紙の本
後悔しません。
2020/04/26 00:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:げんくろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
スピノザの解説をTVでしておられるのを拝見してから、『暇と退屈の倫理学』を読み、付箋を貼りすぎて最早どこに心打たれたのか分からないほど没頭したことがある。
本書の最も面白いところは、相談者が『何を語っていないか』を丹念に解き起こし、時には厳しく、時には優しく、あくまでも誠実に回答しておられるところにある。巻末の解説にあるようにアクセルの踏み込みが予測出来ない。一見、同じような相談内容に見えるのだが、相談者の置かれている環境や気質を踏まえて、それぞれ回答が異なるところは、圧巻である。哲学を実践的に紹介しつつ、『違和感』を大切にするところは自らの生活にも取り入れたいと思った。
紙の本
かなり興味深いQ&A集でした。
2020/09/05 15:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
回答者の國分氏は私と同い年という事で、以前スピノザの投稿で少し記述致しましたが、同氏の別書(本書の事)を見つけたので、購入した次第です。
悩み相談の内容は多岐に亘りかなり興味深いものでした。質問内容を読後、私ならこの様に答えるという内容を持ちつつ國分氏の返答を読むと私とは違う答え方が相当多く、この点が本書を読めて一番良かった点でした。
やはり相談事に答える内容は人に依って違うものであり、だからこそ自分では気付かなかった答えを得る良いチャンスなのだと具に感じました。
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人生相談においては、とりわけ言われていないことこそが重要である。人は本当に大切なことを言わないのであり、それを探り当てなければならない。
うーん、どっかて聞いたようなセリフ。シャーロックホームズか?
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人生相談の文章からいかに相手のことを細部までイメージし、回答を導くか、著者の想像力と細部までの観察眼を感じさせられた。
人生相談に対応するためには、これだけ想像力が必要なんだということを思い知らされた本。
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もともとメルマガでの人生相談を書籍にまとめたもの。投稿された悩み自体は特に取り上げるものではないが、著者の考察と回答はとても興味深い。本書で痛感するのは、観察眼や洞察力である。相談者の文章をそのまま受け取るのではなく、その背景を読み取っていて、それから答えている。このことを著者自身は次のように述べている。
「書かれていることだけを読んでいてはダメである。人生相談においてはとりわけ、言われていないことこそが重要である。人は本当に大切なことを言わないのであり、それを探り当てなければならない」
この探り当て方が本書のおもしろいところで、悩み相談とは関係なく、日常生活で大いに転用できる考え方である。例えば、何かを宣伝するときに大義を掲げていても、報酬に関する記述が多ければ、ユーザーを釣り上げようという意識が強いことがわかる。また手段・手法の記述が多ければ、大義よりも自身のやり方をアピールしたいことが伺える。
一見、主張が一貫していないように見えても、視点を変えると一貫する。それがその人が本当に言いたいことであり大事にしていることである。自分がやっていることをどう見せるかは、自分が何を大事にしているのかを伝えるのと同じであるし、自分が大事にしていることは無意識のうちに多くの言葉を使い、具体的に説明してしまうのである。
人とのコミュニケーションのなかで、特に文章やドキュメント上で、相手の本心を汲み取ろうとするならば、本書を一読しておくとその探り当て方のコツを掴むことができるだろう。
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<何について書かれた本か?>
哲学の先生がメルマガ読者の人生相談に哲学目線で回答する本。共感できない質問者も少なくないが、回答には学ぶところが多い。
<どんな人に向けて書かれた本か?>
日常的な悩みに対して哲学的な観点の回答を聞きたい人。
<アンダーライン>
・「モテる」とは「敷居が低い」こと
・「未練」とは自分が支払いを受けていない感覚
・感情は情動の結果
・感情は情動を裏切ることができる
・人間性は変わらないけど、成長はする
