紙の本
繋がっていないようで繋がっている3人の女
2020/09/27 18:13
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投稿者:くらげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
3人の女が集まって飲むときの話題、空気感がリアルだった。それぞれの近況や境遇のことを話していくと、自分のほしい言葉だけがくるはずもなく、もやっとしたりピリッとしたり、時には最悪な気分になったりする。自分が心配しているつもりで話したことを大きなお世話だと受け取られたり、普通だと思っていたことにまったく共感してもらえなかったりする。そういう空気感の揺れがすごく細かく描かれている。でも何かあった時にLINEするのはこのグループで、また飲もうと思うのもこのグループ。なぜかはよくわからないけど、失い難い大事な関係性が見えた。
夫が不倫に走ってしまった弓子と、自分が不倫にハマってしまった美玖、プライベートが謎めいていて、達観した価値観の持ち主であるユリ。それぞれの自意識がとても強烈で、この3人の誰に共感できる?と考えていくと誰にもあまり共感できない…とは思うものの、それぞれに、自分と共通している部分が数センチずつあるように思う。あと、ショッキングな出来事が降りかかったときの対処法、リアクションが三者三様で痛快。
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それでいいのか、壮太。
初めは爽やかでいいなと思ったけど最後一番グロテスクに見えたのが壮太、
初めはねちっこいなーと思ったけど切実だしわかるなーと思ったのが弓子。
弓子の旦那は恋愛がしたくて、弓子は恋愛がしたくない。これは「おおー」て思った。
清く正しいだけでは愛されない。愛されるには努力が必要。
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バリバリに働く3人のアラサーな女性たち。3人が集まる度にギスギスしているのに、お酒を飲みながら悩みを聞いたり聞いて貰ったり、とストレス発散をしている。でも、彼女たちの心の奥底にある本音は絶対に言わない。お互い自分の方が上の立場でまだ幸せ、って思っているから、、、。こんな不愉快な集まりなのに、誰かが悩んでいる時に集まり上辺だけの付き合いを続けている。いつまでこの3人の関係は続くのか。いつ壊れてもおかしくない関係性なのに、、、。似た者同士だからこそ、女性ならではの意地やメンツの張り合いがあるからこそ、続いている付き合いなのかなぁ、と。イヤなら3人で集まらなきゃいいのに、って何度も思ってしまった一冊。
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金原ひとみさんの小説は、人の弱い部分を鋭く自分の身を削って書いているようで、読むといつも辛かったが、今回は3人の女性が、全て金原ひとみさんの分身として描かれている気がして、最後までfishyだが、今を大事に生きて「友情」とは呼ばない関係を続け、人は最後はしぶとく強いんだと思わせるところに救われた。
自分にも少しずつ当てはまる人の弱い部分が抉られて痛いが、金原ひとみさんに感服。
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ユリみたいに
これだけビシバシ啖呵きれると
気持ちいだろうなー
読んでてスッキリした。
もっとやれーって感じ。
でも、ユリの本当のところは分からないし
分からなくてもいいじゃんっ
がまたいい。
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同世代だなぁ…と嬉しくもあり切なくもなった。デビューからずっと読んでますが、本当になんでこんなにいろんな意味で痛いんだろう。言語化、そう、金原さんって叫びとか言葉にしづらい感情をしっかりと言語化できるひと。
アラサーにはこれ、すごく響くと思う。3人の女性どれも痛くて。でもわたしはきっと美玖が一番近い気がする。や、ユリな部分もあるかも。なんかもう最後が怖かった。それでもみんな一緒にいる感じ、真実か嘘かなんてもはやどうでも良い感じ。本音でぶつかってるのかそうでないのか曖昧な感じ。怖い。けど、好き。
