紙の本
ずっと雨が降っていて
2022/08/20 20:17
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和50年代のとある寒村を舞台に描いたサスペンス。大雨から土砂崩れで交通も通信も遮断され外部から完全に孤立した村。そこに亡妻の墓参りに訪れていた岩森は村の中で深まる対立がしだいにエスカレートする場に遭遇する。昭和の頃の風俗で今ほど情報化されていない情勢で村の日常がうまく描かれている。静かな描写でも緊迫感が伝わって飽きない。自分は冒頭に起る殺人が誰によってなされたかというトリックの部分はそれほど興味持てなかったが、語りは巧みで緻密なので、小説としておもしろかったと思う。
紙の本
不快を体感
2021/02/23 04:53
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投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に、嫌な人間がたくさん出てくる。
昭和の田舎の小さな村なんて自分には想像するしかないけど、こういう権力のある家系とか実際あったんだろうなあ。そして好き勝手にしまくる。
今回は、そういうなかにも常識のある人や優しい人もちゃんといたから少しは救いになった。
エイキチ、あなたの中にいませんか?
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抑えつけられ鬱屈した集団の暴走。狂気と残虐描写は激しいけれど、始終一定の距離を保って冷静に描かれていたのが良かったです。
誰が100%悪い、とかではなく、これまで積み重なってきた良くない事が一気に噴出した空気。時代設定も舞台設定も人物設定も絶妙でした。ここまで酷くはないけど実家のある地区も九州の片田舎で男尊女卑傾向まだ強いし何かあったら結構な速さで広まるのでつくづく。。上下関係はないけど2割同じ苗字で別の1割同じ苗字というところですし(もちろん、佐藤や田中ではない)。
暴力が渦巻いて、長雨もありジメジメしている中、港人くんと廉太郎くんの尊さ良かったです。岩森さんまで呑まれそうになるのを止められるの凄い。ピアノさんも、地元意識強いなかで、降谷にも矢萩にもつかなくていい人間関係構築してるのは女傑です。上窪のご隠居は隠居してるから巻き込まれずに済んだのかな…鵜頭川村の住人だからある程度どちらかだろうけど(そういえば屋号“上窪”しか出てなくて苗字わからない)、それ関係なく心配してくれるのはほっとします。
殺人事件と暴動の真相が、横溝正史ばりに懐かしのドロドロ血縁関係。金田一シリーズはたいてい親が気に病んでたけれど、子どもも同じように気に病みます。。
これほどの内乱事件が起こっても、小さな出来事としてWikipediaに小さくまとめられているという体なのが苦いです。
その後が気になる人物も多数居ますが、蚊帳の外側は知ることが出来るのはここまで、というのもリアルでした。下世話に調べまくらない限り現実の事件もそうだな、と。
これドラマ化するんですか…大丈夫かな。。設定変更はかなりありそうですが、WOWOW攻めてる。
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【父と娘は、閉ざされた狂気の村から逃げられるか】亡き妻の故郷へ墓参りにきた父と娘。突然の豪雨で村は孤立し、若者の死体が発見される。狂乱に陥った村から父と娘は脱出できるのか?
