紙の本
家庭から学業、ビジネスまで、あらゆる交渉の場面で役に立つ
2022/04/20 19:47
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Toshi - この投稿者のレビュー一覧を見る
事実で他人を説得しようとする傾向が特に強く、ことごとく挫折してきた自分にはピッタリな本。 事実は説得の際には大して役に立たないということまではわかっても、具体的な手法まではあまり詳しくなかった自分には素晴らしい読書体験になった。
大学の講義で交渉学に興味を持って学んでいた時に、「交渉学の手法はどれも合理的な人間を対象としている感じだけど、実際の現場では上手くいかないのでは?」と感じていたのだが、この本で述べられる知見は既存の交渉学とは違い、感情やインセンティブに働きかけるものなのでとても実践的。
ビジネスマンや学生はもちろんのこと、誰にとっても役に立つものになると思う。
電子書籍
説得の鍵は「共感」。勉強のために再読したい
2020/04/05 09:36
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
The Influential Mind が原題。直訳すると「影響される心」。読後、しっくり来る題だと思った。邦題の「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」は意訳にしても手ぬるく感じる。ちょっと古くないか。
それはさておき、本の内容は非常に面白い。
人間は自分で思っている以上に共感を重視して生きている。目の前に数字や事実を突きつけられても、案外と心を動かさない。脳がそういう構造になっている。人を説得するのは共感が鍵である。
「皮肉な話だが、人間はより正確な結論を導き出すためではなく、都合の悪いデータに誤りを見つけるために知性を使っているのではないだろうか。だからこそ、誰かと議論するときに、相手に不利で自分に有利な事実や数字を突き付けたくなる衝動は、最適なアプローチではないかもしれない」
こう指摘するくだりには、肯かずにはいられなかった。議論が建設的な方向に向かわず反論のための反論が繰り返されるのは、まさに人間らしい行為の表れなのだな。
我が身を振り返る。
子供が妻に叱られている。でも、もう大きいので、聞いてもいない。ははあ妻に対して共感していないのだなと思う。妻はブチ切れている。
想像する。私が妻にこう言ってみるところを。「あんた、人間は共感が大事なんだよ。ただ叱るんじゃなくて、この本を読んでみたら」と。でも、こんどは妻がこちらの言うことを聞かないだろう。言葉が耳に入ったとしても、従うことはない。日頃から共感してくれていないのは、まさに私に対する妻の姿勢である。
かくして、反省するのは私だと気づかされる。本書を再読して勉強を深めたい。
紙の本
ニューロン発火
2021/02/01 16:45
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は社会的影響を受けやすいが事前の決断や信念には及ばないこと、全体性により増大する自己コントロールによる満足感、冷静な損得勘定ではなく感情的な利益を考慮に入れることなどを例証し、脳が作り上げている自己がいかに影響力を受け止めているかを論証している書。
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事実はなぜ人の意見を帰られないのか
説得力と影響力の科学。
明らかな事実を提示することが、かえって逆効果になる場合もある。
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p13 どうやら他人に情報を与える機会は、内的な報酬をもたらすようだ
p15 私たちの信念を形作っているのは欲求だ。だとすれば、意欲や感情を利用しない限り、相手も自分の考えを変えることはないだろう
p24 新しいデータを提供すると、相手は自分の先入観(事前の信念と呼ばれる)を裏付ける証拠なら即座に受け入れ、反対の証拠は冷ややかな目で評価する。わたしたちはしょっちゅう相反する情報にさらされているため、この傾向は両極化の状況を生み出し、それは時を経て情報が増えるたびに広がっていく
p27 だがこれは問題の半分に過ぎない。もう半分は、情報のいいとこどりが行われていることに気づかないでいる点だ。情報は人知れずふるいにかけられているため、わたしたちの目の前に提示されるのは、もともと自分がもっていた意見に即したものが多くなる。つまりこういうことだ。グーグルなどの検索エンジンに調べたいキーワードを入力すると、あなたの過去の検索やウェブ履歴に基づいて、カスタマイズされた検索結果が表示される。
検索の考慮には、位置情報も入ってくる