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久しぶりに読んだ金原ひとみちゃん。
いつまでも比較されるのは嫌だろうけど、りさちゃんなら圧倒的にひとみ派。少しでも触れればただでは済まないような少女から、素敵な大人の女性になったのであろうを
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28歳の美玖、32歳のユリ、37歳の弓子という3人の女それぞれの周囲に起こる出来事、美玖の不倫、ユリの奔放で謎めいた生活、弓子の家族と夫との関係を巡って物語が進んでいく。3人は飲み友達のようだが、決して友達ではなく、三者三様の想いと関係性があり、辛辣な言葉のやり取りも交わされる。そこから、女性の生きづらさ、ひいては人間の生きづらさのようなものが語られている気がする。「蛇とピアス」ほどではないが、ドロドロとした描写も多く、金原ひとみの作品を多く読んでいるわけではないが、この人らしい感じがする。
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オリジナリティーのある小説だ。
3人の女性が螺旋状に語って行く形式だが、3人とも同じようなボキャブラリーを使い、同じような言い回しをするのが少し気になった。
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金原ひとみにハマったかも。
どうしても、純文学と言われる芥川賞系の作品が苦手で、ほとんど読んでこなかった。以前に新聞小説で彼女の作品を読んで、少しハードルが下がってはいた。
最初は女3人のトークに辟易してしまっていたが結局、苦手と思っていたユリが一番気になる存在に。
自分は本音を隠す弓子タイプだな、と思いながら読んでいたので、ユリの辛辣な言葉にビクビクしていた。ユリみたいに本音を出して、言いたいことを言語化出来たらいいなと思う反面、あんな友達は嫌だと思っている自分もいる。
ユリというか金原ひとみなんだろうが、とにかく言葉が圧倒的。
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弓子37歳。ユリ32歳。美玖28歳。
彼女たちにはそれぞれあっけらかんと話せる過去と、そうすることで隠そうとする今がある。
不倫。
彼女たちに当てはまるそれは、世の中ではそんなにもメジャーなのだろうか。
婚外で恋する相手が持つものは、夫や妻にはないもの。
一夜の逢瀬が恋愛の最高潮。
一緒になれば元の木阿弥、ではないのか。
恋愛なんて落とすまでが楽しくて、落ちてしまえばゲームは終わり。
共に過ごすのならばチームにならなくては。
サレたことのないやつが高みから語るなよ。
そうかもしれない。
でも私は、不倫はお話の中で十分だし、これは「お話」を読んで感じたことだ。
物語は不倫から始まる生き方の苦しみに彩られるが、サスペンス・ミステリーの要素がエッセンスとしてふりかけられる。
ユリの住むがらんとした部屋が、仄かな恐怖を与える。
そうは言っても、最後は優しい終わり方をする。
いつまでも著者の父君の話をされては嫌だろうが、(少なくとも)あの優しい文体の父親の影響は少なからずあるように思えた。
著者のデビュー作『蛇にピアス』はとんがっていて苦手で、本書もまた私が夢中になるものではないのだけれど、
著者の中に種撒かれた穏やかさは、決して恥じるものではないと思う。
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日本経済新聞社小中大
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fishy 金原ひとみ著 三人三様 女たちの尖った今
2020/10/17付日本経済新聞 朝刊
冒頭で描かれる、久しぶりに居酒屋で集った3人の女たちの会話。
「自分がどうしたいかなんて、相手がどうしたいってこと抜きには語れない」
「弓子って、そんな後出しじゃんけんみたいなことして生きてるの?」
遠慮なく相手を切り崩す言葉は「女友だち」の柔(やわ)な響きを一蹴するものだ。しかし、おたがいに逃げもせず、会っては酒を飲み、ひりつく会話を繰り返す。
