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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物が多いので、整理しながら読みました。
事実をほぼ踏襲しているそうで、迫力がありました。
差別される黒人のみならず、犯罪者としても過酷な生活が待ち構えていました。
多くの賞をうけた作品です。
ぜひ読んで下さい。
紙の本
リアリズムの意味
2021/07/29 22:34
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
『地下鉄道』と異なり実話にインスパイアされ徹底したリアリズム作品となっている。現在でもまだ過去のものとはなっていない出来事を語るにはこの手法が求められたのであろう。『地下鉄道』と合わせて読まれたい。
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「ニッケル・ボーイズ」https://hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014677/ つらい。。実在の少年院での非道の仕打ちに基づいた話。そもそも無実とか施設内の虐待で死んだと思われる無数の死体が発見されたり仮釈放という名目の人身売買とか、これ最近の話なんだよね。終盤、ちょっとした仕掛けがありそれもまたつらい(おわり
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『ニッケル・ボーイズ』コルソン・ホワイトヘッド著、藤井光訳(早川書房)エルウッドの人生から見える米国の構造的人種差別。実在した「エルウッド」たちの叫び。「究極の良識が、あらゆる人の心に息づいていると信頼すること」が公民権運動のメッセージ。(p.216)読んでいて身体が強張り震えた。#読書 #coltonwhitehead #翻訳 #藤井光
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1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。
この恐ろしい筋書きは空想のものではない。フロリダに存在し、100名以上の行方不明者を出したドジャー少年院がモデルになっている。施設が老朽化のために閉鎖され、暴力の痕跡も歴史に埋もれようとしていた中、ハリケーン後の敷地清掃で27名もの正体不明の遺骨が発見されたことによって、この少年院での恐ろしい暴力の実態が明るみに出ることとなった。
本作『ニッケル・ボーイズ』は、ニッケル少年院を舞台として主人公の少年がいかに恐ろしい暴力をサバイブしようとしてかを克明な心理描写と共に描き上げる。物語は1960年当時と現代の2つの時間軸を舞台として、現代にまでサバイブできた生存者たちに植え付けられた暴力のトラウマまでも生々しく示される。そして、この2つの時間軸を使った予想外の叙述トリックによるラストは必読、思わず読んでいた本を落としそうになってしまった。
南部で虐げられる黒人を北部に逃すための比喩である”地下鉄道”が実際に鉄道として存在していたなら、という途方もない想像力を持って描かれた前作『地下鉄道』での受賞に続き、2度目のピュリッツァー賞を受賞した本作。ノンフィクション部門でピュリッツァー賞を2回受賞したのは彼が史上4人目であり、先達にはウィリアム・フォークナー、ジョン・アップダイクらであるということを知れば、コリソン・ホワイトヘッドの作家としての凄さは十分に伝わると思う。
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真面目に前向きに暮らしていた少年が、不運によって人種差別が色濃く漂う劣悪な少年院に放り込まれる。
実話をベースにしたフィクション。
だが、この物語のような話はいくらでも存在したのだろう。
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ハッピーエンドではなくて、悲しい結末だが、救いない結幕ではない。暗いないようなので、新年に読むには、しんどかった。翻訳はとてもよい。
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アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケルスクールという名前だったが、スクールとは名ばかり、虐待のまかり通る過酷な少年院だった。
後年、閉校になったスクールから傷だらけの白骨が掘り出された事から、当時の院生に話題が集まる。
スクールでの悲惨な日常と、不正を外部に知らせようとするエルウッドと、大人になった院生とが交互に描かれる。はたしてエルウッドはどうなったのか。悲しいラストだが、胸をうたれる。
遠い昔のアメリカではない、50年ほど前である。キング牧師が登場した頃の話だ。そして21世紀になっても黒人への差別は続く。黒人の大統領が誕生しても、大坂なおみは7枚ものマスクを用意していたのだから。
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小説だけれど、事実を基にしている。2011年まで運営されていた少年院が舞台。主人公は何の罪も犯していない。ただ運が悪かっただけ。世界は変わると信じている。彼が、アフリカ系アメリカ人が、理不尽のただ中で生きていくことの苦さで、胃の腑が捻り上げられるよう。それでも、言葉の力が本を閉じさせない。
物語の仕掛けが明かされたとき、それまで主人公エルウッドに絞られていた焦点が、一気に、理不尽に傷つき生きてきた人たち皆に合っていくような気持ちになる。
人間はいつでも醜悪になれる。忘れてはいけない。
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今でも解決できない人権問題の歴史
カラー、経済力、権力、人間の根源
にある欲望や、醜い部分、人類の歴史
が始まって以来、繰り返している。
なんとも悲しい。
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前作『地下鉄道』と比べて、地味な話だなと思い、読むのが遅くなったが、そうではなかった。ネタばれになるので書かないが『地下鉄道』と同じくらいか、リアリズムの分だけ本書の方がくるものがある。アメリカの人種差別問題がモチーフになっているがそれを超えて人間というものを問いかけてくる。
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繰り返し、世界の発信されてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。
ホワイトヘッド50歳半ば、藤井氏40歳半ば、何れもアブラギッシュの人物が取り上げて世に問うているものはあった!
アフリカにれてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。
ホワイトヘッド50歳半ば、藤井氏40歳半ば、何れもアブラギッシュの人物が取り上げて世に問うているものはあった!
ヒトの祖は アフリカに現れたという事実はまごうべくもない‥がその後の歴史、特に新大陸発見からの怒涛の時間は彼らを蹂躙して余りある。特に新大陸アメリカ、今日の姿になるまでに白人が流した「生贄の血」
代償となった彼らの叫びは未だに他民族寄せ集めにすぎぬかの地で日の光の下に堂々と続いている・・時には政治の力を持って迄。
ホワイトヘッドの登場はそれまでキングズ牧師らが築いてきた歴史を繋げる素晴らしいペンの力だ・・頂ける自分に幸せを覚え、更に追って行きたい。
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以前に「地下鉄道」を読んでファンになったコルソン・ホワイトヘッドの新作。本作も前作同様にアフリカ系アメリカ人の人種差別がテーマで重たいけれどもエンタメとしても楽しめてオモシロかった。表紙がめっちゃかっこいいのでモノとしても最高。
優秀で勤労勤勉なアフリカ系アメリカンの若者が大学へ行こうとした矢先、半ば冤罪のような形で少年院(ニッケル)へ投獄され、そこでの生活が中心に描かれる。入所前に公民権運動の最前線を目撃したりマーティン・ルーサー・キング牧師の演説をレコードで繰り返し聞いたり。単純にかしこくて真面目というだけではなく志が高い。そんな若者が自らの正義を貫いたにも関わらず少年院の管理者からの暴力に苦しむ姿が辛かった…さらにその不条理の世界へと順応していくのも辛い。キング牧師が非暴力での抵抗、敵を愛せと説いた言葉が、圧倒的な理不尽と暴力の前では子どもにとっては空虚なものでしかないのが痛烈だった。このラインとか特に。
彼らには平凡であるという単純な喜びすら与えられなかった。レースが始まる前から、すでに足を引きずってハンデを背負わされ、どうすれば普通になれるかわからずじまいだ。
ところどころニッケル時代を回想する大人になった主人公の視点も入ってくるので、主人公がなんとか生きて脱出できたことは分かる作りになっている。したがって、読んでいるうちはこの地獄もいつか終わるものと思って読んでいた。しかし、思いもしない展開が用意されており終盤はページターナーっぷりが加速していった。序盤の伏線をめちゃくちゃ鮮やかに回収するラストの描写が圧巻だった。「来ないと思っていた未来が今ここに!」という感動が静かに立ち上がる。その時代を生きていない人間でもそれを体験できるのはフィクションだからこそ。本作は実際の少年院での虐待事件をベースに描いているので、それを広く知らしめるノンフィクションとしての機能も持ち合わせている。さらにはエンタメとしての魅力もバッチリなので非の打ち所なしの傑作!
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いつか再びこの本を開く時がくるだろうという予感がある。なぜなら今回だけではしっかりと理解しきったなどとは到底言えないという確信があるから
きっとまだまだ気づけてなかかったり体に落ちてない
魅力というか地獄を目を見開いて覗かなくてはならないと思うことになるのだろう
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『地下鉄道』でピューリッツァー賞フィクション部門含め様々な文学賞を総嘗めしたコルソン・ホワイトヘッドが、再びピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した作品。
『地下鉄道』が強烈な作品だったため、さすがに前作は超えられないんじゃ、と勝手に訝って発売から大分経ってから読んでしまったが、これも力強い傑作だった。
黒人の差別の歴史はずっと続いているが、BLM運動が起きていた発売当時に読んでいたら、もっと印象深い読書体験になっただろうな、と少し後悔した。
本書は実際に起きたドジアー校という更正施設での虐待事件をモチーフにしている。
ニッケル校という少年の更生施設近くの土地から遺体が次々と発見される。
かつてニッケル校に在籍したことのある主人公のエルウッドがニッケル校に送られるまで、送られてからの生活、そこから出るまでが描かれていく。のだが、後半のある部分で仕掛けが施されてる。その仕掛けがあまりにも辛くなるものだった。
文学的に、こういう仕掛けは決して新しいものではないのだが、これが黒人の差別、その差別には黒人が自由になった時期よりも長い奴隷としての歴史、迫害、差別の歴史があるのだとわかっていると、この仕掛けにどういう意図があったのかが見えてくる。
自分は、これは決して忘れないというバトンであるという気がした。