紙の本
貧困と緊縮財政
2023/02/12 21:19
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投稿者:ちひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧困はみえづらい。収入で生活圏が異なり接することがないから、裕福な人は貧困にいるひとを認識するタイミングがほとんどない。
保育園がドヤの隣にあると言っても、その部分だけ。日本の9割以上はドヤを見ることはないと思う。
選挙の論点に、国や自治体の財政の健全化を持ってくるのは結構だが、緊縮財政で福祉への支出を削減することは、社会の形成にとっては論外だということを考えさせられる。
アンチ左翼の人は、おそらく100%右か左かで決めたいところなんだろう。
だけど、実際にはそうはいかないということも考えてみてはどうか?
自分の払った税金が、自分が利用しないサービスに使われることが不満なんだろうが、その理論だと支払った税金額で選挙権を持っていた時代に戻したいということか?
助けて助けられて、でいいんじゃなかろうか。
フィクションかのようにこの本を読んでいる人がいることにも衝撃を覚えるが、そういう人も取り込んでこそ次のステップもありうるということで、すごく良いきっかけになる本だと思います。
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イギリスから見た日本
2020/11/07 22:37
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスだってかなり大変で暮らしにくいはずだけど、それでも日本もいろいろ大変。どっちがどうとは一概にいえないけれど、みかこさんの視点はいつもおもしろくて大好きです。
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保育の仕事は政治のあり方次第でクールにも、アンクールにもなる
2020/08/17 20:19
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼくはイエローで‥」からすっかりとりこになってしまったブレイディみかこさんなのだが、この本を読んでなんとなくなぜ自分がみかこさんファンになってしまったのかがよりわかったような気がしてきた。みかこさんの本は四冊目。まだまだ読み続けたいと思う。
ざっくり言うと僕もあこがれた「社会起業家」的なところがあって、彼女は彼女のやり方で社会を変えようと表現しているんだなというところがとても共感するところであって、それを『THIS IS JAPAN』というタイトルにて世に伝えてくれていることへの感謝なのかな、とも思った。
「英国保育士が見た日本」という副題があるとおり、ブライトンで生活をされているみかこさんが20年以上ぶりに東京ほかでの複数の方々に取材した内容をまとめたものなのであるが、一通りよみ終える最後のところに以下記載があってなるほどと思った。
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P254
「わたしに会ってください&使ってください」
というタイトルのエントリをブログに公開したのは2015年11月のことだった。
それだけではさっぱりわけがわからないタイトルだが、要するに「来年の1月末から4週間ほど日本に取材に行きますので、貧困者支援、母子支援、子ども支援、非正規労働者支援などの分野で働いておられる方、わたしに取材やボランティア活動をさせてください」と呼びかけたものだった。
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約20年前にビジネスパーソンとなってからいろいろ勉強もする中、社会課題の解決へ自分もコミットしたく社会起業家への活動などもあこがれ、保育園の起業なども考えた時期もあった。 そんな中、小説版の解説で萩上チキさんが以下記載されているようなところがストンとおちたんだな、と。
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P281
例えば本書でも紹介されているように、日英双方に、保育文化の長所と短所がある。出羽守として一方的に「進んでいるあちらの国(を知っている進んでいる自分)」をプレゼンするのではなく、日本にはイギリスを、イギリスには日本を紹介する形で、それぞれの文化圏を思考のテーブルに載せる。彼女は読者を、対等な相手としてみている。海外にも、日本にも、そして『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に描かれたような、未来の社会を生きる若者にも。全ての人に、「これが、今の、日本だよ」と等身大を提示する。
