紙の本
ものすごくダメな賢治像。かえって慕わしく思う。
2020/05/15 23:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家・宮沢賢治の誕生から早すぎる死を父の視点で描いた。もちろん小説=フィクションだが、緻密な取材を重ねなければ描かれなかったリアリティ。あるいみ、宮沢賢治伝ともいえると思う。本書の2/3ぐらいは、思慮深く、立派な父と、そこを越えられないひ弱な息子の構図で、賢治ってダメダメな少年・青年だったんだなぁ..と。しかし、だからかえって読後、宮沢賢治作品を紐解きたくなる。
紙の本
読んで良かったです。
2024/01/07 12:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
このごろの読書は当たり外れが結構ある。当たりよりも、外れが上回る。
映画は観ていないが、ふと読んでみようと購入。
一気に読んだ。
賢治もトシも家族たちも苦しかっただろうと思う。
しかし、温かいものを遺して若い兄妹は旅立ったように思う。
半世紀近く前に花巻市に行った、北上川も見た、そして何より宮沢清六さんにお目にかかれた思い出を、これからも大切にしていきたい。
光太郎も啄木も含めて、岩手県は素晴らしい。
紙の本
政次郎と賢治の関係が面白い
2023/06/01 10:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私がこれまでに読んできた宮沢賢治の伝記ものでは、父・政次郎は勤勉で生真面目、賢治の突拍子な行動にはいつも眉をひそめていたという印象しかない、というかそれほど印象がない。しかし、この小説ではその父が主役、陰ながら賢治を支えるどころか、あるときは日向になって支える。今では当たり前のような話なのだが、これは明治、大正期のお話、当時としては過保護だと周りからは思われていたかもしれない、けれども、この物語で私が強烈に印象の残った登場人物は政次郎でも賢治でもなく、賢治の妹、トシだった、賢治とトシは本当に仲のいい兄妹、勘ぐれば「二人は近親相姦の関係?」と言ってもいいぐらい、なんでもはっきりと意見が言えて、文章もうまい、トシに褒められたくて、聞いてもらいたくて、賢治は詩や童話の創作に励み始めたのだろう
紙の本
人間、人生
2020/06/07 01:03
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
門井さんの直木賞受賞作。
宮沢作品には残念ながら触れたことがなく、
インスパイア作品とか、NHKの教育番組で部分的にみたくらい。
実際、この本で読んでも、
特に幼いころの賢治にはまったく共感できず。
父の苦労を忍びながら読み進めていく。
父の目を通して宮沢賢治の一生を仮体験した後の
「雨ニモ負ケズ」は胸に迫るものがあった。
父の高い壁。ずっと悪童。
誰にも共通する根から生まれるから、ひろく親しまれるんだろうな。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
門井さんが宮沢賢治の父にスポットを当てて描いた直木賞受賞作。歴史小説でありながら、宮沢賢治の家族を描いたホームドラマ的な趣きもある。
宮沢賢治の作品はあまり好きになれなかったが、この作品でがらりと印象が変わった。
映画の方も楽しみだ。
電子書籍
この本では
2021/08/27 16:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
天才作家の宮沢賢治ではなく、単なるドラ息子、その息子を持ってしまった優秀な父親が書いた息子伝みたいな小説です。謙遜して書いているのかな、と思いましたが、そんな風でもなくて……。確かにこれが実際の宮沢賢治ならば……ねえ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに惹かれて購入した。息子を思う父は当時は珍しかっただろう。賢治の父は悪いイメージがあったが、決して賢治を邪魔したわけではなく、息子や家のことを考え、父としてありつづけただけなのたまろうなと思った。解説を読んで作中に登場する手紙が実際に書かれた内容であったりとノンフィクションな部分が多かったことに驚いた。賢治や家族の生涯に触れることで学生時代に国語で習った永訣の朝に対する印象が変わった。