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書かれている内容を丹念読み解いて、書かれていない内容をあぶり出して回答するスタイル。そういう視点もあるのかとひざを打つような内容のものもあれば、最後の方になればなるほど、手法にからめとられて、ちょっと強引すぎるんじゃないかと思われるような回答が多くなったり。特に男前の相談に対してイデアを持ち出したあたりはなんじゃそりゃと思った。ただ総じて書かれていることと書かれていないことに誠実に向き合っていて、得るものが多い本だった。こういった感想文も、自意識がどうのとか分析されてしまうんだろうかなんて書きながら思った。
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新進気鋭の哲学者、國分功一郎が全身全霊で人生相談を行う。内容は恋愛、親子関係、仕事と多岐に渡る。著者が相談者の文章を哲学のテキストを読み解くように精読し、精緻な分析を行っていくところに新鮮さを覚えた。哲学の古典のような精緻な論理展開など一般の相談者の文章には望めないが、それでもそこから立ち現れてくる何らかのまとまりがあるという。
「人間が考えていること、感じることは、それほどたやすく体系性を免れはしない」
そして、目から鱗だったのは、大事なのは、書かれていることではなく、書かれていないことだということ。それを正確に掴まえることが肝要。ひょっとしたら相談をしている本人にもわかっていないことを探偵のように解き明かしていく。なるほど、そういうふうにも読めるのかと、感心する箇所がいくつもあった。その体験を通して、いかに普通の文章を精読していないかを思い知らされた。普通の文章を読むときにでも文学作品に対するようなテキスト解析を行うことで見えてくることがあるのだということを学んだ。
もう1つの魅力は、それぞれの相談に対してお勧めの哲学書や書籍を推薦するところ。登場した安富歩の『生きるための経済学』、関口存男の著作は読んでみようと思う。
途中で読みかけになっている『中動態の世界』をもう1回読み直そう。小林秀雄賞の受賞スピーチで國分氏がエピソードとして挙げたデリダの印象的な一節を紹介する。何故死というものを哲学の観点から捉えるのかという学生の少し尖った質問に、哲学界の巨匠デリダはこう答える。”Parce que J’aime la philosophie!” (だって私は哲学が好きなんだ!)この気持ちを國分氏も共有するという。一度講義を拝聴したい学者である。
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届いた相談文に対して國分さんが回答するというどっかの人生相談コーナーが書籍化した本。
相談文に書かれていることから書かれていない背景を類推し、鋭い指摘をする様は読んでてあっぱれという気持ちにさせられた。音楽に詳しい人と素人では同じ曲を聴いても前者の方がより豊かな体験ができるように、知見がある人と素人の間には同じものに触れていても受け取る情報量にかなりの差がある。世界とより豊かに接するためにも色々と勉強をしないとな、と改めて感じた。
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カウンセラーか、精神分析家か、と思いつつ、哲学の先生の人生相談を読む。
時に厳しく、時にめちゃくちゃ優しい。
バッサリ切るからこそ、なんだかこの人信じられるなって気持ちになる。
そうか、哲学とは、人生論だよな。と改めて。
本の紹介本としても、大変面白い。
そして何より、千葉雅也の解説が、なかなかなんとも良い。是非解説も。
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メモ
◼️誰にも相談したことがないのでできない
観念の物質化と考える
人に話すと楽になる理由
◼️悲観的な夫に腹が立ってしまいます
「プラス志向の人は、そもそもたくさんの事柄を考えないで済ましており、また、たくさんの事柄を考えないで済ますために多大なエネルギーを必要としているから、考える事柄が限定されている。ということは、プラス志向の人はあまりものを考えていないということになる。…そうやって無理をしていると、無理していることがつらいものですから、頑張らない人間がいることに苛立ちを覚えます。『なぜお前は弱音を吐くのか。俺なんてこんなにまで無理して頑張っている。プラス志向を維持している』という気持ちになるのです。」
