するため、知識が増えると考え方が極端になる。=確証バイアス。見たいものだけ見える。
科学的でないのは、知識がないから、ではない。
ダンバー数=150人。=人間の集団の限界。その数に適応した脳が現代の多人数社会に追いついていない。トランプ大統領はそれを利用した。恐れと怒りを利用する。
進化論と創造論。
フラット・アーサーズ=地球は平。
アポロ計画はでっち上げ。
科学の成果が産業活動を制限するようになった。
キリスト教保守派が人工中絶に反対している。
産業界とキリスト教保守派が科学に反発する集団となった=トランプ大統領の支持層。=権威と知力に反発する。
環境政策に対する反発=赤の恐怖から緑の恐怖への変化。国の権限で国民を縛ることへの反発。
キリスト教福音派が科学をよく思っていない。進化論を比定し創造論を信じている。
科学不信が、福音派と産業界を結び付けた。
創造論を再現したテーマパーク「創造博物館」ケンタッキー州にある。現代科学は否定、聖書の世界が展示されている。ノアの方舟など。
進化論の指示はわずか2割。高校の教師も進化論を教えていない。地域や親の反発を恐れて両方教えるなどが60%。
進化論に反発する動きは進化している=インテリジェントデザイン説。突然変異ではなく、デザイナー(神)によるもの。
ハートランド研究所の「なぜ科学者は地球温暖化に同意していないのか」
タバコ=害、に似ている。全面的には否定できないので、疑問を呈して結論を先送りする作戦。
石炭産業で働く人にとって、地球温暖化は同意できない問題。どちらにつくか、だけの問題。
共和党支持者=温暖化懐疑論者=キリスト教保守派。
ローマ法王が温暖化に危機感を示したあとは、むしろかたくなになった。自分の考えに対立する話を聴くと考えを変えるのではなく、ムキになって反論する。
セーガン効果=研究者はコニュニケーションに熱心だと損をする。マスコミに出ている研究者は質が低いとみなされやすい。
研究者相手でも、データだけではだめ。その人の関心を引き付ける必要がある。
人の話を聴くときは、自分の考えを変えようとして聴く態度が必要。
投稿元:
レビューを見る
なぜ「トランプ信者」が生まれるのか、その背景を説明する本。知識が増えるほど分断が拡がること暗澹たる思い。自分は科学もミュニケーターたり得るであろうか?
投稿元:
レビューを見る
近年、よく問題として取り上げられるようになった、合理性と信条の対決。人々の信条の背景にあるのは何か。それを解消するためにどのような取り組みが行われているか。がテーマ。最終章における、演劇的手法による取り組みが興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
人々の共感を得るには事実を並べて「こんなに証拠がありますよ」ということではなく、よりわかりやすく相手の立場に共感しつつ、伝えていく努力が必要ということが重要だと認識。事実(厳密には科学的事実)よりも共感力とコミュニケーション力のほうが重要ということ。
大半の日本人としての感覚では、科学的思考は正しくて、その結果として生まれた各種自然法則は、正しいと「信じて」いる。ところが本書でのキリスト教の信仰にかかわる問題(進化論の事例)や、経済的政治的信条にかかわる問題(=地球温暖化の事例)については、素直に自然科学の法則よりも、信仰にもとづく聖書における事実や政治的に経済的に自分に都合の良い都合の良い考えに従うということです。
投稿元:
レビューを見る
トランプがなぜ危険人物といわれていたのか、やーーっと分かりました遅すぎますが…宗教、政治、科学、それぞれの主張が強すぎるって大変なんですね。
投稿元:
レビューを見る
科学をどう伝えるか。
価値観、信仰、利害。
こうしたものを超え、普遍的であるべき、と筆者が考える科学を、どう伝えればよいか。
そうしたことを、考える本。
学べば学ぶほど、自らの仮説・直感を補強していき、頑なになる傾向があること。
論理は好悪の奴隷、という話。
演説に大切なものとして、論理、信頼、共感をアリストテレスはあげたことを紹介する。
それが、どうやら結論のようだった。
「反対している人たちは何を心配しているのか。
自分はただ事実を押し付けるだけになっていないか。
お互いの心を結び付ける何かを見つけ出せないか。」
「科学を巡るコミュニケーションでも、気持ちを大事にすることで誤解を解きほぐす道が開けるかもしれない。」という結び。
投稿元:
レビューを見る
公共の交通機関が皆無のアメリカのド田舎に留学経験がある私としては正直、トランプ大統領が誕生した時は何の意外性も感じなかったんですよね。。。この本で書いている通り未だに進化論を信じてない人が多くいて、その様な人達が通わせる学校まで存在しているんですよ。留学していたのは20年位前なので、その当時と変わっている事も多い筈ですが、キリスト教をベースにした行動規範や思想は変わらないんでしょうね~。著者の主張する通り、科学に対するリテラシーを持ちつつ、意見の異なる人と平和的に議論出来れば良いですね。