紙の本
戦後民主主義が、冷戦下で大きな批判に会いながらも、それを巡る人々の営みと軌跡を追った興味深い一冊です!
2021/03/01 16:20
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本近現代史、メディア文化史、歴史社会学を専門に研究され、『核エネルギー言説の戦後史 1945~1960』、『核と日本人』、『教養としての戦後<平和論>』、『大江健三郎とその時代』などの著作を発表されている山本昭宏氏の作品です。同書は、アジア・太平洋戦争の悲惨な体験から、多くの支持を得た戦後民主主義、日本国憲法に基づく民主主義・平和主義の徹底を求める思想について書かれたものです。歴史を振り返ると、冷戦下、戦争放棄の主張は理想主義とされ、経済大国化後は「一国平和主義」と批判され、近年は改憲論の前に守勢になってきています。同書は、そうした批判の中にありながらも戦後民主主義を巡る人々の営為を描いた内容であり、制度改革、社会運動から政治家、知識人、映画などに着目し、日本社会にいかなる影響を残したのかその軌跡を追った読み応えのあるものとなっています。
電子書籍
戦後民主主義の行方
2022/04/30 06:51
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後民主主義は何度も問い続けられてきた。これまでの改憲議論や直接民主主義的な動きと挫折などなど特定の立場に偏らず語られている。
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戦後の民主主義
2022/01/16 02:26
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投稿者:如月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今まで、日本の歴史は、勉強してこなかったが、
こんな私でも、よく理解できたし、とても楽しく読むことが出来た。
写真もあるし、わかりやすいところが、この本の魅力です。
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今の日本
2022/12/01 00:49
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の日本は、あの戦争禍を立ち直ったおかげだと分かってはいますが、その過程と、形成された思想や文化の面から掘り下げられた著作物てす。作者は案外、若いので驚きました。もう少し、ご年配者かな……と。
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1984年生まれの著者が、「戦後民主主義」というキーワードを軸に、戦後から現代までの政治や国民生活の流れとそれに対する言説・論壇の流れを追っている。
力作。
名前は聞いたことあるような学者や評論家たちが歴史の流れの中に位置づけられる。
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20210126-20210214
アジア・太平洋戦争の悲惨な体験から、多くの支持を集めた「戦後民主主義」日本国憲法に基づく民主主義・平和主義の徹底を求める思想だが、冷戦下のにおいて9条(と憲法前文)に基づく戦争放棄の主張は理想主義と、経済大国となってからは「一国平和主義」と批判され、近年は、コロナ禍にやや下火になっているとはいえ改憲論の前では守勢にある。本書は戦後の制度改革、社会運動から政治家、知識人、映画などに着目し、戦後民主主義の実態を描いている。
著者は1984年生まれとまだ若い研究者。彼にとっては久米宏も小林よしのりもかなり上の世代という認識なのだろうな、と思った。もう少し個々の時代の戦後民主主義のとらえ方を深堀してほしいな、と思ったがそれはこれからの著作に期待したい。本書は新書だから紙幅に限界があっただろうし。
戦後の論壇事情を出版界からとらえているのが興味深かった。何となく感じていた雑誌のカラーをよく整理している。これからはSNSやネットに論壇が移るのだろうか?
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よく調べられている。
戦後民主主義というと、一番に大江健三郎の名が浮かぶが、彼ら知識人の戦後民主主義の内容を吟味したり、市民運動の詳細を知りたかったが、戦後民主主義というより、平和主義、憲法改正への抵抗、護憲を軸に戦後左翼史の趣きである。
日本左翼による戦後民主主義とその批判である保守論壇、憲法改正の動きを丁寧に見ていく。
国政だけでなく、映画、文化にも目配りする。
84年生まれの著者が、膨大な資料を読み込み、よく調べ上げた労作である。
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戦後民主主義とは、今後も続いていくこの営みである。
批判も、擁護も、葛藤も、全て抱えた総体である。
その事実に今こそ向き合わねばならない。
一冊で扱うには範囲が広すぎて個別の事案への言及が浅く、列挙的性格が強くなり、全体的な骨組みが見えにくいという難点は感じるが、それだけ多くのことを扱いきった書籍であることも事実。
先人たちの、そして今も続くこの営みを潰えさせてはいけないとの思いを強くした
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終章に「罰則をともなう規制ではなく、自粛要請を採ったのは、強い規制が基本的人権や自由を制限しかねないからだろう。そこに、ドイツと同様、戦後民主主義の残滓を読み取ることも不可能ではない。国や自治体の意図は措くとして、自粛要請という出来事は「自由で民主的な主体」とは何かを問いかけていたのだと理解できる。他者への配慮による自粛と、同調圧力とが混ざり合いながら、基本的には憲法の精神を大きく損なうことなく、多くの人びとが緊急事態宣言下を過ごした。」、とある。確かに事の善し悪しは別としても、(2回目の)緊急事態宣言下の現状が日本の戦後民主主義の1つの到達点だと思う。
ロックダウンするでもなく、かといって野放図である訳でもない何とも半端な現状ともとれるが、一人一人がもう一歩正しく恐れ自律的に動ければまんざらでもない結果をもたらす事が出来るのではないか?いつか歴史が戦後民主主義の総決算を開示してくれる。
