電子書籍
一人の天才のひらめきからでなく現場の声を拾い上げて世界基準になった「奇跡」
2020/08/31 07:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界から高い評価を受けるサクセスストーリー
日本にとって久しぶりの快挙といえる「QRコード」
QRコードは一人の天才経営者が市場の成長を事前に予測し、戦略を立案する中から開発されたものではない。
生産現場の悲鳴にも似た叫びから問題を認識し、解決しようとする中から生まれたものだ。
現場の声を拾い上げて改善を重ねてブラッシュアップしていく。
それこそが日本が得意としてきたものだと思う。
元気がなくなっている今の日本に大変参考になる本だと思う。
紙の本
人が繋ぐテクノロジー
2020/05/11 16:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
技術的なレベルアップの影にも、偶数の出会いや閃きが隠れていますね。新しいサービスを、一般化するための努力にも頭が下がります。
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デンソー 1975 独自のバーコード NDコードを開発 野村正弘
業界初のバーコード 1949 米国ドレクセル大大学院生 バーナードシルバーとジョセフウッドランドが発明し、1952に特許を取得
QRコードの父 原昌宏
2002 シャープと日本テレコム QRコードを携帯電話で読む
2006 ANA SKipサービス QRコードを使って飛行機に搭乗
QRコードの進化
1998 マイクロQR
2001 中国語と韓国語対応
2007 SQRC データ改ざんできない
2011 複製防止QRコード
2014 フレームQR デザイン性の加味
tQR toughness 都交通局
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1つの技術が生まれ、世界標準となり、普及していくプロセスを追っている。全体的にデンソー万歳な論調になるのは、デンソー社からの聞き取りプロセスを考えるにしょうがないかと。そこをさっぴいても、非常に為になる本。国際標準化の工程でどれだけのカネが動いたのだろうか。。。 自動認識業界だと、RFIDやカメラ技術がこれから普及していくはずだけど、裏側どうなってんのかな。
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QRコードの開発プロセスだけでなく、標準化作業の重要性、オープンソース化、需要先導型の用途拡大など、QRコードを一つのプラットフォームにして市場が拡大していく様を理解することができた。
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いまや目にしない日はないQRコードは、トヨタ生産方式に対応するために、元々トヨタの一部門から独立したデンソーにより生み出された技術。
QRコードが一般化したのは、中国におけるペイメントでの普及の影響も大きいため、日本の技術であることを知らない人も多いのではないだろうか。
この技術に関してデンソーは、世界的な普及のために特許は取得するものの、特許料などは請求しない形をとったことで、元々は製造業の中だけで使われる技術であったが、いまではインターネットの世界でも広く活用されている技術となった。
ただ、単に特許料を取らなかったから広まった、というわけではなく、日本の自動車工業会の標準コードとなり、日本の自動認識工業会規格、国際自動認識工業会、そしてJISを挟んでISO/IECといった世界の規格の標準として認定されている。こうした基礎があって世界に普及したことを忘れてはならない。
本書では、この国際自動認識工業会での承認に至るまでの苦労や国際的な根回し、またJISを管掌していた当時の通産省工業技術院が不必要に足を引っ張っていた姿などが描かれている。
日本が国際規格に翻弄される中、数少ない成功例としてのQRコードの存在を忘れてはならない。また、こうした取り組みに、現在の経産省が足を引っ張ることもあることを意識しておく必要がある。
ここまで本書の内容についてまとめてみたが、いくらリーダーで儲けようという意図があったからとはいえ、無料で開放する意図のあったQRコードの国際規格化に尽力されたデンソー(現在のデンソーウェーブ)の社員の方々の努力には本当に頭が下がる思いである。
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すごく面白かったです。
