鈴木大拙一日一言 人間を深める道 （致知一日一言シリーズ）

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大拙氏の書籍はずっと読みたいと思っていたが、岩波文庫など旧字体フォント、ページにびっしりと書かれた文章に萎えて手が出せずにいた。巨星にとりつくための能力が圧倒的に足りない自認があるが、そんな私でも通読できた。

366日分に分け、氏の著作などから文章を短く引用した形式で書かれている。選出基準はよく分からないが、氏の長文からの抄出なので、もう少し前後の文脈を把握したうえで選出された言葉を味わう必要があると思う。「眼横鼻直」というような禅語のようなものが引用されているわけではない。

出典はすべて書かれているのだが、惜しいことに「全集 N巻」としか書かれていない言葉がほとんど。現在では手に入りがたい書物からの引用であるため・・・という説明書きがあったが、これではどうにもならぬ。私は全集を買い求める財力がない。

自分にとっての一番の収穫は、「縁なき衆生を救う」（7月15日）である。氏の見解・氏の信仰に触れることができたことが収穫。口称できぬ人ってどうなるの？という疑問を自分はずっと持ち続けていた。その答えが少し見えた気がしている。


千年さきに咲く花（2月9日）
浅原才一（妙好人）（8月9日～12日）
悲しみを楽しむということは、人間のみに許されている。人間のみに歴史がある。人間のみが南無阿弥陀仏を称え得る。（8月16日）
供養・衆生恩を報ずる感情の一分の現れ（8月25日）
「それは自分の精一杯の仕事なのだ」（9月7日）
真黒になって、黙々として、朝から晩まで働き、時節が来れば、「さよなら」で消えていく。このような人をえらいひとと、自分はいいたい。（11月21日）
宗教は信の一字でつきて居て、しかもそうだとうなずくことの如何に困難なことよ。（12月2日）
人生は永遠の祈りである。（12月3日）
人間の一生は不断の努力であり、永劫に聞かれぬ祈りであり、無限に至り得ない完全性の追求であると言えるのです。（12月31日）


「祈り」という言葉も割と使われている。禅者にとっての祈りとは如何なるものなのか、そんなことを勉強してみたいと思ったところで本が終わった。