紙の本
まなざされるもののまなざし
2020/08/15 13:54
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投稿者:nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
原文を日本語に訳して、それをさらに詩にするという工程に興味を持ち手にとった作品だが、読んでみるとその訳がものすごくしっくり来た。1ページ1ページの文章が美しく詩的でありながら、ヤングアダルト小説としても非常に魅力的だ。まなざされるもののまなざしが素直に描かれている。
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「これ以外の体を知らない。/これ以外の人生を知らない。/たった一人で生まれて、たった一人で生きるなんて、リアリティがなさすぎる。」16歳のグレースとティッピは、腰から下がつながった結合双生児。お互いのことが大好き。はじめての学校生活、友だち、恋。そして。詩の形で書かれた物語が伝える二人のやさしい関係と揺れる気持ち。いとおしくせつない物語。
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散文詩という形がとても自然。言葉がやさしくシンプルだけど、とてもリアリティがあって、ほんとうにティッピとグレースという姉妹がそこにいるかのよう。その部分はほんとうにすごい。結合双生児という、比喩でなく「同体」の人生を送りながら、それなりに性格もちがい、ときにはやりたいことが食いちがいもするけれど、お互いを深く愛していて、離れたくないというふたりのありようが、無理なく伝わってくる。
ストーリーそのものに関しては、若干、ありがちな展開かなあというアンビバレントな感覚も。でも、展開云々よりも、やはりティッピとグレースの存在感、ふたりが読み手の心のなかに広げるやさしさやつらさなどが主眼なのかなと思う。
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現代を生きる、結合双生児として生まれた姉妹が語る、身も心も貫かれるような、本当の愛とつながりの物語。
とても良かった。
最果タヒ先生と金原瑞人先生の翻訳によってなる詩的文章によって、姉妹と繋がれた人々のむき出しの感情と愛情が際立つ。
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人の幸せは他人が決めつけて良いものではないと思いました。わたしの物語をみんなそれぞれ生きているだけなんです。
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性暴力を受けた女性のノンフィクションと思って読み始めたら、結合双生児の話だった。そっちは『私の中のわたしたち』。似てる。『中の』の原題は知らないが、解離性同一性障害の人の話だから、タイトルとしてそのままだと思う。こちらのタイトルは原題はOneだから、意訳という感じ。読み終わるとこのタイトルも悪くないとは思うが、そのままOneで、サブタイトルをこのタイトルにしたら良かったかも、と思った。
結合双生児の物語というとホラーやミステリーに出てくるものは別として(誰でも、生まれた姿がどうであろうとその体で生きなければならないのだから、ホラー扱いは見世物小屋みたいなもので、現代では許されないと思う。)、萩尾望都の「半神」を思い出すが、あの結合双生児はメタファ的なところがあり、身近な人にコンプレックスを抱いている人なら共感しやすい物語だった。
こちらはリアルな結合双生児の片方が主人公であるので、作者はかなり取材と研究をしたようだ。
もっとリアルに書けたかもしれないが、障害の様子などはあまり細かく描写せず、意外に普遍的な青春小説として成り立っている。
グレースとティッピ(グレース・ケリーとティッピ・ヘドレンからつけた名前)の双子の語り手はグレース。身体は共有していても、アイデンティティは別。でも、どんな人より近しい存在。そんな気持ちが、分かる気がする。母子感染でエイズとなったヤスミンとの友情、母に捨てられ、母の再婚相手に育てられているジョンへの恋、姉達の代わりにいろいろなことを引き受けている妹ドラゴン(本名ニコラ)への思いなども。
それにしても、やはり普通の生活は難しいし、医療費ももちろんかかるのに、何の保障も手当もないの?両親が双子の医療費を出すために、他の全てを犠牲にしているのは、読んでいて辛い。アメリカの医療費はとても高いとは聞くけど、障害のある人にかかる費用はそれこそ公助で何とかできないのかと思う。
結合双生児と聞くと、素人は分離手術を考えるけど、それを選択しないで生きている人達もいて、それを念頭に置いて書かれている。誰よりも理解し合えるソウルメイトが、いつも隣にいるって意味では羨ましくもある。孤独という感覚がきっと全く違うだろう。
難しい設定を上手く生かした、いい物語だった。
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結合性双生児で、上半身はそれぞれの体、腰から下はひとつの体を持つグレースとティッピ。
グレースの視点からつづられる日々は、生まれてから常にふたりが一緒にいるしかないことの幸福と苦しみ、もちろん心は別々の個性を持つこと、普通に接してくれる友人との出会い、家族への思い、そして恋、治療、不安…などが連なっている。
そして辛い決断、さらに辛い辛い結末。
彼女の生きていることそのままが、想像したこともないような日々の困難に立ち向かう物語。
ティッピを失って“ひとり”になったグレースの喪失とはどういうものなのか、わかったとか感じたとかも、とても言えない。
正直なところ、まだよくわからないまま。
それでも、読んで良かった、と思う。
凝った装丁、選び抜いた言葉、数ページごとに交互に変わる紙の色。分かち難いふたりの結びつきを本の形であらわしているようだった。
図書館あきよしうたさんのレビューで、手に取った本です。
ありがとうございました。
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2020.10
ふたりの体が繋がっている。ふたりでひとつ。常に横にもうひとりがいて体を共有している。自分だけど自分じゃない。グレースとティッピという存在。プラスもマイナスもある。ひとりの体で生きてきた私にはふたりの体で生きることはあまりにも違いが多くて想像さえ難しい。でも逆も然りでしょ。この世界は多様で果てしない。そういうものなんだと思う。