QRコードが誕生した背景を知るだけでなく、本書からは、とことんこだわることの大切さが学べます。
若い方に、ぜひ読んで頂きたいです。
著者の著述がとても分かりやすい。
「後述する●●が」などと、読者が迷子にならないような気配りも感じられます。
物語としては、登場する関係者一人ひとりの強いモチベーションに感動しました。ページをめくるたびにわくわくしました。
また、特許権を持っても権利行使をしない「パブリックドメイン」のメリットがよくわかりました。
実は、前半を読んでいる間は「奇跡なんて失礼。関わってきた一人ひとりの努力の成果じゃないか」と思っていました。
「奇跡」は、ユーザーが新しい用途をどんどん発見して、QRコードの価値を引き上げて行ったことを指していたのですね。
カバーデザインのセンスもバツグン! 東洋経済とは思えない遊び心が感じられました。
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文化放送
「村上信五くんと経済クン」
ゲスト 原昌宏 さん
(2021年1月16日放送)
#経済クン
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普段何気なく使っているQRコードがもともと工場で使うためのものと知らずに過ごしていた。
これを読むとQRコードが世界中で使われている理由がよくわかった。
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QRコードの発明に至る経緯と普及するまでについて書かれた本。
帯に「日本発で国際標準になった稀有なイノベーション」とあるけど、本当にそうだよなと思う。
初めてQRコードが日本発だと知ったときは結構驚いた。
デンソーをよく知らない中国人の視察団が、QRコードを発明した企業だと知った途端、興奮しだした話が面白い。気持ちは分かる。特に中国なんか、QRコード決済が普及した国でもあるしね。もはや、QRコード頼みの生活してるという人も多いんじゃないかと思う。
本題と関係ないけど、1分間の計算に660円かかるコンピュータがあったという話に驚愕。QRコードの前進のNDコードというものの開発者である野村政弘さんが、コンピュータに夢中になって計算処理に44時間も費やしたことがあるらしい。昔は大変だったんだなぁ。
いやでも、今でもクラウドでの重い処理ほっておいて数十万円かかったなんて話たまに聞くから、似たようなものか。
後、ビックリしたのが、バーコードよりもOCRのほうが読み取り精度がいいという話があったということ。OCRのほうが精度低いイメージあるのだけど、OCRのほうがいいという時があったのか。まあ最悪、リーダーが読めなくても文字だったら人は読めるというのはあるのかな。
そういえば、商品にバーコードがつくのが一般的になるのって、1980年代なのか。そういや、会社にある古い本の中には、バーコードがついていないものがあったような。今や商品にバーコードがついているなんて当たり前だし、これはこれですごいことだよなと思う。
そしてそのバーコードを読み取るPOSレジ用のリーダーをデンソーで開発したのは、QRコードを発明した原昌宏氏だったそう。バーコードリーダーの開発秘話についても書いてあったけど、それだけですごい人だということが伝わってきた。
まあでも、これだけQRコードが普及したのは、利便性だけでなく、お金や根回しも行っていたのだなと思った。
そういう意味では、トヨタの力というのは大きかったのだろうなと思う。QRコードを発明したのがもっと小さい会社だと、ここまで普及しなかっただろうなと。
後、日本IDテックとの訴訟問題の話も面白かった。CPコードという二次元コードのライセンス料をもらって収益をだしていた会社だそうで、QRコードが公になると不利になるため訴えたらしい。内容はほとんど言いがかり。調べてみると、日本IDテックは2000年に倒産したらしい。訴訟なんてせずにビジネス転換しておけば倒産せずにすんだかもしれないのに(知らんけど)。
そしてなんといっても、一般消費者がQRコードを目にするようになったのは、携帯電話のカメラの読み込みによるウェブページへの遷移だろうなと思う。自分は最初、てっきりQRコードというものはURLを読み込むためのものだと思ってた。
これまた本題と関係ないのだけど、視覚障碍者のほぼ全員が、駅のホームへの転落経験があると書いてあって驚いた。よく落ちないで歩けるよなと思うことがあるけど、やっぱり落ちる時もあるのか。やっぱりホームドアって大事なんだろうな。
