私たちにできたこと 難民になったベトナムの少女とその家族の物語

投稿元：

レビューを見る

決して読みやすい漫画ではないが、この話が小説だったら、読んでいなかったろう。ベトナム戦争が起こした悲劇を知る機会となった。

投稿元：

レビューを見る

本文は漫画形式で、絵柄に多少クセが強く感じられるが、圧巻の表現力と絵力で5世代に渡る家族の物語が描かれている。その圧巻ぶりはぜひ実際に見てみてほしいとしか言えない。時系列が一部入り乱れていて、最初は少し読みにくいかもしれないが。
内容は、ほんとうにタイトルの通り。著者のティーの出産情景から始まり、父親とその家族の話、母親とその家族の話、そして父親と母親が出会って新しい家族をつくっていく話……こうして淡々とあらすじを綴ってみるとごく普通の物語のようだが(ごく普通の物語ってなんだ？)、彼らの物語の底には、戦争と、戦争により遠く離れた故郷が存在している。
私は南北に分かれていた頃のベトナムのこともよく知らないし、当時のベトナム(現在のベトナムのことすらよく知らないのだ)を取り巻く複雑な政治情勢にはとても理解が追いつかない。本書に軽く解説はしてくれていたがなにしろ事前知識が私になさすぎて、理解できずに何度も読み返す部分があった。
個人的には、もう少し用語説明が欲しいし、歴史的背景をもう少しわかりやすく説明してほしいと思ったが、それは本書には蛇足なのかもしれない。
ただ、両親によって無意識に授けられ染み込んだ"難民反射神経"。移住先のアパートが火事になったとき、当時まだ14歳だった著者はパニックに陥ることなく速やかに避難した。ベトナムとは関係ないが、と著者はこのエピソードについて語るが、それだけでも著者の両親が、著者含むその子どもたちが、過酷な環境を生き延びたことを物語っており、それだけでも難民生活が過酷だったことが伝わってきて、そう、うまく言えないけど、難民になったベトナムの少女とその家族の物語を語り受けたのだと感じた。
これはティーたちの物語で、これを通してベトナムに関心を持ち、また物足りないと感じたなら、他のベトナムについての書籍に当たるのがいいかも。私はそうしてみたい。