このプロセスは人を弱くする。自分とは異なる意見の潮流を知らずして、どうしたら合理的に真実を見分けることができるだろう。テクノロジーによる確証バイアスを最小限に食い止めるには、次のような行動が有効になる。匿名ブラウジングや履歴を無効にする。SNSで常連以外とつながる
p30 確証バイアス
自分の気に入らない意見には耳を貸さず、都合の良いところばかり受け入れる人たち
p32 認知能力が優れている人ほど、情報を合理化して都合のよいように解釈する能力も高くなり、ひいては自分の意見に合わせて巧みにデータを歪めてしまう
p34 新しい信念が形成される時、4つの要因が関与する。もともと持っていた信念(事前の信念)、事前の信念に対する確信、新しい証拠、そして新しい証拠に対する確信である。
p40 情報は事前の信念に応じて評価される。新しいデータが、すでに確立した信念とかけ離れるほど、そのデータの信頼性は低く見積もられる
p42 MMRワクチンの副作用への不安を払拭しようとするよりも、子どもたちを重病から守るワクチンの力を強調する方が、予防接種に対する意識に変化が見られたのだ。もとの考えを根絶やしにするのが難しいときには、新しい種をまくのが正解かもしれない
p44 わたしたちは本能的に、自分が正しく他人が間違っている証拠を大量に抱いて議論に挑もうとしがちだが、それでは袋小路に入り込んでしまう。
反対意見をもつ人々は頭から拒絶するが、必死になって反証を探そうとするだろう。変化をうまく導入するには、ゆえに共通の動機を見い出せば良い。共通の目的を見つけたら、次に必要なのはメッセージが伝わるように感情に働きかけることだ
p56 影響を与え合う最も強力な方法の一つが、感情を用いることだ
p61 ツイッターを利用することは、日常生活において最も感情を刺激する行為の一つ
ツイッターはインタネットの扁桃体
p82 ずっと先に起こるかもしれない悪い��果よりも、すぐにわかる良い結果を強調することが状況を一変させたのだ
p154 意見を求めるかどうかの決め手となるのあh,その知識を自分の有利に活用できるかどうか、そしてその評価に対して自分がどんな気持ちをいだくと思うのかの2点である
p155 他のすべての条件が同じならば、人は希望をもたらす情報を求め、失意を招く情報を回避する傾向をもつ
そして最終的には、あなたの発した情報が恐怖でなく希望を導き出すおう、メッセージを再構成することだ
p160 脅威にさらされると、もっているすべての力を、その瞬間を生き延びるという一つの目的に集中させるだ
p163 つまりストレスが強いほど、予期せぬ悪い知らせを聞いて自分の見解を変える傾向が強まった
p170 生命に関わる状況下では、危険を回避することがまさに最善策になり得る。しかしより良い決断がくだされる場面でも、人は本能的に安全な道を選んでしまう
p174 わたしたちは自分の心の状態を意識的に変えて、本能的なパターンを打開することができる
p228 このとき意思決定につかわれるのがヒューリスティックという方法で、素早く単純で直感的なこの方法は思考の近道と呼ばれる。
p238 言葉、l文字、印刷技術、ラジオ、テレビ、インターネット
技術発展が加速し、環境が急速に変化したこの数千年であまり変わらない存在 人間の脳
p250 人に影響を及ぼすには、命令するより自分でコントロールさせたほうがずっと効き目があることを思い出してほしい。悪いことよりも良いことが起こる可能性を強調したメッセージのほうが、人々の注意を引きつける力をもっている
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コロナの有効な防止方法よりも、トイレットペーパー取り扱いの情報を欲しがるのか。
人は基本的に信じたいものを信じる。
集団バイアスは強い。
基本的に情報収集は快楽だが、不都合な情報は苦痛である。
そのため、都合のいい情報のみを無意識に選択したり、
有益で苦痛な情報を遮断したりする。
人間はコントロール可能な状態を好む。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12562962932.html
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担当している仕事について、統計の専門家のちからも借りて各指標値を解析した結果、いろいろと興味深いことがわかったので、関係者を集めてプレゼンテーションをしたことがある。びっくりされたり感心されたりはしたのだが、いくつかの改善提案は積極的には取り上げられず、問題点は解決されないまま、ぱっとしない状況が続く。がっかりというより、キョトン、という感じが強かった。解析結果を見れば相関関係は明らかで、打つべき手ははっきりしているのに、なぜマネージャたちは決断しない? 話が理解できなかったのだろうか?