数々のエッセイを書きつつ、一人の市民としても、日本の反緊縮運動などにコミットする。 緊縮を求めてきた清貧なインテリ左派ではなく、反緊縮を訴える泥臭いアクティブ左派というロールモデルを、その身をもって示してもいる。少なくとも現代日本の表現社会においては異色な書き手である。
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なるほどなるほど、やっぱりこういうことなんだな、と思う。 (相変わらずレビュっぽくなくてすみません)
いつも大事にしている今回の抜粋は下記
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P151
保育の仕事は政治のあり方次第でクールにも、アンクールにもなる。幼児を大人の経済活動の邪魔になる厄介者と見なす政治は、保育士をクールな職業にはできない。わたしたちの仕事をクールにできるのは、人間の脳がもっとも成長する重要な数年間を生きている小さな人々として幼児を認識し、社会全体で彼らを支え、国の将来を担う人たちのポテンシャルを最大限に伸ばすために投資する政治だ。
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左翼世界へのガイド本
2020/01/30 18:57
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投稿者:magoichi - この投稿者のレビュー一覧を見る
もっとフラットな英国と日本の比較文化論、人文論だと思いきや、しょっぱなから組合の争議が出てきてクエッションマークが点灯。
著者は自身の境遇も含め貧困をカジュアルなタッチで描きかつ、距離を置いた体裁で左翼団体に活動を紹介するが、どうしてどうして根底にあるのはガチガチの体制批判と左翼賛歌。
政治思想というよりは、経済面における資本家は悪で労働者は被害者の図式と思われる。
思われるとは、早々にリタイアしたから。
そういえば推薦文の面々にもチラホラ。
修猷館卒の賢い人なので、赤旗で連載持ったり、山本太郎の仲間たちにはならないと思うが、実際は同根だと思う。
この金でBOOKOFFで鬼滅の刃買った方が良かった。
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2020年読み初めの一冊。
著者が2016年1月から2月にかけて日本に長期滞在した際に、草の根の支援活動やデモの現場を取材したりいっしょにボランティア活動に参加したりしたルポルタージュ。経済(お金)の話をタブー視しすぎて日本の人権教育に「貧困」という視点が抜け落ちているという指摘と、上意下達の日本ではさまざまな運動が互いに学び合おうとせず、なかなか垣根を超えた連帯が生まれないという話には、そう、ほんとにそれ、と深くうなずいてしまった。
タイトルに「保育士」という文字を見て、中3の次女も興味を持ったらしく、第3章だけ読んでいた。
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<目次>
第1章 列島の労働者たちよ、目覚めよ
第2章 経済にデモクラシーを
第3章 保育園から反緊縮運動をはじめよう
第4章 大空に浮かぶクラウド、地にしなるグラスツール
第5章 貧困の時代とバケツの蓋
<内容>
「確かに」と思うことが多かった。日本人はいまだに9割中流(ただし中の下)と思っているが、多くは下なのだとか、平和治運動とか反原発とかに経済の話がでてこないとか。またイギリスを見てきた人だから言えること、日本は貧困とそれ以外が混在しているのに、その貧困が見えていない。貧困に陥った当事者が声を上げない(これは教育に問題がありそう)。そこと労働運動の関係(つながっていかないこと)。日本の労働運動が何でこんなに低調なのか、考えていたのだが、少し腑に落ちた。
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地元の書店で購入。ぼくはイエローでホワイトで…が面白かったので。
この方の本、政治的社会的な面が分かりやすく勉強になる。そして何より、幼児2人を保育園に預ける働く母として、英国の保育士としての保育に関する記述が非常に興味深い。
「日本の反緊縮財政は保育園からはじめよう。」(p151)、完全に納得。同意。イギリスには病児保育という概念が無いという記述にも勇気を貰った。
私自身、病児保育を利用する気は無いので。でも、会社は病児保育やお迎え代行ベビーシッターの費用の助成とかにやたらと力を入れていて(有難いことではあるのだが)、制度が充実しているが故に「病児保育を利用せず自分で家で見るために休む」ことに対するハードルが上がるのも確か。自信を持って、ポリシーとして病児保育を利用しなくても良いんだ!と肯定された気がした。
「ミクロからマクロへ」の視点が日本の現場のプロに欠けているという指摘も興味深い。
政治に対して健全に積極的に考え、論じ、行動できる若者はどうやったら育てられるのかな?