東京で生きる女3人の語りを入れ替えながら、複数の視点によって現代の生を描く長編小説。最先端の美容やSNSを巧みにあやつる様子が細部に織り込まれ、時代という言葉が大雑把(ざっぱ)に聞こえるほど、三人三様の「今」はいっそ残酷なほど尖(とが)っている。
28歳のフリーライター、美玖は、不毛な恋愛に打ちのめされている。子育てをしながら出版社に勤務する37歳の編集者、弓子は、夫の不倫によって離婚を突きつけられる。いっぽう、32歳のインテリアデザイナー、ユリは、さんざん闘いを積み重ねて生きてきたと自負する2人にたいして、容赦のない論評や批判を展開する(冒頭の「後出しじゃんけん」は、家を出た夫との関係に苦しむ弓子へ叩きつけた言葉だ)。
集うたびに繰り広げられる、あけすけな告白や愚痴。3つの視点が交差し合ううち、美玖が拠(よ)りどころにする恋愛、弓子がすがりつく家庭、それぞれのありさまがスリリングに露(あら)わにされてゆく。彼女たちの内面にくぐもっているのは無数の女たちの声だと気づくとき、読者は美玖や弓子やユリとの紐帯(ちゅうたい)を感じはじめるはずだ。詳細に描き込まれるセックスの場面にも、リアルな生身が呼吸している。
ところが、ある陰惨な事件によって、論理の正当性をまとっていたユリの存在が、じつはもっとも希薄で虚構性を帯びていることが露呈する。その薄ら寒さのなかにも、谺(こだま)のように反響する女たちの声を声を私たちは聞くだろう。
本作の題名「fishy」とは、嘘臭い、胡散(うさん)臭いという意味。しかし、女たちは虚無もろとも同時代を共有し、生の確かさをもぎ取ろうとする。そのありさまを描き切る金原ひとみの凄(すご)み。戦慄と温(ぬく)もりが共存する圧倒的な小説世界だ。
《評》エッセイスト 平松洋子
(朝日新聞出版・1500円)
かねはら・ひとみ 83年東京都生まれ。作家。『蛇にピアス』で芥川賞。そのほか著書に『マザーズ』『持たざる者』など。
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2021/01/23
fishy
金原ひとみさん。
芥川賞作家
新聞の折り込みで、
この作品を知り、読んでみたい!と思った。
3人の女性の登場人物。
浮気をされた浮気相手に慰謝料を請求する妻の私。
浮気してる相手の妻に慰謝料を請求される浮気相手の私。
本当のことを、最後まで何も言わない、謎の私。
なんとも、
立場が変われば、考えも変わる。
それよりも、
いろいろな人が居るんだなぁー。
生きる。って大変だ。
もっと早く言えばいいのに、
言葉にすればいいのに、
寂しいと、辛いと、もう限界なのだと。
この言葉。良かった。
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不倫に苦しむ美玖、夫の浮気による離婚の危機にある弓子、毒舌キャラのユリ。それぞれが語る恋愛、結婚や仕事や社会の理不尽。
小説家をあきらめたライターの美玖は、不倫相手が忘れられず、慰謝料を払うためにガールズバーで働く。
弓子は、子供の事故で浮気相手のもとから一時的に帰ってきた夫に、プライドから行かないでほしいとどうしても言えず、泣き崩れる。
あけすけなようでいて誰にも本当の自分を語らないユリの生き方は、最初は理解不能だったけど、実は一番「現代」らしい人物なのかも。
どんな家族がいるかなんて自分の本質ではないし、いくらでも取り繕える。それより自分の意見を論点をすり替えずにちゃんと言葉にしろ、向き合え、という主張はそのまま作者の主張なのか。
3人それぞれに共感できるところと、ちょっと引いてしまうところがあるが、リアルな会話と独白に引き込まれて、あっという間に読んでしまった。
個人的には、ユリが痴漢を駅のホームに引きずり下ろして罵詈雑言を浴びせながら、過剰防衛ぎみにボコボコにやっつけるところに胸のすく思いがした。
三人三様に希望が感じられるラストも良かった。
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金原作品で初めて、ハッピーに(というか明るく)締めくくられた結末。
途中のサスペンスタッチな展開とか、そこに至るまでの長い長い鬱々としたトンネルの立ち上がり方とか、この人こそ純文学を貫いてる気がする。