投稿元:
レビューを見る
この作品は、直木賞の選考でも、かなり評価が高かった、と言うことはどこかで聞いた覚えがあり、実際、伊集院静さんの選評には「一回目の選考から文句無しの各選考委員の支持を受けました」と書かれている。
しかし、文庫化されているのを知り、 何とはなしに作品紹介に目を通すと 【清貧なイメージ で知られる彼だが、その父・政次郎の目を通して語られる彼はひと味違う。家業の質屋は継ぎたがらず、「本を買いたい」 「製飴工場をつくってみたい」など理由をつけては、政次郎に金を無心する始末】とある。うーんこれは文豪=くず、のパターンか?と、少し前に読ん だ「やばい文豪」 を思い出す、、、
ところが、実際に読んでみて、私の印象はちょっと違った。実家が裕福で、甘ったれのおぼっちゃんで、やりたくない (できない、の方が正確かもしれない) 仕事はやらず、見通しが 甘かったり、 お金の無心をする息子、確かにそれはそうなのだけど、何というか、その言葉の羅列から想像する、どうしようもないちゃらんぽらんでいい加減な息子とは違う。 読んでいて、お坊ちゃんだなあ、トシが長男で賢治が次男だったらねえと思ったり、政次郎に対しても、なぜそこで援助してしまうかなあ、と思うことは多々あるのだが(苦笑) それでも、「お話を作る」 と言うことに対する質治の秘めた強い思いには胸を打たれたし、 教員として頑張る姿にも、賢治の生きられる場所がそこにはあったのだなあと温かい気持ち になった。
と、それよりもこの作品は 「銀河鉄道の父」である。 「父」が主人公の小説だ。なぜ、賢治が主人公の、賢治から見た父や母、妹、自分の人生、じゃないのかな、と思ったのだが、これが良かった。
私は女なので、父から見た息子や娘と言うのがどういうものなのか、実感を持って感じたり、想像することはなかなか難しいので、特に、「」で実際に発せられている言葉ではない、()で思っている気持ちや、本文として説明されている政次郎の思いが、微笑ましかったり、切なかったり、母親にはない感情だな。と思ったり、とても新鮮だった。
ところで、ストーリーとは全く関係ないのだが。
卓袱台と言ったら、昭和のイメージ、 おやじがひっくり返してる。そんなどこかの漫画やコントのイメージそのままだったのだが、終わりの方に出てくる卓袱台の描写が印象的だった。『上座も下座もない車座』なるほど。 この時代には、むしろ『新時代の家』だったのだ。
投稿元:
レビューを見る
愛が溢れすぎている。
賢治の生涯から一通りのストーリーは元々知っているのに、帰りの山手線で泣いて不審者になってしまった。
投稿元:
レビューを見る
あとがきにもあるように、大作家の父の物語ではなく、むしろとっても現代的な父親の物語。
幼い頃は、神童でどんな立派な跡取りになるかと思いきや、頭でっかちの金の苦労のないボンボンに成長。あぁ、どうして・・・と思いながらも、自分の選んだ道でなんとか自活してくれればと願い、なかばあきらめながら大人になった息子を見守る(いうか、今も昔も、見守るしかできないものかも)
。そのため息の小さな音が聞こえてきそう。
賢治のすぐ下の妹との別れの場面が、とりわけ印象的でした。その悲しみを文学に昇華させてしまう作家・賢治の姿を見て、娘の死を汚されたように感じる父としての思いと、時に冷酷なほどに作家としての道を歩もうとする息子への愛が、同時に湧き上がってくるところが圧巻でした。
それにしても、宮沢賢治の作品は、独特で、似たジャンルのものがないように思います。様々な作品でもモチーフになっている銀河鉄道の夜を、また読んでみたくなりました。
多くの兄弟のうち、上の二人(長女さんは相当の才媛だったのですね)以外は長寿だったというのも初めて知りました。
投稿元:
レビューを見る
宮沢賢治の父親がこんなにも子思いで、親ばかとは。それに対して宮沢賢治はこんなにも我儘で穀潰しとは。もう二度と彼の童話や「雨にもマケズ・・・」の詩を同じように味わえないかも。でもこんな父がいたからあの銀河鉄道の夜が生まれたと納得もできる。
