紙の本
『「世界で標準となっている経営理論」を可能な限り網羅・体系的に、そしてわかりやすくまとめて皆さんに紹介する、世界初の書籍である。』
2020/08/17 20:36
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
800ページ超、60万字超、という、写真でお見せした人には伝わると思うが、まさに『辞書』のような本。 すごい本でした。
「世界標準」と判断してよい30程度の経営理論(メインは32章)を「経済学ディシプリン」「マクロ心理学ディシプリン」「ミクロ心理学ディシプリン」「社会学ディシプリン」の4つの体系に整理し、『「世界で標準となっている経営理論」を可能な限り網羅・体系的に、そしてわかりやすくまとめて皆さんに紹介する、世界初の書籍である。』(本書はじめの2行)
いや、すごい本でした。辞書のような本、と書いたが、そうだね、辞書だね、と思って意識して、辞書のように今後何年もこの本にも戻ってきたり、参考文献も探してみたり、そうした『使う本』にしていくのがいいんだなぁと思いながら読み切りました。 当然俯瞰的に記載を行っているため、それぞれの章においては専門の本のほうが詳しいわけで、でもそんな中で、2020年現在での理論の状況をわかりやすく補足してくださり、さらに今後出てくる(実証が期待される)方向性を提示してくださったり、入山先生ならではの見解も章末に記載してくださっているところが、ほんとに今後長い付き合いになる本なんだろうな、と思いました。
個人的には、いくつか20年かけて読んできたビジネス本たちが、あぁこういう位置づけになるのね、と気づかせてもらったり(特に野中先生部分およびEQリーダシップ他)、また自分の生き方にも強いインパクトをあたえてくださっている社会起業家の方々(フローレンス駒崎さんやマザーハウスの山口さん、(働きながら、社会を変える。の)慎泰俊さん)が紹介されていたところもなんかほっとした。
そんな中での超個人的なところの引用としては、自分が大事にしている価値観が入山先生の「知の探索」「知の深化」の真骨頂の部分に記載されていた箇所を抜粋したい。(ほんとはこんなにいい本だからあとがきから抜粋すべきだとは思うが…)
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P244
知の探索・深化の理論に基づけば、ダイバーシティの本質は、知の探索を促すためにある。 だとすれば、先のように「一つの組織に多様な人がいる」(=組織ダイバーシティ)ことも重要だが、「一人の人間が多様な、幅広い知見や経験を持っている」のなら、その人の中で離れた知と知の組み合わせが進み、新しい知が創造できるのだ。 これを経営学ではイントラパーソナル・ダイバーシティ(intrapersonal diversity)と呼ぶ。「個人内多様性」という意味だ。筆者は「一人ダイバーシティ」と呼んでいる。ダイバーシティは、一人でもできるのだ。これが、個人レベルの知の探索である。
イントラパーソナル・ダイバーシティという言葉は、初めて知った方も多いだろう。それもそのはずで、ここ10数年くらいの間で、経営学で注目されている新しい概念だからだ。 近年は実証研究が進んできており、そして多くの研究で「イントラパーソナル・ダイバーシティが高い人は様々な側面でパフォーマンスが高い」という結果が得られている。
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過去、これ程までに私の疑問に答えを示してくれた書籍はなかった。
この内容、この厚みでこの値段は超お得。
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・経営理論の目的は、経営・ビジネスのHow, When, Whyに応えること。特に重要なのはWhyであり、経済学、心理学、社会学の何れかの人間・組織の思考・行動の根本原理から、「なぜそうなるのか」を説明するのが理論の目的だ
・SCP理論:ある産業が完全競争から離れるほど(=独占に近づくほど)企業の収益率は高まる
・ライバルからの模倣を困難にするには、複雑で一貫性のあるアクティビティ・システム(Mechanism、Fly Wheel)を描くべき
・ネットワーク効果の帰結は「独占に近づくほうが望ましい」というSCPと整合する。ただし、ポーター=ケイブスの主張との違いは、ティッピングポイントを超えた後は、差別化戦略ではなく、このネットワーク効果で独占に向かうことだ
・差別化戦略は、競争環境を完全競争から遠ざけることで、独占できるグループで勝負することを目的としている
・完全競争の3条件
1. 市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響を与えられない