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フィンガレットによれば、帰路に立った人間が自由意志で選択するのが決断であるという考えは、西洋思想が作り出したステレオタイプに過ぎません。私たちは時折、重大な選択を迫られます。それらは徐々に行われることもあれば、突然に行われることもありますが、いずれにせよ、常に意図せざる仕方で行われるとフィガレットは言います。というのも、決断はあれこれと計算した結果としてなされるものではないからです。意図せずに行われていた逡巡と熟考の末に、「ああ、これがさすべきことだった」という仕方で、すでに決心がている自分に気づくのです。フィンガレットは、決断と受動的なものだとも言っています。安富歩の巧みな説明を用いて言い換えれば、人間は「こうしよう!」という形で決断するのではなく、「そうなってしまう……」という形で決断するのです。これは人間の意思が全く無力だということではありません。人間は意識と無意識の双方で様々に判断や処理を行っています。それらの相互作用の結果、何らかの意味を持ったパターンが立ち現れ、それが決断をもたらすということなのです。
安富歩「生きるための経済学—〈選択の自由〉からの返却」
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義両親の「ゴネ得」のQ&Aは圧巻。
以下引用
「ガリ勉は勉強ばっかりしているから問題なのではなく(中略)勉強しておけば大丈夫なんだという“信仰”をもっている点がまずいのです。(略)知識と考える力を身につけたいと思ったなら、ただそれをやればいい。しかし、それらを身につけたら自分の人生は大丈夫だと思っては大変な誤りを犯すことなります。(略)やりたいと思っていることをやればいいし、これじゃダメかなと思ったら立ち止まって考えればいい。ただ、「こういうことをやっていた人間はこうなれる」などとは思わないことです。」
「特にいまの若者は、無気力・無感動・無関心などと言われる。けれども、そんなことはない。一人ひとりはいろいろなことを考えている。でも、それを外に向かって発信するためのきっかけがない。どうすればいいのかも分からない」
「(グリューンの「自分自身に対する裏切り」)欠けるところのない無条件の愛情をずっと注いでもらって生きてきたひとなどいないからです。どんな親の愛だって、やはり多少は条件がついているのです。だから誰しもが心に多少傷を負っています。友人との関係、恋人との関係、社会や世界との関わりのなかで、傷を少しずつ回復しながら人間は生きていきます」
「「~が勉強したいんです」と言って大学に来るけど、入ってみたら本当にこれでよかったのか分からないってのがよくありますよね。あれも自分が勉強したいって言っているものが何なのかよく分かっていないから起こるのです。また、実際にいま自分が勉強していることが何なのかまだ十分に分かっていないのに、分かった気になってそれは面白くないとか判断を下していることもあります」
「人間の心はただ単に、これまで収集した情報が入っているだけです。別に無限の泉でも何でもないんです」
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哲学はほとんど全ての学問の元となる学問だと聞いたことがあります。哲学のようで心理学のようである、精神科医のように相談を紐解き導く國分功一郎の分析力は読んでいて非常に心地良い。相談内容をまるで哲学の本を読むようにして“書かれていないこと”も読み解いたとありましたが、その姿勢を文章から感じ取ることができました。難解なイメージを持たれている哲学を分かりやすく書いているので、ここから哲学に興味がわく人もいるのではないでしょうか。ただ一点不安だなと思ったのは、國分功一郎の真似のように相談をバッサリ切ることが正だと考える人がいやしないかなということです。哲学の土壌があってこそ成せる技だと思うので、この領域に辿り着くことは簡単ではないと思います。
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哲学的な視点から人生相談に乗る國分さんの本。まずすごいと思った点が、投稿者の背景や状況を細かく分析して、真の問題点をつきとめている点。投稿者の悩みは一見よくあるものだなあと思っていると、思いがけないところで本当の悩みや実態が隠されていることに気づく。文章を正確に読まなければ、多分気づかない。
そして浮き彫りとなった悩みへのアプローチも独特。よくある人生相談として、相談役が「俺/私はこう思う。だからお前もこうするべきなんじゃないか?」といった「俺/私流の考え」を押し付けであったり、「人生色々あるから前を向くしかない」といった抽象的な精神論で終わって、実質何も解決されないのを見かける(鼓舞される分には問題ないが、解決には至っていない)
一方本書は、序盤で問題点が整理されているので、客観的に実態を把握することができる。さらに明確な答えがない時もあるが、それは解説にもあった通り、自立を目的として、あえて自分で考える余地を残しているのではないかと思った。哲学書などを引用しているのはそういことなんだと思う。「考える」って大事だなあ。