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昭和54年に起きた「鵜頭川村事件」。大雨による土砂崩れで外部と遮断されて、孤立状態に。一つの死亡事件を皮切りに今まで溜まっていた鬱憤を爆発させるかのように暴動が発生します。小さな集落ならではの派閥や集団心理など渦巻く怒りが狂気へと変化していき、どう主人公は乗り越えていくのかホラーチックに描かれています。
表紙や帯の紹介から想像するにおどろおどろしい展開が待っているのでは?と思っていましたが、思ったよりは恐怖感はありませんでした。先に同じ作家さんの「虜囚の犬」を読んだせいか、それほど衝撃度はありませんでした。
確かにバイオレンスな描写を言葉巧みに表現されていて、ホラーな映像は浮かんできます。
ただ、各章の始めにウィキペディアの情報や後の新聞記事を載せているので、「過去の事件」として紹介されています。
一旦現在に戻るので、冷めた感覚がありましたし、再現ドラマを見ているような感覚にもなりました。
また場面場面では、暴力や暴動といった恐ろしい描写があるのですが、そこの一部分しか描かれず、他の住民はどうされているのか恐怖感があまり伝わってこなかった印象を受けました。
ちなみに同じ苗字でも、血縁関係がない人たちが多くいて、誰が誰だかわからない部分はありました。でも、小さな集落ならではの特徴ということや独特の環境、世代別の考えが後に大きな波動へと変貌していくので、良くもあり悪くもありました。
最初は穏やかな日常だったのに、何か不穏なことが起きると、次第に人間の感情や欲望が剥き出しになっていく姿は、読んでいて恐ろしかったです。集団心理が次第に恐怖の洗脳へと変わるのは他人事ではないと感じました。
主人公の妻が、その村の出身ということで、一応関係者でもあり、他所者でもありますが、それほど襲われる必要ある?という疑問もありましたが、娘のなにがなんでも守りたい気持ちが相まって、パニック小説として楽しめました。
一番恐ろしいのは、生きている人間だということを見せつけられた作品でした。死亡事件の犯人は・・・意外でしたが、それよりも動機が酷いというか、やるせない真実に腐った村の象徴だなと思いました。
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そうでなくても閉ざされた村なのに、豪雨に見舞われて完全に孤立したうえに停電。そんな中で起きる殺人事件。シチュエーションとしては珍しくないけれど、村全体が狂気に走るさまは予想せず。
何でもありの状態になったときは、映画“パージ”シリーズを思い出して笑っていたのですが、終盤に近づくにつれ、映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』が頭に蘇って笑えなくなりました。私が「総括」という言葉を使えなくなったきっかけの映画です。
如何せん登場人物が多すぎて、誰が誰の子やら把握しづらいから、あっちの子だったと言われてもピンと来ん。(^^;
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古くからの序列に縛られているある村に大雨が降る。
土砂崩れが起き、孤立してしまう鵜頭川村。
電気もストップし食料も段々と少なくなる中、
村の若者たちのモヤモヤした気持ちに火を付ける人物が。
若者たちの行き場のないエネルギーが暴力へと変わっていくシーンが本当に恐ろしかった。
後に冷静になった時、彼等は何を思うのか。
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昭和初期。僻地も僻地、ある日水害で隔離されてから物語は進む。
一番怖いのは、昔ながらの風習というか派閥というかそういう方向。
「あいつん家は〇〇だから」っていう理由であんな結末になるとは…。
令和に読んでも読める本。平成生まれでもね。
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災害という緊急事態、そして物理的に閉ざされた田舎の村となると、遅かれ早かれパワーバランスは崩壊したと思う。
こういう時に物を言うのは、普段の地位より人数と災害時に役立つ物資を持っている側だ。
しかも今回は、このパワーバランスの崩壊を先導した者がいた。
この先導した者の意図というか動機が全く見えてこなくてもやもやした。
先陣を切っているようで、その実ひどく冷めた目で現状を見ている。
崩壊はさせたいが、本気に思っていないような。
彼のスタンスが読めなくて、大いに戸惑った。
他のキャラが割と分かりやすいのと、彼の狙いは最後の最後にならないと出てこないので、余計に。
まあ明かされた真実を思えば、確かに投げやりにもなるだろうし、村を抜け出したくなる気持ちも分からないではない。
村とはいえ、あれだけの人数を出しておきながら個性豊かに書ききっているのは本当に凄いと思う。
