紙の本
視覚にまつわる興味深いナゾ解き
2021/03/15 13:41
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投稿者:やまし - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は自分たちの「肌の色」をどう知覚しているか、なぜ人間の目は横向きでなく前についているのか、なぜ錯視が起きるのか…。
目と視覚に関する根源的な疑問を、テレビゲームや車のサイドミラーなどの身近なたとえで平易に説き明かしてくれる。
専門的で詳細な記述がややわずらわしい部分はあるが、全編を通して、人間の視覚の進化の意味を実感することができる。
比喩ではなく、実際に、モノの「見え方」は、あらゆる生物ごとにまったく異なるのだ。それこそが「進化」なのだろう。
紙の本
視覚の不思議がたっぷり
2020/11/28 15:18
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投稿者:野間丸男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までと違った手順で、視覚についての不思議がわかる。
色覚の進化:なぜ、色を見分ける必要があったのか?
透視する力:なせ、人の目が、顔の前側についている?
目の錯覚: どうして、錯覚が起きるのか?
文字の処理能力:どうして、うまく文字を処理できるのか?
ちょっぴり例えが分かりにくいが、
今までと違った視点での視覚の不思議を解く!
電子書籍
マニアックだけど一理ある!
2020/07/22 23:07
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投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る
人の肌色を生業としている僕としては非常に興味深く、かつ腑に落ちるニンゲンの視覚進化論だった。ただ全体を通じて最低限の理系知識を要求する内容になっているので、理科が嫌いだった(小学生から中学生くらいまでで構わないので)という人にはちょっとしんどいかもしれない。具体的な解説内容を無視して論点だけ掴むだけでもものすごく面白いし、文章がヒトの脳にソフトウェアを読み込ませるためのコードだという認識なんかは世の中の多くのはたらく大人たちにも響くのではないだろうか。僕らはきちんとコードをかけているのか?
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視覚についての新たな視点。大変興味深く面白く読ませていただいた。この本を読むことで見ることの視座が変わる。
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「科学道100冊2020」の1冊。
普段、何気なく行っている「見る」という行為。何気なく周囲を見て、何があるかを認識し、自分の置かれた環境がどのようなものかを判断する。それらの1つ1つを意識して行っているわけではなくとも、私たちは「見る」ことから多くの情報を得て、状況の理解につなげている。「見る」ことの陰には、長い時間を掛けて発達してきた能力がある。
本書では、色覚、両眼視、動体視力、物体認識に的を絞って解説していく。
それらの能力をスーパーヒーローの能力になぞらえれば、テレパシー、透視、未来予見、霊読(スピリット・リーディング)となるという。
・・・待て待て、何だそれは? 何やら怪しげな話なのか・・・? アメリカン・コミックスに出てくるような超人の話・・・?
