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偽物の保証は怖い。
だけど近づいてみないと本物の保証かどうかわからない。
だから傷ついても何度も相手を変えて受け入れてしまう。
葵が本当に求めていたのは家族愛、特に母親からの無償の愛情であるように感じる。
だからこそ幸村さんの性的な目線や、海伊さんからの持つ男女関係の固定概念は求めていた愛情とは違っているように感じる気がする。
守られたいと願いながら女として扱われることへの違和感を感じている。
それなのに港のようにこちらが守るだけの存在にも違和感を持ってしまう。
松尾君は守るべき存在であり雇っている相手で、だけど自分を救って守ってくれる相手でもある。
だからこそ決して恋愛関係にはならずに一緒にいるように思った。
いずれにしてもどんな相手が隣に居ても、本物の保証は自分で自分を受け入れることでしかない気がする。
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島本さんの書かれるかっこよくてだけどどこか脆い女性と、周りの年上男性が相変わらず魅力あふれていて素敵だなーと思った一冊。今回は年下のはっきりした松尾くんもよかった。
自分を持っているようで脆くて、不安定でもあるけど一人でも生きていくことはできて、そういうバランスの表現が本当に素敵。
見知った景色とか、今の世界とかの描かれ方が、今まで読んできた中で一番作り物感しなくて、奇妙な読後感でもある。
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島本理生さんはほんとうに負の感情の表現が秀逸だなぁ。
読むといつも自分のなかのマイナス部が刺激されて少しだけ不安定に傾く。
葵はひとりで生きたいと思いながらも言動が伴ってなくてそれがまたリアルな女の表現でさすがだなぁと。
葵が2021年の春をどう迎えるのか覗きに行ってみたい気もするな。
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わたしも、そして島本理生さんも、歳を重ねたんだなと感じさせられた。きっと最後の章加筆されたんですね、コロナ禍の世の中になるなんて誰が思ったかしらね。オリンピックなんて到底できず海外旅行も国内を自由に往来することもできなくなった2020年。まだ2020年を夢見ていたあの頃。著者のこういう回りくどいけど真っ直ぐで痛い感性がすごくすごく好きだったなと思い、そしてそれに違和感を覚える年齢になってしまったんだなと寂しくもなった。
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2018 年の春から物語は始まり、2020年の春まで続く。
主人公の葵と、その周りの男女をめぐる物語。といっても湿っぽさ、狡猾さというよりは、一人ひとりに対して向き合う誠実さや強さのようなものを感じた。
途中だが、
「始めなければ戻れると思って」
と、主人公が既婚の年上の男性との関係の近況を話すと、
「そうですか?」「戻れることなんて、なくないですか?」
と言われるシーンがある。
きっとそう、ここからスタートというような明確な区切りなど無いんだ。もっと曖昧で、気づいたら始まっていた、気づいたら終わっていたというようなことばかりだと今になるとしみじみ思う。
主人公を取り巻く男性が一人ひとりタイプが違っていたのが印象的だった。
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「こんにちは。運命です。やっと会えたね。」みたいな出逢いって、ほんとにあるのかな?
って、誰かの心の声がたまに聞こえてくるんだけど、そんな語り口。
恋もそうだし、仕事も家族のことも、来た球はちゃんと打っているけれど
いつもそこはかとない孤独感があって、それでも日々を生きていくという主人公。
すごく等身大で、会話と心理描写も身近に感じたので、ぐんぐん読みました。
【出版社紹介より】
前原葵、34歳。同棲していた恋人に別れを切り出され、今は叔母の家で暮らしている。会社員をしながら、亡くなった母が新国立競技場の近くに開くはずだったワインバーを継ぐことになった。会社に店にと忙しい日々の中で、母と古い知り合いの経営コンサルタント、情報誌の副編集長、近所の小料理屋の店主、会社の上司など、タイプのまったく異なる男たちが、葵の周囲を通りすぎてゆく――。「婦人公論」人気連載、待望の書籍化。
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キッパリしてて自立してる主人公の女性が同世代なのもあって凄く魅力的だった。
胸を打つ表現も多く物語に引き込まれた。
「便利で機能的で速度重視の未来を追い求めた先には、なにが待っているのだろう」
新たな出会いは無くなっている一方で、目まぐるしく価値観や常識が変化していく日々。自分の選択では無いところで変わることへの怖さ。ホントになにが待ってるのか不安だと共感した。
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ストレートなタイトルだが、内容は相当にひねくれている。主人公の葵は相当に魅力的な女性なのだろう、彼女との関係をもつ男・もちたがる男・もった男が次々と登場するが、どいつも敢えなく玉砕する。相当にこじれそうな関係も容赦なく切り捨てる姿には爽快感すら覚えた。それでいて芯は脆く、それが男たちの庇護欲をかきたてるのかもしれない。ビジネスウーマンとしてもなかなかやり手のようだが、彼女の経営する店はこの危機を乗り越えられるだろうか。
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あけましておめでとうございます。
2021年の初レビュー。
ほんとは昨年のうちに読み切って、2020年の締めの本にしたかったが、間に合わず…
島本理生さん、直木賞受賞後初の長編。期待して読んだ。
会社員の葵は、ワインバーを営んでいた母親の突然の事故により、店を引き継ぐことになる。生活が目まぐるしく変わり、様々な出会いがあり、そんな中葵がたどり着いた場所とは?