普通って普通じゃないことが無い状態のことなのかもしれない。普通じゃないことがない状態に慣れすぎると枠や価値観がそこで凝り固まる。他を知らないってことだ。知らないは未知で恐怖でもある。未知や恐怖は受け入れるのが難しい。そこからどうするか。まずは知ること。その人そのものを見て知ること。そしてそういう人もいると受け入れること。どんな人間関係もそこなんじゃないかと思った。
グレースが散文詩で綴るこの形がこの物語にはぴったりだった。心の動きがよくわかる。
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最果タヒさんの軽やかな言葉がさらりと読みやすく、けれど、心うつ一冊。体が繋がった双生児の様々な葛藤。友達や姉妹の優しさが温かい。容赦なくやってくる現実がとても胸に刺さる。深く考えさせられた。
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難しくはないのに
難しい・・・
簡単なのに
簡単ではない
一人だと言うこと
一人ではないと言うこと
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両親と妹と暮らす結合双生児のグレースとティッピは、経済的な理由から高校2年生で初めて学校に通うことになった。好奇の目の中、友人になったのは、ヤスミンとジョン。グレースはジョンにほのかな恋心を抱く。嬉しいことも傷つくこともある学校生活だったが、二人は体に不調を感じ始める。唯一の稼ぎ手だったママが失業した。家計を助けるために二人は今まで拒んでいたドキュメンタリーへの出演を受ける決心をする。
結合双生児として生まれ育った少女が、日常生活で経験し感じたことをグレースの言葉で語る物語。
*******ここからはネタバレ*******
片時も離れることのない相手がいる「双子」という状況は、双子の母としてある程度は想像できますが、自分の病気が治っても片方の調子が悪ければ付き合うしかないとか、嘘や隠し事(いずれも心の中のことだけになりますが)も見破られてしまうとか、相手が摂った不適切なモノ(タバコやお酒)さえも共有してしまうとか、片方だけ行きたいところややりたいことも、もう片方が付き合わないといけないとか、おばあちゃんだってできる恋愛や結婚も制限されてしまうとか、最終的には、どちらかの体調不良がもう一方の生死にすら関わってくるとか、こうやって話を読んでみると、見た目以外にも大変なことが多いのだと気付かされます。
そしてそれ以上に驚いたのが、二人が一緒にいることを望んでいること。生まれたときから一緒だから、もうそれを受け入れてしまっているんだと思いますが、一卵性双生児の絆の強さを見せられた思いです(我が家のは二卵性)。
分離手術の結果は、やってみなくてはわからなかったことなんでしょうけど、生き残ると思っていたティッピが逝ってしまってとても悲しい。思うようにはならないということなんでしょうか……。
しなくてはふたりとも生きることができなかったとしても、それでも悲しいですよね。
米国の雇用制度にもびっくり。今日解雇通告されたら、もうすぐに出ていかないといけないんですね。
翻訳のせいなのか、詩の形で書かれているせいか、読みにくいところや違和感を感じるところもありました。
特にグレースがジョンを思い浮かべるところ。世間なれしていない女の子が、男の子を「きみ」と呼びかけるのはいかがなものか?直接会っている時は「あなた」って言っているのに。
102頁、更衣室でのヴェロニカとヤスミンの会話。
「チャイム……もう鳴らなかった?」
「ううん、次の授業は、5分後だね」
どっちなの?
169頁。句点がおかしくないですか?
シルバーの、うさぎ足のペンダント。10歳の頃、ママにもらってからずっと身につけている。「幸運のペンダント」ジョンは、ペンダントをひっくり返す。
336頁、ドラゴンが持ち帰ったマトリョーシカについての場面。それのどこが彼女たちを表しているのか?私にはわかりませんでした。
読みにくいところは多々ありましたが、彼女たちの気持ちが等身大で描かれているお話で、しっかりした高学年以上からの読書をお��すめします。
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フィクションで詩的表現で構成されているにもかかわらず、リアリティが突き刺さってくる。自分にはとてもじゃないが、受け入れられない日常をどう生きるか、考えさせられた。
普通になりたくて、1人の人間になりたくて、でも失うことになり気づく本当に大切なこと。
あぁ、自分はいかに満たされていて、この当たり前に生きている毎日を最悪な毎日と思っているけれど、本当はきっとすごい幸せな毎日を過ごしているのではないかと、心からそう思うことはできないけれど、認められないけど、そんなことを少しふと思ったりした。
結構堕ちたと思っていたが、どうやらまだまだ堕ちきれていないようだ。やはり生きるということはそう容易くはない。
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結合性双生児のうちのひとり、グレースの目線から語られる物語。
まるで散らばったガラスの破片の裸足で歩くように血まみれになりながら生きている彼女たちの喜び、痛みが短いセンテンスのなかにぎゅっと詰まっている。とりわけ彼女たちの根底に流れる静かな諦めは読んでいて胸が苦しくて仕方なかった。
それでも作者や訳者のあとがきを読んで誠実な思いの元に出来上がった作品だというのがひしひしと伝わってきて、読めてよかったなと思った。
この作品が詩の形態を取っていることの意味、それは物語の要素としてではなく、小説の演出としてでもなく、グレースにとって"詩"というかたち以外ありえなかったから。
最果さんがこのようなことを書いていて、それが特に嬉しかった。これを読んで、彼女の感覚を透過させることがこの作品には必要不可欠なものだったのだと実感した。
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結合性双生児のティッピとグレースのお話。
グレースの語りで進んでいく。
かわいそうと思われるよりは嫌われる方がいい。
ふたりでひとりという感覚はとても不思議。
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フィクションかなあ、ノンフィクションかなぁと思いながら最後まで。もちろんティッピもグレースも他の周りの人の気持ちも分かったつもりでいるつもりはないけど、それでも最後はページをめくりたくなくて。つまり魅せられた。