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人権というものに対する、イギリスと日本の意識の違いがわかった。貧困の問題を真剣に考えていない日本は将来、どんな地域社会、人間社会に変わっていくのだろう。
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日本国内での貧困、格差社会の現実の一端を垣間見せてくれる傑作。現場の当事者へのインタビューを通じて社会課題を浮き彫りにしていく。イギリス在住時の経験を交えて、イギリスとの違いも対比させ課題の本質を問いかけてくれる。
誰もが、この国の出来事なのだが、知らないことがあまりにも多いことに驚くだろう。
人権の考え方も示唆に富み、深く考えるための良い教科書にもなっている。
彼女の書物はこれからも読み続けたいと思った。
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「富者と貧者が襖を閉めて同居している」
貧困層のドヤと中流層が住むマンションが混在する一角を見たブレディみかこの感想は、今の日本が抱える矛盾、私達が肌に感じる違和感を的確に表している。
保育士の資格を英国で取得した著者が、現代日本の福祉や保育、労働争議の現場をルポした一冊。
政治に無知無関心な私もハッとさせられるような突っこんだ視点が散りばめられており、行く先々で撮った写真も掲載されているのでリアリティが増す(というか、これが今の日本のリアルか……)
賃金未払いの抗議にいくキャバ嬢と労組に「働け」と罵声を浴びせかけるキャッチやホームレス、それに便乗する客やブログの匿名コメント……
「なんでわざわざお金を払って女の子としゃべりに行くの」との質問に、「お金を払えば女の子に言いたいこといえるじゃん」と身も蓋もなく返し、雇い主から雇用者へ、客から担当へ、そして同業者間のピラミッドで蔓延る差別の構造を露呈する。
結構昔、スターバックスで授乳する若い母親を見、「見苦しいから追い出せ」と別の中年女性がクレームを付けたら、店員が機転を利かせて庇ったことがまるで美談のように取り上げられたが、「どうして自分はほっとかれたのにアイツは贔屓されるんだ」という不公平感から来る怒りは人間だれしも持っている。
正直、気持ちはよくわかる。
苦労した分だけ人は優しくなれるなんて嘘だ。詭弁だ。理想論だ。
現実には苦労した分だけ人は僻みっぽくなるし、他人の幸せが許せなくなる。自分と同じ状況におかれながら戦うひと、助けられてるひとを目の当たりにすれば尚更だ。
著者はアクティブなスタンスで様々な場所にでかけ、英国の現状と照らし合わせた問題点を浮き彫りにする。
根底にあるのは貧困と人権問題。
欧州では人であるだけで最初から備わってるものとされる人権が、日本では支払い能力に還元されているという指摘にはギクリする。
即ち、税を払えない人間に人権はない。
生活保護で生きてる人間はフルスペックな人権など望むべくもなく、また訴える資格もない。
この国では貧困は自己責任だ。
だから自分でなんとかしろ、働けと皆言うところに、一億総中流の同調圧力の怖さがある。
少し前、テレビニュースでバイトの最低賃金を1500円に上げろとデモする若者たちを見て「図々しい」と思った。お金が欲しければ正社員を目指せばいいのにと。
が、そうじゃない。彼らの活動には相応の理由があった。この本を読めばそれがよくわかる。
最近の若い母親は「ださい」と子供を叱る。
にんじんを食べられないのはださい、ファミレスで行儀悪くするのはださい。私自身何度か耳にしたが、若者は「ださい」と見なされるのに強迫的な恐怖心を抱いている。一度アンクールと見なされると復権は難しい。
政治的な運動はもっとカジュアルになっていい。
たとえば無人の交差点で踊りたいように踊る、たとえば露店を出して餅付きをする。「楽しさ」を演出しないと草の根の人の心は掴めない。
著者は言う、人権は神棚に上げて拝むものじゃない。
人権は障害者や��国人や在日や性的マイノリティや被差別部落出身者だけのモノじゃない。それらの人々含め、どん底の一歩手前にいる私たち全員が本来持っている「ギリギリを受け止めてくれる蓋」なのだ。
草の根から始まる政治活動にフットワーク軽く飛び込んでいくブレイディみかこの人柄は、イギリスの西原理恵子ともいえる肝っ玉母ちゃんのバイタリティに満ち溢れている。
ポリティカルな感覚をフィジカルにリンクさせるのが巧みで、印象的なフレーズがぽんぽん飛び出すのも魅力的。
「レミゼラブル」「ニューカマー」他多数、唐突なカタカナ語が地の文にフラットに混ざってるのが好き嫌い分かれるが、独特の文体がイイ感じに堅苦しさの抜けた生き生きしたリズムを生み出す。