投稿元:
レビューを見る
父から見た息子。あるいは息子から見た父。この二つの間に横たわる感情や思い。それは愛や尊敬、感謝などといった優しいものだけでは決してありません。
同性であるがゆえの対抗心、自分の道を反対し阻もうとする壁、育ててもらった負い目。子にかける期待や親心は時に届かず、もどかしい思いにかられ、子どもはただ反発するのみ。それでも父は息子を思い、息子は父をどこかで「超えられない」と感じている。父と息子の関係性というのは、愛憎という言葉だけでは言い足りない、複雑なものを孕んでいるように思います。
父親は息子に厳しく接し、必要以上に会話も世話もしない、というのが当たり前だった時代。幼少期の賢治が入院すると知るやいなや、政次郎は周囲の目も気にせず、感染覚悟で賢治の元を訪れ、看病にあたります。
この場面でいつもなかなか話せない鬱憤を晴らすかのように、賢治と話すことを楽しんでる政次郎の描写がいい。悪いこととは思いつつも、賢治が入院して良かった、と頭の片隅で思う政次郎の様子。そこから一気に自分の中で、彼の人物像が固まった気がします。そんな政次郎の様子を、政次郎の父であり賢治の祖父にあたる喜助は『父でありすぎる』と苦言を呈します。
小学校に通う年になり、石や土など自分の興味を見つけていく賢治。そんな賢治ににわか知識を披露して悦に入ったり、賢治に上手く言い含められて高い買い物をする政次郎。この場面が本当に楽しそうなのもまた印象的。釈然としない思いを抱きながらも、鼻歌を唄いながら買い物をする政次郎の様子は、そうした父親の楽しさを描ききっているように思います。
小学校を優秀な成績で卒業し、進学し寮に入ることになる賢治。それを見送る政次郎の場面も秀逸! 自分の手が届かないところに息子が行くのを実感し、思わずなみだする。さらにそのなみだの描写がすごい。"なみだ”という直接的な表現をギリギリまで避け、あくまで身体的な感覚で描写するのです。そして政次郎の気づかずうちに"なみだを流している”ということを、感覚的に表現します。素晴らしい描写ってこういうことをいうのか、と実感しました。
年を重ねるごとに、賢治は父親の政次郎の枠には収まらなくなっていきます。家業である質屋を継ごうとせず、夢物語のような事業や学問の道を志し、また家の宗派も否定し、別の宗派にのめり込んでいく賢治。政次郎は賢治を叱り、なんとか道を軌道修正しようとするも、一方で賢治の社会に相成れない弱さを知っているからか、ついついお金をせがまれれば、それを渡してしまいます。
そんな宮沢家に起こった悲劇。政次郎の娘であり、賢治の妹のトシの死。賢治以上に大きな期待をかけていた娘の死、家族の中で最も賢治の理解者に近かった妹の死。それはまた二人に大きな影響を与え、そして賢治はついに童話『風の又三郎』の執筆に取りかかります。
この執筆の場面もすごかった。父と子の複雑な関係性については先に書きましたが、それを深く感じたのがこの場面を読んでのことでした。なぜ賢治は子どものための物語である童話を書いたのか。ここに到るまでの半生、父への思いから賢治は自問し、その���答に到り、そして憑かれたように『風の又三郎』を書きます。賢治が抱く、父への決して口に出して伝えることのできないある思い。それが転化される描写は圧巻です。
しかし賢治にも病気の魔の手は迫り、政次郎は子どもの頃のように賢治を看病することになり、そして……
大人になった賢治の看病が、冒頭近くで書かれた賢治の看病シーンとつながり、そして最終章である「銀河鉄道の父」へ。賢治にとってかけがえのない親であり、一方でターニングポイントにおいては、賢治の壁にもなってきた政次郎。そんな彼が語る『雨ニモマケズ』の解釈は、自分にとってはとても新鮮で、賢治をずっと生で見続けた彼だからこその解釈だと思いました。そして『銀河鉄道の夜』に対する思いと、ラストふと政次郎が思いついたこと。これがまた、賢治への思いに溢れているように感じます。
