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商品説明
昭和十年一月、書き下ろし自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成し、”日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。【本の内容】
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紙の本
夢野久作氏によるとんでもない、ようやく不可能な奇書です!
2021/02/05 09:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、戦前に活躍された夢野久作氏の代表作であり、日本三大奇書に数えられる書です。内容は、九州帝国大学医学部精神病科の独房に閉じ込められた記憶喪失中の若き精神病患者の物語となっており、「私」という一人称で語られていきます。彼は過去に発生した複数の事件と何らかの関わりを有していて、物語が進むにつれて謎に包まれた一連の事件の真犯人・動機・犯行手口などが次第に明かされていきます。その意味では、既存の探偵小説・推理小説の定石に沿っているのですが、その筋立てが非常に突飛なのです。物語の骨格自体は非常にシンプルとはいえ、冒頭に記された巻頭歌のほか、胎内で胎児が育つ10か月のうちに閲する数十億年の万有進化の大悪夢の内にあるという壮大な論文「胎児の夢」や「脳髄は物を考える処に非ず」と主張する「脳髄論」、入れられたら死ぬまで出られない精神病院の恐ろしさを歌った「キチガイ地獄外道祭文」などの肉付けがされています。まともに要約することは到底不可能な奇書とも言われる所以でもあります。主人公とも言うべき青年が「ドグラ・マグラ」の作中で「ドグラ・マグラ」なる書物を見つけ、「これはある精神病者が書いたものだ」と説明を受ける場面では、登場人物の台詞を借りて、本作の今後の大まかな流れが予告されており、結末部分までも暗示されています。このことから、一種のメタフィクションとも評されています。また、その結末はひとつの結論を導き出しているものの、あくまでも「主人公がそう解釈した」というだけで、それ以外にありうるさまざまな解釈を否定するものではありません。といったとんでもない奇書なのですが、この機会にぜひ、読んでみられてはいかがでしょうか。