という経験をちょくちょくするので、この本を見逃すことはできなかった。著者は神経科学者。豊富な研究、実験に基づいて、ひとがいかに事実を受け入れないかを教えてくれる。例えば、
・自分の意見を裏付けるデータばかりを受け入れる
・データではなく、人の意見に影響される
・悲観的な意見より楽観的な意見を受け入れる
・人に頼んだほうが成功する可能性が高い、とわかっていても、自分でやりたがる
という事実が実験結果とともに提示される。しかもこういう傾向は、一定のテストを受けて分析能力が高い、と評価された人たちのほうがむしろ強いのだそうだ。
・・・自覚はないけれど、ぼくもそうなんだろうか? 自信がなくなってきた。ひょっとしたら認知がずれているのはぼくのほうで、決断しないマネージャのほうが正しかったりするのだろうか?
でもこの数値はどう見ても・・・
ぼくは、プレゼンテーションの前に本書を読んで、伝え方を工夫すべきだったのかもしれない。方法はいくつか思いつく。例えば解析結果はこうなったが、どうすれば解決するかわからない、とマネージャにふるスタイルをとって、正解に上手に誘導して自分で考えたんだ、と思い込むようにさせるとか、聴衆にサクラを仕込んでおいて扇動してもらうとか、データの受け入れやすい部分を強調して、聴衆の感情に訴えかけるとか・・・
でも、そういう寝技、手練手管はばかばかしいな、とぼくは思ってしまう。仮にも相当の経験を積んでいるはずのマネージャなんだから、客観的に数値を評価するのは当たり前でしょ? それができないならマネージャの資格はない・・・というか、事実以外の方法で人を動かすというのは、要は「ズル」だよね?
なんて言っているから出世しないんだな、ぼくは、たぶん。
出世したいあなたも、出世に興味のないあなたも、一読をおすすめする。
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人間の記憶というものがいかに曖昧なのか。
そして自分の意志というものが本当に自分の中からうまれているのか。
このジャンルの本としては目新しくはないがとても面白い内容でした。
個人的な考えですが、自分の考えが周りの人達の意見に影響を受けているのだとしたら「周りの人達」というのは今はネットなのかもしれない。
ということは我々の意見というのはネットが作っていて、しかもそのネットの意見というものが操作出来るとしたら・・・。
読んで損はない一冊です。
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データのみでは人は動かず。一章のボリュームが丁度よく、読みやすかったし為になった。読んでいて、人間機械論を思い出した。よくできてるのか、ポンコツなのか。
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結婚生活が長く続く一番の要因は、情熱や友情ではなく類似性。
意見は変えられないから、正反対同士が惹かれあっても長続きはしない。
お年寄りが元気でいるためには、介入は少なく主体的行動が多いほうが良い。
知性ではなく、それ以外の部分に訴える。
賛成意見しか見えない。
死と税金以外確実なものはない。
豊富な情報があると、自分の意見に固執する。自分の意見の裏付けになる情報がたくさん見つかるから。
Googleのアルコリズムによって、探している情報が入ってくる。その情報の中身は、自分の意見に賛成なもの。
確証バイアス=賢い人ほど情報を歪める
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面白い。
訳者の以下の文が、この本の良さを伝えている。
「読み進めるうちになるほどと思うのは、著者シャーロットが率先して、それらのポイントを活用している点だ。簡単に言えば、読者は次第に影響されていく。事実なデータの羅列で読者の主体性を損なうのではなく、たとえば研究論文をストーリー仕立てにすることで、読み手はどんどん先を知りたくなる。著者自身の生き生きとした私生活のエピソードに惹きつけられて、いつのまにか感情が同期してしまう。随所に散りばめられたユーモアに頬も心も緩んでしまうから、著者の話を受け入れやすくなるし、自分にもできるかもとポジティブな気持ちが湧いてくる。」