2. その市場似た企業が新しく参入する際の障壁がない、その市場から撤退する障壁もない
3. 企業の提供する製品・サービスが、同業他社と同質である。すなわち、差別化がなされていない
・「価値があるリソース」というのはアウトプット市場に大きく左右される
・アドバースセレクション(情報の非対称性から起きる売り手と買い手の問題)→スクリーニング:私的情報を持っていないプレイヤーのとりうる手段で保険やクーポンで利用されている。保険であれば、1)保険料は安いが事故になったときの補償額も安い保険、2) 保険料が高いが保証額も高い額の2つを用意することで顧客をスクリーニングできる。クーポン券であっても、「ハンバーガーへの価格意識」は個人によって違うが、価格に敏感な層は価格を意識してクーポンを使うし、そうでない人はクーポンを使わないことで、顧客に応じた値引きを提供できる仕組みのこと
・私的情報を持っているプレイヤーは「自分の情報が本当だと相手に信じてもらえない」ことが問題であり、学歴であったり、会計の開示などにより、私的情報を裏付けするシグナリングが対処法
・インセンティブによる解消法とは、それまでプリンシパルと目的の不一致があったエージェントに、プリンシパルと同じ目的を達成する(やる気を起こさせる)組織デザイン・ルールを与えることだ。
・同族企業は主要株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)が一枚岩で、両社がビジョンを共有しているので「目的の不一致」がなく、大胆な手が打ちやすい
・価格競争を避けるためには差別化が重要。初期投資が必要なビジネスでは多くの投資が行われるが、それにより供給過多になることで価格競争に移らざるを得なくなる。
・ゲーム理論では、先に宣言することで「同時ゲーム」を「逐次ゲーム」に変え、自社に有利な状況を生み出すことができる
・数量を軸にした戦略は「強気な戦略」のほうが、相手が供給過剰を恐れるため優位に立ちやすい。価格を軸にすると、強気な値下げは両者の値下げを生み利益を下げるため、「弱気な戦略(価格を下げすぎない宣言)」のほうが、相手も価格を下げないことで有効になりやすい。
・両者は価格競争を無限に続けるだろうか、両社が合理的であるほど「無限に価格競争を続けて利益を落とし続けるのは不毛だし、相手もそう思っているはずだ」と考えるはずだ。その結果、両社は合理的な判断の帰結としてむしろ価格を下げなくなるのである
・リアルオプション:不確実性を生かす。当初計画より小さい初期費用で工場を作ってとりあえず事業を始める。数年後に不確実性が下がったタイミングで投資の判断を行う
・リアルオプションの学習効果:不確実性の高い状況で将来オプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を生かす。事業を始めなければ学習ができないので不確実性が下がらない
・意思決定者は限られた認知の中で選択をして行動に移す。行動することで認知が広がり、新しい選択肢が見えることで、より満足な選択ができるようになる
・うまくいっている時こそ、さらに目線を高くせよ
・経営者の過去の成功体験が、時代が変わって新しい仕事を始めるときに大きな妨げになる
・両利きの経営:人・組織には認知に限界があるので、知の探索(Exploration)をして認知の範囲に出て、知土地を新しく組み合わせる必要がある(シュンペーターの新結合)。一方、そこで生まれた値は徹底的に深掘りされて収益化につなげる必要もある(知の深化:Exploitation)。この探索と深化が高いレベルでバランスよくできることを両利きの経営という
・イントラパーソナルダイバーシティ:個人内多様性は知の探索になる
・イノベーションとは認知の範囲にあるお客様の問題を解決すること=幅広い認知視野をはぐくむことが重要
・TMS(Transactional Memory System:組織のメンバーがWho know whatをしっていること) TMSを最も高められたのはやはり「直接対話によるコミュニケーション頻度が高いチーム」だった。逆にTMSが一番低かったのは、「メール・電話によるコミュニケーション頻度が高いチーム」だったのだ
・人は暗黙知のほうが豊かであり、それを取りこまない知識創造はあり得ない
・SECI Model
1) 共同化(Socialization) : 暗黙知→暗黙知 個人が他社との直接対面による共感や、環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する
2) 表出化(Externalization):暗黙知→形式知 個人間の暗黙知を対話・施策・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などを作り、集団の形式知に変換する
