紙の本
世界的には、野糞が常識?
2020/08/08 11:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では、いわゆるボッと式つまり、お釣りの来そうな肥えた目式の便所も都会を中心に久しくお目にかかれないです。列車や駅のトイレなどもワシュレットもあり快適です。トイレットペーパーもふんわりして、お尻に優しいです。そんな日本からは、想像出来ないことが世界的なのです。世界で、トイレがなく野糞をしている人がどんなに多いか。あるいはトイレがあっても、不衛生で危険と言うことも多いです。本書は、その代表選手であるインドをトイレから見ようという、「見上げた」試みをわかりやすく解説したものです。
紙の本
日本は恵まれている
2022/05/11 21:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の日本では家にトイレが無いなんて信じられない!ありえない!そんな家には住めない!が普通の反応だと思います。
インドでは半分の人がトイレのない生活だそうだ。
野外に用足しに行くのも命がけで、実際悲しい場面も多くあるらしい。
先進国が支援だけしてもインドに根付かないと難しいそうだ。
健康面も含め、何とかしてあげて欲しい。
作者の取材力はすごいです。
紙の本
インドの「トイレのあり方」の認識には驚きました
2020/08/22 16:51
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店でタイトルを見て、衝動買いしました。
インド人は普段の生活で、「トイレのあり方」の認識は日本とこれほど違うのか、かけ離れているのか、と衝撃の内容でした。ただただ驚きの連続の内容です。
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『日本では、ほとんど誰もが清潔なトイレにアクセスすることができ、トイレのある暮らしが日常に組み込まれている。しかし、インドではそうではない。「トイレ」というキーワードで、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった、インドのさまざまな姿が見えてくるのではないか。そう思って、取材のためにインド各地を歩いた。そこから見えてきたのは、経済成長という言葉の陰でさまざまな問題を抱え、多くの人たちが苦闘しているインドの姿だった。』
日本から遥か遠くにある国。インド。
パソコン上に飾られた、成長率という数字だけ見れば、「めざましい経済成長をしている国」と思うのは当たり前かもしれない。でも、どことなく違和感が残るのはなぜだろう、と頭の片隅に思っていた。
その違和感の正体は、この本を通して、トイレというフィルターから、少しずつ明らかになっていった。
トイレを増やすことで、衛生面の改善を図ろうとする政策から始まる物語は、トイレを増やすことが目的になってしまった現実を浮き彫りにしている。
たくさん作ったところで、トイレにまつわる問題…下水管の掃除をするのは身分が低い人だったり、「聖なる川」がどんどん汚れていったり、と、種々の問題は何も改善されていないのだ。
そして、世襲制であるカースト制度は、改善されつつあるものの、21世紀を迎えた今でも当たり前のように横たわっている。
トイレを囲む、水回り。そして、衛生環境。
日本とインドの共通点といえば、カレーくらいしかないと思っていた自分にとって、この本が示す、インドがどんな国かという説明は、ものすごくわかりやすかったし、その着眼点には、脱帽した。
インドだけでなく、どんな国においても、わかりやすい指標ではなく、数値化しにくいものも見ることで、はじめて全体像がぼんやりと浮かび上がってくるのかもしれない。
インドのことを全く知らない自分にとっては、単行本レベルの内容の深さでした。
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インド政府が10年に1度行っている国勢調査によると、2011年の調査でトイレを持たない世帯の割合は53.1%。さすがに都市部では普及している(スラム以外) それを踏まえると地方や農村部では全然普及してないってことだ。じゃあ、もよおしたら、どこでしてんの?と聞くと、そこら辺の草むらで、との答え。
インドではトイレ行くのも命がけ。草むらから毒蛇が出て咬まれたり、猛獣に襲われたり。女性は朝の暗いうちに1回しか行かないらしい。羞恥心もあるが、レイプ被害にあう危険が高いからだ。
なんで家のそばに置かないかというと、日本でも昔はトイレをご不浄と言ったのと同じ理由、不浄だからだ。不浄なものを家の中に置くわけにはいかない、という衛生面というより、宗教観から来ている。そしてトイレがあっても掃除なんかしない。掃除するのはカースト最下層の不可触民である「ダリット」が行うと相場が決まっている。手袋もマスクもない状態で掃除をするから感染症になってバタバタ死んでしまう。下水道掃除も同じく劣悪な環境下で、著者が取材した掃除人も感染症で目が真っ赤に腫れていたそうだ。医者に行く金はないそうだから、たぶん失明するだろう。
そうとは聞いていたけど、ホントに人として扱われてないんだ。
モディ首相はインド全土にトイレを普及させるという「スワッチ・バーラト」政策、英語でクリーン・インディアを推進し、2019年ガンジー生誕150年式典で大成功を宣言をした。
実態はだいぶデタラメで、カースト上位の村の長どもが、トイレ設置したから補助金寄こせ、と申請し、金だけもらって実は設置してないという不正が横行。日本で言うなら貧困ビジネス的な詐欺行為を全土でしているような状態。ちゃんとしているところもあると思うけど、政府の発表を鵜呑みにはできない。