いやいや、そうではない。本書は学術論文をベースにしつつ、一般向けにわかりやすく書かれた科学読み物である。
実のところ、私たちの「視覚」の背後には、「超人的」と見なされるような能力が潜んでいる。進化の過程で、ヒトは生存のために重要な能力を身に着けてきた。「視覚」もそうした積み重ねで成り立っている。本書では、それらを紐解き、考察していく。
まずは色覚=テレパシー。
ヒトの色覚は、実は、肌の色を識別する能力が高い。ヒトの色覚を形作る錐体細胞は3種類あるが、このうち2つは特に近い波長で最大感度を示す。その箇所は肌の反射率の変化が出やすい部分である。肌の色は酸素飽和度の違いで変化を生じるが、それを読み取りやすいようになっているのだ。つまり、顔色のよさ・悪さを識別する。顔色が変わる背景には、血液の状態の変化がある。
怒っている。具合が悪い。幸せそう。
もちろん、表情や態度もあるだろうが、肌色の識別も感情の理解に役立っているというのが著者の主張である。肌の色から感情を理解するのは、色覚を持たないものからすればテレパシーに近いだろうというわけだ。
次は両眼視=透視。
動物によって、眼の付き方はさまざまである。ヒトの場合は、前面に2つの眼がつくが、真横に2つの眼を持つものもいるし、対の眼のほかに頭頂部に第三の眼を持つものもいる。それぞれそのように発展した理由はあるだろうが、ヒトの場合はどうだろうか。
種々、説はあるが、著者は「障害物の向こう側のものを捉えやすいから」との説を取る。葉や草が生い茂る森の中で、獲物を見つけやすいのが前面両眼視の特徴だというのだ。
これがつまり透視である。障害物があっても、奥を見ることができるのだ。
三番目の動体視力=未来予見には錯視の話も絡む。
最後の物体認識=霊読は若干わかりにくいが、書いたものを読むことを指す。文字を追って読むことで、情景が思い浮かぶのは、精神(スピリット)を読んでいると見なせる。
全般に、視覚の発達には、脳の働きも大きく関わってきたことが想像できる。
いずれの主張にも背景に科学的データがあり、なかなかおもしろい。
これらの解釈が唯一絶対かと言われると異論はありそうだが、仮説としても興味深く、想像力が刺激される。
��は、視覚のない人から見たら、これらの能力はどう捉えられるのか等、発展的に考えていくことも可能だろう。
ポピュラーサイエンスの醍醐味を味わえる1冊。
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そもそも人間の目による知覚は正確ではないというのが、なるほどやっぱりか。
色覚→肌の血の量酸素量の微妙な差=感情や健康が分かるため
目が二つとも前を向いている→左右で見ることで遮っているものを透明化する(葉に遮られても向こうが見える)
錯視→「現在」を知覚するために前進した0.1秒後を予測している
文字→自然の形に近いと認識しやすい
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アメコミのヒーローのような超人的な能力を、見方によっては人は既に持っているのだぞ、という趣旨から始まり、目(と文字)がいかに進化し、能力を獲得して今の我々の顔にハマっているのか、ということが書かれている本。
個人的にはテレパシーの一章が一番興味深かった。次点で未来予見。
円城塔さんがこの本のSF風書評を、「小説案を5つ」というタイトルで投稿していたので、SF好きな人はあわせて読むと楽しめると思う。
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早速、授業のネタで使わせていただいた。同じ著者の聴覚の方が最近出て、再びこちらの視覚の方も話題になっていたので、2冊そろえて購入した。知らない話題ばかりだった。原著は10年以上前に出ているのに。まず驚きは、両目が前についていることの利点。ずっと立体視ができるからと授業で話してきた。しかし、著者は、それは透視するためだという。透視というと、えっ?と思ってしまうが、読み進めるとちゃんと科学的なものだと分かる。森の中などで、片目だと葉や枝に隠れて見えないものが、両目だと、左右それぞれで見えている情報をうまくつなぎ合わせて獲物を見つけることができる。電車の中で読みながら、片目をつぶったり、間に手を入れたりしながら、いろいろと試して実感できた。それから、色覚は顔色を見るために進化したという話。顔が毛でおおわれずにむき出しになっている霊長類の仲間は、フルカラーの色覚があるという。これもなるほどと納得させられる。さらに、錯視の話。我らが北岡先生(ツイッターで知っているだけですが)の名前も出てきた。どうして動いていないものが動いて見えるのか不思議でならなかったが、それは未来(と言っても0.1秒くらい先)を見ようとしている証拠だったのだ。そうしないと、ボールをキャッチしたり、打ったりできないわけだ。要はみんな脳のはたらきなわけだ。最後の章の文字の話だけはちょっと分かりづらかったのだけれど、まあワクワクしながら読みました。次作も楽しみです。ただ、ところどころ、比喩というのか、ジョークがはさまれたりするのだが、それがどうも鼻につく。その辺が、海外のノンフィクションを読みづらくしているような気もする。サイモン・シンは一切感じないが。逆に、下條信輔先生はじめ、日本の方の名前がたくさん出てくるのは、ちょっとうれしかったりもする。