谷島屋書店本店にて購入。
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非常に興味深く読んだ。そのなかで、さまざまな個人、団体が取り上げられるなかで、日本共産党がまったく触れられていないのは、なぜか。そのことが疑問に残る。
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非常に野心的な取り組みである。
幸いにも、今も「戦後」民主主義であること。
辛い現実に直面しながらも、コツコツと生きてきた人が、それでも多いこと。
それにしても、手ひどい失敗をいくつも政策的にしてきたことと、今では無かったことにはなっていないまでも、さほど反省されていないこと。
同時代史として振り返ることが、しみじみと多い。
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ちょうどこの瞬間、バイデン大統領と菅首相と日米首脳会談が行われています。なぜアメリカ新大統領の最初の会談相手が日本なのか?それは中国の専制政治に対する民主主義の国家の連携強化というアメリカの戦略により実現したとの解説を聞きました。今や世界の中で民主主義が根付いている国の代表として日本が選ばれている、ということでしょう。その我が国の民主主義が1945年の敗戦以降に「戦後民主主義」としてどのように育まれどのように論ぜられどのように疎まれていったかを一望する意欲的な新書です。なにしろ最終章のひとつ手前の章が「限界から忘却へ 一九九二〜二〇二◯」と来て最後が「戦後民主主義は潰えたか」ですから。ではアメリカに民主国家として選ばれている日本の民主主義は「戦後民主主義」でなければ、どんな民主主義なんだろうと考え込んでしまいました。著者は一般的な民主主義の議論はさておき「戦後民主主義」の特徴として3点挙げています。第一に、戦争体験と結びついた平和主義。第二に、直接民主主義への志向性。第三に平等主義、です。そして著者は「戦後民主主義という言葉が論壇やジャーナリズムで積極的に使われたのは、一九五〇年代半ばから二〇〇〇年代初頭までの約五〇年間に過ぎない。」とも言っています。社会に戦争体験が残存する時代の民主主義、ということなのでしょうか?太平洋戦争を実体験として持つ世代の退場が日本の在り方を大きく変えると常々思っていたので、もう始まっているポスト「戦後民主主義」時代の民主主義についてのもっと深い考察がなされなくちゃならないと改めて思いました。加えて本書が意欲的なのは論壇のみならず文学、マンガ、映画、アニメという広い裾野に目が行き届いていることです。まさに自分が吸って来た時代の空気が蘇り、自分がなぜ、今のような考え方をするのか、も、ちょっとわかったような気がします。そして、このCOVID19時代、民主主義自体が激しく揺れています。日本に外から民主主義を持ち込んだアメリカが民主主義の代表国として日本をフューチャーする事自体に民主主義脆弱時代を感じます。香港、台湾、タイ、ミャンマーの問題だけではなく日本の民主主義を参考するための踏み台としてこの新書は貴重だと思いました。
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何となく題名に惹かれたという程度で済まないような、濃密な読書時間を本書と共に過ごすことになったような気がする。非常に読み応えが在る労作であるように思う。
漠然と思うのは「戦後」というように言う場合、「1945年8月」の以前と少し「切り離されている?」ということと、「既に数十年経つ中、漠然と一括りのように?」というようなことだ。今や「戦後」と呼ばれる「1945年8月」の後だけでも75年も経った。これは「明治元年から昭和20年」という期間の年月と既に大差が無い。だから所謂「戦後」にも既に様々な経過、変遷というモノが在るということになる。
本書は、「“戦後民主主義”という、時々聞く用語は一体何なのか?」ということを底辺の軸に据えながら、1945年から極々近年に至るまでの長い期間に亘る、社会の様子を伝える思潮、映画や文芸作品、話題になった論、政治の動き、注目された事象等々を拾い上げて、「“戦後”と呼ばれている期間の日本国という社会の変遷」を織り上げているような労作であると思う。
本書に取上げられている出来事等に関しては、「XX歳位であった頃か…」と自身の記憶の隅に引っ掛かっているような事柄を論じている例が多い。更に少し注目された論を展開したという人達に関する言及を視れば、自身が学生であったような頃に「〇〇で有名だった人」と紹介され、色々と発言しているのを何かで見聞したような記憶が在る人物が沢山在る。
本書を読むと「半ば以上、自身の人生と重なっている、または歩んだ時間を“歴史”として見詰める」というような、些か不思議な経験をすることになるような気がする。
「好い」と思うモノを護ろうとするばかりでも「好くない」は残る。「好くない」を正そうとするばかりでも「好い」を捨てざるを得なくなってしまうかもしれない。既に「戦後」と括り得る時期が「明治・大正から昭和20年頃へ」という程度の期間になってしまっている中、知り、考えるべきことも多くなっている。
本書は“現代社会史”というようなことで、若い人達が学ぶ場合の格好の材料になりそうだ。自身も「若い人達が…」等と綴ってしまうような年代になってしまったと苦笑も漏れるのだが、当然ながら自身の世代にとっても興味深い一冊である。
本書は広く御薦めしたい労作だ!!
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日本国憲法に基づく民主主義・平和主義の徹底を求めた戦後民主主義は日本社会にいかなる影響を残したか。傷だらけの理想の軌跡を描く
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かなりの力作、労作で驚きました。これを1984年生まれの方がよく書いたな…と。いや、当時を身をもって体験していないからこそ、個人的な思い入れを排して客観的に書けたのだとも言えそうですが。いずれにしても戦後政治と民主主義にまつわる思想論壇史であり、それとともにその当時の社会文化史。いや、ほんとよく書いていただきました。