ガンジス川の汚染だって、半世紀も前から問題になっているのに、いまだに改善の兆しすらみえない。聖なるガンジスに流れれば全て清浄になる、という宗教観から、生活汚水も、工場排水も、死体もいまだに流している。
全世帯にトイレなんて、インドじゃ夢物語なんじゃないかな。少なくても半世紀はかかるだろう。
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トイレを切り口にインド社会をあぶり出す、秀逸です。
データを元に議論する、インドの各地に足を運んで色々な人にインタビューする、読みやすい文体の中にも一流のジャーナリストの「足腰の強さ」を見ました。
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読み始めると、インドの政策やデータなどが並んでいたので、教科書みたいだなと思ってしまった。途中から、具体的な話になり、どんどんのめり込みあっという間に読了。インド社会をトイレを通して垣間見えた。
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めざましい発展を遂げるインド。一方で、カースト制度が、根強い現状も詳細に触れられているところが良い。国民性や文化・習慣は、どうすれば変えられるだろうか?!いつかは行ってみたいと思う気持ちと、躊躇する気持ち、一進一退の攻防は続く
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I T先進国と言われるインドの以外な真実を教えてくれる。マスメディアだけの情報を鵜呑みにせずに、本を読んだり、出来れば旅をし、その国の実情を知りたい。ジムロジャースみたいに旅ができればいいのだけど。
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スピリッチュアルな世界に関心のあるひとにとっての
世界の路地裏を歩くバックパッカーたちにとっての
インドではない
それこそ 13億人の人間が暮らす
インドを「トイレ」から見たレポート
都市であれ村であれ
どんな場所でも
バラモンであれダリットであれ
カーストなど関係なく
「出すこと」は
平等で必要なこと
きっちりとした取材に
裏打ちされた
「トイレから見た国家」が
小気味よくあぶり出されていく
著者の着眼点のすばらしさに脱帽
取材をされた人たちへの
リスペクトも感じられる
だからこそ
本音が聞きだせることができ
だからこそ
インドの今を語ることに
つながっている
現在のインドを語る
好著の一冊です
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人口13億人を超えるインドでモディ首相が進める「スワッチ・バーラト」(ヒンディー語で「クリーン・インディア」)、つまり「野外排せつゼロ」を目指したトイレ政策のドキュメントだ。
人口の4割以上が屋外で排せつするインドで2014年から5年計画で進められた。その進め方のザクッと感がなんとも言えない。
そして著者はトイレ政策を通じてダリット(不可触民)にも焦点を当て、彼らの悲惨な生活環境とカースト制度の根深さを浮き彫りにする。
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インドはカレー、ヨガぐらしいか知らなかった私。衛生面より、なによりも大事とされる宗教。宗教とともに生まれ生きる人々が衝撃だった。
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【本書の概要】
急速な経済発展を遂げるインド。しかしその経済発展は「トイレ無き成長」であった。
インド人13億人のうち半分がトイレのない暮らしをしており、特に農村部の住民ほどトイレを使用していない。そこには都市と農村の経済格差や、カースト制度による「浄・不浄」の考えかたの違いが潜んでいる。
また、比較的トイレがある都市部でも、下水管理がきちんとされておらず、水質汚染や感染症の危険と隣り合わせだ。
そうした病気の憂き目に合うのは、カースト制度の最下層である「ダリット」の人々だ。彼らは排せつ物の清掃の仕事を割り当てられており、劣悪な環境で働かされている。
インドのトイレの問題は、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった社会的問題を浮き彫りにするものである。
【詳細】
①都市と農村におけるトイレ設置の実情
13億人のうち半分がトイレのない暮らしをするインド。モディ首相は2014年に、5年間で野外排泄をゼロにするためのスワッチ・バラート政策を提唱し、2019年に達成の宣言をした。
しかしその実態は、地域にトイレが一定程度設置されていればOKというどんぶり勘定であった。また、家にトイレがある人の半数は、トイレの清掃や管理が面倒だからという理由で依然として野外排泄している。
同時に、トイレを建設したのに補助金が貰えない、架空のトイレが計上されているという問題も起こった。それはインドが強い汚職と賄賂の社会であるからだ。
トイレの設置状況に関しては、都市部が圧倒的に高い。これは都市と地方の強い経済格差が背景にあるからだ。
インドの人口比で約7割を占める農村部では、トイレが使用されない割合が高い。女性たちがトイレとして使う茂みや草むらには多くの野生動物が潜み、蛇やサソリに襲われる危険がある。また女性はレイプとの危険も隣り合わせである。家父長制の残るインドにおいては、農村部だけでなく社会全体としてレイプが深刻な問題になっている。
②水質汚染や感染症と隣り合わせの劣悪な労働環境