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・人の眼は、人の肌の色の変化を捉えるように進化してきたか、なるほど。さすが社会的生物。
・顔の前に二つの目があるこの形態、立体視のためではなく、(目と目の間隔も小さい)障害物の向こうを透かしてみるために有利か、一理あるな。
・錯視は見て処理している間に過去になる現在(未来)を見るための情報処理(未来予見)の副作用。まあ、表現はともかく、ね。
・ただ、4勝の「霊読」とおどろおどろしい表現をしているが、文字を読む事については、「自然を視覚的に理解できるように進化した脳で文章(文字)をたやすく読めるのは、文字が数千年かけて自然に類似するように進化させられたからだ」
「眼のための文字」と「手のための文字」(速記)
ウマが人間が乗るためにデザインされているように見えるというのは、社会が文化的にウマを受け入れてきたから。
第四章はちょいとうさんくさかったけれど、解説で、きちんとした論文が本書のベースだよと言われたので、受け入れるものとするw
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解説が分かりやすくて助かった。
頻繁に出てくる図や表を理解するのが大変だった。(理解できていないものもある。)
当たり前になっている事を、そういえば何故なんだろう?と改めて考えるきっかけになった。
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著者の「目」に関する執着というか、エネルギーには感服しました。そして、一人の科学者の生涯をかけさせる深淵なテーマを目が持っていることも分かりました。
内容はちょっと分かりづらいし学術的な印象が強い本です。
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視覚に関するなぜ?を説明する本です。とても面白く、新しい発見に満ちています。
「どういう」仕組みか?に対する説明ではなく、「なぜ」そのような仕組みなのか?に対する説明がなされている点に、本書の特徴があります。
そしてその説明が軒並み突飛で、今まで学校で学んだことを覆すようなものなのです。
「なぜ人間の目は色が見えるのか?」に対しては、
「同族の感情を読むため」
「なぜ人間の目は前向きについているのか?」に対しては、
「障害物の向こうを透視するため」
「なぜ人間の目は錯視するのか?」に対しては、
「未来を見通すため」
「なぜ人間の目は文字を読めるのか?」に対しては、
「目が認識しやすい形を文字に採用したため」
どれもこれも突飛なアイデアです。
そして驚いたことに、本書はこれらの仮説を、データを用いて実証的に示しているのです。突飛なだけでなく説得力も充分に備えています。
学術論文をもとにした著作とのことで、非常に堅固な論理で組み立てられています。
しかもそれでいて難しくなく、すらすらと読める名著です。
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テレパシー、透視、未来予見、霊読といった超能力のように思われるものが実は人間の目には容易く、日常的に行われているという目からウロコの内容。キャッチーで、目を引くテーマに終始せずに、確かな学術的証拠や実験データを豊富な図やグラフでわかりやすく提示されており非常に読みやすい。本書を読めば、普段私たちがどれほど不可解で不思議な能力を使っているのか実感する。文字通り本書を読めば誰しも普段の世界の見え方が一変するだろう。
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本題前の導入が長く、思考実験の解説も冗長で読みづらい…!実験や調査結果からの考察も、ややこじつけのように感じる…
端的にまとまっていれば面白く感じたかも…
そもそもの視覚に関する基礎知識も乏しい人間には、これまでの常識や定説もなんのこっちゃなので、本書の醍醐味といえる、斬新な理論の面白さが今ひとつ分からない…
写真を撮る人間としては、写真表現と何か結びつけられないか引き続き考えたいと思う。
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認知と進化について独創的な研究で知られる進化神経生物学者である著者の学術論文をベースに、ユーモアたっぷりの語り口と、様々なデータを駆使した推論により、ヒトが色を知覚する能力を発達させた理由、どうして両目が前向きについているのか、なぜ錯視が起こるのか、どのように読字の能力を獲得したのか、についてこれまでの常識を覆す、進化による視覚革命について展開する1冊。