ロックというかライブというか……むずかしいことをむずかしく語るのはだれにでもできるが、むずかしいことをだれにでもわかるように語るのはむずかしい。この本はそれを実践してる。
全体的に見通しは暗いが、本書はある種の希望、可能性も提示されている。
英国ではソーシャルアパルトヘイトが進み、違う階級同士の交流は断絶しているが、日本の保育の現場には親の所得と無関係に園児が混在する一点で風穴があいている。
それを端的に象徴するのがエピローグのカトウさんの話で、これがすごくいい。廃材を利用した手作りオモチャのエピソードにジーンとしてしまった。
しかし著者、遅刻しすぎだぞ。
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日本において、貧困に手を差し伸べて積極的に関わろうとする人は、変わり者やお人好しすぎる人とラベリングされてしまう。その理由がわかった。日本は「貧困」から目を背けすぎている。腫れ物に触るようなイメージが根付いてしまっているのだ。
一億総中流の頃から、貧困ギリギリであっても自分は中流だと勘違いしている人が多い。
正直、思想が近くないと読むのは大変かも。日本の現状を知ると言う意味では大変勉強になりました。
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japan
なぜだか気になり読んでみる。海外で暮らし、一時帰国した著者が思う日本についてのエッセイ。
私もその中の1人なのだが、中流と思い、あまり日本を変えようと思う人が少ない人種だと改めて思う。ここ20年で見ると他の国は裕福になっているが、日本は少しずつ所得が下がっており、むしろ日本は物価が安く旅行に行きやすい国だの様なニュースを見た。なるほどそうなのだろう。
でわ、自分が何ができるのだろうの行動まで動かせないところが、我ながら。。。
本著者の別の作品「ぼくはイエローで」が高校生に読ませたいランキング見たいので上位になっているのを先日見た。取りあえず、こっちを読んでみるか。
■学
新自由主義とは、「小さな政府、市場の自由」を目指す考え方です。
新自由主義は、国民が福祉や雇用保障と引き換えに、自由と責任を受け取る経済思想です
貧困の人も中流意識があり、(結婚や家庭は持てないけれど)職があり食べて行けるからいい
ミクロからマクロへ。貧困者がいても生活保護を受けさせて終わってしまい、そもそもの貧困者が出ないような仕組み作りまでには繋げられていない
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2020/3/1
内容がかなり濃いけど、日本の貧困に対する現状とイギリスの貧困に対する現状を比較して、日本全体として考えなくてはいけない貧困に関する、あるいはそれがきっかけで生じてくる危機意識をしっかりと認識しなくてはいけないなと思わされる内容です。
イギリスで暮らす著者だからこそ…と言う部分もあると思いますが、だいぶ日本で表には出てこないようなアングラの部分にスポットを当てて実際に取材も行なっているので、現実味があります、というか現実です。
かなりコアな部分を扱ってるなーと読み進めて思いつつ、日本にはたしかに、権利を主張する前に義務を果たせ!みたいな考え方がすごく浸透している、それが当たり前だと思っていた自分がいましたが、イギリスをはじめとするヨーロッパの国々、外国ではそうではないのだと言うこと。
外国では権利を主張することが当たり前で、リターンに対して不十分だと怒り出す人もいるというのは意外でした。
また、日本ではセーフティネットについての説明をしても決定権を他人に委ねるまでに弱った、考えることをやめてしまった人たちが多く存在するのだと言うことも意外でした。
よく、貧困においては自己責任論が展開させることが多いですが、本当にそうなのか、社会全体で人権を尊重するとはこういうセーフティネットに引っかかる人々に対してどうしなくてはいけないのか、どう支えて行かなくてはいけないのかなど難しい問いを投げかけられたような気がします。
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グラスルーツ、「草の根」から見た現代日本。
鎌田慧も「底辺」にlこだわるライターだが、この著者と視角は異なるように思う。
ここでいわれている「人権」の定義は心したい。
戦前、戦中期の日本は、左派も右派も「人権」を軸に論を展開していたとの指摘。
日本人の人権意識を制御しているのは、「日本人の素質」だからではなく、政治社会の仕組みの問題。
緊縮財政の問題点。
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格差とは?人権とは?階級とは?人と人の差を考えるきっかけに。多様性とは?一言で言い表せない感覚を評論家的ではなく、一当事者として書いている。