紙の本
静香さんの地蔵菩薩
2021/03/11 21:49
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辛亥革命は明清の秘密結社や太平天国の延長線上に存在していて、中国国民党と中国共産党はコミンテルンの組織論の上に立っているにしろ、この「伝統」の上にある「兄弟」政党だとは思ってはいたが、現在も秘密結社は互助組織として存在しているようだ。
法輪功や全能神といった中華人民共和国でいうところの「邪教」(日本で言うところの「カルト」に近似値との事)などについては案外、手頃に読めるような本は初めてだった。
ものみの塔聖書冊子協会が「邪教」指定されていないのは意外だった。ものみの塔は本部がアメリカにあって、教義が中華人民共和国の政策からすれば禁止されてもおかしくはないし、ものみの塔のホームページを見ても中華人民共和国の「組織」については触れていないから、この「組織」で言うところの「禁教下」のはずだが。
「洪秀全と太平天国」にチラッと触れている中華人民共和国建国後に摘発された皇帝を宣言した人物達に連なるような皇帝達がコラムになっている。時代の変遷と価値観の変化などが皇帝を称した人々が輩出しなくなったらしいが、辛亥革命から時間が経ってリアルな皇帝という存在が実感出来なくなったのも一因とある。
なかでも興味深いのは「邪教」指定されているという台湾生まれの真佛宗という教団の阪南市にある寺の訪問記だ。「静香さん」と著者が法名を略して呼んでいる台湾人の僧侶がパワフルに運営している姿が何とも言えない。試しに、ここのホームページを閲覧したら、紹介されている開山縁起に257頁に写真が掲載されている地蔵菩薩が縁になって創建されたとあったから、この本でのちょっと軽い扱いよりは重要なようだ。
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ルポライターの安田峰俊氏による中国「秘密結社」の動向に迫った興味深い作品です!
2021/03/01 12:52
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ルポライターで、『8964――「天安門事件」は再び起きるか』、『さいはての中国』、『もっとさいはての中国』、『和橋』、『移民 棄民 遺民』などの話題作で知られる安田峰俊氏の作品です。同書は、天安門事件、新型コロナ流行、アリババ台頭、薄熙来事件、孔子学院など、激動する国家にうごめく「秘密結社」を詳細に描いた貴重な書です。清朝に起源をもち、今なお各国に存在するチャイニーズ・フリーメーソン「洪門」、中国共産党の対外工作を担う「中国致公党」、カルト認定され最大の反共組織と化す「法輪功」などについて、結社が行う「中国の壊し方」と「天下の取り方」に迫り、彼らの奇怪な興亡史を鮮やかに描き出した非常に興味深い内容となっています。
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現代の中国
2021/06/03 08:53
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の近現代史から現代まで、新しい視点で分析されていて、興味深く読むことができました。秘密結社など、さらに知りたくなりました。
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中国の秘密結社が現代においても大きな意味を持つ、そもそも中国共産党が秘密結社の成功例だという指摘は面白い。中国の歴代王朝は中央集権的な体制を作ったが、地方に送られる官僚に土地への愛着はなかったために民生向上へのインセンティブがなく、政治や社会への不信感を抱かざるをえない、究極の自己責任社会だった。そこで血縁者同士のより集まった宗族や同郷会といった相互扶助組織が作られた。それが中国の秘密結社の下地になっている。
チャンツィーも入党した中国致公党という参政党、世界各国の華僑社会の秘密結社、法輪功、全能神、新天地教会といったカルトなどについて説明されている。
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大宅壮一ノンフィクション賞著者の渾身書き下ろし!激動する国家に蠢く「謎の組織」を知らないでどうやって中国がわかるのか?