3) 連結化(Combination):形式知→形式知 集団レベルの形式知を組み合わせて、物語や理論に体系化する
4) 内面化(Internalization):形式知→暗黙知 組織レベルの形式知を実践し、成果として新たな価値を生み出すとともに、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして「体得」する
・ナラティブは「まだ具現化していないが、これから起こる」ことの構造である。例えば「会社の方向性」といった形式知の塊は、過去から引き継がれ、未来に続いて「これから起こる」ものだから物語でなければならない。現場の知ならマニュアル化も機能するが、会社の心情、方向性、戦略のような「認知的な暗黙知」を形式知化させる場合はナラティブが必要である。
・進化のためのルーティン:「マニュアルを常に見直す」ことを前提にした暗黙の行動パターンがルーティン化されるとともに、���式知としてのマニュアルが蓄積され、常に現場が進化・成長を続けるのである
・ハイパーコンペティションの時代には、そもそも「持続的な競争優位」という前提が成立しない。むしろ企業に求められるのは「業績が落ちかけてもすぐに新しい対応策を打って業績を回復できる力」すなわち「変化する力」である。変化を繰り返すことで、「一時的な競争優位を連鎖して獲得する」ことが、これからの企業に求められるのだ
・ダイナミックケイパビリティはカニバリを推奨する→大手航空会社がLCCを行う事例
・全員をひいきできるリーダーが最強
1) 部下の悩みや課題を聞き出す、アクティブリスニング
2) アクティブリスニングを通じて部下が出してきた課題に対して、自分の考えを押し付けない
3) 部下への期待を部下自身とシェアする
・Transformational Leadershipでは、リーダーは「自分の率いる組織が、部下(フォロワー)の目指していることといかに親和性があるか」を啓蒙する。するとフォロワーは、自身の組織への帰属意識を高め、そのリーダーのビジョンを自身の中に取り込むようになり、リーダーのビジョンに沿って行動するようになる。一方でリーダーも、そういったフォロワーを承認し、称賛する。これにより、フォロワーは自身がその組織で「働く意義」「存在価値」をさらに認めるようになり、さらに積極的に組織での義務を果たすようになる
・利用可能性バイアス:簡単に想起しやすい情報を優先的に引き出し、それを頼ってしまうバイアス
・検索容易性:とりあえずいつものものを買っておけばまちがいがない
・具体性:身近な人から聞いた情報を「あの人が言うなら間違いない」と評価してしまうこと
・対応バイアス:他者が何か事件に巻き込まれたときに、その本当の理由は周辺環境などにあるのに、理由を当事者の人柄・資質などに帰属させてしまうバイアス
・代表性バイアス:典型例と類似している事項の確率を過大評価しやすいバイアス(よくしゃべる=関西人)
・不確実性の高い事業環境では、優れた企業ほどルールをシンプルにすることで、変化に対応できる。ルールをシンプルにすることで、企業の認知におけるヴァライアンスを減らし、結果として変化の激しい世界での予測の精度を高め、だから優れた意志決定ができて変化に対応できると解釈できる
・ポジティブな感情は「自分はこのままでいいのだ」という現状維持を促す可能性がある。結果として、サーチが滞る。したがって、満足度が高すぎて組織が緩んでいるときは、むしろネガティブ感情を取り込んで危機感を高め、サーチを促すことも必要だ
・ディープアクティング:人が何かの外部刺激に直面した時に、「まず自分の意識・注意・支店の方向を変化させることで、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから、それに合わせて自然に表現する」ことをさす。たとえば、CAが理不尽な理由で怒っている顧客に対し、その顧客の態度の捉え方を変え、「初めて飛行機に乗る顧客」という認識を起点とすることで、「とまどい」「嫌悪」から「同情」へと感情を変化さえて対応することができた
・認知を動かし、感情を動かす:あの客が怒っているのには、実は妥当な理由があるのではないか
・センスメイキング(腹落ち・納得)理論:正確さよりも納得性を重視する。全員が方向性に納得していることが正確に何かを行うよりも実現度が高まる。人とその対象(事業機会)は決して切り離せず、その人が行動して環境に働きかける(イナクトメント)することにより、やがて事業機会が浮かび上がり、結果としてあとからその事象をセンスメイク(納得)する
・まずは行動なのである。行動をして試行錯誤を重ね、もがいていくうちに、やがて納得できるストーリーが出てくる。そしてそのストーリーに腹落ちしながら、さらに前進するのだ
・主観的だからこそストーリーがあり、だからこそ多くの人をセンスメイクして、かれらの足並みをそろえ、巻き込めるのである