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QRコードについて理解ができていないことがあったので、開発者の記録を読みたく、手に取りました。
様々な困難があっても乗り越え、その結果を広く世間に広めるために特許についても工夫を施したのが課題を解決したいということに焦点を当てて取り組んでいるのが良いなと思いました。
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1971年、トヨタの「かんばん」をデジタル情報化する。
60桁以上の情報。
バーコードシステムの独自開発。
NDコード 3桁*21=63桁
1977年導入
CCDでスキャン セブンイレブンPOSにリーダー納入
2次元バーコード開発目標
200桁、ワンタッチ、即時、耐汚れ、生産物に印刷
マトリックス型⇔スタック型
方向性なし
高密度
切り出しシンボル ;早く正確に
ファイダーパターン
電車から目立つビルから発案
「迷ったら、手を動かす」
様々な印刷物のフォントから
白黒比の少ない比率を見つける。3カ月。
■枠:□枠:■=1:1:3
1994年7月完成 先行3社から7年遅れ
QR=Quick Response
数字で7000キャラクタ収納
1秒間30シンボル読み取り
誤り訂正比率30%
自動車業界から標準化
1996年 ISOとIECが国際標準化SC31設立
UPC IBM特許権行使しないことで普及→先行3社も
JAN 特許切れで普及
世界標準化されたものでないと取引先まで普及しない
機械やソフトで商売するポリシー
デンソー社内での実績
eかんばん+QRコード
トヨタ生産管理部門
紙ベースの「かんばん」への信念
人の手を介した 現場・現物・現実の三現主義
物流部門
かんばんで記載しきれない情報も記録
取引伝票のOCR→デジタル情報化
自動車業界の帳票の標準化へのQRコード採用へ
自工会、自部工会
全米自動車産業協会 での標準化に4年
3種コードを使い分けていた
委員会活動にコンサルを採用
デンソー及び日本各社のサポート表明
第三者機関へ試験依頼
毎年3億円の普及活動費
通産省とJIS規格化
2001年 国際標準二次元シンボルへ
デザイン性とセキュリティの進化
フレームQR
誤り訂正領域30%を独自デザインに使用
SQRC
非公開部を設けた
QRに預金者の顔の特徴を非公開領域に記録し
カメラの顔認識とオフラインで照合
複製防止QR
特殊な光だけ通すインクでQRコードを隠し
反射して帰ってくる情報を読み取る
tQR
電車のQRをカメラで読み取りホームドアを開ける
誤り訂正を50%へ
マイクロQR
回路基板の管理
最先端企業の現場が起点
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以下の教訓は、組織間だけでなく、個人間でも役立つと思う。別の本で、自分を売り込むためには貸しを作る(信頼残高を貯める)ことが重要であると書かれていたのを思い出した。
●柴田彰氏の言葉:
・「委員会に積極的に参加し、委員長役を担い、自社のためでなく他社のためにも努力を惜しまないことで、いざというときに自社がどうしても実現したいことを進めることを他社が認めてくれるようになる」
・「自社の利害とは関係ない案件についても一生懸命、委員(長)や代表者として取り組む。有事の際に自分たちが本当にやりたいことを通させてもらうには、平時にしっかりと他の人たちの利害も考えて行動しておくことが非常に重要」
●具体的には、このような取り組みを続けてきたことにより、他社や外部組織から以下のような協力を引き出すことができた。
・全米自動車産業協会での標準化の際、日系自動車メーカー(トヨタ、日産、ホンダ)に支援を要請し、当該協会の活動に積極的に参画してもらえることになった。
・全米自動車産業協会での標準化の際、自工会や自部工会から標準化要請の手紙を出してもらったり、プレゼンテーションに自工会として出席してもらったりするなど、大きな支援を得られた。
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QRコードがどうやって出来たのかが分かりやすく書いてある。
最初は工場で効率よく荷物をやり取りするにはどうしたらいいのか?から始まる。
荷物が動くと伝票が発生し、それを処理するのに時間がかかるので、どうにかできないか?荷物自体に情報をのせてはどうか?バーコードより情報を増やして読みとりやすくするには…など課題を解決するにあたって、たくさんの人と時間とお金がつぎこまれていく。また、海外でも共通して使うには?ほかの使い方はあるのか?と、どんどん広がっていく様がおもしろかった。
