紙の本
Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた男 (文春文庫)
著者 佐々木健一 (著)
日本、アメリカ、戦争、原爆、死、そして謎の墜落事故−。「ダウンバースト」を発見し、航空事故を激減させた天才気象学者・藤田哲也。日本ではほとんど知られていない、彼の数奇な運...
Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた男 (文春文庫)
Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた男
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商品説明
日本、アメリカ、戦争、原爆、死、そして謎の墜落事故−。「ダウンバースト」を発見し、航空事故を激減させた天才気象学者・藤田哲也。日本ではほとんど知られていない、彼の数奇な運命をたどる。【「TRC MARC」の商品解説】
謎の飛行機事故が多かった七〇年代のアメリカで、事故原因をダウンバーストという気象現象だと突き止めたのは日本人天才科学者だった【本の内容】
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日本では知られていない異色の研究者の生い立ちを追うノンフィクション
2020/11/04 18:34
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤田哲也氏という気象学者をご存知の方は少ないのではないでしょうか。アメリカで多発する竜巻のスケールを表す「Fスケール」という指標があり、そのFは藤田氏の頭文字なのです。竜巻研究で知られる藤田氏ですが、日本ではあまり知られていないもう一つの業績は「ダウンバースト」の解明でした。
1970年代、アメリカでは離発着時の航空機の墜落事故が平均18か月に1度の頻度で発生していました。その多くが「原因不明」とされたり「パイロットの過失」として処理されていました。当時アメリカで竜巻研究で実績のあった藤田氏が事故原因究明に取り組み、「ダウンバースト」という局所的な下降気流が原因であると突き止めたのです。その後、パイロットへの研修、ドップラーレーダーなどの設置により「ダウンバースト」による墜落事故はほとんど無くなりました。
ところが「飛行機による旅を安全にした」という巨大な功績を成し遂げているにも関わらず、アメリカの気象学会では当時は批判的な扱いを受けていました。新しい理論を公表し、それを認めてもらうには「査読」という他の研究者の厳しい目で検証されることが科学会のルールなのですが、藤田氏は「一刻も早く事故をなくさなければならない」との使命感から査読を経ることなく自説を広めようとしたために軋轢を生じていたのです。
そのあたりのプロセスに関わった人達へのインタビューや、なぜこれほどの功績のある日本人科学者が日本ではあまり知られていないのか、藤田氏の生涯を辿りつつ解き明かしてゆくノンフィクションです。
私自身もメソ(中小規模)スケールの気象に学生時代に関わっていたこともあり、身近なトピックスと感じて読んでみました。「予断をもって現象を観ない」、「研究に必要な装置は自ら設計する」など研究者として尊敬に値する数々のエピソード、「気象界のシャーロック・ホームズ」、「気象界のウォルト・ディズニー」、「視覚の科学者」等々の異名を持つ藤田氏の生涯を俯瞰できる1冊です。気象の知識が無くても全く問題なく読み通せます。