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商品説明
【第55回吉川英治文学賞受賞】
【本の雑誌が選ぶ2020年度ベスト10第1位】
どんな恋愛小説もかなわない不滅の同志愛の物語。いま、蘇る伊藤野枝と大杉栄。震えがとまらない。
姜尚中さん(東京大学名誉教授)
ページが熱を帯びている。火照った肌の匂いがする。二十八年の生涯を疾走した伊藤野枝の、圧倒的な存在感。百年前の女たちの息遣いを、耳元に感じた。
小島慶子さん(エッセイスト)
時を超えて、伊藤野枝たちの情熱が昨日今日のことのように胸に迫り、これはむしろ未来の女たちに必要な物語だと思った。
島本理生さん(作家)
明治・大正を駆け抜けた、アナキストで婦人解放運動家の伊藤野枝。生涯で三人の男と〈結婚〉、七人の子を産み、関東大震災後に憲兵隊の甘粕正彦らの手により虐殺される――。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして二番目の夫でダダイストの辻潤、三番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の大作。
[主な登場人物]
伊藤野枝…婦人解放運動家。二十八年の生涯で三度〈結婚〉、七人の子を産む。
辻 潤…翻訳家。教師として野枝と出会い、恋愛関係に。
大杉 栄…アナキスト。妻と恋人がいながら野枝に強く惹かれていく。
平塚らいてう…野枝の手紙に心を動かされ『青鞜』に引き入れる。
神近市子…新聞記者。四角関係の果てに日蔭茶屋で大杉を刺す。
後藤新平…政治家。内務大臣、東京市長などを歴任。
甘粕正彦…憲兵大尉。関東大震災後、大杉・野枝らを捕縛。
【本の内容】
著者紹介
村山 由佳
- 略歴
- 1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒。会社勤務などを経て作家デビュー。1993年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で直木賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞を受賞。
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紙の本
熱く胸に迫る圧倒的な生き様
2021/01/20 10:27
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなに熱い思いで読み続けられるとは思わなかった。
本の厚さにも、怯みながら最初のページを開いたが、その瞬間からずっと、この本の事だけを考えていた。
それほど伊藤ノエと大杉栄の物語に目が離せない。
人と意見を戦わせる(対立の意味ではない)ためには、自ら学んで考えて言葉を生み出さなければならない。
ノエが甘粕へ放った言葉が今の時代への警鐘にも聞こえる。今 私たちのまわりには「どうしたら自分たちの地位が脅かされずに済むか、どうしたら今より出世して弱い者から搾取できるか」という考え方で行動している人達がなんと多いことか。
熱く幸せな恋愛小説として楽しみながら、また自ら考えて、自分の生き方を考えさせられた一冊だった。
紙の本
生きることは行動すること
2021/01/10 16:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性の人権などなかったに等しかった頃、平塚らいてうの青踏発行に携わり女性の権利を世に訴え、さらに大杉栄と出会ってからは弱い人のために心を寄せ己の信じる主義主張を貫き通して28歳という若さで命を奪われた伊藤野枝の激動の人生を描いた1冊。
貧しい家庭に生まれながらも決して学問の道を諦めず、なりふり構わずに自分の道を切り開いてきた野枝。女性に学問など不要と考えられていた時代にそれがどれだけ大変なことであったか。しかしほとばしる彼女の情熱は平塚らいてうをはじめ、多くの人の心を動かし、そして時には男性を誘惑するほど熱く人を魅了するものだった。
英語教師であった辻と結婚し、子どもに恵まれるも子どもを捨て、大杉栄と人生をともにすることにした野枝に途中反感を持つこともあったが、男女間の恋愛の上に同志という関係を結べる相手に出会った時、人は理性をこえてしまうのかもしれないと物語を読みすすめるうちに思えてきた。
最も印象に残ったのが、"心から愛し敬えないもののためにも理想を抱いて闘えるか"という一文だった。
これは野枝が、大杉とともに労働者のまち亀戸で暮らす中で自らが救おうとしている人たちから怒りを向けられたときに感じたものだった。
誰でも遠い存在の弱者に対して思いを寄せることはできる。でも相手との距離が縮まり、理解しあえないと感じたときにでもその人を愛し、その人たちのために闘える人こそが真のリーダーであり、上に立つべき人間だとこの文章から学んだ。
自由であることのためにたたかい散っていった伊藤野枝の激動の人生に心が震えた。
たとえ読者と主義主張は違っても、彼女の人生は今を生きる多くの人の心に勇気と情熱の火を灯すだろう。
紙の本
同志愛に溢れた恋愛小説
2022/09/18 22:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
長大な伊藤ノエの評伝小説。日本近代史の中で伊藤ノエや大杉栄の名前だけは知っていたが、具体的な活動内容は知らず、見過ごしていたのだ。28歳という短い生涯を、因習や政治体制のために、女性は思うように生きることが出来ないことを憤り、明晰な頭脳と、心動かす文章力を、当時の日本社会にぶつけ生き抜いたのだった。。よりあがめられることを望む男性中心の社会制度を無くさなくては、女性が真に生きていくことは出来ないと考え、政治体制・政府を否定せざるをえなかった。その上でのアナキストだったのだ。現代の日本をみてどう思うだろう。
紙の本
物理的な「鈍器本」だが、心もえぐる
2021/11/30 13:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年、これは!と思って購入してから、読めないまま(分厚さに怖気付き)日が過ぎていたが、ひょんなことから読み始めたら、やめられなくなるくらい面白く、あっという間に読んだ。
大杉栄や伊藤野枝についてはそれぞれ評伝などを読んでいたが、こちらは評伝小説であり、ノンフィクションでは描ききれない部分が、登場人物の心情に沿って描かれており、当時の世情や社会の構造的暴力、一人一人の息遣いが伝わってきた。
村山さんはとても良いお仕事をされたと思う。
紙の本
風と嵐とともに生き抜いた伊藤野枝
2020/12/22 19:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治から大正へと海外文化や思想の入り交じる激しい時代を本当の自由を求めて生きた、女性運動家の先駆けとも言える伊藤野枝。あの時代にこの様な生き方をした女性がいるなんて全く知らなかった。今の時代を生きていたら彼女は何て言うのだろう。
紙の本
女性の自立
2022/11/12 19:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性の自立が現在とは比較にならないほど難しかった当時、女性というよりは一人の独立した人間として革命家として、もがいたノエの物語である。当時もそして今も、安穏な生活を望む多くの大衆に突きつけた言葉の数々が素晴らしい。