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- カテゴリ:一般
- 発売日:2021/02/13
- 出版社: 柏書房
- サイズ:20cm/262p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7601-5320-6
読割 50
紙の本
潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景
著者 矢田 海里 (著)
あの3月11日を境に、すべてが大きく変わってしまった。仙台港で次々と自殺者を引き上げた日々と、震災犠牲者を貞山堀から引き上げた日々…。海からいくつもの「魂」を救い続けた潜...
潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景
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商品説明
あの3月11日を境に、すべてが大きく変わってしまった。仙台港で次々と自殺者を引き上げた日々と、震災犠牲者を貞山堀から引き上げた日々…。海からいくつもの「魂」を救い続けた潜水士の苦闘を描くドキュメント。【「TRC MARC」の商品解説】
海難事故、入水自殺、人命救助、そして2011年3月11日東日本大震災――宮城県仙台の海底に潜り続け、いくつもの「魂」を引き上げてきたプロの潜水士・吉田浩文。凄腕のダイバーとして地元自治体からの信頼も厚く、長年にわたって遺体引き上げ・捜索、救助活動に携わってきた男が目にしたものとは? 生と死、出会いと別れ、破壊と再生――「現場」に立ち会った者のみが知る様々な人間模様と苦闘を描くドキュメント。【商品解説】
目次
- プロローグ
- 第1章 呼吸する者、しない者
- 第2章 遺体に育てられた男
- 第3章 蜘蛛の糸
- 第4章 波打ち際の夏
- 第5章 破滅の午後
- 第6章 暗い運河の水底へ
- 第7章 群青色の境界
- エピローグ
著者紹介
矢田 海里
- 略歴
- 〈矢田海里〉1980年千葉県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。人の内面の光と影を追いながら取材活動を行う。東日本大震災で被災した人々の声を拾う活動を続ける。
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紙の本
プロの潜水士が向き合う社会の陰に迫るノンフィクション
2023/12/06 07:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中様々な職業がありますが、本書で取り上げられているのは潜水士、中でも警察などから行方不明者や入水自殺者の遺体捜索を引き受けてきた潜水士を生業とする方です。
本書の主人公ともいえる吉田さんは仙台を拠点に卓越した潜水技術を買われ、警察で発見できなかった事案について頻繁に遺体捜索の協力を請われることになります。
吉田さんがそれ程までに困難な遺体捜索で成果を上げられるのは、様々な状況を科学的に分析した上で捜索方法や範囲を決めておられるからです。具体的には、亡くなられた方の入水時の時刻(潮流の関係)、直前までの食事(胃に内容物があると腐乱したガスが発生し、遺体が浮きやすい)、事故なのか事件なのか(事故ならば、もがいてより多く海水を飲み込んでしまうので、浮き上がりにくい)、服装(体にフィットしない服装なら、何かに引っかかって遺体が浮き上がりにくい)等です。しかし、それでも時には遺族の方から「夢で○○にいると告げられた」等々の証言が発見のきっかけになるなど、科学一辺倒では対処できないケースもあるようです。
しかし本書で最も印象的なのは、吉田さんが引き揚げた遺体が物語る背景や、その遺族との関係です。子供を残した母親の入水自殺事案では、車のトランクに残された新品のランドセルを発見し、子供との無理心中を直前に思いとどまり、子供だけ残して母親だけが命を絶った心情を目の当たりにしたケースは已むに已まれずとはいえ、読後に何とも切ない気持ちになりました。
少なくとも自殺や行方不明となる方は、それなりに生前には複雑な事情を抱えておられるケースが多く、捜索にかかった費用の請求に際して踏み倒されたりと、少なからず遺族とのトラブルに巻き込まれるケースなどでは、吉田さんの葛藤が伝わってきます。
真っ暗な光の届かない水中で遺体と相対し、またその遺体が多くの場合は腐乱していたりする上、多くの場合は遺体を抱きかかえて陸上に揚げるという精神を余程強く持っていないとパニック陥るような作業に従事しながら、遺族から感謝されるどころか支払いに絡んでトラブルになり、人間不信に陥っていく様は読んでいて辛くなります。
そんな中、希望を感じることができるのは、仙台で新たに開設した海水浴場の警備を担当することとなり、地元の若者を雇って一人前の警備員に育て上げる様子です。遺体引き上げを通じて様々な経験を積んだ吉田さんの懐の大きさ、包容力が、ちょっと無気力な若者に生きてゆく目標を気付かせてゆく様子は本書の中で希望を感じることができる部分です。
活動の拠点が仙台ですから、当然、東日本大震災も経験されました。その時の様子、そして震災後の遺体捜索の壮絶な様子も筆者は丹念に吉田さんから聞き取って描かれています。
人間の死に関わる仕事は医師をはじめいろいろあると思いますが、事故や自殺による死に数多く触れるこのような職業に携わる吉田さんの心の中を脚色することなく、吉田さん自身の言葉を通じて描いた、大変読み応えのあるノンフィクションです。