ＥＹＥＳ ＯＦ ＨＵＢＢＬＥ ハッブル宇宙望遠鏡 探究と発見のまなざし

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投稿者：永遠のチャレンジャー　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

設置稼働から三十年が経ったハッブル宇宙望遠鏡が捉えた宇宙の、その宇宙から眺めた天体の写真集である。真空、暗黒、極寒、無音の淋しい宇宙でハッブル君は人知れず頑張っていたんだね、偉い！

巻末近く「カラー画像の生成」という一文が示すとおり、可視光に限らず、赤外線や紫外線などの電波が捉えたフィルタ透過のモノクロ画像データを彩色合成（吸収された本来の色に復元）し、調整して得られたカラー画像がてんこ盛りだ。

わし星雲（Ｍ１６）の「創造の柱」の写真（６４頁、６５頁）が対照的だ。可視光だとガスの塵に遮られてしまうのに、赤外線撮影だとこれを透過し見え過ぎるほど数多な星の煌めきがこぼれ出る。一目瞭然のその違いに唸らされる。

８３頁～８６頁に折畳み隠されたオメガ・ケンタウリ球状星団の見開き写真は実に圧巻だ。文字どおり数えきれない星の真砂を目の当たりにした思いがする。まさしく神秘の宝石箱だ。

少年の頃に見上げた和歌山田辺の夜空が星座の形が判らないほどの星が見えた私のベストだが、当然にその比ではない。肉眼で見える限界の六等星が眩いほどだから、おそらく三十等星ぐらいまで長時間露出の宇宙空間で捕捉されたに違いない。ハッブル宇宙望遠鏡、恐るべし。

小っちゃな円盤銀河が歪な形で捉えられた写真は、銀河団の重力レンズ効果で見えない筈の遠方にある銀河が空間が曲げられて姿を現わした結果だという（１９２頁、１９３頁）。宇宙創成期に近い深淵世界（１２０億光年もの彼方）が顔を覗かせるなんて、宇宙は広大無辺な癖に粋な計らいに満ち溢れている！

ハッブル宇宙望遠鏡三十年の軌跡をとどめた貴重なカラー写真に時間を忘れて見入るだけで、やはり野に置け蓮華草ならぬ、大気圏外に置く宇宙望遠鏡の意義が実感できる。有難う、ハッブル君。