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商品説明
租税実務を席捲する租税行政庁による行政解釈に対して、事前の手続的統制の必要性を訴えるとともに、その具体的な統制手段として行政手続法所定のパブリックコメント制度の活用及び同制度の改善策を提言する。【「TRC MARC」の商品解説】
租税実務を席捲する政令又は通達に対して、事前の手続的統制の必要性を訴えるとともにパブリックコメント制度の改善策を提言する。【商品解説】
目次
- 序章
- 第1章 租税行政庁による行政解釈の必要性とその存在形式等
- 第1節 租税法規における法解釈の必要性及び必然性
- 第2節 租税行政庁による行政解釈の存在形式と考察対象の絞り込み
- 第3節 小括
- 第2章 租税に関する政令の現状と統制の必要性
- 第1節 租税行政立法の憲法適合性と限界
- 第2節 法人税法65条を根拠とする政令の授権法律適合性の問題
- 第3節 政令の規定内容の十分性
- 第4節 小括
著者紹介
泉 絢也
- 略歴
- 千葉商科大学商経学部准教授、同大学大学院商学研究科准教授
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紙の本
「世の中には真実は二つしかない。人は死ぬ、生きているときは税金を払う。」
2021/02/26 13:06
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
レビュータイトルは、アメリカ合衆国建国の父の一人ベンジャミン・フランクリンの言葉だそうだ。アメリカ独立戦争は、「代表なくして課税なし」、母国イギリスが行った不当な課税に納得できないということで始まった。アメリカ保守主義思想には、「税金の徴収は窃盗である」のスローガンのもと、政府権力の制限がある。
フランクリン流にいえば、私たちの日々の生活は「朝起きてから寝るまで、寝ているときも税金を徴収されている」といってもいいのだが、そのような実感は乏しい。今回の消費税増税で導入された軽減税率により、店内飲食かテイク・アウトにするか、という場面で税負担を実感できるようになったのではないか。
日本は、憲法に定める租税法律主義(第84条)のもと、「申告納税方式」が原則である。ところが、サラリーマンは、「年末調整」により、面倒な各種控除・扶養者情報等を勤務先が整理し、税金の清算手続をやってくれる。おまけに年末調整をする企業は、その作業に多大なコストを負担させられている。また日本の「源泉徴収」、そもそもナチスの制度を参考に戦費調達のために導入されたのだが、徴収漏れがないように収入に応じて細かく税率が規定され、確実に徴収し確定申告をしなくて済むように設計された世界に類を見ない緻密な制度である。このように、税の公平な負担という大義の下結果的に多くの給与所得者を税制から遠ざけ無自覚者にしてしまった。
一方住宅ローン減税のような税制優遇措置もある。それらはいわゆる「租特法」という法人税・所得税の特別法で定められているが、わざわざ法律を読む人は皆無だろうし、理解しようにも法律だけでなく、政省令・通達といった細かな文書の迷路「一読して難解、二読して誤解、三読して混迷」に入ってしまう。
本書はこの税務行政における「通達」について、租税法定主義の観点から吟味し、その手続的な統制と正当性の確保の方策を示すものである。「通達」の中には、元になる法律の内容を変更・越権するようなものもあり、憲法的には問題があるのだが、正確な税務行政の恣意的判断防止・行政指導機能・説得紛争防止機能などのメリットもあることから、著者はその必要性を認める。しかし、国民の代表者である国会の立法権を潜脱することがあってはならず、民主的な統制方法として行政手続法で導入された「パブリックコメント制度」の活用を提言している。
この「パブコメ」と呼ばれる「パブリックコメント制度」は米国制度を参考にしたもので、法令の制定・改正時に広く意見を求める、いわば法令の「Q&A」集のようなもの。「通達」ではないが、そこでの意見が法令に反映されることもあれば、回答内容が法令の解釈運用の指針にもなる重要な文書である。
ただ、個人的な経験からいうと、往々にして国側の回答には、「貴重なご意見として参考とさせていただきます」という木で鼻を括ったような紋切り型の答えも目立つ。無自覚となった納税者の復権の手段としてパブコメを活用するための制度改正、行政の判断根拠のエビデンスの開示、提出された意見を「十分に考慮」するための制度的担保・モニタリングが整理されている。税への国民参加を実現するためには「対話型」とし、かつ一方で納税者意識を高めていく仕組みをどのように創るかであろう。
米国における行政規則と司法審査の関係、いわゆる行政解釈への敬譲(第5・6章)については、かつて「行政裁量と司法審査論 アメリカ司法審査論の展開と日本の動向」(高橋 正人、晃洋書房2019)のブックレビューで投稿した(行政裁量「判断過程審査」:その先に見える世界は?)。