・センスメイキングの7大要素
1) アイデンティティ:センスメイキングは常に「自身が何であるか」のアイデンティティに基づく
2) 回想・振り返り:人は物事を経験するその瞬間にはそれをメイクセンスできず、事後的に振り返ることで飲みセンスメイクできる
3) 行為:人は行動することで環境に働きかけることができる
4) 社会性:主体(自身)と周囲の人々を含む「客体」は常に切り離せないので、センスメイキングは常に他社との関連性の中で起きる
5) 継続性:センスメイキングは繰り返される循環プロセスである
6) 環境情報の部分的感知:人は認識のフィルターを通してしか事象が認識できないので、認識・解釈されたものは常に全体の一部でしかない
7) 説得性・納得性:人は「正確性」ではなく、「説得性」をもって、自身や他者をセンスメイクできる
・弱いつながりのソーシャルネットワークのほうが、自分の目の前ではなく、自分から離れた、遠くの知を幅広く探索し、それを今自分が持つ知と新しく組み合わせることになり、幅広い知と知を組み合わせることができる
・イノベーションを生み出すには弱いつながりが必要だが、イノベーションを製品化・実行するには強いつながりが必要
・シェアがシェアの連鎖を呼ぶのは、弱いつながり(強いつながり内だとシェアした情報が同じようなものである可能性が高く、シェアされにくい)
・ストラクチャルホール:高密度なネットワーク間のハブになっている人は、各クラスターから情報があつまり、それをコントロールできる
・越境を実現する人はクラスターとクラスターの結節点となり、ブローカーとなり、SH(Structural Hole)を活用し、SHを埋めて、新しい価値を生む
・資源依存理論:企業は軽減(競合をM&Aすることで規模を大きくし取引先からの圧力を軽減する)、取り込み(影響力のある人物を経営陣に取り込む)、吸収(被買収企業が所有する鉱山も含めて買うことで鉄鉱石まで調達する)の何れかの戦術を選び、あるいは組み合わせることで、外部抑圧を軽減することが可能
・M&Aが発生しやすいのはMutual Dependence(双方向の依存度の合計)が高く、Power Imbalance(両者の依存度の差)が小さい環境。依存度の合計が大きくても、どちらかの依存度が相対的に低ければM&Aは起きにくい(他の取引先との機会ロスなども生まれる)
・スタートアップへのCVCに関しても、大企業側が技術を取り込むことでスタートアップへの依���度が低くなり、スタートアップが苦戦するという構図が生まれている。
・業界内でゼネラリスト企業間の競合度が高まるほど、その業界にいるスペシャリスト企業の死亡率が低下する(業界が活性化する、その中でのスペシャリストの付加価値が相対的に受け入れられる面積が増える、基礎技術のコストが下がるなどの効果がありそう)
・メガトレンドに基づき、様々な業界の生態系変化を見越す習慣をコンサルに丸投げした単発作業として行わない
・新レッドクイーン理論:真の競争相手は、ライバル企業ではなく、自分のビジョン。環境が大きく変化するほど(チェンバレン型ではなくシュンペーター型の環境に移るほど)、企業の目的は「競争」になってはならないのだ。
・これからの戦略に不可欠なのは「魅力的な未来を描き出し、イノベーションを引き起こし、投資家・従業員・顧客に対して大きな未来を提示し心理的な期待感を高められる企業」になる
・AIが得意なのは「学習」「知識」「推論」「予測」だが、AIにできないことは「問題認識」「メタ認知」「定型的でない意思決定」「感情表現」などだ。そうであれば、人間にはこれからますます「問いを立てる」能力が求められることになる。
・企業の存在目的は、株主にもうけさせることだけにあるのではない。世界の在り方をよりよくしなければならないし、それによって一般人の価値も上げなければならないのだ
・アントレプレナー:不確実性に直面した時に意思決定をする人
・創造型は様々な試行錯誤・行動を繰り返し、事業機会が事後的に、徐々に浮かび上がってくる
・革新的な起業家の思考パターン
1) Questioning:現状に常に疑問を投げかける
2) Observing:興味を持ったことを徹底的にしつこく観察する
3) Experimenting:それらの疑問・観察から、仮説を立てて実験する
4) Idea Networking:他者の知恵を活用する
・株式会社の仕組みにより「企業は(目的を達成しても)死んではいけない」という前提になっている
・ビジネスで議論をし、相手と根本的に話がかみ合わない場合、「そもそも人とはどう考えるのか」の前提が異なっているから、ということが多い
・戦略:企業を取り巻く環境(Environment)を前提に、業績(Performance)を向上させるための、経営資源(Resource)を使った、企業の行動・アクション(Action, Initiative)のこと