自分自身も他人も、取り扱いは適切に丁寧に行なって、最大のプラスの効果を狙っていこうと思わせてくれる本。
なお。この訳者は芸術系の演劇学部出身。意外なキャリアも面白かった。
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話が長い
なんの話かわからなくなるのは翻訳本で良くある話なので我慢
知識としてはなるほどと頷ける話
・事前の信念 相手の信じていることを否定したり、自分の信じてることを押し付けるだけではダメ
・感情 感情は伝染しやすい
・インセンティブ 快楽で動く、恐怖では動かなくなる(変化させたくない時は恐怖が良い)
・主体性 自分でコントロールしてるという感覚が満足感に繋がる
・好奇心 知りたくない情報は目に入りにくい、心地よい情報ばかりを受け入れてしまう
・ストレス ストレスがあると正確に情報が判断できなくなる
・他人 人は真似る、他の人に流される
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評判ほどの本ではなかった。どうでもいい例示ばかりで頁数を稼いでいる割には、読んでても当たり前のことしか書かれておらず。まあ読まなくてもよかったかな。
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「とても重要なメッセージを持つ人や、最も役に立つ助言のできる人が、必ずしも絶大な影響力を持つわけではないように私は感じる。怪しげなバイオ技術に数十億ドルを投資できるよう説得できた起業家がいる一方で、地球の未来のために取り組むように国民を説得できなかった政治家もいる。」(7p)
著者が「わかりやすい例」として取り出したのは、2015年9月大統領共和党候補者の決定に寄与した討論会のTV番組である。カーソン候補は「知性」を狙ってきたのに対して、ドナルド・トランプ候補はその他全ての部分に訴えたのである。結果、ドナルドが大統領になった。
現在、大量の情報が個人に押し寄せている。そのことで、かえって自分の信念に固執するようになっている。彼らが意見を変えるのは、「意欲や感情に訴えかけられた時」である。この本は脳科学者らしく、その事やその他の要因を一冊かけて詳細に述べてゆくだろう。
以下私的メモ(これは、私に有用だと思える事柄を羅列したメモであって、皆さんに分かりにくい書き方もある。読み飛ばしても構わない事柄です。もし、以下の事柄があなたにも有用だと感じられたとしたら、それはあなたが主体的に感じ取ったからです)
・事前の信念を持つ人に対して、間違いを証明しようとすると拒否感が出る。共通点に基づいて話をすることによって、相手の行動に影響を与える。
・アイデアを伝える最も効果的な方法の一つは、気持ちを共有すること。感情はとりわけ伝染しやすい。
←芸能人のコロナ死は、だからあの時最も効果的だった。
・電光掲示板に「現在の手洗い率」をリアルタイムで示すことで、10%から一気に90%に跳ね上がった。
←3、4月に都内の駅や交差点の人出率を毎日テレビで映したのは、だから最も効果的だったということなのだろう。実際一気に人出率が下がった。
・恐怖や強制によって行動させ影響を与えることは難しい。反対に、選択肢を与えて主体性を高めると、相手は話を率直に聞く。大切なのは、認識であり、客観的事実ではない。「今日は◯◯の日よ」と思い出させる、というやり方で行動に移させるという認知症老人への呼びかけもある。
・映画「サイドウェイ(2004)」で主人公マイルスが「メルローなんて俺は死んでも飲まないぞ」と言ったために、メルローの売り上げかガタ落ちした。反対に彼が好んだピノノワールはうなぎ登り。両親や影響力のある人を真似るのは、本能。
・ヒトは言葉を発して数万年経ち、5200年前に書き言葉が現れ、600年前に印刷技術、20世紀初頭にラジオ、50年代に一般人向けテレビ、90年代からインターネット、現代では誰もが情報を共有して他人に影響を与えるようになった。しかし、数万年間、脳の基本的な組織に著しい変化は見られない。
←つまり、「昔ながらのやり方」で大量の情報を処理しきれない大衆に影響を与えることは、実際可能なようだ。コロナ禍後の世界が心配だ。
←しかし、脳から脳へ、直接影響を与える実験は既に始まっているらしい。「第四間氷期」のように死人の脳から犯人を見つけるのはもう直ぐなのかもしれない。