都市部で発生する下水のおよそ7割は処理されないまま放出されており、インドの水資源の4分の3が汚染されている可能性がある。都市部でも下水インフラが未発達であり、汚れた排水――特にスラムから排出されたもの――がそのままガンジス川に流されていることもあり、水質汚染と感染症の原因になっている。
そうした劣悪な衛生環境の憂き目に合うのは、カースト制度の最下層で不可触民とされたダリットと呼ばれる人たちだ。
彼らはカースト制度により排せつ物の清掃を押し付けられ、他に労働の機会を与えられていない。収入が低いため手袋やマスクを買う余裕もなく、素手で排せつ物を扱うなど、奴隷同然の労働をしている。
下水処理の仕事が最下層民の役割とされているのは、ヒンドゥー教には「浄」と「不浄」を分ける考え方があり、死に関するものや血、排せつ物、垢、死者などは不浄なものとして、最下層の清掃カーストに押し付けられたからだ。もちろん、ダリット自体も「不浄」のカテゴリに入る。
そのた��、ダリットは日常的な差別に合っている。差別は農村部で特に酷く、いじめや社会的分離を受けている。
インドのトイレの問題は、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった社会的問題を浮き彫りにするものである。
【感想】
トイレから見たインドの姿をまとめると、
①「成長著しいインド」は都市部の発展だけを見た描写
②都市部と農村の経済格差は他国の比ではない
③汚職とカースト差別が蔓延
である。
「まあ、そうだろうなあ」という感覚であった。
インド全体でトイレの普及が進まない理由が、経済格差にもあり社会規範にもありと、かなり複雑化している。カースト制度が「格差を格差のまま固定化する」という設計になってしまっていることが、トイレ無き経済成長の一因であるのは間違いないだろう。しかし、そこはヒンドゥー教という「宗教」の範囲であり、政治的に踏み込むことが難しい。せめて、格差が大きいままでも国民全体がもう少し豊かになれば、インフラの整備も進むだろう。依然として残された差別意識は、貧困が減少した後に取り組むほかないと思う。
本書のベクトルとはずれるが、読んでいて面白いと思った情報を一つ。
インドは州制をとっており、州政府によって地域に特色が生まれる。インドの中で突出して特異なのは南西部のアラビア海沿いに位置する「ケーララ州」であり、なんと普通選挙を通じた共産党政権である。国自体が民主政権なのに州が共産政権というのは世界的にもかなり珍しいらしい。
そんなケーララ州はかなりリベラルな州であり、教育や保健に相当な力を入れている。識字率はほぼ100%、幼児死亡率も先進国並みで、平均寿命もインド全体の平均と比べて10年ほど長い。ヒンドゥー教がイスラム教やキリスト教と融和しているため、カースト制の影響も薄いという。
インドにおいても政権が変わればしきたりがここまで違うものなのか、と思わず感心してしまった。
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トイレから覗く現代インド事情
本書は、現地の日本人記者がトイレ事情から現代のインドを語るというもの。
モーディ首相の看板政策、スワッチ・バーラト政策。野外での排泄が今でも普通なインドにおいて、1億2000万基のトイレを設置して、野外排泄をゼロにするというもの。
野外排泄の問題点は、住環境が不衛生になり、感染症等の温床になるだけでなく、夜、離れたトイレに向かう女性を狙ったレイプなども多発していたことにある。
しかしトイレを補助金をどっかり使って設置しようとしたところで、しっかりとした管理システムが整っていなかったり、賄賂や中抜きも横行していて整備もままならない。それにトイレを入れたところで、水洗式ではなく乾式(排泄物を一定期間貯めて、あとで取り除く)だったりなので、自分の家に汚物を貯めたくないので結局使わなかったり、汚物を取り除くのにもお金がかかる(それをやる人は素手でやったり)するので野外排泄もまだまだ普通に行われているとか。。。またトイレ問題から、インドにおける上下水道の問題や、今でも普通に行われている便所掃除人や下水処理人の劣悪な労働環境(マスクなしの素手作業、ときには首まで下水にどっぷり)の問題、コロナとトイレの問題、そして勢いのあるインドらしくテクノロジーやITを使ってトイレ問題をビジネスチャンスに変える取り組みまで、短いながらも読みがいがある一冊だった。
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インドのトイレ事情についてのルポルタージュ。
中国に次いで世界最大の人口のインドだが、トイレがない人たちが約半数ぐらいいる。日本の常識から考えると信じられない話だが、トイレは不便と考えるのがインド人の常識になっているようだ。モディ首相は、トイレ設置による衛生状態の向上を施策に挙げて推進しているが、実態はトイレがあっても使わない。後の処理が面倒だから、費用がかかるから、という人も多いようだ 農村は野糞が当たり前で、そのために犯罪が起きる(特に女性子供)こともあるらしい。またトイレがあるところでも、下水の清掃で命を落とす人たちもいる。カースト制の悪影響の問題を技術で問題解決を目指す人たちの話等々、トイレ事情の信じられない実態のレポートとなっている。 清潔すぎる日本のトイレ事情は、逆に言えば世界の非常識なのかもと思った。
ちなみにインドには一週間ほど行ったことがある。仕事だったので、空港ホテルと会社のトイレしか使わなかった。特に不自由した覚えはなく、インドのトイレについて考えたこともなかった。ホテルに宿泊するビジネスマンは同じ感想を持つと思う。その国のことは住んでみないとわからないと言うが、まさにその通りだ。インドは好き嫌いがはっきり分かれる国だが、生活事情を見ると判るような気がする。