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現代の中華圏(華人社会含む)に存在する”秘密結社”の現状と、その歴史的背景を解説する一冊。
いろいろな秘密結社のことを扱っているのですが、犯罪的秘密結社と宗教的秘密結社を特に大きく扱っている。
筆者ならではの飛び込み型取材は健在なのですが、この一冊はその背景や歴史も詳しく説明してくれる。そして、そういう「中国ならでは」な結社と似たような組織であったり背景であったりが日本にもあることを示唆しながらそれを説明してくれる。
それがこの本の最大のウリであり…多分読者も選ぶところだと思う。詳しい説明はそういう解説より面白いストーリーを求める人には受けないし、宗教的・暴力的なカルト組織やその構成員を日常的に見ることができる地域に住む人とそうでない人では、この本の理解度は変わってくる。幸いにして、自分はどちらもOKだったのでかなり楽しく読めた。
「周囲の一切が信用できない厳しい世の中だからこそ、本当に心を許し合える仲間や、近視眼的な損得勘定抜きに必ず自分を保護してくれる組織(p.34)」を求める伝統的中国で、血縁(宗族)や地縁(同郷会)すら当てにできない一匹狼を、アウトローな人に寛容な秘密結社的組織が受け入れる。同様の理由で在外華人社会にもそういう秘密結社的組織ができる。あるいはそういう生活に心身ともに疲れた人の受け皿として宗教的組織も存在するが、それらが弾圧を受けて秘密結社的になることもある。中国社会の変革期にはそういう国内外の秘密結社が結構重要な働きをする。
…しかし、そんな組織の多くが変革後は切り捨てられる。一方で、もともと「秘密である」こと以外にそんなに明確なイデオロギーを持っていない組織なので、時の為政者にうまく取り入って生き延びる秘密結社もある。
まあ…それぞれ「日本にも…似たような組織、あるなあ…中国ほどダイナミックじゃないけど…」というお話がたくさんで。
当然、その味付けは日中韓(中国に入り込む宗教的組織の一部には、中国内の朝鮮族への布教を布石に中国進出を図る韓国系新興宗教もある[p.285~])で異なるんだけど、ベースとなる人の弱さみたいなもんは案外共通してて、結構似たような組織作りと発展・衰退をするもんなんだなぁ、と。
ただ海外に「華人社会」を持っていて、どれだけ外圧を排したつもりでも、内輪である華人社会を通して海外からの影響を受けてしまう中国の歴史のダイナミックさは、やはり日本の内向的な秘密結社にはないものだな、とは感じた。
また、多分この本の本質ではない部分なんだろうが、韓国系の新興宗教を取り上げているくだりで、独立した宗教的コミューンを作りその中で疑似家族的なものを作っている「世界イリア福音宣教会(p.301)」の話があって。
中国は「義兄弟」的なヨコの関係を築く組織が割と長持ちするのに、韓国は統一教会の合同結婚式に代表されるように「家族」を作りたがる。
日本の反社会的組織は、暴力的反社会的組織だけでなく暴力化した左翼思想集団すら幹部を尊ぶ「タテ社会」を作りたがることとの対比含め、近い国(文化圏)同士だけど本当に大切にしたい人間関係像が異なるらしいことも興味深かった。
日韓中どこも「ネット社会」がやってきてて。秘密結社の組織体そのものがクラウドの上にかすんで見える時代がやってきてる。
流行し始めたClubhouseへのアクセスを中国が早速不可能にした、なんてニュースが出たのは昨日か一昨日の話。
それが秘密結社の形を変えるのかもしれないし…反対に、中国版フードデリバリー業者従業員が秘密結社的つながりを持った話[p.61-]のように時代が変わっても似たような秘密結社が作られ続けるのかもしれない。
そういう目線で身のまわりの社会を見ていくのも(陰謀論者になりさえしなければ)悪くない、そんなことを考えさせられた一冊でした。
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中国の歴史になくてはならない秘密結社、それは怪しげな入会儀礼と融通無碍な空虚な器として今も生きている。洪門、青幋、法輪功、全能神、新天地協会…元々は、共産党こそ秘密結社だという笑い話もある。秘密結社の内実と次々と生れ出る背景を、綿密な取材と中国通ならではの深い洞察で描く。
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いやなんか読み出して、正直どうでもいいやと。興味のある人にはいいと思う。
端的にまとめて、一番成功した秘密結社は、中国共産党だと。
ワロタ。
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現代における天安門事件の意義を描いた傑作ノンフィクション『八九六四』があまりにも素晴らしかった著者が中国の秘密結社をテーマにしたのが本書であり、もうタイトルを読むだけでワクワクしてしまう。
対象となるのはマフィア、マイナー政党、カルト宗教などであり、日本でも話題の孔子学院などは著者自らが潜入しており、その生々しさも含めて面白い。また、本書が優れているのはそうした普段は陽の目を見ないような秘密結社を白日のもとに晒したという点もさることながら、こうした秘密結社を共産党がなぜ執拗に迫害するのか?(例えば宗教団体の法輪功への迫害はその筆頭である)、という点への答えを見出している点にある。
