紙の本
学ぶ喜び
2022/09/29 14:14
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の初めの方で、学ぶことや知ることがいかに楽しいことなのかが力説されている。「そこにあるのは、ただただ学ぶことの喜びなのです(P.27)」とか「知識や何か新しいことを学ぶということに対する抑えきれないほどの欲動が、私のなかにあったということなのです(P.40)」とか。私の頭では一般書レベルしか読めないのだが、この著者の本は確かに読んでて楽しい。著者の、知ることの喜びや学ぶことの楽しさを分けてもらっていると考えるといいのかもしれない。
一方で著者の家族制度に関する発見は、フランスの学会ではあまり受け入れられていなくて、今も対立しているらしい。本人としては「世の中に迎合しない正しいことを言って損をしている」という気持ちがあるように見えた。歴史的には自然科学の世界でもそういうのはよくある。人が本当に偉大かどうかは、死んでから判明するというのは多分本当だ。
本書で参考になったと思うのは、「よい本は稀にしか出ないので、死んだ人の本を読んだほうがよい」「未来について知りたければ、歴史を学ぶ以外にない」とか。よく言われることだけど、確かにそうなんだろう。私が偉大な人物になる可能性はこれっぽっちもないけれど、これなら真似できそうだ。
紙の本
筆者の頭の中をのぞけたのが面白かった
2021/03/10 07:21
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投稿者:one story - この投稿者のレビュー一覧を見る
乳児死亡率等の確実な基礎係数を十分に集め、自分の経験・歴史に照らし、本能・直感・経験を働かして今後の予測を立てる思考過程は納得のものでした。
個人的には、筆者が本を読みながら頭に様々な思考が浮かぶ様子を読書プロセスとして紹介しているくだりが、頭の中をのぞいているようで、人の頭の中(思考過程)をのぞけるチャンスはないので、とても面白かったです。
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1 入力 脳をデータバンク化せよ
2 対象 社会とは人間である
3 想像 着想は事実から生まれる
4 視点 ルーティンの外に出る
5 分析 現実をどう切り取るか
6 出力 書くことと話すこと
7 倫理 批判にどう対峙するか
8 未来 予測とは芸術的な行為である
+ブックガイド
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エマニュエル・トッド自身の考える方法を学びました。印象に残っているのは、「経験主義」。事実(データ)を蓄積し、そこから着想すること。特に大切な指標に着目してそのデータの意味を考えること。今、起こっていることもシンプルなデータに着目して見てみたい。あと、あえて自分の外の視点を持つこと。まずSF小説や古典を読むことから始めたい。
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筆者のエッセイ。
どう考えていくのか?という個人的な思考プロセスをテーマとしながら、
あとは随筆的なアプローチで、筆者が考えている事象についての考察が入る。
体系的にまとまっているものではないが、思考に人生を捧げた人の考えが知れるという観点では知的好奇心が刺激されて面白かったし、いわゆる学術書ではないので、1日で読めてしまうので、コスパもよかった。
思考とは、内的対話ではなく、調べること、書くこと、つまり手作業だということは面白い観点。
一方、書かなくても良くなったとも書かれている。
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哲学は役に立たないとし、経験主義的なアプローチで歴史に真理や法則性を求めるというスタンスは、合理主義的なフランスでは少々居心地が悪いようである。
著者の人柄や考え方がわかる作品で、著者の入門書としてはよいのかもしれないが、本書自体が少々「観念的」な部分もあるので、具体的な解答を求める人には不向きかもしれない。
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エマニュエル・トッドは、フランスの高名な歴史人口学者・家族人類学者。書評の紹介で本書を知り興味を持った。
内容は、筆者の学者・研究者としての方法論の紹介が中心。学者を志す学生にとっては、とても参考になるのではないかと思った。
面白く読める部分がない訳ではないが、アカデミアの世界にいない者にとっては、自分の普段の生活とは少し離れたことが書かれており、時に読むのが難しい。
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歴史学者、研究者としてのトッド氏のご意見本。
英語への劣等感に対して読書で補っていたとは面白いです。
恋愛面で危機的なときは研究に邁進するとは…恋愛パワーを仕事に置き換える的なことですね。
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先入観や偏見を避けるために、事実やデータから入ることが大切である。「データを十分に時間をかけて痛めつければ、希望する情報が得られる」と言うけれど、使う人が善良であれば、善良な人には届くと思う。
どれだけデータと情報が正しくても、先入観や偏見の強い人には届かない。そこをどう対処しているのかが気になった。読み取れていないだけかもしれない。
