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商品説明
日本人の両親のもとロシアで生まれ育った登志矢は、ロシア帝国軍に徴兵されて大戦に臨み、やがて革命の嵐に巻き込まれていく。その先に待ち構えていた運命とは…。新感覚冒険小説。『オール讀物』掲載を加筆し単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
なぜ彼は、工作員として日本に潜伏したのか――
ミステリの名手による新たな挑戦。圧巻のスケールの〈改変歴史冒険小説〉!
ロシア沿海州に開拓農民として入植した小條夫妻の次男・登志矢は、鉄道工科学校で学び、念願の鉄道技能士となった。だが世界大戦のさなか帝国軍に徴兵されて前線へ送られ、激戦を生き延びる。そして復員すると、帝国には革命の嵐が吹き荒れ、やがて登志矢もいやおうなしに飲み込まれていく……。
日本人の両親のもとロシアで生まれ育った男がたどる数奇な運命。
悲嘆、憤怒、そして憎悪が、運命に翻弄された男を突き動かす!
【商品解説】
著者紹介
佐々木譲
- 略歴
- 〈佐々木譲〉1950年北海道生まれ。「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞、「エトロフ発緊急電」で山本周五郎賞、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。
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紙の本
ちょっと入り込めないかなあ
2021/04/22 10:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tatetate - この投稿者のレビュー一覧を見る
抵抗都市に続くロシアもの。プロローグは、これは面白そう!と期待感がつのります。ネタバレになるとまずいのですが、そこからエピローグまでがいまひとつ。帝政ロシア、革命ロシアでの日系人の扱い・振る舞いはとても興味深く読みました。
新シリーズもいいけど、これまでの道警シリーズ、五城廓ものをもっと深掘りして欲しい気がしますね。
紙の本
ソ連のトレッドストーン計画による新感覚冒険小説
2021/05/25 15:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐々木譲氏の歴史改編小説には、既に「抵抗都市」(集英社2019)がある。本書はその続編かと思ったら、そうではないようだ。日露戦争で敗れ外交権と軍事権をロシア帝国に委ねる二帝同盟を結んでいるという記述があるので、「抵抗都市」と同じ設定ではあるが、こちらは「新感覚冒険小説」のキャッチコピー。出版社が異なるので、「歴史改変小説」とはできなかったのだろう。その「抵抗都市」の続編「偽装同盟」は現在「小説すばる」で連載中。本書は、「抵抗都市」より時代は後だが、二帝同盟の解消は別にして、第一次世界大戦、ロシア革命とその後の内乱、列強のシベリア出兵、日ソ中立条約締結という時代の流れは史実通りである。また、シベリア出兵時の日本兵の残虐行為は、後のナチス・ドイツの東部地域での「アインザッツグルッペン」Einsatzgruppenと同じだったことも史実に忠実に描かれている。
ヨーロッパ東部ではドイツがソ連に侵攻し破竹の勢いであることから、三国同盟により日ソ中立条約を破棄してソ連に宣戦すべしという主戦論が力を増してきた政治情勢の中で物語は始まる。大津事件の謝罪外交として行われたシベリア入植事業でロシアに移民した日本人の両親のもとで生まれ育った登志矢(ロシア風にトーシャ)が主人公。彼はロシア帝国軍に徴兵されて第一次世界大戦に従軍、やがてパルチザンとして革命の嵐に巻き込まれ、共産党政府によって対日工作員として日本に戻っている。本国からの指令によりソ連との主戦論者を暗殺する。主戦論者は、「松平洋介」、日ソ中立条約を進めた「松岡洋石」であることは一目瞭然。ここから「歴史改編」がどのように展開するのか、と期待したが、一挙に過去に戻って登志矢が対日工作員になるまでの過去が描かれる。ここからは、「歴史改編」的展開はなく「新感覚冒険」的展開となる。
中でも鉄道技師でもあった登志矢が操縦する「浮揚艇」を使った帝国要人の拉致作戦がスリリング。この「浮揚艇」は、内熱機関による推進力を持つグライダー型の航空兵器と思われるが、著者の創作か。「拉致作戦」の訓練と戦場投入の場面は、戦闘ヘリから降下し、敵基地に侵入するSEALSの映画を見ているようだ。そういえば、冒頭の暗殺場面も、「ジェイソン・ボーン」シリーズを見ているような光景。しかも指令を受けて暗殺者に変貌するところは、ボーンと同じで、たまたまWOWOWで放送していた「トレッドストーン」計画のようである。幼いころから今までを振り返るのは、「ボーン・アイデンティティー」である。
本書では、登志矢の周りに女性、戦友、赤軍、共産党幹部など多くの登場人物が登場するが、いずれも関係が深まることなく、あっという間に物語から消えてしまう。女性とのロマンス的雰囲気もあるのだが、軽く扱われるだけ。まるで登志矢しか登場人物はおらず、彼の暗殺者としての孤独を際立たせるような設定である。最後は登志矢も「ディヴィッド・ウェッブ」になって、「トレッドストーン」の呪縛を断ち切ろうと新たな旅立ちをするのだが、その日が1941年12月7日。続編があるとすれば、どのような「歴史改編」が施されるのか、はたまた、中年となった登志矢の「新感覚冒険」となるのか興味津々のエンディングであった。
冒頭小さな風景(勝鬨橋)から始まって、次第に情報が追加されて、今は何時なのか、そして日本、世界の情勢はどうなっているのか、どのように歴史改編されているのか、が、まるで映画を見るように凝縮された文章の中でわかるようになっている。戦場の描写も同じ。「抵抗都市」でのロシア総督府治下の東京の描写もそうであったが、本書でも著者の筆致力は素晴らしい。