『銀河鉄道の父』は天才作家の宮沢賢治とその父政次郎という、一見特殊な親子象を描いているように思います。でもそこで描かれていたのは、ある意味では普遍的な父の、そして息子の可笑しさと哀しさだったように思います。終始みずみずしく活写された、特別だけど、特別ではない、そんな家族と父子をめぐる小説でした。
第158回直木賞
投稿元:
レビューを見る
直木賞受賞作ということで手に取りました。
宮沢賢治の父からの目線から描かれた賢治のことが
描かれているというので、もしかしたら純文学みたいに
少しお堅くて読みずらい文体かと思っていました。
けれど読み出してみたら岩手弁などの方言や昔の言葉は
あるものの、その他は普段と変わらない文体だったので
読みやすかったので良かったです。
この作品を読むまでは殆ど宮沢賢治という細かい人物像は知らず、
作家で偉大な人というイメージだったので、
きっと厳格で人で何をしても優秀で完璧な人だろうと
想像していました。
けれどこの作品を読んだらその想像を遥かに超えて
意外と人間らしくて少し親近感がわきました。
この時代の大人の人達と比べると少し世間離れした
ような所もありますがそれが何とも
微笑ましいとまで思えてしまいました。
父親の視線からいつも温かく見守られていて
小さい頃から長男を育てるということで大事に育てられて
いるということがよくうかがえました。
父親が賢治に対しでだけはとても甘く育てているのが
分かります。
それに対して父親もダメだと分かりつつも、
賢治の言う通りにしてあげてしまうのが何とも憎めないです。
理解のある父になりたいのか、
息子の壁になりたいのかと悩んでいたり、
いつまで自分はそんなに強い人間ではないのに、
強く見せる義務にしたがっているだけのだと
誰かに訴えたかった。
などと父親としての自覚も自分では重々に心得ているのに、
甘くなってしまうのは父親の幼少の頃の夢などが
重なったり、賢治の身体が弱かったりとした要因も
あるのだと思えました。
けれどいくら賢治に甘いとか優秀ではないとか描かれていますが、
この時代の一般の人と比べてみたら兄弟共に
それぞれ素晴らしい功績があり、恵まれた仕事にもついているので
教育の仕方が悪いとは思えませんでした。
むしろ子供たちの事をよく観察してその子たちに
合ったのびのびとした教育がされたこそ良かったのかと思います。
それにしても賢治の妹トシに対する愛情は兄妹の感情とは
また違ったようにも見えて、それが将来を決める
作家への道への道しるべとなって凄いパワーだと思いました。
トシとの別れは本当に悲しくて読んでいるのが辛く感涙します。
今の時代の父親とはとても違いますが、
子供たちを温かく見守りながら、
自分も父親として手探りをしながら成長して
していっているのでこうゆう父親像が理想だとも思うので、
現在父親になっている方、これから父親になろうとしている方など
が読むと参考になるかとも思いました。
宮沢賢治の作品はあまり読んだことが無いですが、
「銀河鉄道の夜」や「注文のない料理店、
特に「雨にもマケズ」の作品の生まれ方を知ったことに
よってとても興味がわきこれをきっかけに一度じっくりと読んでみたいと思いました。
また、門井さんの作品もこの作品でとても読みやすく
描写が細かく、特に心理描写が細かく描かれていて
温かみを感じたので他の作品を読んでみたいです。
この作品を読んで宮沢賢治についてがらりとイメージが
変わり本当に読んで良かった作品でした。
投稿元:
レビューを見る
直木賞受賞作の文庫化ってことで入手。タイトルに惹かれる部分もあり。父視点ではあるけど、あくまで主人公は宮沢賢治。かつて、伝記みたいなものを読んだ気もするけど、殆どその人生については知識ゼロ。そっか、こんなエキセントリック少年だったのね、みたいな。そして、当然彼のことは物語作家として記憶している訳だけど、本作における大部分を、創作活動以外の描写にあてられているのも興味深い。リーダビリティの高い名作群が、どんな背景から織りなされたのか。それが理解されるにつけ、もう一度読み返したく思えたりも。そんな一作でした。
投稿元:
レビューを見る
父親からの視点の宮沢賢治として
宮沢賢治の真実と 併せて読んだ
息づく人物像 が ノンフィクションで
こんなにも素敵に物語となっている
最高