それぞれ主役の視点があるが、全編通しての主人公にこの村とそれなりには関わっているが村出身者ではない余所者、でも自身も別の村で生まれ育ち、そして都会暮らしも知っている大人にしたのは、解説にもあったがいい塩梅だったとも思う。
村の中からの視点も、外からの(第三者的な冷めた)視点も彼なら両方書ける。
これだけの事件を起こしておいて、実は学生運動を模倣しているところがあり、その学生運動自体もこの作品中の時間軸においては10年近く前の過去の産物という。
あれだけ村人の間で盛り上がったのに、都会から見ると時代遅れのことで殺人事件にまで発展しているのが、何とも哀しい。
この物語は前述通り、あれだけキャラを出して見事に書き分けているにも関わらず、「事件」を主体にしているためか、この物語にエピローグ的な話はない。
その後、それぞれのキャラがどうなったのか、キャラ視点での後日談が一切ない。
最初読んだときは、ぶつっと話を切られた感じがして戸惑ったが、今にして思うと、村に直接関わりのない第三者である読者が知ることができるのは、実際はここまでだろうなと、そう思わされた。
Wikipediaの引用文(というていの)文章が挿入されるだけという簡素な終わりである。
多分、あの後で後日談を入れても完全なる蛇足だろう。
部外者たる自分たちは、そこまで踏み込むべきではない。
事件の中身をこれだけ知ることができただけでも、ありがたいと思わねば。
ただ個人的にはピアノさんがどうなったのかだけは、ちゃんと知りたかった無念も。
助かったはずだが、あの後も村にはいられたのだろうか。
心配である。
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ジャンルがホラーだったら幽霊的な話かと思ってたら人間の恐さの方だった。クローズドサークルだしミステリ要素もなくはないけど、それよりも狂っていく人間の話だった。
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例え、田舎でなくても孤立する状況が
生まれた時に、人の中に「エイキチ」は
出現するのでしょう。
あぁ本当にヒトが一番怖い。
村の陰湿で閉鎖的、根強い男尊女卑
村民の詳細が長々と描かれる理由が
後に判明していくけれど
犯行動機にもう少しインパクト欲しかったかなぁ。
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パニックものということで、てっきり呪いとか殺人鬼とか感染とかだろうと思っていたら、集団心理の狂気だった。時代設定がちょっと昔なだけで特殊な環境は何もなく、それがゆえに生々しさがすごい。wowowでドラマ化が決定したらしい。攻めてるな。wowow。
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初めての作家さん。パニックサスペンスとしては先が気になり一気読み。目を背けたくなるような描写も多く、決して読んでて気分がいい作品ではない。
でもこの作品の恐ろしさは、別の所にある。
閉ざされた集落の昔からの風習とか、都会への劣等感、やり場のない怒りや不満が、災害で完全に孤立した際に一気に爆発。
最後のオチで更に絶望的な気持ちになりました。
嫌ミスとは違うこのいやーな感じ。でも読み進めずにはいられない。
勇気を出して、別の作品にもトライしたい。
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雰囲気がどことなく小野不由美さんの「屍鬼」に似ている。もっとも小野さんのはホラー小説、こちらはクローズドサークルのサスペンスだが。
物語の展開が少し安易な気もするが、日本人のメンタリティの中に、物語で語られている嫌な部分というのはまだまだ根強くあるような気がする。
救いのない物語ではあるのだが、愛子の健気さと港人の真っ直ぐさは心に残る。事件終結後の村の様子をもう少し書き込んでほしかった。
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亡き妻の墓参りに鵜頭川村を訪れた岩村明と娘。
その夜から豪雨にみまわれ、この村が土砂崩れで孤立してしまう。
その日に若者が何者かに刺されて死亡しているのが見つかり…。
若者中心で自警団が結成される。
当初は、混乱による窃盗や暴行の防止目的だったが、やがて内乱へと発展する。
昭和54年の話であり、人口9百人の村。
現代では、少なくなった過疎地域での暴動であり、血族であるがゆえのひずみが描かれている。
若者たちの暴動の内側には幾つもの思いがあったのでは…。
望んだ子。望まれぬ子。偏った愛情。与えられぬ愛情。家のため。己の老後のため。見栄のため。
そのひずみが、次代へと繋がる悲劇を生んでいく。
このことばがすべてだろうと思った。
自身の田舎もこれほどの過疎ではないが、しがらみや決め事やそれに関わる煩わしさがたくさんあった。
それを思いだした。