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購入:2020/12/29
読了:2021/11/16
長くかかったけど、この厚さとこの値段とこの読書時間の価値はあると思う。
最初の方のSCP理論の分かりやすさ、完成されたパズルのような無駄のないロジックに感銘を受けた。それをこれだけ体系的に、分かりやすく説明できる著者にも。
新レッドクィーン理論のまとめ方が面白い。「アリスは、相手より2倍早く走ることを考えるべきなのではない。アリスは、空を飛ぶこと考えるべきなのだ」
人を納得させるにはWhyの説明が必要で、Whyの説明にはこの本で解説されているような「一般理論」を使うのが有用だ。
Whyを突き詰めることが、自説の真実性、有用性、納得感を高めるのだ。
Whyの突き詰めには、「因果関係の図(ポンチ絵)」を描くと良い。
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もやもやっとしていた世の中の流れや新しい動きが体系的に理解できました。
今、中小企業診断士の勉強をしているのですが、企業経営理論の分野が現実の動きに沿ってなるほどと具体的に頭に入っていきました。
ビジネスって究極の目標は、関係する人そして世の中全体を幸せにすることですね
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入山氏の著名な名著。
世界中の経営理論を網羅的に解説した本とのこと。
不確実性が高く、正解のないなか、思考の軸となるべきものにしうるのが世界標準の経営理論とのこと。
メモ
・ビジネスパーソンに経営理論が必要な理由
説得性、汎用性、不変性
・SCP理論 需要と供給の関係、独占性(参入障壁・優位性構築)で利潤は決まる。現在は静的でなく、部分的にしか成立しなくなりつつある。
・プリンシパルエージェント理論。経営者と管理者のモラルハザードなどのこと。株主と経営者間でも成り立つ。目的の不一致に関する問題。インセンティブ設計やモニタリングによる解消法がある。
・不確実性の4分類 確実に見通せる、他の可能性、可能性の範囲が見えている、全く読めない未来
・トランザクティ部メモリーを高めるためには、コミュニケーション手段はいかようであれ、顔が見えることが重要
・ダイナミックケイパビリティ
センシングとサイジング。事業機会驚異を感知し、とらえること。
シンプルルール。数を絞ったシンプルルールだけを組織日徹底し、柔軟意思決定すべし。
・弱いつながりがクリエイティビティにつながり、強いつながりが実践につながる。
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掛け値の名著
今年のビジネス書No.1は確定でしょう
特にp.41のポーターの戦略を経済学の完全競争と完全独占で表し直したところから一気に引き込まれた
ポーターの競争戦略は古い経済学の焼き直し
と言われているのがよくわからなかったのだがスッキリわかった
また、
経営理論とビジネスフレームワークの違い
経営理論に経済学、心理学、社会学が土台となっている
など分厚い本なのに一気に読めた
蛇足
全ビジネスマン必読、なんて書評書く人が出てくるだろうけどこんなの読もうとする人、読んで理解できる人なんて1割りもいないよ、、、
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800ページ、世界の主要経営理論30を完全網羅。いやー、読み切った。経営理論を800ページって、聞いただけでも堅苦しいですが、文章がわかりやすく、理論がそれぞれ噛み砕かれていて、とても読みやすかったです(それでも800ページは長かったが)。
世の中に出ているビジネス書は、ビジネスにおける現象を、経営学のさわりともいえるフレームワークに当てはめて解説しているだけで、なぜそう考えるべきなのかは説明していない。しかし、経営学もまた、(曖昧で、気分屋な)人間が行うビジネスを論じるものである以上、単独で理論を構築できるものではない。経営学に理論的根拠を与えているのは、経済学、心理学、社会学であり、この3つに基づいて、ビジネス現象のなぜ?を考えるの必要がある。
というわけで、経済学、心理学、社会学をベースにした30の経営理論が解説されています。
たしかに流行のビジネス書って、昔どこかで読んだ考え方を、表現や対象を変えて描きなおしているだけって印象はあります(自分がそれなりの長さの読書経験を積んできたせいもあるだろうけど)。著者の言う、この本読んだら、もうビジネス書は読む必要はなく、以後は、経済学、心理学、社会学のしっかりとした本を読み、人間とは何かを考えていくことが、ビジネスにも役に立つという意見には、かなり納得感があります。