この本、おもしろいです。装丁どおりの素敵な内容。
島本さんの文章は上品で、スラスラ読める。就職せずそのまま職業作家になっただけあって、読ませるのがうまい、と思う。
しかし、実は設定が結構複雑で、感情の表現なんかも捻くれていたりする。たまに立ち止まらないと、理解できてない箇所や見落としがあったりして、奥が深いなぁ、と。
テイラー・スウィフトの「Blank Space」をカラオケで歌う葵は…かっこいいのかどうかよくわからないけど、やたら男性にモテる。しかし、僕から見ると、登場する男性が皆似ているんだよな…。
所詮、葵は外見とか雰囲気で男を選ぶんだな、
内面重視じゃないんだな、
と、心の中で毒づきつつ、
じゃあ、男の内面って人によってそんなに違うのか?
と問われると、
そんなに変わんない
という答えに行き着く(笑)
ちなみに、島本さんによれば、この本のテーマは「母と娘」なのだそうだ。
新年早々、全く読み違えた(笑)
今年もよろしくお願いします!!
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島本さんの小説はやっぱり好きだ。複雑に絡まる感情を言葉にするって相当難しいと思う。普段自分が考えている事を客観的に見つめることがどれだけ難しいか知っているから。だから島本さんの小説で登場人物の感情に触れるとなんだか「なるほど」と思う。こういう感情があるのかと。一種の納得とか発見になるのかもしれない。こういう本の読み方は面白い。
主人公の葵は永遠の愛とか信じられないんだろうな。人間は本質的に孤独ってことを分かっているし、永遠なんてないと思っているのでは。かなりの現実主義だと思った。でも、魅力的な男性を前にして、葵の女性性が現れるところがやっぱり恋愛のもろさ、危うさ、幻想などを感じさせる。自分の中の相反する感情に折り合いをつけて生きていくことって難しいよなって思った。
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この人の本は毎回止まらなくなる。なんだか読んでてフッと悲しいような寂しいような気持ちになる。気がついたら男性に依存してる、本人気づいてないのかもな、、、笑 無意識のうちに出会って別れてを繰り返して毎回最後だと思いながらもまた繰り返して、、っていうのなんかわかる。
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はじめて島本理生の本を読んだ。
女性が主人公の恋愛小説。2020年11月末に出版されたから本当にホットな本。
恋に正解も間違いもない。したいと思ったときにはできない。少し優先度下がったり、期待してない時にふといい人が現れる。恋ってそんなもの。
恋愛っていうのは、万人が理解できる共通認識がない。
少し経つと、あれはなんだったんだろ?っていう恋もある。
葵さんの周りで色んな男性が現れては消えていく。恋愛と呼んでいいのかわからない距離感、温度感。
名前のつけられない恋愛。そういうものが人生を豊かにしていく。人を好きになるっていうことは、過去の人の型に当てはめようとするものではない。まったく新しい型になっていく。そして、そうするにつれて新しい自分にも出会える。
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感情をなかなかにはっきりと描写する作家さんだなと思った。婉曲的な表現はあんまりなかったかも。それゆえに主人公の気持ちが結構ストレートに刺さった。そういう女性として描きたかったのかも。めちゃくちゃ共感!というわけではなかったけど、自分だったらどうだろうと恋愛観を見直すきっかけをくれた感じ。
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バリキャリ女性の「1人の人を何十年も想い続けるって一途だよね」という不倫に対する感想が、自分の視野を少し広げてくれた気がする。不倫はダメなこと、穢らわしいと思っていたが、当事者を励ますならこういうセリフを言うのだろうなと学んだ。
主人公の自由な恋愛は、身近な友人の話を聞いているみたいでついつい何か言いたくなってしまうところがあった。結婚がゴールではない今時の恋愛だと思う。
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出会いと別れの中で自分1人で生きていると思いがちだけど、実は今の自分は出会った人々によって作り上げられている、と気づける話。選択肢の繰り返しで今ができていて、自分の選んだ道を逞しく生きていく話。とっても美味しいワインを飲みながら読みたくなる一冊。