さらに、論理だけでなく熱い心も持っている。それゆえに軋轢を生み、大勢の敵を作ることもあるが、心がしっかりしているので揺るがない。本当に強いなあと思う。挙げられていた著作も読もうと思う。
著者はとにかくよく読む。まずはそこから真似したい。
若い頃はつぶすほどの時間があったが本を読んでいればよかったなあと思う。子供には「本を読め」というのではなく、自然に読みたくなるように働きかけているが、それを続けてかつ改善していきたい。
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エマニュエルトッドの私の履歴書、あるいは「Why I’m so great」
トッドの思考過程を彼の人生と共に語る本。しかし彼の半生を語る部分はルサンチマンに溢れており、自分語りが下手。出版社もこんな企画させるな。
一方、終盤の今現在の分析は真骨頂とも言える。
思考方法の解説部分、数字に基づいての分析は一般的な方法ではあるが、丁寧に解説されているのはいい。
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歴史人口学者と言う肩書きのフランス人のお爺さんの本。
出生率から各国の動向を予想するのは、かなり雑な推論にも思えるけど、歴史学者として、彼の頭の中にある膨大な知識と紐付いての事なのかも。嫌いじゃないけど、好きでもないと言う薄っぺらい感想で終わりにしよう。
彼の出自や両親、子供たちやその配偶者が様々な国の出身で、宗教も途中で改宗したり、多様な視点を持ち得ているところが魅力ではあると思う。
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社会を把握するための数字の見方が参考になる。
著者のエマニュエル・トッドは、歴史人口学者であるが、ソ連崩壊やトランプ当選などの予言で知られる。
多くの社会学が、人の主義や価値観について仮説・推論を展開するのに対し、著者のアプローチは各国の人口動態、家族構成などの統計から、人々の感情を思い浮かべる、経験主義的なものなのが特徴的である。
特に興味深かったのは、統計データの信頼性について、死亡率は嘘がつけないというものだ。著者に言わせれば、物価、GDPなどはサービス経済になってからは何を表すのか分からない。訴訟が増え弁護士の手数料が膨大になることが生産なのだろうか?と言われると確かにその通りと思ってしまう。社会科学においては実験経済学のような、できるだけ科学的にあろうとするアプローチもあるが、そもそもの測るものが間違えていたら結果は意味をなさないことになる…
本人は、数学が得意で哲学が嫌いという道を進んだ結果のように言っていて、随所に現れるフランス哲学の批判、科学的でない社会学の批判は相変わらず面白い。
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話題の歴史学者である著者の研究過程を紐解く本作。
ソ連の崩壊、リーマンショック、EUの破綻(イギリスの離脱)を予見できたのは、どのような思考回路から出てきたものなのか。
とにかく沢山の書物に触れること。広い視野から湧き出るインスピレーション。そして検証には嘘の無い数値データを用いる。家族制度、識字率、出生率、死亡率等を組み合わせると見えてくるという。
すごいなあ。の一言。正直、凡人には解りません。
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エマニュエル・トッドの読書論という感じで、普段日本人の読書論にしか触れていないために新鮮。著者は、ソ連崩壊を予測したデータサイエンティストの一面も持ちながら、しかし、小説も含めてあらゆる本を読みながら、真理、仮説を導き出していくキュレーションのような作法も用いるという。この点は、読書の仕方が自分に似ていて単純に嬉しかった。尚、ソ連崩壊を予測するに役立ったデータの一つは、乳児死亡率との事。相関係数を分析しながらもデータの読み解きが出来なければ、意味が無い。そのため、論説の肉付けをどうするか、思考地図という表現で解説している。
話は本著から逸れるが、地獄とは、脳が苦しみを感受、持続する状態であり、近世以前は、病気や飢え、差別や暴力のような地獄を生きる人が多かった。その抜け道は、犯罪、自害、或いは革命。世界は次第に良くなっているのだとしても、地獄を生きる生活者に対して、何をすべきか。学者の論述を読んでいても、そこに辿りつけない気がした。
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危機の時代を見通す思考法。
思考の出発点から思考を可能にする土台、考えるのではなく学ぶなど、示唆に富む言葉がいっぱいです。
入力する、脳をデータバンク化するための読書を説き、趣味の読書、仕事の読書、市民としての読書、カニ歩きの読書、準備としての読書、隙間を埋める読書など、読書の重要性が強調されます。
創造、分析、出力、そして未来を予測する方法。
まさに、思考の地図です。
こうして社会科学の諸分野を横断的に理解できたために最終的に気づいたことというのは、よい研究の進め方というのはカニ歩きのようなものだということでした。カニというのは斜めに歩き、横に進みます。そういう進み方こそが研究に必要なのです。アイディアを得るために、そして思っても見なかったような事柄に気づけるようにするためには、その研究の柱となる部分から外れた読書をすることが大切なのです。 ー 54ページ