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経営学者である著者が世界の主要な経営理論30をセレクトし、各理論の概要が実ビジネスにおける示唆をまとめた解説書。
これまでにこうした1冊はなかった、という著者の言葉通り、これは大変な労作であり、かつ極めて内容が整理されており、驚くほどに分かりやすい。800ページを超える大著であるが、あまりに面白くて1日で読み終えてしまった。
本書のアプローチは「個々のビジネス現象にどう経営理論が役立つのか」という現象ドリブンの発想ではなく、「経営理論がどう個々のビジネス現象に役立つのか」という理論ドリブンの発想である点に特徴がある。そもそも経営理論とは、個々のビジネス現象の観察から、一般化/仮説化と科学的な検証のプロセスを経て構築されたものであり、一定の汎用性を持つものである。こうした経営理論は多様なビジネス現象を解き解す際の”思考の補助線”として重要な役割を果たす、というのが著者の主張であるが、実際に読み終えてみると、その主張は非常に納得感がある。
実際、本書を読みながら考えていたのは、自身が5年間の経営コンサルティングの仕事で関わってきた多数のプロジェクトのことであった。現在扱っているプロジェクトについて、このような考え方を援用すると、こういうアプローチがあるのでは?、ということを考えながら読めたのは非常に楽しく有益な体験。ぜひ今後も手元に置いて、定期的に読み返してみたい。
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入山先生が主要な経営理論をまとめられた書籍です。800ページで42章に及ぶ量ですが、過去に知っていることの再構築も含めて得られるところは多かったと思います。今後、この知識をいかに活用していくかも大切と思いながら読み進めていました。一度読んで終わりではなく、何度も、適宜関係するところを参照する使い方がいいのかなと思っています。
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コスパがとても良い本。
読みやすく書かれた刺激ある800ページの本が、2900円である。
辞書みたいだけど、何かの雑誌向けに何年もかけて書いたものを集めたからか、とても読みやすい。
理論は、how、when、whyに応えるものというのは、学生にも読ませたい一文である。多くの研究者が再現性ある真理を求めて研究しているのだから、多くの気づきがあって当然ではあるが、なにより、今自分が興味があるのは何かということが俯瞰して読むことでわかるのは大きい。
例えば、企業に勤めている中でアドバース・セレクション、エージェンシー問題は本質的な問題だが、どのような対応があるのか。企業のビジョンを考える際、どのようにモチベートしていくのか。
今後、SH理論とか、業績が上がっている経営者を分析した結果から、違う業界に転職し、イントラパーソナル・ダイバーシティを高める必要があるのではないかとと考えたり。
3日位読むのに時間はかかるが、毎年読めば、毎年異なる気づきが得られるかもと思わせる良い本でした。
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■序章
・理論とは下記3つに応えていることが条件。
①因果関係(how)
②理論が通用する範囲が明示(when)
③なぜそうなるか(why)
・ビジネスで経営理論が求められる理由は
①whyの説明がないと人は納得しないから(人を束ねて同じ船に乗せるため)
②汎用性が高い。つまり考え方を理解すれば応用が利く
③時代を超えて不変(一時の流行で変わる考え方ではなく本質)
・3つのディシプリンがある
①経済学ディシプリン
②心理学ディシプリン
③社会学ディシプリン
・理論とフレームワーク(fw)の違い
fwは分類・整理だけだったりパターン化を提示するので、思考停止する。
理論はwhy,how,whenから思考を促す。
■1章 SCP(理論)
・SCP理論は利益が出やすい業界とそうじゃない業界があることを教えてくれる。
利益率を左右する要素として
①市場価格のコントロールし易さ(価格競争に陥らない)
②参入障壁、撤退し難さ
③価値のある差別化(コモディティ化しない)
の3つが変数として考えられる。だから独占・寡占が儲かる。
・さらに業界だけでなく一つの産業での企業間のポジショニングの「移動障壁」がある。無茶するとstuck in the middleに陥る。
・こうした考えからポーターの基本戦略の一つ、「差別化戦略」が導かれる。
・最近のプラットフォーマーも同じ理論で説明がつく。
GAFAなどはユーザーが増えるほどに効用が高まる(ネットワーク効果)ビジネスモデルを持ち、ティッピング・ポイントを超えるとますますユーザーが増えて参入障壁は非常に高くなる。