簡単に使えるものこそ、いろいろと手がかかっているのだなぁと思った。
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たった一人の天才の功績ではなく、チームの総力戦で大成功を成し遂げた物語。
これは参考にできる点が多い。
平成の30年間、さらに令和時代の現在でも日本企業ではなかなか画期的なイノベーションを生み出せずに停滞感が漂っている。
今でも試行錯誤を繰り返している会社が多いと思うが、このQRコードの話はものすごく示唆に富むのではないだろうか。
結局飛躍するような発想や技術力が必要なのは確かだが、それだけでは決してイノベーションは成功しない。
一歩も二歩も高く飛躍していくための手法が本書では数々語られている。
特徴的なのは、それらが決して最初から計画されたものではないということだ。
確かに戦略についてはそれなりに最初からあった。しかしすべてが計画通りに進んだ訳では決して無い。
何度も何度も壁が立ちはだかり、その度に不屈の精神でバトンをつないで乗り越える。
この総力戦の具合が本当に心地いい。
いかにも日本人的であるが、こういう話で心が打たれるのは民族の特徴なのかもしれない。
最初の壁は、現場からだった。
コンピューターすら無かった時代。
自動車の組み立てもすべて人力で行っていた。
部品を組み立てる工程で無駄が出ないようにジャストインタイムで管理する「カンバン方式」を編み出して克服したのは有名な話だ。
しかしこのカンバン方式も決して完璧ではない。
もっとこういうことができないか?という現場からの要請で、数々の改良がなされていく。
その一つがバーコードだ。
つまるところ、この組み立て工場の現場課題の本質は「情報の管理」しかもそれがタイムラグなしに発生することに意味がある。
「今、何の部品が何個仕入れられて、何個製品に使われ、何個残っているのか」
現代のようなコンピューターネットワークが前提の社会であれば、これらの管理は当たり前に出来るだろう。
今となれば、高性能のセンサーもある訳だから、人間が情報を手入力しなくてもセンサーで情報を取得し、サーバーに自動的にUPすることも出来る。
しかしそれらが何も存在しない時代はどうだったのだろうか。
これもすべて人力で伝票に記入し、受け取ったらチェックして、次に回していく、なんてことをしていたのではないだろうか。
つまり最初は、非効率的な人力での伝票入力の仕組みを改善するところから始めたのだった。
それがまさにバーコードを利用することで課題を解決することとなり、やがてQRコードの発明につながっていくのだ。
発明の物語であれば、ここで話は終わってもよい訳であるが、ここからバトンは引き継がれていく。
QRコード、世界標準への道のりだ。
本書に記載の通り、特許を守りQRコードを利用ごとにライセンス料を得ていたら、今のような世界標準の発展はなかっただろう。
特許を早めに開放し、逆にバーコードリーダーを売るという戦略でビジネス的に成功を収める。
まずはQRコード普及に命を懸けて取り組んだ訳だ。
これがまさに奏功したのであるが、ここのエピソードも本当に示唆に富む。
イノベーションを起こす時は経営トップの後ろ盾が必須であるということは最早常識であるが、このQRコードについても同様だった。
「世界標準を目指し、特許は開放する」この方針だけでも経営トップの援護がないと、進めるのは相当に難しいだろう。
短期的利益を考えてしまうと、特許取得にかけた費用の早期回収を図ろうとしてしまうからだ。
ここを堪えて、敢えて長期視点で世界標準を目指すという目標設定に切り替えた。
さらに世界標準化のためにかかるランニングコストの捻出も、経営トップが手厚くサポートしたのだ。
これらのエピソードだけを見ても、事業を興すというのは本当に難しい。
数々の偶然によって成功するものであるが、そこには最低でも素晴らしいメンバーに恵まれたことが成功要因として上げられると思う。
たった一人ではイノベーションは起こせない。
メンバーを信じ、熱い気持ちで高い目標に向かってみんなで取り組んでいく。
経営トップの援護も然りだ。
これからの時代はまさに「パーパス経営」と言われているが、従業員自身が会社の目的に共感しなければ、心が離れパフォーマンスが決して上がらないだろう。
どれだけ人を熱くさせる仕事を生み出していけるか。
これは経営陣にも難題として降りかかってきている。
まさに経営者の人格すらも試されている時代なのだと思う。
そんなことを感じながら読み終えた本だった。
ちなみにQRが「Quick Response」の略だとは本書を読むまでは知らなかったことを付け加えたい。
(2022/1/29)