本書での結論は、そもそも中国共産党自体がその結成当時は秘密結社と言ってよいレベルの胡散臭さに満ち溢れたものであるが故に、同じような秘密結社がいつか自らの政権を危機に陥れる可能性があるリスク要素であるとみなしているからの他ならない、というものである。一党独裁体制が成立した今でこそその権力基盤は当初から確立されているかのように見える共産党も、当時の歴史を辿れば極めて山師的な一軍であったのは間違いがない。そうした点で本書は単なる面白おかしく秘密結社を描くだけではなく、中国という国家の成り立ちを秘密結社というキワモノを舞台にして描き出すことに成功している。
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中国の秘密結社という魅力的なタイトルに誘われて本書を手にしたが、私がイメージしていたフィクサーのような存在や闇から表社会を捜査しているというものよりも、もっと現実的な存在であった。一方で、表社会に多大な影響を及ぼすというイメージは合っているようであった。
秘密結社とは、政治や宗教、犯罪も含めて同じ目的のために集まりお互いを助け合う集団であり、その性格から外部に情報があまり出ないことから、秘密結社化していくものであり、中国に関わらず、どの国にも多かれ少なかれそのような集団は存在している。
本書ではその中でも中国を舞台に過去から現在までに、どのような秘密結社が生まれ各時代にどのような影響を与えてきたのかを克明に記録したノンフィクションである。
清の末期からどのような成り立ちを経て、現在の中華人民共和国という国が出来上がってきたのか、その流れを理解することができた。
一方で、中国人(という定義がどこまでを含むかは議論の余地があるが)が、各国に移住し華人としてコミュニティを形成し(これが秘密結社化する)、最終的にはその国の中枢にまで入り込み、気づいたら中華人民共和国に支配されてしまうということが、これから各国で起こるのではないかと不安になってしまった。特に日本は鎖国的であるものに、白人や黒人など明らかに人種の異なる移民や難民は警戒するが、中国人や韓国人などの近しい人種には比較的寛容であることが、知らないうちに日本が蝕まれるのではないかという不安が残った。
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法輪功や青幇、中華人民共和国の衛星政党・中国致公党など現代中国におけるマフィアや宗教団体、政党など秘密結社的な性格を持つ団体の興亡史である。本書に著された各団体への理解において、著者の院生時代の研究テーマである、「械闘」の研究が生かされており、また著者のバックボーンである中国史の知識が本書を「お手軽な新書」に終わらせない奥行きをもたらしている。
2020年アメリカ大統領選挙では陰謀論を信じるトランプ支持者集団「Qアノン」が多くのニュースを賑わせたが、本書ではアメリカ大統領選挙をめぐる陰謀論の流布に一役買った郭文貴や「大紀元」などの法輪功系メディアについても紙幅が費やされており、アメリカ政治に関心のある読者にも希求できる内容である一方で、国際的女優であるチャン・ツィイーも所属する中国致公党の沿革や、改革開放期に林立した王朝樹立の動きなど一般には広く知られていない中国政治の内幕には思わず笑わさせられる箇所もあり、この硬軟とりまぜた構成は著者ならではの筆力で肩肘張らずに現代中国の一面を知ることができる良著である。
最後に、まえがきが書かれた時期はおそらくネットで「Get Wild退勤」がバズっていた頃なのか、「TM Network/Get Wild」の歌詞をパロディにした一節がFANKS(TM Networkファン)である評者はニヤリとさせられた事を記しておきたい。
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法輪功以外に共産党政権下の中国でこれほど多くの「邪教」が発生していたことに驚いた。また創始者がキリストの再来を自称していることが興味深い。
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中国の歴史が中央集権的な王朝の交代劇で成り立つとすれば、王朝の圧政下には多くの秘密結社が生々流転し、その中から易姓革命に成功したものが次の王朝を築くと読める。
どうもこの国は砂を握りしめるかのようにしか統治できず、少し緩めば瓦解するようであり、それゆえ底辺の民衆から地方閥まで徒党を組んで相互扶助し、排他する性質であるようだ。
であるならば、今の中国共産党支配下でも秘密結社は数多あり、大別して相互扶助結社の洪門系、新興宗教系、前2者を土台にした革命結社となるらしい。
人民中国の壊し方まで言及する必読の一冊である。
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面白いテーマで中国を理解する上で知っておいて損はない。秘密結社は近現代史的な内容で、後半多くのページが中国の新興宗教に関する記述でさかれていて、信じられないおかしさ、真剣さ信心深さと、当局の異常な警戒ぶりを垣間見る。なぜこのような宗教にハマる人々がいるのか、から、そうは言っても人権侵害や不当弾圧している政府、共産党。冗談みたいなことが真面目に起こる中学の不可思議を痛感。