■2章 ファイブフォース(fw)
・独占に近づくほど収益性が高くなるというのがSCP理論の含意だが、ファイブフォームも産業の収益性は5つの要因で説明できると考えている。
・5F分析は産業単位だけでなく、よりミクロな視点で行うことで実質的なポジションを示唆してくれる。
・ただしこうした産業構造だけが企業の競争力と収益性を規定していると考えるのは早計で、企業固有の要因も影響しているとの論文も多数ある。
■3章 リソース・ベースド・ビュー(理論)
・企業固有の要因に着目したのがRBV。しかしSCPと同じ点は完全競争の条件から離れることで独占に近づけて収益性を高めるために何をしたらいいのかという考え方。
完全競争の条件として「企業のリソースはコストなしで移動できる」というものに着目し、RBVは価値のあるリソースを独占することで収益性(競争力)を高めるというアプローチに立つ。
・バーニーが提示した命題
命題1:企業リソースに価値があり(valuable)、稀少な(rare)時、その企業は競争優位を実現する。
命題2:さらにそのリソースが、模倣困難で(inimitable)で、代替が難しい(non-substitutable)時、その企業は持続的な競争優位性を実現する。その時のリソースの模倣困難性は、蓄積経緯の独自性、因果曖昧性、社会的複雑性で特徴づけられる。
・一方でRBVの課題としてはfwが少なく使いづらい、行動に移しにくいという意見も多い。その���処法としてはアクティビティ・システムで複雑性を図式化することが有効(システム思考)。
■4章 競争の型
バーニーは企業の競争の型には3つある、と主張する。
①IO型の競争
産業組織論(Industrial organization)に基づく競争で、産業などの構造的な要因が企業に大きな影響を及ぼしていると考える。
そのため、市場構造・競争構造に障壁を作って、「ライバルとの激しい競争を避ける」ような戦い方を取る。差別化はそのための一手段。
②チェンバレン型の競争
一方でこちらは「競争したうえで勝つ。そのためには自社のリソースを鍛える」という考え方。
③シュンペーター型の競争
不確実性が高いので事前の予測や計画通りにうまくいくことは少ない。「試行錯誤して色々なアイデアを試し、環境の変化に柔軟に対応する」というスタイル。
そして業界ごとにどの型の競争に近いのか、という視点を持つと示唆が得られる。
例えば、IO型の競争例ではアメリカのコーラ業界は大手が多額の広告費を支出し、小売業者とも密な関係を持ち、多くのシェルフスペースを押さえることで他社が参入しにくくしていた。チェンバレン型では自動車などが挙げられる。シュンペーター型はハイエンドの家電メーカーなど。
■5・6章 情報の経済学 エージェンシー理論(理論)
・この理論ではすべての人が同じ情報を持つという「完備情報」の仮定を疑うところから「情報の非対称性」を考える。
・情報の非対称性がある場合「アドバース・セレクション」(逆選択)が発生しうる。
逆選択とは、プレーヤー間での情報の非対称性から片方が嘘をつき、結果として望ましい取引ができなくなること。例として、就職活動、保険ビジネス、中古車取引など。
・さらに例えば保険に入った後は「前みたいに注意する必要はない」と考える可能性もある。そのことをモラルハザードという。
・モラルハザードの対処法を考えるのがプリンシパル=エージェント理論。
・モラルハザードが高まる条件は2つある
①「目的の不一致」(プリンシパルとエージェントの目的)
②「情報の非対称性」
それぞれの解決方法も提示されている。
①「インセンティブ」の提供 → 「目的の不一致」に対するソリューション
②「モニタリング」の強化 → 「情報の非対称性」に対するソリューション
この理論の使い方としては
「誰がこの問題のプリンシパルとエージェントなのか」
「何が目的の不一致になっているのか」
「目的の不一致を解消するインセンティブはないか」
「情報の非対称性の原因は何か」
「情報の非対称性を解消する無理のないモニタリングの仕組みは?」
などと理論の考え方に基づく問いを立ててみること。
■7章 取引費用理論(TCE)
TCEでよく紹介される例にGMとフィッシャーボディの取引が挙げられる。
あの例をホールドアップ問題と呼ぶ。ホールドアップを引き起こす要因は4つ
①不測事態の予見困難性
②取引の複雑性
③資産特殊性(技術やリソースが特定企業に占有されている)
④機会主義(チャンスがあれば儲けようとする姿勢)
TCEは企業の範囲をどこまで内部化すべきか教えてくれる。
■8章 ゲーム理論
クールノー競争:数量ゲーム、かつ同時ゲーム
ベルトラン競争:価格ゲーム、かつ同時ゲーム
クールノー競争の時はナッシュ均衡は安定的だが、ベルトラン競争だと不確定。
ベルトラン・パラドックス(ナッシュ均衡が不安定のため、結果として両者最悪の選択肢を選んでしまうこと)を避けるための経済学的な視点
①差別化すること
②ビジネスの特性(初期投資が多い業界はクールノー競争に陥りやすい)
そして競争の種類は移行する。例えば多額の初期投資が必要で規模の経済が働く半導体業界はクールノー競争(数量ゲーム)が起き供給過剰になりうる。その後旧製品は価格競争(ベルトラン競争)へと移行する。
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経営理論が網羅的かつ俯瞰的に説明されており、これを一通り読んだ後に別の本などで細部に入ると、どこの勉強をしているかが迷わないので、腹落ちしやすい。
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800ページ超、60万字超、という、写真でお見せした人には伝わると思うが、まさに『辞書』のような本。 すごい本でした。
「世界標準」と判断してよい30程度の経営理論(メインは32章)を「経済学ディシプリン」「マクロ心理学ディシプリン」「ミクロ心理学ディシプリン」「社会学ディシプリン」の4つの体系に整理し、『「世界で標準となっている経営理論」を可能な限り網羅・体系的に、そしてわかりやすくまとめて皆さんに紹介する、世界初の書籍である。』(本書はじめの2行)
いや、すごい本でした。辞書のような本、と書いたが、そうだね、辞書だね、と思って意識して、辞書のように今後何年もこの本にも戻ってきたり、参考文献も探してみたり、そうした『使う本』にしていくのがいいんだなぁと思いながら読み切りました。 当然俯瞰的に記載を行っているため、それぞれの章においては専門の本のほうが詳しいわけで、でもそんな中で、2020年現在での理論の状況をわかりやすく補足してくださり、さらに今後出てくる(実証が期待される)方向性を提示してくださったり、入山先生ならではの見解も章末に記載してくださっているところが、ほんとに今後長い付き合いになる本なんだろうな、と思いました。
個人的には、いくつか20年かけて読んできたビジネス本たちが、あぁこういう位置づけになるのね、と気づかせてもらったり(特に野中先生部分およびEQリーダシップ他)、また自分の生き方にも強いインパクトをあたえてくださっている社会起業家の方々(フローレンス駒崎さんやマザーハウスの山口さん、(働きながら、社会を変える。の)慎泰俊さん)が紹介されていたところもなんかほっとした。
そんな中での超個人的なところの引用としては、自分が大事にしている価値観が入山先生の「知の探索」「知の深化」の真骨頂の部分に記載されていた箇所を抜粋したい。(ほんとはこんなにいい本だからあとがきから抜粋すべきだとは思うが…)
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P244
知の探索・深化の理論に基づけば、ダイバーシティの本質は、知の探索を促すためにある。 だとすれば、先のように「一つの組織に多様な人がいる」(=組織ダイバーシティ)ことも重要だが、「一人の人間が多様な、幅広い知見や経験を持っている」のなら、その人の中で離れた知と知の組み合わせが進み、新しい知が創造できるのだ。 これを経営学ではイントラパーソナル・ダイバーシティ(intrapersonal diversity)と呼ぶ。「個人内多様性」という意味だ。筆者は「一人ダイバーシティ」と呼んでいる。ダイバーシティは、一人でもできるのだ。これが、個人レベルの知の探索である。
イントラパーソナル・ダイバーシティという言葉は、初めて知った方も多いだろう。それもそのはずで、ここ10数年くらいの間で、経営学で注目されている新しい概念だからだ。 近年は実証研究が進んできており、そして多くの研究で「イントラパーソナル・ダイバーシティが高い人は様々な側面でパフォーマンスが高い」という結果が得られている。
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最前線の経営学者からすると疑問符のつく箇所もあるようだが、ビジネスパーソンが体系だったアカデミックな経営学を学ぶ入口としては最高峰なのではないだろうか。
【メモ】
・世界標準の経営理論は、世界中でビジネスを長い間研究してきた経営学者の集大成であり、ビジネス・経営の真理法則に肉薄している
・理論とは経営・ビジネスのhow,when,whyに応えることを目指すもの
・理論そのものは抽象的で、実務で使いやすいとは限らない。実践のためにフレームワークに落とし込む必要がある
・実証的な理論=ある現象のメカニズムそのものを説明する理論
ex「~という条件下では、企業は~のように行動する」
・経営理論とは「人・あるいは人が織りなす組織が、普段から何をどう考え、どう意思決定し、どう行動するか」を突き詰めたもの